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第8話 ゲーム

 私、南栗橋綾乃は都内の中小企業で働くOLだ。

 今日も今日とてテレワークを満喫する!


 ――ピコピコピコピコ――


 今、私はゲームの真っ最中!

 業務中に堂々とこんなことできるのは未曾有のご時世ならではだね!

(※働け)


 それにしても業務中にするゲームって……いつもの数倍楽しいなあ!

 心なしかプレイングもいつもよりキレている気がするし!

 まさか……業務中のゲームは上達への近道⁉

 私プロゲーマーになれちゃう⁉

(※なれるもんならなってみろ)


「ふう、討伐完了」


 ちなみに今やっているのは『モンスター〇ンター』

 武器を使ってモンスターを狩猟するアクションゲームだ。


「次、なに狩る?」


『うーん、ナルガ〇ルガでもいく?』


 そのゲームを友人とオンラインで楽しんでいる。

 電話をスピーカーにして会話しながら。


 この子は大学の同期なんだけど、卒業後すぐに就職せずに大学院に進学したんだよね。

 だから平日の昼間でも堂々とゲームができてしまうのだ。

 羨ましいなあ。

(※お前も似たようなことしてるだろ)


『そういや綾乃』


「んーなに?」


『あんた今普通にゲームやってるけど、今日平日でしょ? 仕事はどうしたの? 有給とか?』


「んー普通に仕事中だよ。今はやりのテレワーク」


『え⁉……そ、それってサボりってことじゃない⁉』


「そうだよ」


『そうだよって……あんたねえ……』


「わかってないなあ。テレワークはこれまで仕事を頑張ってきた社会人に休んで下さいってメッセージを暗に込めたシステムなんだよ。だからサボりも許される!」

(※そんなことはない)


『そ、そうなの……? ならいいけど……』

(※お前も信じるな)


「そういうことだから思う存分モンスターを狩ろう!」


『なんか腑に落ちないけどまあいいわ……あっ、ごめん。一旦電話切るわね』


「どしたの?」


『教授からキャッチが入ってた』


「そんなの後でいいじゃん」


『そういうわけにはいかないわよ、重要な話かもしれないし。だからちょっと待ってて』


「はいはい乙~」


 ――通話終了――


 はあ、大学の時からそうだったけど真面目だなあ。

 必ず単位が貰えるようなカモ講義も毎回出席して綺麗にノート取ってたっけ。

 どこからそのエネルギーが生まれるのかね?

(※爪の垢を煎じて飲ませてもらえ)


 ――プルルルルル、プルルルルル――


 あれえ? やけに早いじゃん。

 さては下らない話だったな。

 教授もそんなことでわざわざ電話かけないでほしいなあ。

 今は友人とゲームという最高に楽しい時間を過ごしているのだからさ。

(※この人は業務中です)


「はいはーい、お疲れ! じゃあゲームの続きやろっか! ところでさっきナルガ〇ルガ狩ろうって言ったじゃん? あいつじゃなくてさあ、リオ〇ウス狩りにいこうよ! 私、火竜の紅玉が欲しくてさあ!」


『……』


 あれ? 返事がない? なんでだ?


『お、お世話になっております。わたくし、株式会社ホワイトの鈴木と申します……』


 ぎゃああああああああああああ!!!!!!!!


 ま、ま、間違えた!

 着信が鳴ったの社用携帯の方だ!

 なんで気付かないんだよ! 私のバカバカバカ!!!

 取引先相手に『火竜の紅玉が欲しくてさあ!』とか言っちゃったじゃん!!!


『あのー、南栗橋様でお間違いないですよね?』


「は、はいそうです! 南栗橋です!」


『本日は休暇を取られているのですね。それは失礼致しました。別の方に掛け直させて頂きますので』


「いや、違うんです! これはその!」


『それでは失礼致します』


「待ってえ! 鈴木さぁぁぁぁぁぁん!!!」


 ――ピッ、ツーツーツー――


 お、終わった……。

 これはやばいなんてもんじゃない……。


 ――プルルルルル、プルルルルル――


 あっ、今度こそ私物のスマホが鳴ってる……。


「もしもし……」


『お疲れ。大したことじゃなかったわ。ゲームの続きやろうか』


「……ねえ」


『ん? なに?』


「もし私が会社をクビになって家賃が払えなくなったら、一緒に住まわせてくれる?」


『はあ⁉』


 その後、クビになることはなかったものの、ハゲ課長から『なにをしていたんだい?』と圧が強い尋問を受け、生きた心地がしない恐怖に震えることになるのでした。

 めでたしめでたし。


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