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第6話 出社日

 私、南栗橋綾乃は都内の中小企業で働くOLだ。

 今日も今日とてテレワークを満喫する!


 とはいっても――


 実はうちの会社、完全にテレワークに移行できたわけではない。

 テレワークのための設備が整っておらず、週に1・2回は出社する必要があるのだ。

 

 そして今日は、まさにその出社日なのである。


 ――出勤中――


 あ~めんどくさい~。

 出社日は働かなくちゃいけないから損した気分になるんだよなあ。

(※この人は社会人です)


 きちんとした服を着て、ある程度の化粧だってしなくちゃならない。

 そのために早起きする必要があるから全てにおいて損してるよなあ。

 やっぱり出社は悪だよ、悪。


 まあ……電車が満員じゃなくなったのはいいか。

 普通に座れるし。ウイルス蔓延前じゃこんなこと考えられなかったもんなあ……。


 それにテレワークに完全移行できているような会社は『リモートデスクトップ』なんてサボり防止用のシステムが導入されているみたいだし、物は考えようか。

 サボれないテレワークなんてテレワークの意味ないもんね。


 ま、出社日は必要悪と思ってポジティブにいこう!!!


 

 ――会社到着――



「はよございまーす」


「おはよう南栗橋君」


 あっ、ハゲ課長だ。

 今日も頭が光輝いている。


「課長、おはようございます」


「いやーいつも思うけど最近の若い子は来るのが遅いね。私の若い頃の女子社員といえば始業の1時間前には来て掃除とお茶汲みをするのが当然だったけどなあ。あっ、南栗橋君にやれって言ってるわけじゃないからね。でも最近の若い子は利己的というかサバサバしてるというか、もうちょっと愛社精神を持ってくれると嬉しいんだけどなあ。これも時代なのかなあ」


 このハゲ、リストラされてしまえばいいのに。


「は、ははは、時代は変わるものですね。じゃあ私、ロッカーに行ってきますので」


 あ~やっぱり出社って悪だわ。

 朝からテンションがた落ちだよ……。



 ――始業――



 さて、仕事開始だ。

 気合い入れてやろう。


 え? どうしてダラダラやらないのかって?


 ふっふっふっ、たしかに以前までの私は超絶ダラダラ仕事をしていた。

 人の目を盗んで極力サボることに命を賭けていたね。

(※この人は社会人です)


 だがしかし!


 仕事がテレワーク中心となった今、数少ない出社日に頑張ればその分テレワークがオアシスと化す!

 要は数日分の仕事を今日のうちに終わらせておくのだ!

 やるぞ! すべては快適なテレワークのため!!!

 見せてやる! 私の本気! ユニークスキル発動!!!


 【条件付全力仕事術!(明日サボるための全力)



 ――全力でパソコンカタカタすること数時間――



 ……おっと、お昼の時間だ。

 

 欲望に従うならば会社近くの定食屋でがっつりカツ丼でも食べたい気分。

 だがドカ食いしてしまっては眠くなり、午後の業務に支障が出る。

 だからここはグッと堪えて――


 ――プルタブ、カシュッ――


 ユニークスキル発動!!!


 【効率的栄養補給術!(エナドリがぶ飲み)


 そしてお昼休みも仕事だ!

 うおおおおおおおお!!!



 ――終業間近――



 よし、想像以上に仕事が片付いた。

 そろそろ定時だし、ハゲ課長に提出しよう。


「ハ……課長、頼まれた工程表、作成できましたのでご確認お願いします」


「おっ、どれどれ……」


 ふっふっふっ、本当は見積書や客先提出資料も完成しているが、今は出さない!

 頑張った分をその日のうちに全部提出するなんて、サボり素人のすることだ。

 

 私のようなサボりのプロは、あたかも明日や明後日のテレワークで作成したように見せかけるため、提出日を分けてわざと時間差を作る!

 

 これぞ締めを飾る最後のユニークスキル……発動!!!


 【戦略的タイムラグ!(提出物小出し)


 ふっふっふっ、完璧だ。完璧すぎて怖い。

 やはり私こそ一流の社会人だ。

(※全ての社会人に土下座しろ)


「よし、いいよ。お疲れさん」


「ありがとうございます」


「そうそう、ところで先日任せた客先に提出する資料だけど……」


「あれなら明日着手するつもりです」


「おお、まだ手を付けてないかい。それならよかったよ」


「……え? よかったとは?」


 な、なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。

 なんだこの不穏な空気。

 私の計画はぬかりないはずなのに……。


「実は大幅な仕様変更があってね。今の案を白紙に戻し考え直す必要が出てきたんだよ。だから資料の作成はちょっと待ってくれるかい」


 どうえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!


「それと同じく任せていた見積書だけど、どうもこの案件には同業他社が多く手を上げるらしくてね。受注のためには金額や仕様を詰めなければならないから、私が預かることにするね」


 ひょえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!


「だから南栗橋君には別の仕事を……ん? どうしたんだい頭なんか抱えて?」


「な、なんでもないです……」


 今日の頑張りはなんだったの⁉⁉⁉

 テレワークをサボるために頑張ったのに!!!

 私の明日はどうなっちゃうの!!!

(※普通に仕事しろ)


 その後、私は新しい仕事を渡されることに。

 思い描いたオアシスのようなテレワークは夢と消えるのでした。

 めでたしめでたし。


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