第11話 女子会スタート
――前回までのあらすじ――
憧れの先輩、北越谷から突然の誘いを受けた南栗橋。
スカートとの死闘をなんとか制し、出発。
たどり着いた先はなんと、資本主義世界の勝ち組共が巣を成すタワーマンション!
困惑しながらもエレベーターに乗り、北越谷の部屋へと向かう。
果たして南栗橋はどうなってしまうのか……
、――南栗橋、33階へ。334号室のチャイムを鳴らす――
「いらっしゃい綾乃ちゃん、来てくれてありがとう」
「こ、こちらこそお招きありがとうございます!」
うわ~私服姿も相変わらず綺麗だ。
しかもいい匂いするし、ほんと女子力の塊だなあ。
「ささ、入って入って」
「おじゃまします」
廊下を歩き、リビングに通される。
初めて上がった北越谷さんのおうちは、まるで別世界だった。
部屋の隅々まで掃除が行き届いていて誇り1つ落ちてないし。
花や絵画が飾ってあるし。
大画面テレビにアレクサまである。いいなあ。
「……なんでテレビの横にフライドパスタを置いてるんですか?」
「それアロマだよ」
「え⁉ アロマ⁉」
「うん。食べ物と間違えるなんて、ほんと綾乃ちゃんは面白いなあ」
「あ、あはははは……」
恥ずかしい!!!
てか北越谷さんがフライドパスタなんて食べるわけないじゃん!
居酒屋のハズレお通しでしか見ないよあんなの!
「そんなことより今日は急に呼んじゃってごめんね。このご時世に外を出歩かせることになっちゃった。おもてなししてあげたかったし、それにどうしても綾乃ちゃんに会いたかったから……つい……」
「いいんですよ、呼んでくれて嬉しいです。でも……どうして私?」
「そりゃあ……」
――北越谷、南栗橋の耳元で囁く――
「可愛い綾乃ちゃんと一夜を共に過ごしたかったからだよ」
⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉
「き、北越谷さん⁉⁉⁉」
「なんてね、冗談」
「もう~!!!」
あ、あっぶな~。
なんか今新しい扉を開いちゃうところだった!
「さっ、女子会はじめよ」
「はい! あっ、その前によかったらこれ……」
「わーケンタッキーだ! わざわざ買ってきてくれたの?」
「はい。でもごめんなさい……ファストフードが手土産で……」
ほんとはデパートでも寄って買ってくるつもりだったのに!
時短営業のせいでもう閉店しちゃってたんだよなあ……。
完全な誤算だ。
「ううん嬉しいよ。私ケンタッキー大好きだもん。ありがとう」
「いえいえそんな」
「こりゃ私も精一杯おもてなししなきゃね。お料理用意するから待ってて」
北越谷さんはそう言って、冷蔵庫からカルパッチョとテリーヌ、鍋からアヒージョを盛り付けてテーブルに並べた。
うわぁ……オシャレな料理ばっかりだ……。
「これ、全部北越谷さんが作ったんですか?」
「うんそうだよ」
「す、すごい……」
「意外と簡単なんだよ。あ、そうそう、トマトとモッツァレラチーズでカプレーゼも作ったんだ。今出すね」
カプレーゼってなに⁉
たぶんオシャレな料理なんだろうけど、オシャレすぎてわかんないよお!
こうして食卓には煌びやかで食べ慣れない料理達が並ぶ。
そして肝心のお酒は――
「綾乃ちゃんもワインでいい?」
「あっ、はい」
うわ……高そうなワイン……。
ロマ、ロマネ……なんて読むんだろうこれ?
「私の秘蔵っ子を出しちゃうよ。いつか綾乃ちゃんと飲みたいと思ってたんだ」
「いくらくらいするんですか? このワイン」
「値段言うと『そんなの頂けません!』とか返答されそうだから言わない」
「ええそんなに! 頂けません!」
「ダーメ」
北越谷さんはクスクス笑いながらワインをグラスに注ぐ。
一体いくらのワインなんだ? 気になりすぎる。
それにしても……お部屋もお金かかってるし……北越谷さんって……
「副業とか、してるんですか?」
「え?」
わっ、わっ、わっ、わっ!
疑問が思わず声に出ちゃった!
「ご、ごめんなさい! 私ってばなんて失礼なことを! 私と同じ安い給料しか出さないしみったれたクソみたいな会社に勤めているのにどうしてなにもかもが豪華なんだろうと、つい!」
「私にというより会社に失礼な発言だね……ははは……」
北越谷さんは苦笑い。そして続ける。
「副業はしてないよ。綾乃ちゃんは事務職だから知らないと思うけど、うちの営業職は歩合給の割合が多いんだ。成績によってお給料がかなり変わってくるんだよ」
あっ、そういや北越谷さんは営業部のスーパーエースだった!
「ありがたいことにいい成績を出させて頂いてるからお給料の方も、ね。そしてこれといった趣味もないから衣食住にお金を掛けてるんだ。おかげで快適だよ。こうやって大好きな後輩を気兼ねなくおもてなしできるし」
「大好きな後輩、ですか……」
「うん。綾乃ちゃんのこと、大好き」
うっわー照れる!
めっちゃ照れる!
恥ずかしいよお!
一方の北越谷さんは大人の余裕でクスクス笑っている。
からかわれている、だけだよね?
「さ、続きのお話は食べながらしよ」
「あっ、はい!」
こうして女子力が違いすぎる2人による女子会がスタートした!




