お父様
そして、私はエルミのお父さんの元へ連れて行かれた。
「お父様、私この子を飼いたいのです」
「ふむ…狐とは珍しいな…」
「・・・」
エルミのお父さんは私をジーっと見つめてくる、とても頑固そうな人です。
人の言葉を喋る狐(そもそも動物種が喋ることが異常)とバレては大変なことになるかもしれないので、私は黙っている。
「私は狐を何度か見たことはあるが…全く人懐っこい獣ではなかったから珍しい…」
「それで…この子をお飼いしてもよろしいでしょうか…お父様」
「うーん…少し心配だが…まぁよかろう、獣の扱いにはお前が一番手慣れてるはずだからな」
「ありがとうございます!お父様!」
(ふぅ…これで大丈夫かな?)
「だが、一応しっかり見させてほしい、こっちへ連れて来てくれ」
(まだ終わりじゃなかった…)
「はい、お父様」
そう言って、私はエルミのお父様の元まで連れて行かれました。目の前までくると私のことを持ち上げて目の前で「じーっ」とされて、冷や汗を流しそうです…ただ、同時に喜びのような変な気持ちも出てきました…なんでしょう?
しばらく私を見つめた後、無言でエルミに渡されました。
「今までの動物種の中で一番触り心地が良かったかもしれん…」
そう言われて少しビックリでした…雰囲気的にそんなこと言わなそうに見えたので
「そうでしょう!お父様!この子の毛並みは素晴らしいでしょう!」
エルミはお父さんに毛並みのことを褒められたのが嬉しかったのか、誇らしそうにそう言っていた。そのおかげで少し私は恥ずかしかった。
「ちゃんと世話するんだぞ、エルミ」
「もちろんよ!お父様!」
最後は父娘の笑顔の後に私が「コ〜ン」と鳴いて終わりました。
〜side エステルグ・シェリティア〜
あの毛並みは本当に良かった…あれ程触り心地の良い毛並みを持っているならもし殺すことになった時、高値で売ることができるだろう…しかし、何か異様な気配を感じたが何だったのか…一応注意しておこう。
「それにしても、相変わらずエルミは動物種が好きだなぁ…昔から怪我した動物種を連れて来ては治療と世話をして野生に還していたが…今回は飼ってもいいかと、聞いてきたから少し驚いた…」
そう呟きながら、止まっていた書類を書き始めた。