7 兄妹と初めての転職
二人が『転職所長』のもとへたどり着く。
「こんにちは!転職所長さん」
「こんにちはお二方。ここでは転職を行うことができますぞ。どれ、あなた方の目の前のからなりたいジョブを選んでみるがよい。」
老人がそういうと、ヴォワンッという音とともに目の前に様々なアバターが浮かび上がり、それぞれをタップするとジョブの説明が現れた。
《一次職》
【ファイター】-現在のジョブ-
物理系一次職。接近戦を得意とする。
多彩なこうげきスキルを持ち、高い体力と合わせて敵を圧倒する。
〔取得条件〕なし
【メイジ】
魔法系一次職。遠距離からの魔法攻撃を得意とする。
攻撃魔法だけでなく、デバフスキルも取得できる。
〔取得条件〕なし
【プリースト】
補助系一次職。神の加護をパーティーに分け与える職業。
強力なバフ・回復スキルを取得できる。
〔取得条件〕なし
【シーフ】
特殊系一次職。手数の多さで敵を翻弄する。
アイテムを盗み取るなど、独特なスキルも取得できる。
〔取得条件〕なし
《二次職》
【ソードカイザー】
物理系二次職。数多の戦場を駆け抜け、剣術を極めた大剣豪。
その圧倒的火力で敵を薙ぎ払う。
〔取得条件〕ファイターのLv.を50にする。
【グランマギアー】
魔法系二次職。破壊的魔力で対峙するモノすべてを殲滅する大魔法使い。
複数の魔法を操るその力は絶大。
〔取得条件〕メイジのLv.を50にする。
【ホーリーセイバー】
補助系二次職。圧倒的防御力を誇る選ばれし聖騎士。
聖なる光を解き放つことで周りを一掃し、かつ、味方を支援する。
〔取得条件〕プリーストのLv.を50にする。
【アベンジャー】
特殊系二次職。暗殺を専門とする独特なジョブ。
遠距離物理攻撃や影隠れなど、ほかにはないスキルで敵の命を一瞬で奪う。
〔取得条件〕シーフのLv.を50にする。
「う~ん。俺は無難に【ソードカイザー】を目指すとするかな。」
ふと横を見ると、アヤがとあるジョブに目をキラキラさせていた。その目の先には、ちょこんとピンク色のカウボーイハットをのせ、手には何本ものナイフやハンドガンを備えた金髪の女の子のアバターがあった。
「見て、お兄ちゃん!この【アベンジャー】のアバターとってもかわいいと思わない?私決めた!【アベンジャー】になる!」
どうやらアヤは、説明を全く読まず見た目だけで選んでしまったらしい。
「ちゃんと説明文は読んだのか?」
「かわいいんだからいいんだもん!」
その一点張りだった。
「…まあそれならいっか。なになに…【ソードカイザー】になるには【ファイター】のLv.を50にしなきゃいけないのか。」
「私は、【シーフ】のLv.を上げなきゃいけないんだね。なんか シーフ って悪者そうでなんか嫌だけど【アベンジャー】になるために必要なら仕方ないね!」
もうアヤは【アベンジャー】のことで頭がいっぱいらしい。
「転職所長さん、私【シーフ】に転職します!」
「よし。転職した後はすべての装備が初期状態になるがそれでもかまわんかの?」
「まだ初期装備のままだから大丈夫です!」
「それじゃ始めるぞ。」
そういうと老人は真剣な面持ちで持っている杖を天高く突き上げた。するとアヤの体が光に包まれながらふわふわと宙に舞い上がっていく。
「ふんっ!」
老人が思い切り杖を振り下ろすと、光の中からアヤが凄まじい勢いで地上に向かって降下してきた。
ドゴオオオオオオオォォォッッ
神聖な神殿には似合わないとてつもない衝撃と音とともに着地した。
「おお、成功したの~。」
「失敗することもあるのか。」
「いや、ゲームじゃからそんなことはないぞい!わっはっはっは!」
「それ言っちゃうんかい!」
そういえばこのゲームは最新のAI技術をつかって、NPCがプレイヤーの発言を読み取り、適切な言動ができるように設計されているらしい。
「それはそうと、私【シーフ】に転職できたんだ!がんばるぞ~」
「シーフは様々な特殊スキルを使いながら相手を翻弄し、圧倒するジョブじゃ。最初は慣れるのに時間がかかるかもしれんが、頑張ればきっと強くなれるぞ。」
「それじゃ装備と整えてレベリングしに行くとするか!」
「ありがとう!転職所長さん!」
そういってウィステリアの街に戻っていくのだった。