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天使


天使が口を開いた。


「おはようございます。お姉様。」


ぎゃぁぁぁぁぁっ!!!


この子が私をお姉様って呼んだ!!!


声まで天使とかもう無理。好みどストライクすぎて辛い。


「おはようございます。えっと…」


挨拶を返したはいいけどこの天使の名前がわからない。


だけど取り敢えず連れて帰って閉じ込めちゃいたいぐらいに可愛い!!!!


その可愛さに思わずガン見していたら目をそらされた。


「お父様、お母様、本当にこの人お姉様ですか?」


え?


「…確かにおかしいな。いつもなら遅れて来ても何も言わない上に挨拶も帰ってこないというのに。」


は?


「私のことを初めてお母様と呼んでくださいましたわ!ですが本当にこの方はハリエット様でしょうか?」


へ?


「いつも僕の顔を見たら睨んでくるのに僕の顔を見て笑ってる…。しかもお姉様と言って反応してくれるなんて…。」


?????!


今までの私何してくれちゃってんの!!!?


こんな可愛い弟を睨んだ挙句お姉様と呼ばせない上にこんなに綺麗な人をお母様と呼ばないなんて!!!しかも挨拶もしないですって?!!


こちらの世界の家族に今までの私の行動がどのようなものだったのかを間接的に聞かされ唖然とした。


そんな私を知ってか知らずかお母様はズレたことを言い出した


「もしかして記憶喪失…。ハリエット様私の名前は分かりますか?」


困った。全然知らない。


「わからないです。」


そう答えるとお母様が綺麗な顔を悲しそうに伏せた。


「まさか本当に…!!ハリエット僕の名前はわかるかい?」


次にお父様が質問してきた。


お母様を知らないのだから知るわけが無い。


「分かりません…」


明らかに悲しんでいる。なんだか申し訳なくなって来た。


謝った方がいいか。


「ごめんなさい。」


これで少しは落ち着くかなと思った私が浅はかだった。皆顔面蒼白で私を見ている。


「誰かっ国中の腕の良い医師を集めてくれっ!!!」


「かしこまりましたっ!!!」


執事らしき人が扉から急いで出ていった。


…………。


「これは恐らく記憶喪失だと思われます。家族や友人、自分に対する記憶が全てと言っていいほど失われています。」


あの後すぐに駆けつけてきたたくさんの医師に診察された私はお父様方と一緒に話を聞いていた。


記憶喪失な訳ではなく別人なのだから当たり前、と言いたいところだが言えるわけが無い。


隣で両親が号泣しているのだから…


今まで散々酷い態度をとってきた(聞いた話だと)私の記憶が無くなっただけでこんなにも泣けるものなのか?


寧ろ喜んでもいいと思うんだけど。


と、思い呆れ半分と尊敬という複雑な思いで2人の話を聞いていたら尊敬という言葉が私の頭から消えた。


「まさか記憶をなくしただけでこんなに礼儀正しい子になるとは…!感謝してもしきれない!嗚呼神様ありがとうございます…!」


「ハリエット様に母と呼ばれる日が来るとは…!ありがとうございます…!」


てっきり悲しんで泣いているのかと思っていたらすごく喜んでいた。


これはこれで複雑な気持ちになる。


なんというか申し訳ない。


まだ9歳の子供の中に29歳の女が入ってここまで喜ばれるなんてハリエットは一体今まで何をしてきたんだ…


自分が何かをした訳では無いのにジワジワと罪悪感が…


すると今まで黙って話を聞いていた天使(弟、名前はまだ知らない)が突然抱きついてきた。


顔では平静を装いながらも心の中では理性と葛藤していた。


ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!


可愛い天使!!!このまま攫いたい!!!


…いえダメよ。我慢するのよハリエット。貴方はこの子のお姉ちゃんです。攫ってはお姉ちゃんと呼んで貰えなくなってしまうわ。


それはダメだわ!我慢しなくては!


でも抱きしめ返すくらいなら…何も問題ないわっ!


という結果に陥るまでの時間僅か0,1秒。


抱きついてきた天使を私はしっかり受け止めた。


この天使凄くいい匂いがする!しかも華奢!私より軽いんじゃないかしら!


すると甘えるように上目遣いで聞いてきた。


「あの、これからはお姉様って呼んでもいいんですか?」


蜂蜜色の瞳の天使が上目遣いとか破壊力がえげつないです…


私はハリエットになって幸せです!!ありがとう神様!!!


「ええ、もちろん!!!これからは沢山一緒に遊びましょう!でもその前に申し訳ないのだけど皆で自己紹介をして下さらないかしら?」


このお願いが1番申し訳なかった。


私の為だけに自己紹介とか申し訳なさすぎる!!!


てっきり呆れられると思ったらそんなことは全然無かった。


「お姉様のお願いだったら嫌だって言った人も僕がさせるよ!」


なんていい子なんでしょう!


今まで酷いことをしてきた姉にここまで親切にしてくれるなんて…!


感謝を込めて頭を優しく撫でると弟は嬉しそうに微笑んだ。


可愛い。


するりと腕から抜けた弟は笑顔で自己紹介を始めた。


「それじゃあ僕からね!僕の名前はシリル・ヴィサージュです!好きな食べ物はショートケーキです!よろしくお願いします!」


あ、可愛い。すごく可愛い。うん。可愛い。


「シリルって言うのね!こちらこそよろしく!」


シリルが自己紹介を終えるとお父様お母様と続き最後には100名を超えるもの達がハリエットにたいし自己紹介をした。


そこである事に気付いた。


ハリエットの記憶力が恐ろしい程に良い…


たった1度自己紹介を聞いただけなのにどの人がどのような顔でどんな風に自己紹介をしたのかまで正確に思い出せるのだ。


私は何も意識していないのに。


でもその時はすごく記憶力が良いのねぇぐらいにしか私は思わなかった。





いかにこの体がチートなのかを知るのはまだ少し先の話。




ハリエット母、マリア・ヴィサージュ

ハリエット父、カインゼル・ヴィサージュ です。

読んでいただきありがとうございます。

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