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始まりは……

 少年が失ったのは、家族だった。


 他愛ない、どこにでもある話だ。盗賊が村にやってきて、多くを殺し、多くを奪った。


 少年が生き残ったのは、運が良かっただけに過ぎない。父も母も姉も妹も、あっさりと命を奪われた。


 少年も奴隷となり、まともな人生を過ごしてこなかった。


 奴隷商の気まぐれで剣闘士になり、その剣の腕前で逃げおおせたのも、また運だ。


 ダンジョンの噂、言い伝えを聞いたのは逃げる途中の酒場だったろうか。


「死んだ人間を生き返らせる魔導具があるらしい」


 酒の席での、どこにでもありそうな小話だった。


 そんな話でも、少年は信じた。奪われたものを、取り返したかった。


 なまくらな剣一本で、伝説が眠るというダンジョンへと挑んだ。


 苦しんで苦しんで苦しみぬいて、ダンジョンを進んだ。


 そして、ダンジョンを進んだと思った先に。


 これ以上ないくらいの星空に出会った。

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