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宇宙人につかまった

宇宙人につかまった

僕は宇宙人に捕まってしまった。


手術台みたいなところに胴体と手首足首を固定され、全く動くことが出来ない。


「あのー、今から僕をどうするんですか?」


「ワレワレハ、イマカラキミヲカイボウシテ、チキュウジンノカラダノシクミヲシラベマス」

(我々は、今から君の身体を解剖して、地球人の身体の仕組みを調べます)


「うわぁ。それは大変なことになったぞ」


僕は天を仰いだ。


仰向けで台の上に寝転がっているので、さっきから仰ぎっぱなしではあるけれども。


ここは、宇宙人相手に一発かましてやろうと決意した。



「あのー、今から僕をどうするんですか?」


「...?サッキモイッタガ、イマカラキミヲカイボウシテ、チキュウジンノカラダノシクミヲシラベルヨ」

(...?さっきも言ったが、今から君を解剖して、地球人の身体の仕組みを調べるよ)


「うわー。大変なことになったぞ」


「アレ、ナンデオナジクダリヲニカイヤッタノ?」

(あれ、何で同じくだりを二回やったの?)


「あー。宇宙人だから知らないと思うけどこれは"天丼"といって、日本人がよく使う会話の技法なんだよ」


「"テンドン"ハシッテイル。ワレワレハタクサンチョウサヲシタカラネ。デモイマジャナクナイ?ソレ」

("天丼"は知っている。我々は沢山調査をしたからね。でも今じゃなくない?それ)


「いやいや、それは君たちの調査不足という他ないね。僕は関西人という特殊な人種だから、常に面白いことを考えて実践している訳だよ。そこを分かってないんだよなぁ......まぁ、所詮宇宙人だな」


「...オモシロクナカッタヨ」

(...面白くなかったよ)


「......あ?」


「マサカイマノデ、ワライヲトロウトシテイタノ?ハハハ、チキュウジンハワライノセンスガゼロデスネ」

(まさか今ので、笑いを取ろうとしていたの?ははは、地球人は笑いのセンスがゼロですね)


宇宙人達はぷーくすくすと僕の事を笑った。


僕は恥ずかしさと怒りで全身が燃えたぎった。


このぼくが......面白くなかっただと。


僕は自分が置かれた状況を理解し切れていなかったらしい。


僕は首だけを使って、周りを見渡した。


周りには宇宙人達しかいなかった。他に地球人は見当たらない。


ということは.......


今、僕は全人類を代表して、この台の上で寝ているんだ!!


......僕が面白くないということは、全地球人が面白くないということになる。


僕は悔しさに唇を噛み締めた。


確かにさっきの"天丼"は宇宙人をお笑い素人と舐めてかかっていた。


考えてみれば、全然面白くもなんともない。


僕は両拳を強く握り、唇を噛みしめる。


もう失敗は......許されない.......




「今のは全然本気を出していなかった」


僕の声は震えていた。


「ヘッ......?」

(へっ......?)


宇宙人達は驚愕している。


「今のは本気ではなかったと言っているのだーーー!」


「......!!」

(......!!)


「もう一度だ!今度は俺の本気を貴様等に見せてやるって言ってるんだよ!!」


「オモシロイデスネ......」

(面白いですね......)


宇宙人はニヤリと笑った。


「オツギハナニヲミセテクレルトイウノデスカ?」

(お次は何を見せてくれると言うのですか?)


「1時間くれ!!」


「......!?」

(......!?)


「一時間で、この地球(ほし)で最も面白いものをてめえらに見せてやるって言ってんだよぉ!!」


僕は精一杯の啖呵を切った。果たして僕に出来るのか......?


いや、出来るのか......じゃない。やるんだ!!


宇宙人達は宇宙語で何やら相談を始めた。


やがて、僕を拘束していた拘束具が外れた。


「ワカリマシタ。キミニイチジカンノユウヨヲアタエマショウ」

(分かりました。君に一時間の猶予を与えましょう)


「もう一つお願いがある!!」


「.....!?!?」

(......!?!?)


「僕を地球に降ろしてくれ!!」


「......!?ショウキデスカ、アナタハ!?」

(......!?正気ですか、貴方は!?)


宇宙人達に緊張が走っているのが分かる。

ふふふ、何を勘違いしている......と僕は思った


「ふふふ、何を勘違いしている......」

実際に言ってもみた


「僕がおまえらを笑わせる為にどうしても必要なものが地上にある!そいつがねぇと最高の笑いを貴様等に届けらんねぇだろうがよ!!」


「イッタイ、ナニヲモッテクルツモリデスカ?」

(一体、何を持ってくるつもりですか?)


宇宙人達は困惑した表情で尋ねた。


「それは......言えねぇ!!」


「......!?!?!?」


「だって言ってしまったら、笑えねぇだろうがよ!!」


「タシカニ......!!」

(確かに......!!)


宇宙人は納得した。



―――――――――――



宇宙人達は僕を地上に降ろした。


「キタイシテマタセテモライマスヨ。モシ、マンガイチニモイチジカンイナイにモドラナケレ......」

(期待して待たせてもらいますよ。もし、万が一にも一時間以内に戻らなけれ.......)


宇宙人が話すのを、僕は手を前に差し出して辞めさせた。


「おいおい。そんなくだらない話をしてる間に、一時間経っちまうぜ......」

僕は時計を着けていないが、右手首を見た。


「じゃあ行ってくる。お前ら首を長くして待ってるんだな!」


僕は走って宇宙人達から離れていった。



―――――――――



.....一時間が経ったが捕まえた地球人は戻ってこなかった

「隊長。我々は彼に騙されたのでしょうか?」

部下が私に尋ねた。

「......もう少しだけ待つことにしよう」

私は部下に告げる。

あの男の真っすぐな眼差し...偽物だったとは思えないが...


2時間が過ぎ、3時間が過ぎる頃には宇宙船内では諦めムードが漂っていた。


「隊長。もうそろそろ次の任務に移らなければ......」


私は思わず重たい息を一つ漏らした。


「......そうだな。それでは出発するとしようか」


宇宙船は次の任務に移るため、この地球という惑星を離れようとしていた。


(彼は我々から逃げる為にあんな嘘をついたのか......)


そんなもやもやした気持ちを抱えたまま宇宙人達は地球を離れた。



―――――――――



地球を離れてすぐ、地球で活動中の別部隊から通信が入った。


「どうかしたのか?」


「いや、なんかさっき捕まえた地球人がお前らに通信しろってうるさいからよ.....ほら、繋げたぞ。」


画面に、拘束された地球人が映し出される。


彼がニヤニヤと笑って、こちらを見ていた。



「あのー、今から僕をどうするんですか?」


彼が勝ち誇ったように言ったのを見て、


宇宙人達は少しだけ笑った。











宇宙人につかまった -終-










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