第ニ話 Youtuberって何?
あの後、瑠璃は、麗子の暮らす学生寮の部屋に連行された。麗子のパソコンには、Youtubeの画面が写っている。
「この動画の中の人のように、売ってる商品を使ってみた感想だったり、顏芸だったり、あるいはボイスパーカッションだったり、歌だったり、ゲームをプレイする様子だったり、ダンスだったり、手品だったり、化粧だったり。いろんなものの動画を投稿する人がいるの。そして、その動画をいろんな人が見るの。
その動画の下の方に、宣伝のリンクがくっついているのが分かるかしら?特殊な設定をしていると、これを視聴者がクリックした時に、動画を投稿した人にも広告費の一部が収入として入るのですわ。
そして、その収入で暮らしている、私たちのような人の事を、Youtuberというのですわ。」
「へ、へぇ。」
「一般に、1回再生されると、Youtubeなら1円、ニコニコ動画なら0.3円ほどの収入になると言われているわ。まあ、広告がクリックされる頻度にもよるのですけれど。まあ、私のように企業と専属契約を結んで大金を稼いでいる人もいるのだけれど、それがなくてもそれなりの収入ね。」
「はぁ。」
「で、私、今のところ、魔女ロレーヌという名前で活動して、なかなかの人気Youtuberになっているわ。でも、これからもっと活躍するために、コラボ動画を作る仲間が欲しいと思ったの。ヒロインの貴女なら、人気Youtuberになる素質はありますしね!」
この「ヒロイン」という発言から察する通り、麗子も転生者であった。そして、麗子は転生者としての前世の知識を、存分に活用して、人気Youtuberの地位を築いたのだった。
「あなたに、10万円を貸してあげるわ。利子はいりませんわよ。その代り、このお金を、1年以内に、広告収入で返しきってみなさい。安心なさい、サポートは致しますわ。」
Youtuberという職業すらこの日初めて知った瑠璃に、やっていく自信はなかった。でも、やると答えるしかなかった。
「まずは、あなた、Youtubeとかニコニコ動画のアカウントは持ってますの?」
「持ってないです……。」
「じゃあ、まずアカウントを作らないとですわね。あ、まずは、Gmailかなんかでメールアドレスを作った方がいいわ。」
「へ、へぇ。」
「なにかアルファベットと数字を交えた8ケタ以上のパスワードを考えて、ここに記すのです。」
「は、はい。えーと、考えました。」
「今後このパスワードを他のサービスでも使っていくから、これだけは忘れないようにメモしておきなさい。」
本当は、同じパスワードを複数のサービスで使いまわすのはよくないのだが、さすがの麗子といえども、そこまでは気を使っていなかった。使いまわしが気になるならば以下のIPAのサイトを参考にするとよい。
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/mgdayori20160803.html
そうこうしているうちに、Youtubeやニコニコ動画のアカウントを取得した。
「そういえば、夢原瑠璃は歌が非常にうまい設定でしたわね?ちょっと歌ってごらんなさいな。」
「は、はい。何を歌えば……。」
「何でもいいわ。」
瑠璃は「旅立ちの日に」を朗々と歌い上げた。
近年の音楽の教科書に大体乗っていて、卒業式で必ずのように歌われるアレである。
「うーん、曲選はともかく、歌唱力はまちがいないわね。ただ、ちょっと歌い手っぽくない声質なのよね……。もうちょっとかわいい感じの声で歌えるかしら?」
「可愛い声ですか……。」
「そう。アニメのEDとかでよく声優が歌っているような感じですわね。」
「うーん、アニメあまり見ないからよく分からない……。」
「じゃあ、そうね。この動画の人みたいな声がいいわね。」
その動画は、この当時人気だった歌い手の上げた「歌ってみた」動画の一つだった。
「ああ、そういう感じですか。できるかな。」
そう言って瑠璃は再び歌いだした。自信なさげではあるが、萌え声で確かに歌えていた。
「いいわね。そんな感じ。まあ実力は高いに越したことは無いから、私の驕りでボイストレーニングスクールには通ってもらうつもりだけれど、さっそく今からでも歌い手デビューできるんじゃないかしら。」
「歌い手?いやー、私なんかが歌手にはなれないって。」
「いんや、歌い手と歌手は別のものよ?」
「え?」
なろう読者は若い人が多いから、多くの読者は歌い手とは何かくらいわかっているだろうが、瑠璃のために一応説明しておくと、
「主に『ニコニコ動画』というサイトに、『ボーカロイド』というソフトで作られた曲がアップロードされているの。機械が歌ってくれるから、歌が下手な人でも気軽に作れるということで、多くの人がアップロードして、名曲も数多く誕生したわ。でも、人工的な歌声が気になるということで、その曲を『歌ってみた』動画が投稿されだしたの。そういう動画を上げている人が、『歌い手』と呼ばれているわ。」
「ボーカロイドってあれ?初歌ミカとかそういうやつ?」
「そうそれそれ。聞いたことある?」
「ほとんどないです……。」
瑠璃は前世では聞いていた時期もあったのだが、今世では一度も聞いていなかった。
そうね、ちょっと準備があるから、ちょっとそこで待ってて。あ、昨日の残りのカレーがあるから、食べててよくってよ。」
「ほんと?」
そのカレーは、麗子が作ったものだ。黒鷺家は麗子に十分な仕送りをしているので、本当は自炊する必要はあまりないのだが、それでも自炊しているのは、料理動画の投稿を目指しているからだ。実は麗子は料理はさほどうまいわけではなく、料理動画計画は挫折しかかっていたのだが、両親が不在の時に料理を担当することも多かった瑠璃とタッグを組むことで、料理動画計画は加速していくことになる……。のだが、それは後の話。
さて、カレーを作っている間に、麗子は、音楽プレイヤーにこの日アップされたボーカロイド楽曲を取り込んでいた。
「さて、腹も満たされたところで、瑠璃、あなたにこの音楽プレイヤーを貸しますわ。壊さないでくださいましね。それで、この曲を明日までに耳コピしてくること!明日の放課後、早速この曲を歌ってもらいますわ。」
「は、はぁ。分かりました。」
麗子は、この日アップされたばかりのこの曲の『歌ってみた』動画を、瑠璃に投稿させるつもりだった。この曲は、前世でもこの日に発表された曲で、前世でも大ヒットしていた。この曲の歌ってみたを、投稿日翌日にアップすることができれば、再生回数を集めやすいのは確かだろう。
実際、初期の麗子は、いち早く歌ってみたをアップする手法で人気を稼いできた。
「では、その貸した10万で、しっかりお腹を満たして、ちゃんと寝なさいね。耳コピは宿題だからちゃんとやってくること。よくって?」
「はい、ありがとうございます!えっと、まだよく分かんないけど、しっかり働きますんで!」
さて、瑠璃を家に帰したところで、瑠璃はここまでの軌跡に思いをはせていた。
いろいろと方針変更があって、3話のストックが無駄になってしまって、2話のボリュームアップに時間を取られていたらいきなりストックがもうない!
お盆にどれだけ書けるか……。とりあえず1章完結を目指すか……。(どこまでが一章かまだ決めてない)




