第一話 輪廻転生
初投稿となります
気がつけば暗い場所に俺はいた。
一寸先も見えないとはこのことだ。
混乱したが、とにかく思いつく限りの過去を思い出してみた。
俺の名前は飯田義明。しがないサラリーマンで28歳。
安月給ながらもこれと言った不自由なく生きてきた。
久々の休日にだからってコーヒーでも豆から挽いたろかい!
なんて思いながらコンロに火を着けたところまでは覚えている。
しかし、そこからの記憶がなかった。
もしかしてガス漏れしてて爆発したんじゃ…。
でも焦げた匂いもしないしなー。
第一、爆発したら俺死んじゃうもんな…。
え?もしかして俺死んでるの!?
じゃあここは死後の世界なの!?
アワアワしてると真っ暗な世界に少しずつ光が差し込んできた。
目の前に覗き込む赤い大きなドラゴンがいた。
「キャアアアアアアアアアアッッ!!?」
目があった瞬間に、突然目の前のドラゴンが発狂した。
5メートルはある大きな羽を狂ったように振りまわし、
突風が吹き荒れる。
「どうしたシルフィー!?」
大きな角振り回し慌てた様子で、赤いドラゴンよりもひと回り大きな青のドラゴンがやってきた。
そして俺を見るなり
「うわぁああああああああああっ!!?」
赤いドラゴンと同じように発狂した。
俺はというとそれどころじゃない。
突然でかいドラゴンに囲まれて、しかも俺を見るなり正気じゃない。
さっきまで普通の生活をしていた俺にとって
それは衝撃的な状況だった。
(何だこれは!どうなっている!?とりあえず逃げないと!!)
逃げようとするも、身体が思うように動かない。
というよりも違和感があった。
まるで退化したように起き上がることも出来ず。
目線は低く、非力であり
ふと手をみると、まるで赤ん坊の手だった。
いや、赤ん坊そのものだった。
(うそだろお!??どうなっているんだ!?)
周りを見れば卵の殻だった。
(つまり…俺は死んで生まれ変わったのか?)
(でもなんで卵!?)
俺が思考の海を遭難していると
暴れていたドラゴンが徐々に落ち着いていた。
「……やっぱり許されないことだったんだよシルフィー」
「私達は呪われているんだ。羽もない鱗もないこんなものが生まれるだなんて…」
青のドラゴンは俺を見てそう吐き捨てるようにそう言った。
シルフィーと呼ばれたドラゴンは、泣きながら
「ジル、そんなこと言わないで!」
「私達は呪われてなんかいないわ!羽や鱗がなくたってこの子は私がお腹をいためて産んだ子よ!」
シルフィーはジルと呼んだドラゴンと俺との間に庇うように立つ。
「シルフィーそこをどけ!吾輩は認めない!」
「その奇妙な生き物が我が子だと!!まるで人間ではないか!どけ!その気味の悪い生き物を処理する!!」
ジルはシルフィーを跳ね除け俺の前に立ち、今にも噛み殺そうという恐ろしい形相で俺を睨みつけた。
(生まれ変わってもすぐ死ぬのか…。)
しかしこの状況だと、どう考えても助からないだろう。
死を覚悟した為か、一周回って冷静になっていた。
(しかし、このドラゴン達が父親と母親なのか。)
確かに産んだ我が子が、自分たちとは違う生き物ならば気味が悪いだろう。
目を瞑ろう。1度は死んだ身。次はもっと長生きしたいな…。
しかし、待てど暮らせど最後の瞬間は訪れなかった。
恐る恐る目を開けてみる。
すると、あれだけ恐ろしい形相だったドラゴンが涙を流していた。
「やはり…、やはり吾輩には出来ない…。見ろよシルフィー、形は違えどこの子はお前と同じ赤い色の毛をしている。」
「ジル…。よく見てこの子の目はあなたと同じ青色の瞳よ。」
「あぁ…。間違いなく吾輩の子だっ…」
2匹のドラゴンが俺を見ながら涙していた。
シルフィーが優しく俺を持ち上げて
「お前は今日から私達の子よ…。名前はダリュー。」
「ダリュー・ドラゴニスよ。」
こうして俺はドラゴンになった。