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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第2章 リゼちゃんが大好きは子は、ぼんやりマシュマロ男子?
7/15

ブーくんを調べる

「みなさ~ん、これから少しの間、先生といっしょに、ほかの星から来た先生がみなさんを教えてくれることになりました~。アリサ先生と、マギー先生です~」

「みなさん、よろしくおねがいします」

「よろしくねー」

 アチャ先生につづいて、あたしとアリサも生徒たちにあいさつする。


「人間だー」

「リゼちゃんとおなじだー」

 いろいろな色にかがやくアートマンたちが、ざわざわする。

 みんな、このクラスの生徒たちだ。


「アリサ先生は地球人で、機械のあつかいがとても得意です」

 アチャ先生にしょうかいされて、アリサがおじぎする。

「マギー先生は、エルフィン人の魔法使いです」

 あたしもおじぎする。


「2人とも、いつもは宇宙を旅していて、いろいろなことを知っています。だからみなさんもいろいろなことを教えてもらいましょう」

「よろしくー」

「よろしくお願いします、先生」

 クラスの子たちは、いっせいにあいさつしてくれた。

 あたしもニコニコ手をふりながら、教室を見わたす。


 教室の後ろの大理石のカベには、黒板のかわりのモニターがかかっていて、みんなへのお知らせがうつっている。

 モニターの横には、クラスのみんなが書いた習字がならんでいる。

 グラスファイバーの紙に書かれたカラフルな文字は、アートマンの文字で書かれているから何が書いてあるのかはわからない。

 でも、元気いっぱいの字だなっていうのは、なんとなくわかる。


 モニターの下には、あざやかな宝石でかざられた銀色のロッカーが置いてある。

 みんながすわっているイスとつくえも、すわっている子と同じ色の宝石だ。


 そんなカラフルな教室の後ろのほうの席に、金髪で青い目の女の子がいた。

 そのとなりの席には、まん丸に太った金色のアートマンもいる。

 リゼちゃんとブーくんだ。


 2人がちゃんといたのをたしかめて、となりのアリサにウィンクする。

 2人のクラスを受け持てるように、アリサが先生にお願いしてくれたのだ。


 そして、ハッと気づいた。

 2人からちょっとはなれた席に、黒いアートマンの子がいる。

 水色の子と、むらさき色の子もいる。

 どうやら、ブーくんにイジワルをしていた3人組も、同じクラスみたい。


 そしてホームルームが終わって、体育の時間。


「は~い、長くなれる子は長くなって~」

 のっぽの子が、両手を上にピンとのばす。

 すると宝石でできた手足や体が、ガチャ、ガチャ、とのびる。

 そして天までとどくくらいの柱になった。


 ほかにも、せなかがカチャッと開いてトンガリぼうしみたい頭にかぶる子や、頭や手や足だけをビロビローンとのばす子もいる。


 体育の時間は、ダンスのレッスンだった。


 あたしとアリサはジャージを着て、アチャ先生が子どもたちにダンスを教えるのを見ている。


 アートマンは飛行機に変形して空が飛べる。

 だから、変形がしやすいように体をやわらかくするために、ダンスをするのだ。


 ひとりひとり変形できるものはちがうから、それぞれにあわせたダンスをする。

 長くのびる子は、のびるダンスをする。

 手足を広げてはねにする子は、広がるダンスをする。


 ガチャ、ガチャ、カチャッ、カチャッ、ビロビローン。


 人間のリゼちゃんは変形できないから、たいそう服にスパッツをはいて、ラジオたいそうをしている。

 ラジオたいそうは地球から伝わったダンスだ。

 これを毎日すると、体のいろいろな部分がきたえられるらしい。


 そしてブーくんはというと……、


「わわっ」

 コロン。ころんでいた。


 となりで大きくうでを回す運動をしていたリゼちゃんが、たおれてきたブーくんをエイッておし返す。


 でもブーくんは、またすぐにころぶ。


 まん丸なブーくんは、丸っこい手足をバタバタさせてダンスをおどろうとする。

 でも、すぐにころんで、リゼちゃんにおし返してもらっている。

 リゼちゃんは、どんな運動をしながらでもブーくんをおし返している。


「リゼちゃんって、けっこう器用だね」

 でも、何回おし返しても、ブーくんはすぐにころんでしまう。

 そのたびにリゼちゃんがおし返す。

 なんだか、2人でそういうダンスをおどっているみたいだ。


 そんな2人を、黒いオニキスのニキちゃんがじーっと見ていた。

 そして、おもしろくなさそうにプイッとそっぽをむいた。


 そしてダンスのレッスンが終わった休み時間。


「ニキちゃーん、ボ、ボクのふでばこ、かえしてよー」

「べーっだ! 返してほしかったら、ここまで来なさい!」

「来るのです!」

「来るのですぅー」

「ニキ! サラ! ラクシュ! あなたたちは、いつもいつも!!」

 なんだか聞きおぼえのあるやりとりが聞こえて、


 えいっ! きゃいん! きゃいん! きゃいん!


 教室のドアを開けたとたん、3人組がふっとんできた。

 あたしとアリサはあわててよける。


 体が宝石でできたアートマンは服も着がえもいらない。

 けど、あたしとアリサはそうはいかない。

 ジャージから着がえて教室にもどってきたら、先にもどっていたリゼちゃんが3人組のおしりをけっとばしたところだった。


「あの子たち、いつもああなのかな?」

「そうみたいね……」

 あたしとアリサは、ちょっとあきれた顔で5人を見た。


 3人組は、ニキちゃん、サラちゃん、ラクシュちゃんと言うらしい。

 いつもブーくんにイジワルしているみたい。

 そして、リゼちゃんにおしりをけっとばされているようだ。


「どれどれ……あの黒い子が、ダーキニー3701ちゃんね」

「ニキちゃんだね」

 アリサとあたしはクラスの子たちの名ぼを見ながら、かくにんする。


「とくにニキ! もうガマンできませんわ! とっちめてさしあげます!」

 そんなニキちゃんに向かって、リゼちゃんはクリスタルをかまえる。

 あ。魔法を使ってこうげきするつもだ。

 あたしが止めようかどうしようかまよっていると、


「できるもんならやってみなさい!」

 ニキちゃんのオニキスでできたボディが黒く光った。


 ガチャ! ガチャ!


 ニキちゃんは変形して、キツネの形の飛行機になった。

 そのまま黒い光をはなちながら、ろうかをビューンと飛んでいく。


「まちなさい!」

 リゼちゃんもルーン魔法で空を飛んで、おいかける。

「ま、まってリゼちゃーん」

 ブーくんも、のろのろ走っていった。


 水色のサラちゃんと、むらさき色のラクシュちゃんは「イタタ……」と、おしりをさすりながら、3人を見おくっていた。


「ねえ、あなたたち」

 あたしはふと思いついて、2人に話しかけてみた。


「クラスメートにイジワルしたらだめだよ」

「ごめんなさい、マギー先生。ブーくんはいつもあんなだから、ニキちゃんもわたしたちもつい調子にのってしまうのです」

 水色の子が、すまなさそうに言った。


「あいさつがまだでしたね。わたしの名前はサラスヴァティー3657です」

 そう言って、ていねいにおじぎをしてくれた。


 サラちゃんは意外にすなおで、まじめそうだ。

 お話ができそうな子でよかった。


「よろしくね、サラちゃん」

 サラちゃんの人間の女の子みたいな細いボディは、アクアマリンでできている。

 水色にキラキラかがやいていて、すごくキレイだ。

 頭にはおさげみたいなパーツがついていて、ぐるぐるメガネをかけている(メガネをかけているのか、そう見えるパーツなのかはわからないけど)


「でもでもぉー、ブーくんはリゼちゃんといっしょだから、安心なんですぅー」

 むらさき色のラクシュちゃんが、こぶしを口にあてたブリッ子ポーズで言った。


「あっ、ラクシュは、ラクシュミー2869って言うのですー」

「よろしくね、ラクシュちゃん」

 ラクシュちゃんのかわいらしいボディはアメジストだ。

 頭の両横には、ドリルみたいなぐるぐるのツインテールがついている。


「リゼちゃんは魔法も勉強も運動もできるんですぅー。それに、やわらかい人間なのにクラスでいちばん強いんですぅー」

 ラクシュちゃんはニコニコしながら言った。

「リゼちゃんがついているから、ブーくんはだいじょうぶなんですぅー」

「リゼちゃんは、ブーくんをぜったいに見すてないのです」

 サラちゃんも笑顔で言った。

「なのに、わたしたちをけっとばすときも手かげんをしてくれるのです。おシャカさまのように、いい子なのです」

 リゼちゃんは、いつもけっとばしてる子からも好かれているんだ。


「そっか、リゼちゃんってスゴイ子なんだね……」

 リゼちゃんはクラスの人気者で、みんなからたよりにされているらしい。

 それは、とってもいいことだと思う。


 でも、そんなリゼちゃんが好きなブーくんは……。


「ふう、ふう……。走ったらおなかがすいちゃった……」

 ドアをガラリと開けて、入ってきた。

「あ、ブーくん。リゼちゃんたちはどうなったの?」

「よくわからない……。ふ、2人とも速すぎて、ボク、おいてけぼりになっちゃったから、ひとりで帰ってきたんだ」

 そう言って、ブーくんはイスにすわろうとして、ころんだ。


 あたしは、こまった顔でアリサを見た。

 アリサもかたをすくめた。


 それからチャイムがなって、あたしとアリサはみんなに勉強を教えた。


 そして、お昼になって、みんなでお昼ごはんを食べた後、


「よーし! 行くわよ!」

 コートの中で、のっぽの子がボールをなげた。


 コートの外と中で、いろいろな色の子どもたちがキャッキャとはしゃいでいる。

 みんなでドッジボールをしているのだ。


 まん丸なクリスタルでできたボールが、カーブをえがきながら飛んでいく。

 向かう先は、むらさき色のアメジストの女の子だ。


「ラクシュミーの魔法の力で、ボールさんラクシュに当たらないでぇー!」

 ラクシュちゃんのツインテールがひょこひょこ動く。

 すると、ボールはとつぜんいきおいをなくして、ポトリとコートに落ちる。

 アートマンのドッジボールは、魔法を使ってもオッケーなのだ。


「ラクシュちゃんは、【みんなが自分を好きになる魔法】を持っているの~」

 アチャ先生が教えてくれた。

「ラクシュがかわいいから、ボールさんも落ちちゃうんですぅー」

 ラクシュちゃんは、相手のコートに向かってウィンクする。

 クラスの子たちの目がハートになった。


 か、かわいいとボールが落ちるの?

 あたしは顔の横に力を入れて、横に長い耳を動かしてみる。

 それを見て、アリサがクスクス笑った。

 アリサったらヒドイ! でも、


「そんなことしなくっても、マギーはじゅうぶんかわいいわよ」

 そう言って頭をなでてくれた。

 気持ちよくて、うれしくて、思わず耳がヒョコヒョコゆれる。


 一方、コートの中では、ラクシュちゃんがブリっ子しながらボールをなげた。

 ボールはヘロヘロとカーブをえがいて飛んでいく。

 なげるのは得意じゃないみたいだ。


 ヘロヘロすぎて、ほかの子たちも「どうしよう?」って、こまっている。

 そんな中、


「よーし、ボ、ボクがとるぞー」

 太った金色の子がボールを取ろうと走り回っていた。


「ブーくん、がんばりなさい! バシっと取ってしまうのですわ!」

「うん、が、がんばるよリゼちゃん!」

 ブーくんはあいかわらず、のんびり動いていた。


 のろのろ。うろうろ。


 ブーくんは、がんばって手をのばす。

 けど、そっちはボールがぜったいに来ない方向だ。


「……あ」

 ボールはブーくんのとなりに、ポトリとおちた。

 ブーくんはよいしょっとボールをひろう。

 でも、まん丸に太ったブーくんは、コロンところんでリゼちゃんにぶつかった。


「だいじょうぶ!? しっかりしなさいよ、もう!」

「ごめんね、リゼちゃん」

 そんな仲むつまじい2人を、反対側のコートからニキちゃんがにらんでいた。

 それには気づかないブーくんは、


「よーし、サ、サラちゃんに当てちゃうぞー」

 ボールをかまえてキリッとした顔になった。

「ひょっとして、ボールをなげるのには自信があるのかな?」

 ちょっとワクワクしながら見守るあたしとアリサの前で、

「よいしょっ」

 ブーくんはボールをなげた。でも、


「まあ、そんなことだと思ったわ……」

 ブーくんがなげたボールは、ラクシュちゃんに負けないくらいヘロヘロだった。

 むしろ、なんでこんなにゆっくり飛ばせるんだろうっていうくらい、のんびり空をおよいでいる。


「楽勝ですね」

 向かいのコートで、水色のアクアマリンのサラちゃんが笑った。

「サラスヴァティーの魔法の力で、ボールの落ちるところを調べます!」

 おさげの形のパーツがヒョコヒョコゆれる。


「サラちゃんは、【ものを調べる魔法】を持ってるんですよ~」

 アチャ先生がのんびり言った。

「1ミリもずれることなくキャッチしてみせます」

 サラちゃんのメガネがキラリと光る。

 ひょっとして、アリサみたいにきちょうめんな子なのかな?

 でも、そのボールは魔法で調べたりしなくても楽勝でとれると思う……。

 そう思った、そのとき、


「サラ! どきなさい!」

 横から黒いオニキスの子がボールをうばった。

「ああ! あの子ったら!」

「ニキちゃんは【反重力の魔法】で空を飛んだり、ものを飛ばしたりできるの~」

 アチャ先生がのんびり言った。


 ニキちゃんは魔法で天高くうかび上がる。

 ボールを持ったニキちゃんの手が黒く光る。

 あたりの風がざわめいて、ニキちゃんの耳にマウントされたイヤリングがはげしくゆれる。なんかイヤなよかん……。


「ダーキニーの魔法の力で、ふっとびなさい!」

 ボールがものすごいスピードで飛んだ。

 ニキちゃんは【反重力の魔法】を使って、ボールを、まるで、たいほうみたいなすさまじい力でうちだしたのだ。


 ゴウッ!!


 風がさけぶ。

 相手のコートの子たちは、魔法のシールドをはったり、変形して空ににげる。

 でも、


「ブーくんが!?」

 魔法も使えず変形もできないブーくんは、おろおろするばかりだ。そして、


 ドンッ!!


 何かがぶつかる、ものすごい音がした。

 しょうげき波でコートがくだけて、七色のけむりがたちのぼる。

 けむりでコートの中が見えない。

 ブーくんはどうなっちゃったんだろう!?


 ……そしてけむりがはれたとき、ブーくんの前に何かが立ちふさがっていた。


「リゼちゃん!?」

 リゼちゃんの手に、シュウシュウとけむりをあげるボールがおさまっていた。


 リゼちゃんの手は黒い光につつまれている。

 重力場のてぶくろだ。

 リゼちゃんも【エネルギーの魔法】でボールを受け止めたのだ。


「ニ~キ~!! い、い、か、げ、ん、に、し、な、さ、い、よ!」

 リゼちゃんの目が三角につりあがっていたので、ニキちゃんはあわてる。

「な、何よ、わたしの魔法にビックリしたの!? リゼ!」

「なんですって!? そんなヘロヘロボールなんかハエが止まって見えましたわ!」

「この星にもハエはいるんですけど、宝石でできてるんです~。コハク色にキラキラ光ってキレイなんですよ~」

 アチャ先生が、今わりどどうでもいいことを教えてくれた。


「今度はこっちの番ですわよ! ニキ! わたしがもっとスゴイ魔法を使って、やっつけてさしあげますわ!」

「ふ、ふんだ! それならわたしは、もっともっと強い魔法をぶつけてやるわ!!」

「リゼちゃんも、ニキちゃんも、強い魔法を人に向けて使ったらダメですよ~」

 そのとき、リゼちゃんの手の中のボールが、ボロッとくだけた。


「あら? ボールがくだけたから、引き分けですね~」

 先生はふつうに言った。

 けど、ボールがくだけるって、ドッジボールとしておかしいと思う……。


 ブーくんは、ひっくり返ってジタバタしていた。

 にげようとして転んだらしい。


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