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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第2章 リゼちゃんが大好きは子は、ぼんやりマシュマロ男子?
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学校の先生になる

『なるほど、リゼにもそんな友だちができたのか……』

 ケータイの上にうつったローランドさんが言った。

 あたしとアリサはニッコリ笑う。


 あたしたちは、ローランドさんに電話して、お仕事の結果を伝えていた。

 ボーキサイトを無事にとどけたこと。

 そして、リゼちゃんの様子がヘンだった理由だ。


 リゼちゃんはクラスメートとケンカして悪口ばかり言っていると思ったけれど、本当はその友だちのことが大好きだったのだ。


 ローランドさんにうれしいことを話せて、本当によかった。

 エルフィン人のあかしの長い耳が、ヒョコヒョコゆれる。でも、


『もう一度聞くが、その友だちというのは男の子なのだね?』

 ローランドさんは、むずかしい顔で言った。

「はい、そうです。金色の男の子ですよ」

 アリサはニコニコ笑って答える。

 お仕事が終わったので、お金がたくさんもらえるからだ。

 アリサたち地球人は、お金もうけが大好きなのだ。でも、


『つまり、リゼには男の子の友だちがいるということだね?』

 ローランドさんは、むずかしい顔で言った。

「そうですよ。ボーイフレンドですね」

『ボーイ!? そ、そうか……』

 そう言って「ムムム」とうなる。


 さっきから同じことばかり聞いている。

 ヘンなの。

 あたしは首をかしげる。


 ローランドさんはアリサとあたしをじっと見つめる。そして、


『アリサくん、マギーくん。もうひとつ仕事をたのんでいいだろうか? 新しい仕事には、お金をこれだけはらおう』

 ケータイの上に、たくさんのお金を出して見せた。

 アリサの目がお金みたいにキラキラ光る。

「もちろん、やらせていただきます!」

 もー。アリサはお金が大好きすぎるんだから。


「それで、何をすればいいんですか?」

 アリサはキラキラの目でたずねる。

『その、リゼのボーイ……いや、友だちのことを、もっとよく調べてほしいのだ』

 ローランドさんは言いにくそうに言った。


 そういうわけで、あたしとアリサは、リゼちゃんとブーくんのことを、もうちょっと調べることになった。


 そして次の日の朝。


「でも、どうやってブーくんのこと調べるの?」

 あたしは、テーブルの向かいにすわったアリサにたずねた。


 真ちゅうのテーブルは歯車の形をしていて、にぶい金色に光っている。

 テーブルの上には、店長おすすめのキャラメルパフェがのっている。

 イスもテーブルとおそろいの歯車形だ。

 だから、ひざのうらが歯車の出っぱりに当たってヘンなかんじがする。


 あたしとアリサは、宇宙港の近くにあるカフェで朝ごはんを食べていた。

 どんな星でもカフェにはいろいろな人が集まる。

 なんでも屋の仕事をさがすにはちょうどいい。

 だから、いつもはカフェでごはん食べながら、お仕事をさがすの。


 でも今はもう仕事はあるから、どうやって仕事をしようか話している。


 カフェのカベは黒い大理石でできている。

 そして、曲がりくねった真ちゅうのパイプがならんでいる。

 パイプのすき間から、まどが見える。

 まどの外は、たくさんの人たちが行き交っている。


 まどの横で、ハンドルのついた大きなボイラーが、ピューッとゆげをふいた。

 歯車イスがならんだカウンターやテーブルでは、いろいろな人たちが、思い思いにくつろいでいる。

 アートマンもいるし、ほかの星の人たちもいる。


「ボーキサイトはとどけちゃったから、学校にはもう入れないよ?」

 あたしは、そう言って首をかしげる。

 服のスパンコールがシャラリとなった。


 あたしが着ているのは、シャンバラで買ったブラウスとミニスカート。

 キラキラ光るピンク色のスパンコールでできていて、とってもキレイ!

 ブラウスのそで先やスカートのすそには、トゥーレで作られたきれいなフリルがついている。つま先が丸くなったかわいいパンプスは宝石でできている。


 この前の仕事でかせいだお金で、アリサといっしょに買ったんだ。


 アリサが着ているのは、真ちゅうのリベットがたくさんついた黒いコート。

 その下は、いつものぐんじょう色のワンピースだ。

 コートとおそろいのリベットつきのブーツをはいていて、とても大人っぽい。

 そんなアリサは、


「学校に入る方法なら、ちゃんと考えてあるわ」

 むねについた歯車型のポケットからケータイを取り出した。

 ボタンをピピッておすと、画面に学校のページがあらわれる。

 アリサは画面をスクロールさせる。すると、


「この学校は先生をさがしてるの?」

「ええ、いろいろな星の先生をさがしてるみたいね。生徒がほかの星のことを学べるようにですって」

 アリサは言った。

「わたしは先生になるライセンスを持ってるし、マギーはエルフィン人の魔法使いだから、アヴァロンのことを教える先生になって学校に入れるわ」

「それじゃ……」

「ええ。今度は先生になって学校に行って、リゼちゃんたちのことを調べるわよ」

 そういうわけで、あたしとアリサは学校の先生をすることになった!


 先生になるためのむずかしい手続きは、ぜんぶアリサがしてくれた。

 なので、あたしたちは、すぐに先生として学校に行くことになった。


 そして、宝石と大理石でできたステキな学校で、


「アリサさん~、マギーさん~、この前は本当にお世話になりました~」

 メガネをかけた人間の先生が、あいさつしてくれた。

 この前の仕事のときに倉庫で会ったアチャ先生だ。


「わたしは、リゼちゃんやブーくんのクラスの先生をしている、アチャラ・ナータ13世です~。よろしくおねがいします~」

 アチャ先生は、地球人の大人の女の先生だ。

 ちょっとぼんやりした感じだけど、やさしそうで、お話ししているとほんわかした気持ちになる。


「先生! おはようございます!」

「は~い、おはようございます~」

 横を通りすぎる生徒に、ニコニコあいさつを返す。

 生徒たちもアチャ先生が大好きみたいだ。


「お2人とも、おわかいのにお仕事をされているんですね~。りっぱです~。マギーさんは、生徒たちと同じくらいの年なのに魔法使いだなんて、スゴイです~」

「エヘヘ、それほどでも!」

 ほめられて、長い耳がヒョコヒョコゆれる。

 あたしもアチャ先生が大好きになった。


「先生こそ、地球人なのにアートマンの魔法を使えると聞きました。さすがです」

 アリサもアチャ先生をほめる。

 先生も「えへへ~」と笑う。


「そんな~。わたしはアートマンが好きで、いろいろ勉強をしただけですよ~」

「勉強熱心なんですね。うちのマギーにも見習わせたいです。この子ったらサボってばかりで」

 もー。アリサったら!

 またそうやって、あたしのこと子どもあつかいするんだから!

 アリサだって、アチャ先生を見習って、やさしくなればいいのに。

 そう思った、そのとき、


「!?」

 走ってきた何かがアリサにぶつかりそうになった。


 3人組のアートマンだ。

 黒いオニキスと、むらさき色のアメジストと、水色のアクアマリンの女の子だ。


「こらー! ろうかを走ったらあぶないでしょ!」

 あたしは3人のせなかに向かってさけんだ。

 アリサがケガをしたら大変じゃない!


「ま、まってよー」

「あっ、ブーくん」

 3人組の後ろから、まん丸に太ったアートマンの子どもが走ってきた。


 今度はあたしは「ろうかを走ったらあぶない」なんて言わなかった。


 知ってる子だから言わなかったんじゃない。

 ぜんぜん、あぶなくなかったからだ。

 ブーくんは、すごく、すっご――く、おそいのだ。

 まん丸な顔はすごく走ってる顔なのに、スピードはあたしが早歩きするくらい。


「まってってばー」

 ブーくんは言った。


 さっきの3人組をおいかけてるのかな?

 でも、これで追いつくなんてぜったいにムリだ。


 ブーくんが行こうとしているろうかの曲がり角から、3人組が顔を出した。

 黒い子が、手に持ったコンテナをヒラヒラ動かす。


「ニキちゃーん。ボ、ボクのカバンかえしてよー」

「返してほしかったら、ここまで来てみなさい!」

 ニキとよばれた黒い子は、からかうようにコンテナを引っこめる。

 あの子たち、ブーくんのカバンを取り上げてイジワルしてるんだ! ヒドイ!


「ニキちゃ~ん、お友だちにイジワルしたらダメですよ~」

 アチャ先生はのんびり言った。

 でも、あまりたよりになりそうにない……。


 あたしは【ものを動かす魔法】でカバンをとり返そうと、ペンダントをにぎる。 そのとき、


「【ライゾー】のルーンは乗り物のルーン! ブーン! 飛びなさい!!」

 あたしの横を何かが走りぬけた。


 それは風のようにすばやかった。

 走ったらあぶないとか、もうそんなことを言うよゆうもない!


 あっという間に、風はろうかの角に走りこむ。


 ていっ! あひっ! あひっ! あひっ!


 おしりをけっとばされた3人組がろうかの角から飛び出した。

 そして、そのままにげていった。


 それから金髪のアリア人の女の子が出てきた。

 リゼちゃんだ。


「いつも、いつも、イジワルばっかりして、サイテーね!」

「い、いつもありがとう、リゼちゃん」

 言いながら、リゼちゃんは両手でかかえたコンテナをブーくんに手わたす。

 ブーくんがとられたカバンをとり返してあげたんだ。やさしー。でも、


「3人組もサイテーだけど、あなたも自分でなんとかしなさいよ!」

 おこった。

「ううっ、ごめんね……」

 しょんぼりするブーくんに、リゼちゃんはよじのぼる。

 ブーくんのまん丸なせなかには、なぜかハシゴがついていた。

 そしてリゼちゃんはブーくんの頭にすわった。


 ブーくんは足についているキャタピラをキュルキュル回して、教室に向かった。


「ブーくんは良い子だけれど、魔法を持っていないから、ちょっと心配ですね~」

「心配するところは、それだけ……?」

 あたしとアリサは顔を見合わせる。


 リゼちゃんのボーイフレンドは魔法が使えなくて、走るのもおそくて、気が弱くて、女の子にイジワルされて、リゼちゃんにたすけてもらっているらしい……。


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