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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第1章 宝石の星のツンツンおひめさま
4/15

ボーキサイトを運ぶ2

 キラキラ光る宝石の街の上には、星たちがちりばめられた夜空が広がっている。

 その中のひときわ大きな星は、ローランドさんがいるトゥーレの星だ。

 トゥーレとシャンバラは、同じ太陽のまわりを回っている、なかよしの星だ。


 そんな星たちをかきわけるように、大きな宇宙船が泳いでいる。

 ピンク色の宇宙船だ。


 丸っこいずんぐりむっくりしたボディに、手足のような4つのエンジン。

 船首には、耳みたいにひょこひょこ動くアンテナ。


 宇宙船はとっても大きい。

 ボディはビルくらい大きくて、エンジンも小屋くらいある。


 あたしとアリサの宇宙船【カピバラ号】だ。

 ……正しくはアリサの船。ずんぐりむっくりっていうとアリサはおこるんだ。


 ボーキサイトをつみこんで、すぐ、カピバラ号は宇宙をピューッとひとっとびしてシャンバラの星にやって来た。


 でも、リゼちゃんの学校は宇宙港からはなれた場所にある。

 だからカピバラ号は、学校めざしてシャンバラの夜空を飛んでいる。


 学校は海をこえたべつの国にあるけど、カピバラ号なら1日もかからない。

 夜のうちに学校にいって、朝一番で学校にボーキサイトをとどけるんだって。


 でも今はまだ夜中だから、ねている街の人をおこさないように、カピバラ号は空の上をゆっくり飛んでいる。


 そんなカピバラ号のブリッジで、あたしは夜空を見ていた。


「ねえ、アリサみてみて。街がすごくきれいだよ」

 カピバラ号のブリッジのカベやカーペットには、船外カメラでとった外の景色がうつるようになってるの。

 あたしの足元を、たくさんの宝石の家が、後ろに向かって流れている。

 赤、青、黄色に緑、いろいろな色に光る小さな家やビルが、次から次へとあらわれては流れていく。まるでカーペットが宝石箱の川になったみたいだ。


 あたしはパジャマのまま、キラキラ流れる宝石の川をながめていた。


「マギーったら、夜ふかしなんかして。明日、ねぼうしても知らないわよ」

「アリサのケチンボ! ちょっとくらいいいじゃない」

 アリサがブツブツ小言を言うので、あたしは口をとがらせる。

 でもアリサはあたしのとなりにすわって、


「でも、本当にきれいね」

 やさしい声で、そう言った。

「うん!」

 あたしもニッコリ笑う。


 宝石の夜景はキラキラしすぎていて、ちょっとだけ冷たそうだなって思ってた。

 でも、アリサがとなりにすわってくれたので、そんなことはなくなった。


「見て、見て、アリサ! 大きなドレスの形のビルだよ!」

「あらっ、あれは有名なファッションブランドのビルじゃないかしら」

 あたしよりお姉さんのアリサは頭もよくて、いろいろなことを教えてくれる。

「アートマンは体が宝石でできてるから服はいらないけど、ほかの星の人間のために、アートマンっぽい感じのキラキラする服を作っているの」

「そうなんだ、スゴイ!」

 あたしは、アリサが教えてくれたファッションブランドのビルが流れていっちゃうのを、じっと見ていた。すると、


「そうだわ。この仕事が終わったら、宝石の服を買いましょうか? ローランドさんからたくさんお金がもらえるんだもの」

 アリサはニコニコ笑って言った。

「いいの? やった!」

 わーい、アリサといっしょにおかいものだ!

「だから、今日は早くねなさい」

「はーい!」

 あたしも笑顔で答えて、自分の部屋にもどった。


 そして次の日、


「わわわ、ねぼうしちゃった! アリサ、おはよう!」

 あたしは目をさまして、急いでブリッジに走っていく。

 アリサは運転席にすわっていた。


「おはよう、マギー。ちょうどいいところに来たわね。もうすぐ学校につくわよ」

 そう言われて、ブリッジのかべにうつった建物を見やる。


「わー!! スゴイ!」

 あたしは思わずさけんだ。

 宝石でできたシャンバラの家やビルの中で、いちばんステキな建物だったからだ。


 校庭はキラキラかがやくスパンコール。

 カピバラ号より何倍も大きな建物は、白い大理石でできている。

 トンガリぼうしみたいな三角のやねは、まっ赤なルビーだ。

 ルビーのやねの上には、高いビルが建っている。七色に光る色とりどりの宝石でできた、高い、高い、天までとどくくらい高いビルだ。


「あのビルは、きどうエレベーターよ。上のほうに倉庫があって、宇宙船もとまれるようになってるから、そこでボーキサイトをおろすの」

 アリサは学校のことを説明してくれる。

「今度は、マギーもちゃんと手伝うのよ!」

「は~い」

 あたしはぷいっと口をとがらせる。

 アリサがお説教するみたいに「手伝うのよ!」なんて言うからだ。


 でも、もちろん仕事だから手伝いはちゃんとするよ。


 それに、ローランドさんからたのまれた、もうひとつの仕事も。


 そうこうしているうちに、カピバラ号は七色のビルのすぐ近くまで来た。

 七色にキラキラ光るビルは、近くで見ると、ますますキレイだ。


 アリサは運転席のモニターにうつった大人のアートマンと何かを話しはじめる。

 これから学校の人と協力して、カピバラ号をとめるのだ。

 カピバラ号は大きな宇宙船だから、とめるだけでもたくさんの人と協力しなくちゃいけない。


 ビルの横に付いているドアが開いた。

 飛行機がまるごと通れるくらい大きなドアだ。

 カピバラ号がその横にとまると、ドアから橋が出てきてカピバラ号までのびる。


「マギーもそろそろ着がえてらっしゃい。もどってきたころには手続きも終わってるから、お仕事開始よ」

「はーい!」

 あたしは急いで部屋にもどって、いつもの服に着がえた。

 ツインテールを自分で結ぼうとしてうまくいかなかったけど、アリサが結びなおしてくれた。エヘヘ。


 そして、


「アリサ! こっちこっち!」

 あたしは倉庫の空いている場所で手をふる。すると、

『オーケー! 今持っていくわ!』

 アリサのヘッジホッグがコンテナを持ってきて、おろす。


 力持ちのヘッジホッグを使えば、荷物をおろすのなんてすぐに終わる。

 そうしたら、リゼちゃんをさがしてお話を聞くのだ。

 そのはずだったんだけど……。


「アリサ、ちょっと待って!」

 あたしはあわててヘッジホッグを止めた。


 倉庫のすみっこに、アートマンの子どもたちが集まっていたからだ。


 あたしと同じか、もうちょっと小さいくらいの子たちだ。学校の生徒かな。

 黒いオニキスや水色のアクアマリン、むらさき色のアメジスト、いろいろな色のちっちゃな子どもがキラキラしながら集まっていて、すっごくキレイ!


 でも、こんなところにいたら、コンテナにぶつかってあぶない。

 出ていってもらわないと。


「キミたち、そこで何をしているの? あぶないよ!」

「あなた! 農場からボーキサイトをとどけに来た【なんでも屋】ですわね!?」

 答えたのは、生徒たちといっしょにいた人間の女の子だった。

 アリア人だ。

 金髪で、青い目をして、フリルがたくさんついたドレスを着ている。

 ドレスのむねには金色のブローチが光っている。


「じゃまにならないようにするから、荷物をおろすところを見させてください! クラスの子が人間の飛行機を見たいって言うんですの!」

 どうしよう……?

 すみっこでおとなしくしててくれるんなら、ぶつかることはないはずだけど。


「ねえ、アリサー!! どうしようー!?」

 あたしは向うで作業しているヘッジホッグに声をかけた。するとアリサは、

『いいんじゃないの? 見せてあげましょう!』

 飛行機のスピーカーでそう答えた。

 エヘヘ、アリサはやさしいな。


『ちっちゃい子どもを無理矢理に追い出しても、どこか別のヘンなところから入ってきて、かえってあぶないわ。マギーだってそうでしょ?』

 もー。アリサったら!

 あたしは子どもじゃないのに!


『こっちはわたしだけでもなんとかなるから、その子たちを見ててちょうだい。マギーもあぶなくないように気をつけるのよ!』

 だから、あたしは子どもじゃないのに!

 あたしは思わずヘッジホッグのせなかをにらみつけて、口をとがらせる。


「……そういうわけだから、そこから動かないで見ててね」

「「「「「わーい!」」」」」

 あたしが言うと、子どもたちは、うれしそうにさけんで、みんなですわった。


「ありがとうございます! なんでも屋さん」

 アリア人の子はお礼を言った。

 れいぎ正しい子みたいだ。

 あたしはうれしい気持ちになった。


 そうだ!

 せっかくだから、この子にリゼちゃんのことを聞いてみようっと。


「シャンバラの星に人間の女の子なんてめずらしいね。あたしはマギー、よろしくね」

「わたしはリーゼロッテ。パパや友だちはリゼってよびますわ」

 女の子の言葉に、あたしはビックリした。


 これからさがそうかと思っていたリゼちゃんが、あっさり見つかったのだ。

 この調子なら今回の仕事はすぐに終わっちゃいそう。

 アリサにもほめてもらえるかも。エヘヘ。


 えっと、ローランドさんはリゼちゃんの様子がヘンなのを気にしてたんだよね。

 それなら……。


「まわりはみんなアートマンばっかりで、大変だったりするの? ごはんとか」

「それはだいじょうぶですわ。学校では人間用の給食も用意していただいてますし、このあたりのお店は人間用のごはんも食べれますのよ」

 ごはんじゃないんだ。

 なら、なんだろう……?

 あたしが首をかしげたそのとき、


「ごはんといえば!」

 リゼちゃんは、思い出したように大声を上げた。

 でも、すぐに声をひそめて、


「わたしのクラスに、どうしようもない男の子がいるんですの。ブーくんっていう金色のアートマンなんですわ。いっつもごはんを食べてる子なんですのよ。そのせいで、すっごく太って、アートマンなのに変形もできないんですの」

「え? そうなんだ……」

 リゼちゃんがいきなりそんなことを話しはじめたので、あたしはこまる。

 リゼちゃんは、その子のことが気になるのかな?


「それに、どんかんで、男の子なのにぼんやりしてて、本ばかりよんでますの。それに知りたがりで、いろんなところに首をつっこみますのよ。あぶなっかしくて見ているほうがハラハラしますわ。さっきだって、外にとまってる宇宙船を見たいだなんて……」

 そうやって、アリサが荷物を運んでいる間じゅう、リゼちゃんはブーくんっていう男の子の悪口を言いつづけた。


 れいぎ正しい子だって思ったのに、こんなに悪口ばかり言う子だなんて……。

 あたしの長い耳が、しゅんとたれた。


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