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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第1章 宝石の星のツンツンおひめさま
3/15

ボーキサイトを運ぶ1

 あたしは魔法使いのマギー。

 魔法が得意なエルフィン人の女の子。


 好きなものは、あまいものとかわいいもの。

 苦手なものはお勉強。

 チャームポイントは、ピンク色のツインテールの髪と、エルフィン人のあかしである横に長くのびた耳。


 あたしはパートナーのアリサといっしょに【なんでも屋】をしながら、宇宙船カピバラ号で宇宙を旅してるんだ。


 そんなあたしたちが旅する宇宙には、いろいろな星がる。

 いろいろな星には、いろいろな人たちがくらしている。


 あたしみたいなエルフィン人は、お花と魔法の星アヴァロンにすんでいる。

 アリサはコロニーで生まれた地球人だ。

 ローランドさんたちアリア人がすんでいるトゥーレは、おもちゃの星。


 そして、今、あたしとアリサがいる【シャンバラ】は、宝石の星だ。

 あらゆるものが石と鉄と、宝石でできている。


 青い空を見上げると、水色に光るアクアマリンの鳥が飛んでいる。

 遠くには、色とりどりの宝石できた家やビルがかがやいている。

 すぐそばでは、赤いガーネットでできたかきねの上を、黄色いトパーズのネコがのんびり歩いている。


 スズでできた木のかげから、クリスタルのチョウチョウが飛び出す。

 トパーズのネコは、チョウチョウを追いかけて走っていった。


 鉄のコンテナがいっぱいのったリヤカーを引いているのも、くすんだ緑色にかがやくエメラルドでできたおじいさんとおばあさんだ。


 宝石の星シャンバラの住人は人間じゃない。

 鉄と宝石でできたロボット人間【アートマン】だ。

 アートマンたちの体は鉄みたいに固くて強い。

 けど、心は宝石みたいにきれいで、おだやかだ。


 そして、アートマンは生まれつき、ひとりひとつの魔法を持っている。

 今だって、2人のアートマンが引くリヤカーの上を、だれも持っていないコンテナがフワフワうかんでいる。

 おじいさんか、おばあさんが、重力をあやつる魔法を使えるのだ。そして、


「マギーったら、またサボってる!」

 空の上から何かがおりてきた。

 ぐんじょう色の、まん丸な飛行機だ。

 左右から大きなアームを生やしている。

 アリサの飛行機【ヘッジホッグ】だ。

 ヘッジホッグは両手に大きなコンテナを持っている。


 あたしたち人間の体は、アートマンほど固く強くない。

 だから、重い荷物を運ぶ時は、ヘッジホッグみたいな力もちの飛行機を使う。


 反重力でフワフワうかぶヘッジホッグはスピードはおそい。

 けど、力がとても強くて、たくさんの荷物を運べる。


 そんなヘッジホッグの運転席が開いて、長い黒髪の女の子が顔を出した。


「あ、アリサ」

 地球人のアリサは、あたしと【なんでも屋】をしているパートナーだ。

 アリサは、あたしよりお姉さんだ。

 だから、せが高くてすらりとしていて、ぐんじょう色の大人っぽいワンピースがよくにあっている。

 アリサは地球人だから魔法は使えない。

 でも頭がよくて、機械いじりと料理が得意だ。ただ……、


「まったくマギーときたら。おじいさんもおばあさんも手伝ってくれてるのに!」

 そう言ってプリプリおこる。

 おこりっぽいのが玉にキズだ。


 ローランドさんから仕事をたのまれたあたしたちは、シャンバラにやってきた。

 宇宙はとっても広いけど、カピバラ号でピューッとひとっ飛びだ。


 そして今は、農家のおじいさんとおばあさんといっしょに、宇宙港にとめたカピバラ号まで荷物を運んでいるのだ。


「だって、アリサ。あたしの飛行機はスピードは速いけど力はないんだもん」

「飛行機はなくったって、マギーにも魔法があるでしょ!」

「はーい」

 あたしは生返事をする。

 そして【○】と【十】をかさねたケルト十字のペンダントをにぎりしめる。


「妖精さん、宇宙に満ちる魔力さん、箱を運んで!」

 すると、リヤカーにのっていた鉄のコンテナがひとつ、フワリとうかび上がる。


 宇宙は魔法の力で満ちている。

 風にも地面にも、動物にも植物にも、そして世界そのものにも魔法が宿ってる。

 あたしたちエルフィン人は、そんな魔法の力にお願いして、魔法を使う。


 エルフィン人が使う魔法は【ケルト魔法】っていうの。

 火や氷や風や大地をあやつる【エレメントの魔法】に【動物と植物の魔法】、そして今使ったみたいな【ものを動かす魔法】が得意なんだよ。


「……ひとつだけじゃない」

「だってアリサ! この箱、すっごく重いんだよ!」

 アリサがもんくを言ってきたから、あたしも言い返す。すると、


「ひとつだけでも、だいぶ軽くなりましたのじゃ。ありがとう、おじょうちゃん」

 おじいさんが、おだやかにフォローしてくれた。

 あたしは「エヘヘ」と笑みを返す。


「ねえアリサ、この箱、何が入ってるの?」

「マギーったら、ローランドさんの話を聞いてなかったのね。この中には、おじいさんたちが畑で育てた【ボーキサイト】っていう石が入ってるのよ」

「そっか、この星では石も畑でとれるんだね」

 さすがは宝石の星シャンバラだ。

 アリサはつづけて、


「ボーキサイトを工場でビリビリーッてすると、アルミニウムになるのよ」

「アルミは知ってるよ。ベコってなるジュースのカンとか、地球人が使う1円玉」

「そうよ。それに鉄よりやわらかいから、アートマンたちの大好物なの。人間でいうパンみたいな感じかしら」

「そっか。それで学校に運ぶんだね」

 宝石でできたアートマンは、食べるものも鉄やアルミだ。


 あたしたちのお仕事は、このボーキサイトを学校まで運ぶこと。

 そして、ローランドさんのむすめのリゼちゃんがどうしているか調べること。


 ……ひょっとして、リゼちゃんは、食べものが口に合わないのかな?

 あたしだって、アリサが作ってくれるおいしいごはんが食べられなくて、かわりにアルミの1円玉が出てきたら、元気がなくなっちゃうかも。


 そんなことを考えてるうちに、宇宙港についた。

 そして、みんなでコンテナをカピバラ号のハンガーに運びこんだ。


「ふ~。やっとおわったー」

 魔法をたくさん使うと、とてもつかれる。

 でも、みんなでいっしょうけんめい働いた後は、つかれも何だか気持ちいい。


 ハンガーのすみにはコンテナが積み上がっている。

 あたしはそのうちのひとつに、よいしょっとすわった。

 そして、コンテナの横にねころんでいる大きなリスを見やる。


 とても大きな、ヘッジホッグと同じくらい大きな、リスの形の飛行機だ。

 ボディは細長くて、上側にはガラスの風よけがついた運転席。

 リスのしっぽみたいに大きなエンジン、2本の後ろ足みたいな小さなエンジン。

 小さな耳のついた頭は、コンピューターだ。


 この大きな鉄のリスは、あたしの飛行機【スクワールⅡ】。

 大きなエンジンのおかげで、ものすごく速く飛べる、あたしの愛機なんだ。


 その横には、大きなアームを生やしたヘッジホッグがとまっている。

 ヘッジホッグの運転席はひらいていて、アリサはいない。


「おつかれさま、マギー」

 反対側のドアから、アリサがやってきた。

 アリサはニコニコしながら、あたしに何かをほおりなげる。

 ペットボトルの冷たいアップルティーだ。


 アリサはみんなのために、ジュースを買いに行ってくれていたのだ。

 アリサやさしい~。


「おじいさんも、おばあさんも、手伝ってもらってありがとうございます。飛行機用のオイルしかありませんが、どうですか?」

「おお、すまんのー」

「いただきますじゃ」

 あたしとアリサはアップルティーとウーロン茶を、おじいさんとおばあさんはオイルをゴクゴクのみほす。

 仕事の後にみんなでのむジュースは、とってもおいしい。ぷは~。


「むすめさんへのプレゼントも、いっしょにつんておきましたのじゃ」

「ありがとうございます」

 おじいさんが指さしたコンテナの上には、小さな箱がおいてある。


「それでは、ワシらは帰りますじゃ。ボーキサイトをよろしくおねがいしますぞ」

 そう言うと、おじいさんの手足が、ありえない方向に曲がった。


 ガキン! ガキン!


 おじいさんのエメラルドの体は、みるみるうちに飛行機になった。


 おじいさんの飛行機は、足が変形したノズルから火をふいて飛んでいく。

 おばあさんも同じように変形して、いっしょに飛んでいく。

 おじいさんとおばあさんは、なかよくクルクル回りながら、夕方の空のむこうに飛んでいった。


 鉄みたいに固い宝石でできたアートマンは、飛行機に変形することもできる。


「それじゃ、わたしたちも学校に向かいましょうか」

「はーい!」

 そしてアリサはハッチをしめた。

 それから2人でブリッジに行って、カピバラ号を発進させた。


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