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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第3章 ブーくんは、とってもステキな男の子!
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ブーくんの魔法

「マギーさん~!! アリサさん~!! おかえりなさい~!」

「アチャ先生! リゼちゃんも、ラクシュちゃんも、ブーくんもいっしょだよ!」

 あたしたちが校庭にもどると、みんなが出むかえてくれた。

 おばけ飛行機たちは、ニキちゃんやクラスのみんながやっつけてくれていた。


「でも、今はそれどころじゃないの~。はやくにげなきゃ~」

「え? にげるって?」

「あれを見て~」

 アチャ先生が指さした方向を見やる。

 そこには、あたしたちがにげてきたおばけ宇宙船がうかんでいる。けれど、


「さっきより、近づいてきてる……?」

「そうなの~。おばけ宇宙船が落ちてきてるの~」

 アチャ先生は言った。

「このままだと、学校のまん中に落ちちゃうわ~」

「ええ!? そんな!」

 ビルより大きな宇宙船が落ちたりしたら、たいへんだ!

 学校どころか、街じゅうがムチャクチャになっちゃう!


「まさか、わたしがおばけ宇宙船のエンジンを取ろうとしたからですの……?」

 リゼちゃんの顔が、まっ青になる。


「ねえ、アリサ、おばけ宇宙船を止める方法はないの?」

「あるわけないわ。落ちてくる宇宙船を受け止められるものなんて……」

 アリサは、こまる。


 アートマンは魔法を持っているし、あたしも、リゼちゃんも魔法を使えるし、アチャ先生もスゴイ魔法を使える。飛行機だって使える。

 でも、それでも、宇宙船を止めるには、足りない。

 ビルより大きな宇宙船を止めるには、もっと、もっと強い魔法じゃないと……。


「そうだ!」

 あたしは、さけんだ。


「アリサ! ブーくんは【ものを作る魔法】を持っていたの! スクワールⅡのエンジンを作ったり、大きなたいほうを作ってガラスをこわしたりしたの!」

「なんですって!」

「ブーくんの魔法で、宇宙船より強い何かを作れれば……!!」

 そうしたら、おばけ宇宙船を受け止めらることができる!


「で、でも、ボク、魔法の使い方がわからないんだ……」

 ブーくんは自信なさそうに言った。でも、


「それなら、だいじょうぶよ~」

 アチャ先生がニコニコ笑顔で言ってくれた。

「先生はアートマンが大好きで、アートマンの魔法のことをたくさん調べたの~。先生は使えなかったけど、【ものを作る魔法】のことも調べたのよ~」

 スゴイ! さすがはみんなの先生だ!

 いつもぼんやりしたアチャ先生だけど、今はとっても、たのもしく見える。


「いい? よく聞いてね~」

 アチャ先生は、まじめな顔で言った。。

 ブーくんもまじめな顔でうなずく。

「アートマンの魔法は名前を使ってかけるの~。そして【ものを作る魔法】を持ったアートマンが今の時代にいるのなら、その名前は『ブラフマー406』よ」

「ブ、ブラフマー……」

 ブーくんは、かみしめるように、言った。

 自分の持っている魔法のことがわかって、ドキドキしているのだ。


「でも、この魔法は、よく知っているものしか作ることはできないの~。あんなに大きな宇宙船を受け止められるようなものなんて、学校で習ってないはずよ~」

 アチャ先生は、むずかしい顔で言った。でも、


「だ、だいじょうぶだよ、アチャ先生!」

 今度はブーくんがニッコリ笑った。

「ボク、マギー先生たちが荷物を運んできたときに、宇宙船を近くで見てたんだ」

「まあ、相手とおなじくらい大きな宇宙船だし、カピバラ号のエンジンは手足みたいに動かせるし、ものを受け止めることもできないことはないけど……」

 アリサもさんせいしてくれた。


 宇宙船を見ていたせいで、ブーくんはビルから落っこちちゃいそうになった。

 あのときは、どうなっちゃうかと思った。

 けど、それがこんなふうに役に立つなんて、ふしぎだ。


「それじゃ、ブーくん。カピバラ号のすがたを強く念じて、呪文をとなえて~」

「う、うん!」

 そして、ブーくんはキリっとしたまじめな顔になった。


「ブラフマーの魔法の力で、アートマンの、お、大男を作るぞ! カピバラ号みたいに大きくて、強い大男を、ボクは作るんだ!」

 すると、ブーくんの丸っこいうでと、まん丸な顔が、パリンっとわれた。

 おばけ宇宙船の中でそうなったみたいに、光の粉になって消える。

 その下から出てきたのは、ボディとおそろいのマッチョなうでと、てっぽうみたいなツノがついたかっこいい頭だ。


「ブーくんの太った体は、魔力でできてたんだ!」

 あたしはさけぶ。

「きっと【ものを作る魔法】はたくさんの魔力を使うんだよ。だから、ブーくんはたくさん食べて、魔力をかためて、体の一部にして持ってたんだ」

 そのことが、今、ようやくわかった。


 そんなブーくんの魔力が、あたしたちの前に集まる。

 そして何か大きなものを形作っていく。


 小屋くらい大きな金色のエンジンが2つ、あたしたちの前にそびえたった。

 こうしてみると、見上げるように大きい。


 つづけて、その上に大きなボディが作られていく。

 エンジンを2つ合わせたより大きい、ビルくらい大きい、金色のボディだ。


 でも、それも半分くらいで止まった。

 まだ下のほうしかできてないのに。


 それどころか、出来上がったエンジンとボディの半分も消えそうになっている。

 さっきまでただよっていた光の粉も、ぜんぜんない。


「あ、あれ……?」

 あたしは首をかしげる。

「ブーくん、どうしちゃったんですの!?」

 リゼちゃんも、あわてる。


「魔力が足りないんだわ!」

 アリサが気づいた。


 大きな宇宙船を作るには、たくさんの魔力が必要だ。

 ブーくんが固めて持っていた魔力だけじゃ足りない。

 だから、半分しか作れずに消えそうになっているのだ。


「どうしよう……」

 みんなも、こまる。

 アリサもクラスのみんなもあせっている。


 おばけ宇宙船はどんどん近づいてくる。

 このままじゃ、学校も街もメチャクチャになっちゃう。

 でも、どうしたらいいのかわからない……。


「マギー、何かいい方法はないの?」

 アリサがあたしにたずねる。


 でも、あたしにも、どうしたらいいのかわからない。

 もっとたくさんの魔力があれば……。


 ……そうだ!


「リゼちゃん! ニキちゃん! この前の社会の時間のときみたいに、ブーくんに魔力を分けてあげられる?」

「できますわ!」

「もちろん、できるわよ!」

 2人はニッコリ笑う。


「【フェオ】のルーンは焼肉のルーン! モリモリ! 元気になりなさい!」

 リゼちゃんはクリスタルを取り出して、呪文をとなえる。

 リゼちゃんの手から魔法の光がはなたれて、ブーくんにあたる。


「ダーキニーの魔法の力で、空間よ、魔力がいっぱいの次元につながりなさい!」

 ニキちゃんも両手にそれぞれ反重力のてぶくろを作る。

 そして右手と左手をゴツンとぶつける。

 空間がゆがんでホワイトホールになって、そこから魔法の光がわき出てくる。


 2人から魔力をもらったブーくんの体が、ピカピカ金色に光る。


 消えそうになっていたエンジンとボディのまわりに、たくさんの光の粉があらわれた。光の粉がボディにすいこまれると、ボディがはっきりした。


「やるわね、マギー!」

 アリサがほめてくれた。

 あたしの長い耳が、ヒョコヒョコゆれる。


「ブーくん、あまった魔力でマイクロウェーブの受信アンテナを作って! それからみんな、ブーくんにマイクロウェーブでエネルギーを送ってあげて!」

 アリサが、みんなのやることを決めてくれた。


「う、うん、わかった!」

 ブーくんの魔法で、大きなおしりに、しっぽみたいなアンテナがはえた。


「わたしたちもブーくんに魔力を送るのです!」

「送りますぅー!」

「ボクも!」

「わたしも!」

 みんなのおデコから見えない何かがはなたれる。

 すると、半分だけのボディのまわりに、すごくたくさんの光の粉があらわれた。


 粉は光ってかたまって、ボディの上半分もできあがっていく。

 そしてビルみたいに大きな宇宙船のボディができあがる。

 ボディの横にも、うでみたいなエンジンができあがる。

 ボディの上には、頭みたいなコンピューターがあらわれた。


「やった! できた!」

 ブーくんの魔法で、大きな、大きな、金色の大男が完成した。

 まるでカピバラ号がたてに立ったみたいな、ビルみたいに大きな大男だ。


 ガチャ! ガチャ!


 ブーくんは【▼】の形のむねを開いて、マッチョなうでと4本の足をおりたたんで、飛行機になった。

 まん丸な体を魔法にして使っちゃったから、変形もできるのだ。


 かっこいい飛行機になったブーくんは、大男の頭の上に飛んでいって合体した。

 大男の目がかがやき、おたけびをあげる。


 ビルみたいに大きなおばけ宇宙船が、すぐ近くまで落ちてきた。

 そして、


 ドォ――ン!!


 ブーくんの大男は前足をかまえて、おばけ宇宙船を受け止めた。

 しょうげきで、地面がゆれる。

 まわりを風があれくるう。


「みんなが風でふっとばされちゃうわ!」

「アチャラ・ナータの魔法の力で、生徒たちをまもりますよ~」

「風さん、空気に宿る魔力さん、みんなを守って!」

「【アルギズ】のルーンはシカのルーン! ピー! 守りなさい!」

 アチャ先生が魔法で見えないカベを作る。

 あたしとリゼちゃんもバリアを作る。

 そうして、みんながふっとばないようにする。


 おばけ宇宙船は、大きな体でブーくんの大男をおしたおそうとする。

 でもブーくんはがんばった。


「フンッ」

 大男は後足をふんばって、校庭をふみしめる。


「フンガー」

 前足に力をこめて、宇宙船をおし返す。

 そして、おばけ飛行船をたてに立てて、地面につきさした。


「やりましたわ! ブーくん!」

 リゼちゃんが、飛び上がってよろこぶ。

 みんなも大よろこびする。


 そのとき、白と黒の宇宙船がやってきた。

 おまわりさんが、やっと来てくれたのだ。


 すると、大きな金色の大男は光の粉になって消えた。

 ブーくんの魔法がとけたのだ。


「さすがブーくんですわ! みなおしましたわ!!」

「ブーくん、スゴイのです!」

 ゆっくり地面におりてきたブーくんに、みんながかけよる。

 みんな、口々にブーくんをほめたたえている。

 けれど、マッチョでスマートになったブーくんは、


「魔法をたくさん使ったら、お、おなかがすいちゃった」

 そう言って、すわりこんだ。

 おなかがグーとなった。


「ブーくんは、やっぱりブーくんだね」

 あたしとアリサは、顔を見合わせて笑った。


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