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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第3章 ブーくんは、とってもステキな男の子!
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リゼちゃんをたすける1

 あたしとアリサは、飛行機で学校の校庭におりた。

 あたしはスクワールⅡのガラスの風よけを開ける。


「マギーさん~、アリサさん~」

 アチャ先生やクラスのみんなが走ってきた。

 カフェから学校に向かったニキちゃんたちが、リゼちゃんたちがつかまったって先生に伝えてくれたからだ。


「大変です~。リゼちゃんとラクシュちゃんが、おばけ宇宙船に~!!」

 アチャ先生は、あせったようすでアリサにつめよった。

 でもアリサはおちついて、


「聞きました。おまわりさんに電話はしたんですか?」

「はい~!! でも、おばけ宇宙船から人をたすけるためには、いろいろ用意しなくちゃいけないから、すぐには来られないそうなんです~!! どうしましょう~」

 アチャ先生が答えた。

 アリサはむずかしい顔をする。


 2人をたすけてもらうのを、おまわりさんに手伝ってもらえればよかった。

 でも、おまわりさんは、すぐには来られない。

 こうなったら、やっぱり、あたしとアリサで2人をたすけるしかない!


「それに、あれを見てください~!!」

 アチャ先生は空を指さした。


 遠くの空に、3本足のクマがうかんでいる。

 エンジンをひとつなくした、おばけ宇宙船だ。


 そのまわりに、小さな何かがいっぱい飛んでいた。


「【おばけ飛行機】が、あんなにいっぱい……」

 あたしも、こまった。

 おばけ飛行機っていうのは、おばけ宇宙船みたいにこわれて、だれものっていないのに空を飛ぶ飛行機のおばけだ。


「おばけ宇宙船に近づくと、あの飛行機たちがビームをうってくるんです~」

「……それはやっかいね」

 アリサはますますむずかしい顔になった。


 おばけ飛行機がおそってきても、強いアートマンの子なら、なんとか勝てる。

 でも、それは一対一での話だ。

 あんなにたくさんのおばけ飛行機がいっぺんにおそってきたら、かなわない。

 それでも、


「まかせて! あたしたちが、ぜったいにリゼちゃんをたすけてみせます!」

 あたしはアチャ先生に、ニキちゃんや子どもたちに向かって言った。


 あたしのスクワールⅡは、しっぽのエンジンで、どんな飛行機より早く飛べる。

 アリサのヘッジホッグは力が強くて、てっぽうやミサイルをたくさん持てる。

 あたしとアリサが力をあわせれば、リゼちゃんたちをたすけることだって、きっとできる。


 それに、あたしとアリサは【なんでも屋】だ。

 リゼちゃんとラクシュちゃんをたすけるっていう仕事を引き受けたんだから、ぜったいにたすけてみせる!

 あたしは気合いをいれる。


 そのとき、機体の下から声がした。


「ボ、ボクも、つれていってよ!」

「ブーくん!?」

「ボクも、リ、リゼちゃんが心配なんだ!」

 ブーくんはさけんだ。

「ボクがこまっているとき、リゼちゃんはいつもたすけてくれるのに、リゼちゃんがこまってる時に、ボクが何もしないなんて、イ、イヤなんだ!」

 力強くそう言った。

 いつもあんなにのんびりしているブーくんとは思えない。


 でも、あたしは、まよった。

 あたしたちは、これから、たくさんのおばけ飛行機と戦いながら、おばけ宇宙船の中からリゼちゃんとラクシュちゃんを救いだすのだ。

 それはとてもあぶない仕事だ。


 それにブーくんは変形もできないし、魔法も使えない。

 だから、いっしょに行っても、できることがない。でも、


「ブーくん、リゼちゃんはわたしたちがぜったいにたすけだすわ。だから……」

「アリサ、まって!」

 あたしは、ブーくんをあきらめさせようとするアリサを止めちゃった。


「おばけ飛行機の中はとっても広いから、ブーくんがいたほうが、はやくリゼちゃんを見つけられるかも」

「でも、どうやって連れていくの? スクワールⅡはひとりのりよ?」

「この前の体育のときみたいにクラウ・ソラスをおいて、アームでつかんでくよ」

 あたしが言うと、アリサはビックリした。


「クラウ・ソラスはスクワールⅡのいちばん強いたいほうなのよ! それをおいていって、あんなにたくさんの飛行機と、どうやって戦うの?」

「それなら、わたしたちが手伝うわ!」

 アリサとあたしの話を聞いて、ニキちゃんがやってきた。

「わたしもがんばるのです!」

 サラちゃんも、うでぐみする。すると、


「あたちも手伝う! この前、リゼちゃんに宿題を手伝ってもらったもん!」

「それじゃ、ボクも! ラクシュちゃんのおかげでサッカーかてたから!」

 クラスの子たちも、口々にそう言いながら集まってきた。


「わたしも、生徒たちのために、がんばりますよ~」

 アチャ先生も、むうっとガッツポーズをとる。


 あたしとアリサは顔を見合わせて、ニッコリ笑った。

 リゼちゃんのまわりにいる人たちは、みんな友だち思いだ。

 そして、リゼちゃんが大好きなんだ。


「それじゃ、遠くからうてる子はおばけ飛行機をねらってうって! でも、無理はしないで! アチャ先生、子どもたちをお願いします」

「わかりました~。マギーさんも、アリサさんも、気をつけて行ってきてくださいね~。ブーくんも、ケガをしないようにするのよ~」

「まかせて!」

「もちろんです!」

「う、うん!」

 3人がアチャ先生に返事を返すと、アリサはヘッジホッグのドアをしめた。


 そしてヘッジホッグは、まん丸いボディの下側にある反重力ユニットから光の粉をちらしながら、うかび上がった。

 ヘッジホッグは、大きなアームで真ちゅうでできた箱を持っている。

 たくさんミサイルの【ゲイボルグ】だ。


 あたしたちはミサイルやたいほうを持っている。

 みんなをこまらせるこわい相手と戦うのも【なんでも屋】の仕事だからだ。


 あたしはスクワールⅡの下側のアームを動かして、プラズマカノンをおろす。

 その上にブーくんがよじのぼってきた(クラスのみんなが手伝ってくれた)。

 あたしはレバーとスイッチを動かして、アームでブーくんをつかむ。


「ブーくん、用意はいい?」

「う、うん! だいじょうぶ!」

 ブーくんの返事を聞いてから、ガラスの風よけをしめる。

 そして、運転席のスティックを引く。

 スクワールⅡは足のエンジンを下向きにふかして、うかび上がる。


 あたしはスロットルを引きしぼる。

 大きなしっぽのエンジンから、光の粉がはげしくふき出す。

 スクワールⅡは、フルスロットルで飛び出した。


 スクワールⅡには大きなしっぽのエンジンがあるから、ピューッとひとっとび。


 だから、すぐに、おばけ宇宙船の近くまでやってきた。


「うわー。すごくいっぱいいるね」

 あたしはガラスの風よけごしに、おばけ飛行機たちを見やる。

 運転席のモニターは、おばけ飛行機をあらわすおばけのマークでいっぱいだ。


『こっちからも見えてるわ』

 モニターのすみにアリサがうつった。

 ヘッジホッグからテレビ電話をかけてきたのだ。


『ここはわたしにまかせて! マギーは先に行って!』

「オーケー、アリサ!」

 反重力でフワフワうかぶヘッジホッグは力持ちだけどスピードはおそい。

 でも、スクワールⅡは大きなしっぽのエンジンのおかげで速く飛べる。

 だから、アリサに後ろをまかせて、あたしはスクワールⅡをかっ飛ばす。


 その後ろで、ヘッジホッグがかかえた真ちゅうの箱がパカッと開く。


 シュボボボボッ!


 けむりの糸を引きながら、たくさんのミサイルが飛んでいく。

 先っぽにいろんな色の宝石がついたミサイルは、それぞれがえらんだおばけ飛行機に向かって飛んでいく。


 ドドドドドーン!


 ミサイルは、たくさんのおばけ飛行機をふっとばした。


 でも、飛行機たちの数はへらない。


『まったく! こんなんじゃ、いくらミサイルがあってもたりないわ! ミサイルをうつと、たくさんお金がかかるのに!』

「もー。アリサったら、こんなときにまで」

 あたしは、やれやれと笑う。


 そこに、黒いキツネの飛行機が飛んできた。


 ガチャ! ガチャ!


 飛行機は変形して、黒いオニキスのアートマンになった。

 ニキちゃんだ。


「ダーキニーの魔法の力で、ふっとびなさい!」

 ニキちゃんは、おばけ飛行機たちの間を飛び回りながら、反重力のてぶくろでひっぱたいて、ふっとばす。


「生徒たちだけに、あぶないことはされられません~」

 アチャ先生も、ハスの形をした反重力飛行機に乗ってあらわれた。

 先生はアートマンの魔法を使うための宝石のドレスを着ている。

 そして鉄の杖を持っている。

 杖の先っぽには、宝石でできた輪っかがたくさんついている。

 先生が動くたびに、シャラン、シャランときれいな音をたてる。


「アチャラ・ナータの魔法の力で、やっつけちゃいますよ~」

 先生は呪文をとなえながら、たくさんのカードをまいた。

 カードはそれぞれ火の玉になって、おばけ飛行機たちを、まとめてふっとばす。

 さすがは先生、スゴイ魔法だ!

 あたしはちょっと先生を見なおした。


「み、みんな、スゴイなあ……」

 スクワールⅡの下側で、ブーくんがさみしそうに言った。

 ブーくんはリゼちゃんをたすけようと勇気を出してくれた。

 けど、魔法がないから何もできない。


 そのとき、目の前にせまった2つの目がギラリと光った。


「ブーくん、しっかりつかまっててね!」

 おばけ飛行機の目からビームがほとばしる。


 キュイーン!


 あたしはスティックをかたむける。

 スクワールⅡは足のエンジンを横向きにふかしてビームをよける。

 ビームがスクワールⅡの耳をかすめる。

 ピンク色のペンキがジュッとじょうはつする。


 あたしはすぐに、てっぽうを当てるための【◎】を、おばけ飛行機にあわせる。

 引き金を引く。


 タタタタタッ!


 2本の点線のようにならんだてっぽうのたまが、おばけ飛行機めがけて飛ぶ。

 おばけ飛行機はふっとんだ。

 クラウ・ソラスがなくたって、スクワールⅡにはてっぽうがついてるんだよ!


「サラスヴァティーの魔法の力で、おばけ飛行機が少ない場所を調べます!」

 スクワールⅡからだいぶ後ろのほうで、サラちゃんのおさげがヒョコヒョコゆれて、メガネがキラリと光る。


『マギー先生、おばけ飛行機があまりいないルートをメールでおくりました!』

 サラちゃんからテレビ電話がかかってきた。

 いっしょにとどいたメールを開くと、モニターに矢印があらわれた。

 この矢印にそって飛べば、おばけ飛行機とあまり戦わなくてすむはずだ。


「ありがとう、サラちゃん!」

 お礼を言って、スロットルを思いっきり引きしぼる。

 スクワールⅡはしっぽのエンジンをふかして、おばけ宇宙船めがけてつき進む。


 キュイーン! キュイーン!


 おばけ飛行機たちは次々にビームをうってくる。

 けど、あたしはスティックを上手にあやつる。

 スクワールⅡは足のエンジンをふかしてヒョイヒョイとよける。


 ガラスの風よけごしに見える3本足のクマが、だいぶ大きくなってきた。


「ブーくん、もうすぐおばけ宇宙船にたどりつくよ!」

 あたしはニッコリ笑った。そのとき、


 キュイーン!


 追いかけてきたおばけ飛行機が、下からうってきた。

 そこにはブーくんがいる!

 あたしはあわててスティックをかたむけて、しっぽでブーくんをかばう。


 ジュッ!


 ビームでうたれたしっぽに黒いあながあいて、パチパチいいはじめた。

 でもブーくんは無事だ、よかった。

 あたしがホッとしたそのとき、スクワールⅡのスピードがガクンと落ちた。


『せ、先生! エ、エンジンの光が弱くなってる!』

 しまった! 今のビームで、しっぽのエンジンがこわれたんだ!

 スクワールⅡはおばけ宇宙船にたどりつくどころか、地面に向かって落ちはじめた……。


『お、落ちてるよ! 先生の魔法でなんとかならないの!?』

「わたしの魔法じゃ、飛行機のエンジンをなおすなんてムリだよ!」

『そんな……。もうちょっとなのに、エンジンがあれば、リゼちゃんのところまでいけるのに!!』

 ブーくんは、くやしそうにさけぶ。

 そりゃ、あたしだってくやしいよ。でも、


『エンジンがほしい!』

 ブーくんがさけんだ。

『リゼちゃんのところまで飛んでいけるような、すごいエンジンがほしい!!』

 すると、ドンッと音がして、あたしの体がシートにおしつけられた。


 何がおきたの!?

 地面に落ちたわけじゃなさそうだけど……?


 そしてふと、これはGだと気がついた。

 飛行機がものすごくはやく飛ぶと、Gがかかって体が後ろ向きに引っぱられる。


 でも、なんで?

 スクワールⅡのエンジンはこわれちゃったから、飛べるはずないのに。


 そのとき、魔法の力が、外の様子をモニターにうつしてくれた。

 しっぽからけむりをふいたスクワールⅡは、おばけ飛行機をギュンギュン追いこしながら空をかっ飛ぶ。

 その下側には金色のブーくんがマウントされている。


 そのブーくんを見て、あたしはビックリした!


 ブーくんのおしりから、しっぽがはえていたのだ!

 スクワールⅡのエンジンより大きなしっぽから、すごい光をふきだしている。


 なんでブーくんにエンジンがついてるの!?


 ううん、考えるのは後だ!


「ブーくん、そのままエンジンをふかして!」

『う、うん!』

 ガラスの風よけごしに見えるクマのすがたが、みるみる大きくなる。

 ものすごいスピードでおばけ宇宙船めがけて飛んでいからだ。


 あたしはおばけ宇宙船のおなかを見やる。

 そこに宇宙船のハンガーのドアがあるからだ。

 カピバラ号と同じだ。


 ラッキーなことに、おばけ宇宙船のハンガーのドアは開きっぱなしだった。


 あたしはスティックをかたむける。

 スクワールⅡは足のエンジンをふかして、ハンガーの中にすべりこんだ。


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