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宝石の星のキラキラ王子様  作者: 立川ありす
第3章 ブーくんは、とってもステキな男の子!
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ブーくんと空を飛ぶ

「つまり、アートマンのエンジンにあたるのが、人間の心ぞうです」

 クラスの子たちを見わたしながら、アリサが言った。


 黒板がわりのモニターには、アートマンと人間の絵がかいてある。

 理科の時間は、アリサが勉強を教える時間だ。

 アリサは、アートマンの体が人間とどうちがうかっていうお話をしている。

 でも……。


「こーら! そこ、何を話してるの!」

 アリサはプリプリおこって歩いていく。

 ニキちゃんサラちゃんラクシュちゃん3人組の席だ。


 あたしもアリサについていって、3人のつくえのモニターをのぞきこむ。

 そこには、勉強とは関係ない写真がうつっていた。


 ねころんだクマみたいな形の宇宙船だ。

 でも、あちこちがボロボロで、エンジンのある足の部分がひとつなくなってる。

 クマの顔の形をしたコンピューターもこわれてて、まるで人食いクマみたいだ。


「朝のニュースでやってた【おばけ宇宙船】のことを話してたのね」

 アリサが言った。


 おばけ宇宙船っていうのは、こわれて、のっている人がいなくなって、ひとりでに宇宙をただよっている、宇宙船のおばけのことだ。


 そんなおばけ宇宙船が、この街の上空にうかんでいるらしい。

 おばけ宇宙船は何をするのかわからないから、あぶない。

 それに、めったにあらわれるものじゃないから、めずらしい。

 本当はおまわりさんがなんとかしてくれるはずなんだけど、ニュースではそのことは何も言っていなかった。


 だからみんな、おばけ宇宙船のことが気になって、朝からザワザワしている。


 でも、今はアリサが勉強を教えてくれる時間なのに!

 それでもアリサはニッコリ笑う。


「それじゃ、みんな、おばけ宇宙船はエンジンで動いていると思う?」

 みんなにたずねてみた。

「それとも心ぞうで動いていると思う?」

 するとみんなは、ちかくの席の子とヒソヒソ話をしながら考えはじめた。

 みんな、おばけ宇宙船のことが気になっていたからだ。


「おばけだから心ぞうで動いてるのかな?」

「でも、わたしたちみたいにカチカチだよ?」

「でも、おばけだよ?」

「そっかー。じゃ、心ぞうかな?」

 あはは。みんな、よくわからないものはみんな人間の仲間に思えるのかな。


「う、宇宙船は人間が作ってるんだよ! だ、だから、エンジ――」

「人間が作ってるから、心ぞうがあるのかな?」

「……そ、そうなのかな?」

 ブーくんが正しい答えを言いかけたんだけど、ほかの子の意見にまけちゃった。


「マギー先生とアリサ先生は、宇宙船にのって旅をしてるのよ!」

「知ってるですぅー。この前、倉庫で働いていたですぅー」

「いえ、この前見たのは飛行機なのです。飛行船はドアの外にあったのです」

「お外は見てないですぅー」

 子どもたちが話し合う様子を見て、


「それじゃ、ヒントです。宇宙船は、大きな大きな飛行機です」

「や、やっぱり、う、宇宙船は、エン――」

 今度も、最初に正しい答えを言いかけたのはブーくんだった。でも、

「エンジンです! おばけ宇宙船は、わたしたちと同じようにエンジンで動いてるのです!」

「ピンポーン、そのとおり」

 ほかの子に先をこされちゃった。

 ブーくん、ざんねん。


「宇宙船にはとっても強力なエンジンがのっています。手足みたいなでっぱったのは、ぜんぶエンジンです。だから、こんなに大きいのに空を飛べるんですよ」

 アリサは黒板がわりのモニターに、おばけ宇宙船の写真をうつして、言った。

 そうやって、アリサの勉強の時間はもりあがった。


 そしてまた、あたしが勉強を教える時間。


「行くのです! 先生をおいこしてしまうのです!」

 ガラスの風よけの向こうで、白鳥の形をした水色の飛行機がスピードをあげた。

 変形したサラちゃんだ。


「よーし、まけないよ!!」

 あたしはスロットルを引きしぼる。

 飛行機のサラちゃんが、みるみる後ろにおいやられる。


 あたしは自分の飛行機の運転席のシートにすわっている。

 あたしの飛行機【スクワールⅡ】は、リスの形をした飛行機だ。

 しっぽみたいな大きなエンジンのおかげで、すごくはやく飛べる。


 体育の時間は、みんなとスクワールⅡでおいかけっこをすることになった。

 みんながあたしの飛行機を見たいって言ったからだ。


「先生! はやすぎです! おいてけぼりになってしまうのです!」

 サラちゃんは、いっしょうけんめいにおいかけてくる。

「「「「まってほしいですぅー」」」」

 ラクシュちゃんも、4機の飛行機になって(き、器用……)おいかけてくる。


 ほかのみんなも、楽しそうにスクワールⅡをおいかけたり、子ども同士でおいかけっこをしたりしている。でも、


「へへーん! 空が飛べないのはブーくんだけよ! くやしいでしょう!」

「ニキ! あなたっていう子は!」

 キツネの飛行機になったニキちゃんが、ブーくんをからかっていた。

 これ見よがしに、ブーくんの頭の上を飛び回る。

 太ってて変形できないブーくんは、さみしそうに空を見上げている。


 頭の上のリゼちゃんが、おこって火の玉をなげた。

 でもニキちゃんはヒョイッとよける。


「こーら! おともだちにイジワルしたらダメだよ!」

 あたしはスクワールⅡでブーくんのところにおりていく。

「ベーっだ!」

 ニキちゃんはどこかに行ってしまった。


「ブーくんも、あんな子の言うこと気にしなくてもいいですわ!」

 リゼちゃんははげます。でも、

「でも、ボ、ボクが飛べないから、リゼちゃんも飛んでないよ」

 ブーくんはしょんぼりした声で言った。

「リゼちゃんは魔法で飛べるのに……」

「そ、それは……。今日は空を飛びたい気分じゃないからですわ!」

 そんな2人を見て、あたしの耳がしゅんとたれた。


 なんとかブーくんを飛ばせてあげられたらいいのに。


 でも、ブーくんは飛べない。

 ブーくんは変形ができない。

 それにブーくんは重すぎる。

 だから、あたしの【風の魔法】や【ものを動かす魔法】でも飛ばせられない。

 リゼちゃんの【反重力の魔法】でもダメだ。


 それでもなんとかなればいいのに……。


「……あ、そうだ。アリサ! スクワールⅡでブーくんを運べないかな?」

 ふと思いついて、アリサに相談する。

 アリサは近くのベンチにすわって見ていた。


「ブーくんの大きさじゃ、運転席に入らないわよ?」

「そうじゃなくてアームでつかむの。アートマンは体が強いから」

 スクワールⅡのボディの下には、前足みたいな小さなアームがついている。

 いつもはここに、プラズマカノンの【クラウ・ソラス】ををかかえている。

 みんなをこまらせる悪いヤツをやっつけるのも【なんでも屋】の仕事だからだ。


 でも、学校にそんなのはいないので、カピバラ号に置いてきている。

 だからアームで何かべつのものをつかめる。


「ブーくんがいくら重いって言っても、飛行機ならラクラク持ち上げられるわね」

 アリサはケータイで何か調べながら、

「それに、この子ったら【身をまもる】の3級を持ってるわ。飛行機のアームでコンテナみたいにつかんだり、屋根くらいの高さから落ちても、ぜんぜん平気よ」

 スクワールⅡを使えば、ブーくんをとばせてあげられるらしい。

 やった。


「けど、よくそんなことに気づいたわね」

 アリサにもほめられちゃった。エヘヘ。


「よーし! これからスクワールⅡでブーくんを持ち上げちゃうよ! リゼちゃんはあぶないから、ブーくんからおりて!」

 リゼちゃんがはなれてから、あたしはスティックをていねいに動かす。

 スクワールⅡはブーくんの真上にぴったり止まる。


 レバーとスイッチを使って、アームでブーくんの体をつかむ。


 そしてスティックを引く。

 スクワールⅡはブーくんを持ったまま、足のエンジンをふかして飛び上がった。


「わー! ボ、ボク、飛んでる!」

 ブーくんはよろこんでさけんだ。


「【ライゾー】のルーンは乗り物のルーン! ブーン! 飛びなさい!!」

 リゼちゃんのドレスに書いてある魔法の文字が光る。

 すると、リゼちゃんの体が飛び上がった。

 ドレスに書いた文字を使って【反重力の魔法】をかけたのだ。


「リ、リゼちゃんといっしょに空を飛べるなんて、ボク、しあわせだ! 空を飛べるって、なんて楽しいんだろう!」

 ブーくんはニッコリ笑う。

「も、もう! 何を言ってるんですの!」

 リゼちゃんは顔をまっ赤にする。


「あ、ニキたちですわ! おいかけますわよ!!」

 リゼちゃんは飛んでいった。

 ブーくんをかかえたスクワールⅡも、スピードをあげる。


「ちょっ! な、何!? なんでおいかけてくるのよ!?」

「こんどは、わたしたちがおいかけられる番なのです!」

「「「「きゃー!! ラクシュたちつかまっちゃうですぅー」」」」

 楽しそうににげる6機の飛行機(ラクシュちゃんが4機だから)をおいかける。


 ブーくんもリゼちゃんも、ニコニコ笑っていた。


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