ホラーと抱き枕
八話です。
ある日の事
めいが俺の家へとお泊りをしてきた。
彼女はどうやって両親に許可を得たか分からないが、泊まっていいという事なので我が家に向かい入れた。
いつも通りに4人でご飯を食べた(父は残業)。
家族での会話を盛り上げたら、いつものように部屋でのんびりした。
家族から(特に母から)謎の信頼を得た俺は、めいを自室で一緒に寝る事を許された。
我が親ながら甘いのではと思うが、俺にはめいを襲うメリットがないのでその信頼にこたえようと思った。
メリットがないというのは別に今すぐそういう事をせんでもいいという事。
え?理性?なめんな、コントロールできなきゃ、日常的にゴロゴロしないよ。
自分をある意味コントロールできるから、だらけきった生活ができるのだ。
閑話休題
いくら高校生でも別々のベッドだ。布団を用意して、めいにはそこで寝てもらう事にした。
しかし、問題は起きた。
「シン…寝れない」
なんと、めいがそんな事を言ってきたのだ。
彼女は涙目になりながら懇願してきた。
「…」
シンはそれに対してどうしたものかと考えていた。
原因は分かっている。のんびりとした時間の時に見たB級ホラー映画のせいだ。
弟がホラー好きでよかったらと言われ、俺の机にあったDVDをめいが見ようと言ってきたのが始まりだ。
隣合わせで見た。内容はパニック系で驚かせに来るやつばかりだった。俺はそこまで怖くなく、むしろ次はどこで驚かせに来るのか楽しみにするタイプでいた。
めいもアニメ等で比較的グロ耐性があると踏んでたが、どうやら見込み違いだったらしい。
終わった後は俺の肩にしがみついて、トイレもいけないとか言ったのは流石に不味いと思い、ある程度慰めた。
そして落ち着いたかと思い、寝ようとしたら現状に至ったという訳だ。
シンは呆れながらいった。
「怖いなら見るのやめたのに…」
「だって定番じゃん!カップルで見るの」
最近気が付いたが、めいは“カップルの定番“をよく俺らにさせたがる。
普段、お互いに部屋でだらけ切っている時点でできる事が限られるから余計にできる機会があると催促する。
まぁ俺も、したくないわけではない。むしろしたいと思う。
「だけど、それで怖くて、挙句の果てに寝れないって…」
同じ部屋で寝ているのにだ。
「うーん」
「…シン、抱き枕になって。」
「はい?」
「私なら大丈夫。」
「いや、流石に俺がやばい」
えっ理性がどうだって?そんなのは男の妄言に決まっているだろ!フィジカルタッチだぞ!フィジカル!理性強しでも耐えれるか!むしろそれ正常じゃないだろ!
再び閑話休題…
「シン、私寝れないのよ、一緒に寝よ…」
涙目でめいが言う。
「いや、だめだよめい。しっかりとめいとの関係には責任を持ちたいからそういう危険があるのはだめだ。いくらめいの願いでもな」
こんな男女同じ部屋の状況で言う事ではないかもしれないが、それは俺とめいと俺の家族だからできた特別状況だと思ってくれ。
信頼があってこそのこの状況なのだ。これを壊すと二度と戻れなくなる。
「代わりにこれで我慢しろ」
そして、いましがた使っていた枕をめいに渡す
「これを抱き枕に使えば少しは気が休まるだろ?」
ぽかーんとした顔でめいが言う。
あまりの雑な扱いで怒られると思ったが…
「シン…レベル高い…」
「なんの?!」
と、謎のお言葉を戴いて、すんなりとめいはシンが使っていた枕を取り、寝に入った。
スーハー
寝息だろうか、安らかに聞こえる。
それを見ると少し痒い気持ちになるが、先ほどと変わって落ち着いて寝れそうなので苦笑しながらもシンは睡眠へと向かうのだった。
シンの枕を抱いて心地よさそうに眠るめい。
(うわーーーーーーーーーーーーー!!!)
しかし、寝ている表情とは裏腹に、めいの心ははしゃいでいた。
(シンの匂いのついた枕。レア!激レアよ!)
スーハー
シンに聞かれないように、でもしっかりと枕についた残り香を嗅ぐ。そして顔を埋めていた
(ゴールまでは行けなかったけど、これはこれで…あり!)
めいはこの際、既成事実もありなのではと考えていた。
それは彼女の家庭環境のせいもあるが、それはまた別のお話で。
しかし、その家庭環境のせいで彼女は自らの欲望が解放されると忠実になる。それが理想の相手ともいえるシンと会った事で少し暴走気味になっていた。
過去の彼女なら少しは自重しただろう。しかし、シンなら、シンとならという感情がだんだんと芽生え、いけないと思いながら、彼女の性癖を出してきた。
俗にいう、においフェチだ。シン限定の。
しかし、彼女には一定の倫理観があるので大丈夫だろう。だからこそ、彼女の親友以外にこれを見切った人はいない。
閑話休題
しかし、あまりにも嬉しすぎて、また寝れなくなってしまった。
(どうしよう)
少し思案をするめい
今の彼女の中では先ほど怖く思えたホラーに感謝したいという思いになっていた。
(普通に抱き心地もいいのよね。シンの枕)
そう言い、少し上で寝ているシンを見る。
彼はもう寝たのか静かな寝息を立てていた。
スースー
少し間抜けな顔をしているが、この顔の人が私の好きになった人だと思うと、とても可愛く思えた。
普段はだらけているが、たまに気を使ってくれるのがめいの中でシンの高いポイントだ。
他のカップルは知らないが、こういう感情になるものなのだろうか?
なんというか、守りたいと守られたいという矛盾した気持ちが心の中に湧き上がっている。
そして、残り一緒に過ごせるか考えた。勿論、高校卒業後も一緒だが…とりあえず高校で考えると…そんなシンとも残り二年となった。
一年の前半はあんまり話せなかった。お付き合いしたのが一年の後半からだ。
まだまだ先は長いようで、すぐにこの二年は経つのだろうなとめいは思った。
理由は簡単だ。シンと過ごすが楽しすぎて、時間があっという間に感じるからだ。
中学の時は得られなかった、充実感と心の余裕。
それにシンは大きく関わっていると思うと自然と彼を見る目が熱くなる。
これからどんな楽しい事ができるのだろう。
後、彼は気づいていないが、のんびりやだらけるに関して天才的発明を彼はしてくれる。図書館の件は中々良かったとめいはシンを評価している。
そんな風にシンを心の中で褒めているうちに、だんだんと眠くなってきた。
安心しきったからだろうか?瞼が重くて辛くなってきた。
(おやすみ、シン)
そう思いながら、めいは目を閉じた。
ちゅんちゅん
小鳥のさえずりでシンは起きた。
いつもは目覚ましで起きるが、今日は同伴者がいたので簡単な物音で起きてしまった。
今日は日曜日なので特に急ぐ必要がない。
横を見ると、そこには安心しきった顔で寝ているめいがいた。
(枕抱いてら…)
めいがシンからもらった枕をぎゅっと両手で抱いて寝ていた。
その寝顔は優しい表情で寝ており、起こすのがためらわれた。
(しばらく見よう)
そう思い、少し観察していた。
改めて、俺と付き合っているのが不思議なぐらい可愛くて、きれいで、それに性格も(外面は)悪くない。シンはこんな時間が続けばいいなと思いながらこれからどうするか考えていた。
しかし、寝てる人を見るとだんだんと眠くなるものだ
(ふぁー…眠い…二度寝しよ)
そして布団をかぶり直し、そのまま寝たのだった。
その後、シンの母が起こしに来たのだが、その時に二人の寝顔がお互いを向いていて、まるでお互いに微笑みあっていたって聞いて何ともいえない恥ずかしさを感じたのは仕方のない事なのかもしれない。