喧嘩と○○アニメ
第五話です。
しばらく更新が空いて申し訳ありませんでした。
これからは文字数を3000-5000の間で投稿するようにします。
「……」
「……」
雪が降ってきたある冬の日。
俺らの関係に危機が訪れていた。
「シンが悪い!」
「めいが悪い!」
珍しくお互いに声を荒げて、お互いを悪くいう。
人は喧嘩するほど仲が良いというが、今の俺らはとてもじゃないが、これまでのような仲睦まじい感じではなくなっている。
お互いに物理的に距離を置いている。
今は俺の部屋にめいは来ているが、いつものそばにやってくるではなくめいはテーブルの反対側でジトっとにらんでくる。
なんか小声でうぅーとすら言っている。
可愛いけど、今回はそんなんじゃだめだ。
俺もめいに対して睨み返している。
この事態に陥ったのを知るためには1時間前まで遡らなければいけない。
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それは学校から帰ってきた時に起きた。
いつものように、俺の部屋で漫画なりアニメなりを見て、後半は一緒にごろごろしようかという時にそれは来た。
「そういえば、新しいアニメ買ったから一緒に見ようよシン」
「…ごめん、それはパス」
めいに俺はそんな事を言う。
俺らは俗にいうライトオタクだ。
深くアニメの話とかはいえない。
監督や声優は好きなアニメの範囲でしか話せないし、グッズもそんなに買って作品に対して貢献をしていない。
つまり、好きなジャンルが被っていないと俺らはそんなに語れない。
しかし、そんなライトオタクでも違う作品で語れる事がある。
その作品のストーリーの構成やキャラの評価だ。
例でいうなら「なぜこのキャラはここで死んだのか?」や「このジャンルの良さや悪さ」が多い。
勿論、これらに決まった答えはない。個人の価値観でそのシーンやジャンルを楽しむべきなのだ。
そして、それらを共有できるのは楽しい事だというのは分かる。
しかし、人はそう思っている中で好きな事を語る相手をほしがるものだ。
かく言う俺も、めいを相手にこれまで多くの漫画やアニメの談義をしている。
わざわざそれをするために、めいに他のアニメをすすめられ、半日かけて一気に見たぐらいだ。
大抵はお互いの意見を聞いて、尊重し、無難に終わる。
先ほども言ったが、個人の見解が違うのが前提なのだ。違う意見があってもそれを無理に捻じ曲げる方が無駄に争いを生むというものだ。
「お願い、このアニメだけ一緒に見てよ」
「いやだ!なぜ俺にそれを見せる!」
そんな考えがある俺だが、これだけは見れない。
アニメのパッケージを見せてくるめい。
そこには綺麗な絵で描かれた男たちが写っていた。
人気の男性アイドル物らしい。
正直見る気になれないので断ったのだが…
片方には熱々の熱を加えながら話、片方が冷めきった対応をする。
そんな事をすれば自然に喧嘩は起きる。
「面白いらしいから一緒に見ようよ!」
だんだんと強く出てくるめい。
「嫌だ、俺はそんなもの見たくない」
「そんなもの?」
あっやばっ…
「そんなものってこんなにイケボや綺麗なアニメはないのよ!」
「いや、でもそれを俺に強要しなくてもいいだろ」
するとめいはふっと笑いながら続けた。
「でも、シンと見るアニメでよく可愛い女の子出るじゃん。でも、あの子たちの言動や行動って現実の女子からしたらあり得ないと思うのよ」
ピキっ
「現実の女子と彼女らを比較対象にするなーーーー!それはそれこれはこれだ」
「なら私のおすすめも見れるでしょ!シンのおすすめの漫画やアニメで出てくるような一人の男に何人も女子を侍らすハーレムものや純粋に彼の事を思う女子なんて女子の世界ではかなりの少数なのよ?そんなのを普通に見れる私には良い彼女と思わない?」
いつも以上に饒舌に、そして現実を話すめい。
てか、最後のなんだよ?褒めろって事か?
「俺はそういうアニメは見たくないんだよ。表現が苦手でさ。」
基本ぼっちの俺からしたら野郎がいちゃいちゃしているが生理的に受け付けん!
「それにそういうのは無理に見せるものじゃないぞ」
「好きな人と好きな事を共有して何が悪いの?」
むっとめいは俺に向かって言う。
その言葉はずるいような気もするけど…
「それは相手にもそれを受け入れる事ができる場合だろ」
「シンはそういう融通をもう少しできるようになるべき」
おっ?そんな事をいうなら言わせてもらおうか?
「めいはもう少し遠慮というのを知ってほしい」
それから俺らはあーだこーだとお互いを罵りあった。
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結果、冒頭のように誰が悪いかという事になった。
俺がここで引くと冷静になってなし崩し的にあのアニメを見る流れになるので、譲れないというのもある。
めいの言い分も理解できる。俺もできるならと一緒に好きなものを共有したいと思うけど…
やっぱ見る気になれん。他のを見ようと言おうとしたその時にめいは行動に出た。
めいは席を立ちあがり。そのまま俺のベッドへ横になった。
枕を取るとそこに顔をうずめていた。
「うー」
幼児退行をしてしまった。
ほんと、外とのギャップが激しい子だ。
これは良くないな…めいはたまにこうなる。具体的に本当にしてほしい事をしてほしい時だ。
これを無視すると1週間は口を聞いてもらえないし、抱き枕もさせてくれない。
別に毎日はしないが、1週間禁止は少し苦痛だ。
そして、ふと考えてみると強気に俺が出てたのがばかばかしく感じた。
「うー」
まだ顔を枕にうずめている。
「あーめいさん?ちなみになんでそんなにこれを見せたいの?」
するとめいが枕から顔をあげた。
「…シンに私の好きなものを知ってほしいのよ」
「私ばっかりシンの好きなの見ているから、シンにも知ってもらおうと思ったの」
別にめいは意地悪をしているのではなく、ただ一緒に見たいとしか思っていないらしい。
むしろ、俺らの仲をよりよくするためにめいからの申し出なのだ。
「なるほど…じゃあ分かった」
「!」
「俺の負けだ。これから見るか?といってももう夜遅いから1話だけだぞ?
「うん!」
結局、俺が折れる形でアニメを見る事にした。
その後俺は案の定そのアニメのキャラ達に嫌悪感を抱きながらも見続けた。
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アニメを見ながらめいはこう思っていた。
ふふふ
シンったら甘いよ。
最初は本当に悔しくて枕に顔をうずめるようになった。
でも、そうするとシンは途端に私の言う事を聞いてくれるようになった。
それに気づいた私は、どうしても言う事聞いてほしい時にはこの行動を使っている。
そろそろばれるかな?でも、さっきの反応から察するにまだこの手は使えそうね
しかし、彼女ながら少し不安ね。
こんなんじゃ他の女子にも騙されそうで怖いな…
横で開いた口がふさがらない彼氏を見る私。
腕をみると少し鳥肌がでているように見える。
本当にこの手のジャンルは苦手らしい。
彼氏の違う一面も見たいと思ってこれを見る企画をしたが、やっぱり良かった。
やっぱり何か刺激っていうのはほしいよね。
我ながらめんどくさい性格をしていると思うが、女子ならみんなこう思うのではないのかな?
後でえりにも聞いてみよ。
結局、3話までを見て「もういいか?」とシンの一言で今日は解散となった。
家まで送ってくれたが、シンはどこかしおらしくなっていた。
そんな一面になっても私にために付き合ってくれた彼に嬉しくなるも本音は言わない。
だって、しばらくこの気持ちを楽しみたいし。
そんなわけで、今日も私は彼との時間を楽しんで帰宅するのであった。
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後日、えりにこの事に関して聞いてみたら「うらやましい」と一言もらった。
やっぱり、世の女子は彼氏にも好きなものを共有したいのだ。
前書きでも述べましたが、しばらくの間更新が空いてしまい、申し訳ありませんでした。
引き続き「だら恋」の方を宜しくお願いします。