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だらけきった恋愛模様  作者: Sonnie
第一章
3/13

彼女の思いと彼の思いと炬燵

第三話です。




学校での出来事から1週間。


寒さがますます増して上着無しでは外も歩けないぐらい寒くなってきた。


「こたつっていいよね」


そんな事を言いながらめいは俺の足の上に彼女の足を置く。


「めい…じゃまだよ」


「だって大きいこたつじゃないから、一緒に横になれないのよ」


そう、俺らはこたつの中でぬくぬくしている。


浅野家のこたつは小さく、一つの辺に一人が限界だ。


金曜日に学校から帰ってきたら、母がこたつを出していた。


それを彼女に話した所、こたつに入りたいとの事で今日のデートはこたつデートになった。


ちなみにこのこたつは浅野家のリビングにある。


だがしかし、今この家には俺らしかいない。


なので、今日は家族の目を気にせずにぬくぬくできるのだ。


「ねぇみてみて」


そういい、めいがこたつのふとんを少し開けて中をみるように促される。


「うん?」


こたつの中はただ赤く発光している。


「こたつの中、赤いよ」


どうやら、我が彼女は赤い事に驚きのようだ。


「そうだね...最初はこたつの中って蛍光灯みたいにただ白く光っていただけみたいなんだよ、でも当時使っていた人達が本当に暖かいのか信用してもらえなくてね、それから暖かく見せるための工夫として赤色に光らせているみたいだよ。色が変わるだけでそれで人は暖かく感じるみたい。なんか不思議だね」


「…」


めいが俺の話聞きながら考え事をしている。


「どうした?」


「でも、人って何か一つ変わるだけで感じ方は変わるのは分かるよ」


「どうして?」


「私がそうだったから」


???


「シンと知り合って、私の生活は変わったよ?そして一緒にいるだけで、心が温かくなるよ」


おおぉ


なんと反応していいのやら


「イケメンだな。惚れそうだよ」


「まだ惚れていなかったの?」


言葉を間違えた。


俺の言った事が気に食わなかったのか、少し不機嫌を露にするめい。

「あっいや、惚れているよ!もうとっくに惚れているから」


「でっ…?」


「でっ…?」


これ以上何を言えばいいと?


「…」


「…」


謎の沈黙の時間。


「まぁいいよ、今回はこれで許してあげる。早く気づいてよね」


「あぁ」


最後の方はよく聞こえなかったが、まぁ本人許してくれたので大丈夫だろう。


「シン…こっち来て」


そう言われ、おとなしくめいのそばへと寄る俺。


そのままめいは俺に抱きついてきた。


少しきつい姿勢だがまぁスキンシップは大事だしな。


このままこの時間を楽しもう。


「うぅーん、シンのにおいする」


すりすり…すりすり


そして毎回恒例のすりすりにおい嗅ぎ。これ毎回やってないか?別にいいが。


少し困る質問をするか。


「くさいか?」


そう聞かれるとめいはどう答えるのがいいのか分からないのか、とても答えずらそうにする。


少し考えるめい。


そして答える。


「…くさいか分からないけど、好きなにおいだよ」


良かった良かった。


まぁ分かっていた答えだ。


「そりゃうれしい。」


「いじわる…」


「ごめんごめん」


その後、こたつを満喫しながら少し寝る事にした俺たちだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





基本的に仲のいい俺らだが、そんな俺らでもけんかする時がある。


「シンがいきなよ」


顔をむっとしてめいは俺に言う。


「いや、めいが行ってよ」


俺も不満な顔をしてめいに言う


そういい、お互いに台所にあるオレンジ色の物体に目線を移す。


それはみかんだ。


こたつのお供でだらける時の貴重な栄養だ。


うちは祖母からみかんを毎回冬の時期になると受け取る。

なので、みかんが常時台所に設置されている。


本来はこたつを置いたその時にこたつの上に置くべきなのだが、母が忘れていたようで俺たちも気づかずに入ってしまった。


それでどちらかが出なければいけないのだが、お互いに寒い思いしたくないので言い合っているという訳だ。


「あなたが家主じゃない」


「こたつを提供しているの俺だぞ」


彼是10分程の間このレベルの言い争いをしている。


このままでは埒が明かないので別の提案をいう。


「よし、じゃあじゃんけんで決めよう」


「いいわよ、言っておくけど私じゃんけん強いよ」


「それフラグだから、めい」


「言ってなさい。」


そしてお互い腕を出す。


じゃんけんぽーん!




「私の勝ち」


「はぁーわかったよ…」


結果、俺が負けた。


変だな、フラグというものはこの物語では起きないのか?となぜかメタ的な発言を思いながらしぶしぶとこたつから出る俺。


うぉー寒い


すぐに出て、すぐにみかんを台所から持ってきて、元の位置に戻る。


「ありがとう」


めいは笑顔でいう。結構寒かったんだぞ。


「思ったより寒かったよ」


そういいながらお互いにみかんを手にして取り剥く。


むきむき


そういえばみかんの剥き方で性格が分かるみたいなのを聞いた。


白いのを取ったり、下から剥いたりと色々と剥き方があってそれに応じた性格診断があるとかないとか。


かくいう俺らは同じ剥き方をしていた。


オーソドックスに上から花びら状に剥いていた。


お互い白い部分も残している。


この白い部分はビタミン豊富で栄養満点らしい。


まぁ俺は剥くのがめんどくさいからという理由なんだが…


結構俺らは不思議な交際をしているが、やっぱり似た性格なのだろう。


「シン」


「何?」


目線をみかんからめいの方に向けると、目の前にみかんを一かけらつまんだめいがいた。


「あーんして、取ってきてくれたお礼」


「…」


めいさん、気持ちは嬉しいが顔が赤くなっているよ?


俺まで顔が赤くなるではないか。


しかし、ここで恥ずかしがったら男が廃る。


「おぉ…じゃあ…あーーーん」


思ったより恥ずかしいなこれ。


「うん」


後めいさん、そんな慎重にやらなくても。


そろーりという音が聞こえそうなぐらいスローに手元のみかんを俺の口に向かわせるめい。


そうして口を開けて、めいの方へと寄せる。


パクッ


「おいしい?」


モグモグ…


「おいしいよ」


実際おいしいし、どこか心がほっこりする。


しかし、謎の恥ずかしさもある。


よしっ


「じゃあ俺も…」


「えっ!?」


めいが俺の発言に驚く。


「片方だけとか不平等だろ?」

ニマっと俺は笑う。


「いや…でも…」


基本めいは自分で恥ずかしい行動をするのは平気なのだが、俺の方からお願いすると恥ずかしがる。



正直、めいがいつも自発的にしている(抱き着いたり、におい嗅いだり、etc…)よりハードルは全然低いと思うが…


「ぅうー…ぅうー」


これからされる事の想像でもしたのか、先程からとっても顔を赤らめている。心なしか頭から湯気が出ているようにも見える。


しかし、恥ずかしいそうにしているが、一言断りを言われた事はない。


推測だが、自発的にしている事はそのまま彼女がされてほしい事の裏返しなのだろうと思う。


それだから、いざしてもらえるという嬉しさとそれを見抜かれたのではという恥ずかしさが表れているのだ。


「ほら、口あけて」


めいに催促をする俺。


そういうとめいは口をパクパクさせた。どの程度口をを開けるのか探っているみたいだ。


女子なのでそこらへんもマナーの一環として気を使ってしまうのかもしれないが、むしろ俺には逆効果だ。


恥ずかしい表情も相まって、とてもかわいい表情を見せてきている。


普段のクールな表情とのギャップも相まってかわいさ爆発だ。


そして決めたのか、めいは口を少し開いたまま目をつぶって待っている。


なぜ目をつぶる?


「あーん」


とりあえずめいの口にあーんをするためみかんをつまんで彼女の口の近くに手を寄せる。


パクッ


モグモグ


「うーん、美味しい」


「お粗末様でした」


こうして、何回かこのあーんをしながら、また俺らは時間をだらけて過ごした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






夕方になり、日が暮れ始めていた。


めいの家はここから近いのできるだけ家まで一緒に帰りながら送っている。


その道中にふと思う。


そういえば、めいの家族ってどんな感じなんだ?


俺はあまりめいの家での事を知らない。


聞いてみるのもいいかもしれないと思い聞いてみた。


「私の家?結構大きいよ、でも洋風の家だからこたつとかないよ。だからこたつ体験したくてきた。」


「へぇ~めいの家族とかどうしているの」


すると顔を少し暗くしためい。


でも、すぐにいつもの表情になる。


「うちは父が海外で働いていて、お母さんも去年から小さいけど会社の社長として復帰しててあんまり家にいないんだ。」


おぉ…流石才女のご両親、ご両親もしっかり者だった。


「共働きの究極形だな。」


「うん、そうだね…だからね、私家に帰っても一人なんだ。」


すると寂しそうな表情をするめい。


「最初の頃は一人暮らしみたいで嬉しかったのだけど、やっぱり寂しさが勝っちゃった」


もしかしたら、それがシンとの時間を貴重に感じる一因だったかもしれないと彼女いう。


「だから、こうして家までお邪魔しているの迷惑かな?」


「全然」


俺は即答する。


めいが俺の家に来てからというもの、俺の生活は良い意味で変わった。

楽しいし、前までどこか満たされていなかった思いも彼女と付き合ってからというもの感じなくなっていた。


「…ありがとうというのはおかしいね」


めいは答えずらそうに言う。


「そうだな。俺の彼女なんだからどんどん甘えてこい。遠慮するな、困ったら俺に声かけろ、まぁ…何かできるわけでは荷かもしれないけど」


なんとなく言わずにいられなかった。


「うんうん、その気持ちだけでも嬉しい」


めいは少し涙目になりながら言う。


その後は当たり障りのない事を話して彼女は家まで送った。


週末の夜は母も帰ってくるので俺の家に泊まるような事はできないそうだ。


あいさつに行くべきかとめいにいったが、まだいいと彼女は言う。


また別でいつか予定合わせてくれるという事だ。


そんな事を話しながら彼女の家の前へと着く。


「送ってくれて有難う。じゃあまた明日学校で」


「じゃあね。おやすみ」


そして帰りの道中に考える。


家族の話題を振った時の彼女の顔を


めい自身がどういう子かはもう分かっている。


彼女は強く振舞っているが、その実とても繊細なのだ。


恐らくだがその厳しい家庭環境が俺に甘えてくる事の原因なのかもしれない。


「くっ…」


思わず、苦虫を噛む顔になる俺。


気づくきっかけはいっぱいあった。


そもそもなぜ俺みたいな男を彼女が好きになってくれたのか。


そこから考えれば、彼女は普通の育ちを受けていない事に気づけたかもしれない。


幸せな時間だったこそ、気づくのが遅れたしまったのだ。


なぜめいが俺といる事が幸福を感じているのか。


その点をもっと注意して目を置くべきだった。


しかし同時に俺の無力さを感じる。


今の俺には一緒に居てやれる事しかできない。


しかし、それは彼女の現状を解決する事にはならない。


むしろ、余計に今の彼女の生活に負担になっているのではないか?


それは俺の思い上がりかもしれないが、そうではないかもしれない。


とにかくこうして少しずつ彼女の事を知っていこう。


そうする事できっと彼女の助ける方法を見つけよう。


彼女は俺が深くかかわってくるのを避けている気がする。でも、関係ない。


あんな悲しい表情を見せられるのは辛い。本当の意味で付き合っていると言えない。


それに、俺はまだ言っていないのだ、彼女に言わなければいけない言葉を。


付き合っているはいるが、時期を逃してどんどん言えなくなってしまった。


多分もう彼女は気づいている。でも言わない。


もしかしたらこの関係が壊れる事を恐れているのかもしれない。


そんな仲の良い俺らだからこそ、肝心な所でお互いがお互いにまだ心を開いていない。


当たり前だ。事実だけでいうなら、最初はお互いの本心を隠しながら仲良くしていたのだ。


俺はこのだらけた生活、彼女はその裏表のある性格を。


なので、この壁に当たるのはある意味当たり前の結果なのかもしれない。


偶然があって付き合う事になったが、これから先はそうはいかない。


これからは本当の意味で君の事を知って、はっきりと言葉にしたい。


だから


それまで待っててくれ。


そう思い、シンは本当の意味で心から彼女と向き合う事を決めたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






家の自室に戻っためいは今日の事を振り返っていた。




今日もシンは言ってくれなかった。


いや、彼も気づいているのだと思う。


それよりもあの別れ際のあの表情。


あれは何かを考えている時の顔だ。


あの状況なら私の事しかない。


やっぱり顔にでていたからかな…家族の件はあまり彼には話したくない。





私は家族の愛というものを知らずに育ってきた。


彼には話していないが、父は外交官で幼いころから社交性や学力に磨きをかけられた。特に母からの指導は厳しく、今でも苦手だ。


勿論、ここまで育ててくれた事は感謝している。全て私が社会にでてもいいように大事に育てたという事も頭で分かる。


だが、普通の家族の生活、例えば家族みんなで食事や遊びに行くなんて我が家になかった。


小さいころから習い事の毎日で、そんな生活をしていれば家族との時間がただでさえ少なかったのが無くなった。


今は海外にいる父のすすめでそろそろ彼女に自由な時間をという事でその習い事も高校に入る時に全部やめさせてもらった。いくらできるからといって楽しくないものは楽しくなかった。しかし、それは最後の自由時間でもあった。


母は未だにそれらの習い事をやめた事に不満を持っているのか、私が高校に入ると同時に私が生まれる前まで働いていた所に復帰し、私をさけるようになった。




なので余計にシンの事を思う。


でも、彼に私の問題をいうのは悪い。


私は彼の事が大好きだ。


だが、シンは私の事を好きではいるみたいだが、まだ不安でもあるみたいだ。


なので、自分が迷惑な存在だと気づかれてはいけない。


このままゆるい関係でいるのが最善なのだ。


だから彼を選んだわけでもあるのだし。


「でも…」


しかし、考えてしまうのだ。


もしも、もしも私のこんな醜い部分をも見てくれるのなら


場所によって変わる私。


私に愛を向けない両親。


そして、その両親と周りを嫌う私の濁った心。


でもそれはない。


いくらシンがいい人でも、流石に重荷に感じるだろう。


何よりももう私の未来は確定している。


彼には言えないが、それでも私は彼と一緒にいたかった。


その時がくるまで彼とは楽しい一時を過ごそう。


私は本当にひどい女だ。


やっぱり私は自己中心的な女だ。


だからこそ、彼との時間は大切にしたい。


誰にも邪魔させない。たとえ彼にも。


そして私の大事な思い出として一生大事にしよう。



そう思い私は自室の窓から彼の家の方向をのぞく。


見える訳がないが、彼女はどこか安心感を覚えて熱くなる頬をおさえる。


そして彼女はその日は眠りにつくのであった。


こうして、二人の男女の思いはすれ違いながらも少しずつ進んでいくのであった。


これでストックの方はなくなります。


3日に1話位を目標に投稿できるようにします。


引き続き「だら恋」の方を応援よろしくお願い致します。


【だらけた話題】

タイトルの炬燵は話で出た「こたつ」と読みます。思ったより難しい漢字で東屋は驚きました。

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