学校での一日と耳かき
第二話です。
楽しんでいただけたれば嬉しいです。
7:00
ピピピピピピ……
目覚ましが部屋に鳴り響く。
俺は朝は苦手だ。だが、あいつを外で待たせるのも悪い。
そのまま学校に行く準備をして、家を出る。
すると、いつもマンションを出た所にめいはいる。
俺に気づくと顔に笑みを浮かべて向かってきた。
彼女が挨拶する前にこちらから言おう
「おはよう、いつも待っててくれてありがとう。でもそろそろ寒くなるから次からは俺の家に入って待ちな。お母さんには言っておくから。」
「わかった」
そう言いめいは俺の片腕に抱き着いてきて、肩をよせる。
「じゃあ、寒いからこれさせた」
まず何がじゃあという点と許可取る前にもう行動に移している点は目をつぶろう。
「じゃあ、行こ」
そういってそのまま学校へ向かうために歩く。
暖かいな。少しずつ肌寒くなってきたこの頃。
いつもこういう風に肩を寄せながら学校へ向かう。
で学校に近づくとお互いなんとも言わずにすっとはずす。
おしい気持ちもあるが、学校で無難に過ごすために仕方ない。
そのために早く起きては人目のつかない時間にこうして一緒に登校している。
そして教室へ向かうのである。
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教室では俺の席は後ろの方に、めいは前の方の席でクラスの朝礼が始まる前に他の友達と話している。
そんな様子を見てぼうっとしていると俺に声をかけるやつが現れた。
「おはようシン、相変わらず眠そうな顔をしているな」
彼の名前はヨシこと吉田雅文。
俺よりも高い身長で日焼けした肌。部活は野球部に所属しておりこのクラスの委員長も任されている。尚、うちの高校の野球部は丸刈り推奨ではないので髪は短めの黒髪って感じだ。
そんな活発的な彼だが、実は隠れオタクで大のゲーム好きだ。FPSとかTPSとか色々開拓しているそうで、そろそろ恋愛ゲームにも手を出そうかと思っているらしい。
そんな彼の話についていけるのは同じサブカル好きの俺しかいなかったようで、彼の好きなゲームの話を聞きがてら、俺もおすすめのゲームの漫画化を教えると意気投合した。
「まぁ、俺は朝早く来ているからな」
「ここ最近そうだよな?なんでだ?お前部活の朝練あるわけではないのに」
「ただ学校の方が集中して宿題できるからな」
これが俺の言い訳、本当は宿題なんて毎日めいと一緒にやって30分で片付けているが。
「どういう心の入れ替わりだ?入学して2か月は遅刻ぎりぎりに来てたのに」
笑いながらヨシは聞いてきた。
「別に…親が早くも受験勉強しろとうるさいからな」
こういえば深くは追及しまい。
「そうか、お前の親も厳しいな」
その後彼は朝終わらせたばっかりの最新ゲームのストーリーの話をした。
ヨシこそ寝なきゃいけない人種だと思うが、彼は俗にいうショートスリーパーなのだそうだ。
そんな風に話していると朝の時間の終わりを告げるように朝礼のチャイムが鳴って、担任が教室に入ってきた。
「おっ、じゃあまた昼休みな」
そういい、ヨシは席へ戻った。
そして目線を前へ向けるとめいが俺の方を向いているのに気が付いた。
何か不満そうな顔だ。
大変だな人気者は。
そうだ、めいとの関係はヨシに報告しよ。
なんなら、今日の昼休みに紹介でもしよう。
そうすれば、あいつも似た友達ができていいんじゃないかな?
なにより、ヨシならこの関係の協力者としても問題ないだろう。
口は悪い所があるが、根は良いやつだという事はこの数か月で分かった。
そう思い、その事を彼女にSNSでメッセージを送った。
すると、彼女も紹介したい友達いるそうだ。
同じタイミングで俺ら同じ事考えていたんだな。
なぜかとても嬉しく感じる。
というか、彼女他の友達達と話しながらだったけど、すごいな。
こうして、4人で飯を食べる事が決まったのだった。
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昼休み
俺たちがいるのは空いている教室の一室だ。
めいが生徒会の権限を乱用してカギをゲットしたらしい。
すごいな。彼女のスペックの高さに驚く。
すごいとは思っていたがここまでとは…
人は会ってみなきゃ分からないものだな。
「よう、なんでおまえ若狭と知り合いなんだ?びっくりしたぞ」
驚いているヨシ。まだ付き合っている事は話していないが、今から会う相手の事はもう伝えてある。
まぁこんな地味しか取り柄のない俺が学校の人気者と女子と昼飯を一緒にする事体それこそフィクションや漫画の世界の出来事なのだろう。
「まぁ、それもおいおい説明するよ」
そして目的の教室に到着。
入口を開けると中にはもうめいと初めて見る眼鏡におさげをした女子がいた。
例のめいの紹介したい友達なのだろう。
身長はめいと同じぐらいで地味な見た目ながらよく見るとどこかきりっとした印象を持たせている。
俺が着た事を知っためいが顔を笑顔にして俺の方に向かってきた。
「しんーーーーーーーー」
ガシッという音が聞こえた気がする。
スリスリ、スリスリとめいは頭を俺の胸にこすっている。
かわいい かわいいっと思っているとヨシが後ろにいる事を思い出す。
ゆっくり後ろを見ると…
…
顔をぽかんと開けたヨシがいた。
「…なんだこれは?めいが超絶地味男且つ成績も俺より低いシンに抱擁しているだと?」
おいおいヨシ君?難しい言葉を知っているな。後君はそんな事を影で思っていたのか?これは君との友達関係を見直す必要があるな。
このままの時間も捨て互いが、当初の目的を果たすのが先か。
「えーとほんとは食べながら言うつもりだったんけど紹介するよ。お付き合いさせてもらっている若狭めいだよ。」
「付き合っている!?」
今度は顔をムンクの叫びのようにするヨシ。こいつこんなに面白いやつだったっけ?
「初めまして、クラスではよく会うけど話すのは初めてだよね?シンの彼女の若狭めいです。シンから聞いているよ!野球部の期待のスラッガーなんだって?」
「あっ…はい…あっ違う、そうだよ。」
ようやく驚きから解放されたのか、めいの返答に答えるヨシ。
そして当然の疑問を彼女に言う。
「めいさんはシンと付き合っているのか?」
「そうだよ?」
めいは当然だよとばかりに答える。
「正直、こいつ特別かっこいいわけでもなく、至って普通過ぎるぐらい普通な高校生だけど?」
まぁ…事実だししょうがない。
しかし、めいはヨシの言った事を悪口ととらえたらしく、不機嫌を露にする。
彼女は何か言いそうにしていたのでここはフォローを入れよう。めいは学校では人気者だからな、ヨシに悪い気持ちを持たせたくもないし。
「帰り道でサブカルの話をきっかけに仲良くなってね。それからしばらく一緒に帰っていくうちに自然と交際する事になったのだ。」
少し間が悪かったかもしれないが、会話に間をはさむ。本当はだらけ仲間だが、そこは省略した。きっかけは嘘ではないし。
「へぇー、めいさんはサブカル系とか知っているんだ。」
何か言いたそうだっためいもその気持ちを抑えて質問に答えた。
「…そうね。アニメとか見ているかな」
とりあえずこれで仲はとりもったかな?
じゃあ次は僕も彼女に質問しよう。
と、その前に飯だ。
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「初めまして、シンくんと吉田くん。クラスは違うけど同じ学年の坂野絵里です。シン君のお話はめいからよく聞いているよ」
眼鏡のおさげの子はえりさんというらしい。なんでも中学からのめいの友達でめいは色々相談に乗ってもらっているらしい。
お昼も食べ終わり、俺らは教室にあったソファーに座りながら談笑していた。
「で、シンよ。この事は隠しているって本当か?」
ヨシとえりさんに俺たちの交際の報告とどう見守っていてほしいか伝えた。
すーすー
その内容は俺とめいとの関係を内密にしてほしいという事だ。
理由は単純、無難に過ごすためである。これで俺とめいが付き合っているとなると大変悪目立ちする。
それはめいも俺も望むところではないので近しい人にだけこの関係を教えてサポートしてもらおうという事にしたのだ。
「まぁ いいぜ、けんか別れとかめんどくさいことにならなければ」
すーすー
「私も応援するよ。二人の関係を」
二人もすぐ了承しくれた。
「ただ…」
とえりさんが何か言いかける。
「うん?」
「めいはいつもそんな感じなの?」
と横になっているめいに目線を向ける。
今は俺が膝枕を彼女にしている状態だ。
彼女の頭を撫でながら答える。
「そうだよ。びっくりするでしょ?学校でのキャラとずいぶん違うから」
「私、彼女とは中学からの仲だけど、こんな状態の彼女初めて見たわよ」
「俺なんて同一人物なのか怪しいと思っているよ。あんな活発な若狭さんがこんなにシンになついているの見ると」
この状態をばらしたくないのも付き合っているのをだまっている理由の一つだと教える。
「なるほど、人気者にも特有の悩みもあるんだね」
「私も少し気づいてあげるべきだったかしら?」
まぁ、本人が隠していたのだからえりさんがその点を責任に感じるのは別に問題ではないと思う。
「そう、良かった」
まだ少ししか話していないが、えりさんはいい人そうだ。俺も何か彼女の事で相談するのもいいかもしれない。
「じゃあ、私たちはここでお暇しようかな」
「えっまだ時間あるよ?」
「いいから、いいから。 ほら、ヨシ君も」
といってえりさんはヨシを連れて教室を出て行った。
するとまるでタイミングを合わせたようにめいが起きた。
「うぅーん、あれえりは?」
「なんか用事があるのか出て行ったよ?ヨシも一緒に」
「あっそう…」
そういうとごそごそとスカートのポケットから棒状のものを出した。
「ほい」
耳かきをめいは持っていた。
「かいて」
断る理由もない。
「了解」
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かりかりかりかり
かりかりかりかり
「そこそこ。そこ掻いて掻いて~」
「了解しました」
めいへの耳かきを始めて数分
彼女はとても気持ちよさそうにしている。
彼女にヨシの印象はどうだったか聞いてみよう。
「どうだった?ヨシの事?結構いいやつだっただろ」
「あの人、私とシンの事を不釣り合いとかいったからむかついた」
と即答された。
やっぱり…あそこで話題を変えたのは良かったよ。
「ちょっと失礼だったかもしれないけど、根はいいやつだ。何より俺以外にもアニメの事あいつと話せるよ」
「そういうのはシン以外としない」
ヨシよ、紹介しておいてなんだが、これからはめいの好感度を上げるよう努めてくれ。
かりかりかり
「どうして?」
「私がシンと話したいから」
そういうと耳かきはもういいと言われ、耳から耳かきを出すとめいは俺の方を向いた。
「めんどくさい…かな?」
真っすぐと俺の目を見ていう。
こんなの反則だ。
きりっとした彼女の目は俺にだけなのか、どこか弱そうに見せてくる。
そんな表情で見られるとこちら側が罪悪感にかられるというものだ。
「全然…いらない気遣いだったかな、でもこの関係を隠すのに彼の力は必要だよ。」
それも本当だ。万が一という事がある。ばれてしまった時に彼に様な立場の子がいれば説明もしやすい。
「……わかっている」
納得したのかそれ以上何も言わない。
「じゃあ次は俺ね。俺もなんか耳ムズムズしてきた」
「うん!」
そういってめいと俺は交代をした。
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かりかりかり
今、私はシンの耳を掻いている。
「どう、シン気持ちいい?」
「うん」
かりかりかり
付き合ってそろそろ数か月。
正直、シンさえいればいいと思っていたのに、どうやら気を使って似た趣味の友達を紹介してくれた。
嬉しいなー、シンが私の事を考えてくれているの。
彼は地味とか普通と自分を卑下しているが、彼の包容力は素晴らしい。
いつも疲れている私をすぐに元気にしてもらっている。
それだけで私は十分なのに彼はそれに気づかず、私の事をいつも気にかけている。
ますます好きになるよ。シンの事。
シンが今日紹介したお友達に関してだが、後で注意でもしようかと思ったけど、シンの言葉に免じてやめてあげよう。
かりかりかり
しかし、ナイスえりちゃん。
私の寝ている振りを見破って、さらに空気を読んで二人っきりにしてくれた。
シンやヨシ君は全く気付いていなかったので、ただ単にえりの観察眼がずばぬけているのだと思う。
そういう彼女の配慮ができている所に私は信頼を置いている。
おかげでシンとこうして耳かきができて和めている。
学校ではできないと思っていたので余計に幸せだ。
「あっ大きいのもあるよ」
「じゃあお願いできるかな?」
「いいよー」
肌を傷つけないように慎重にと…
よいしょっよいしょっ
かりかり ごり かりかり
あっ上がってきた。もう少し…
かり かり そ~っと
ぽんっ
「とれたー。大きいよー」
「うわっでかいなー。」
「初耳かき記念にとっておく?」
笑顔で聞いてみる
「ははは、汚いから捨てな」
とシンは言った。
別に冗談でもないし、シンに汚い所なんてないよ…
まぁいいか、耳かきなんてこれからいつでもできる。
そしてシンは教室にあった時計へと目を向ける。
「そろそろ時間だね、教室戻る?」
「…いや、ぎりぎりまでいたい」
教室にいても、周りがうるさいだけなのであまり戻りたくない。
もう少しこの時間を過ごしたい。
「そうだね…じゃあもう少し掻いてよ」
「はい」
せっかく学校で一緒に居られるのだから。
そうして、昼休みの終わりを知らせる予鈴がなるまで幸せな時間を過ごした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
所変わってえりとヨシ
教室を出た後、彼らは彼らで話し合いをしていた。
「えっ?寝たふり?」
突然えりが言った事に驚くヨシ。
「そう、めいはかなり君のお友達にお熱なんだよね。あの子、演技上手だから分かりにくいけど」
気づかなかった。それに気づくこの子もすごいな。
「後、少しだけいやーなオーラ感じなかった?」
「まぁ確かに感じた、あの甘い空気の中にどこかいやーな空気が混じっていた。よくシンは一緒にいられるなと思ったよ」
「多分、シン君にはその空気は伝わらないよ。あの子が邪魔だと思う子だけにしかしないから。」
「はははっ、可愛いとこあるんだね、めいさんも」
「のんきに何いっているのだか、あのままいたらあなた何されていたか分からないよ?」
「はははっまさか」
何の冗談かとヨシはえりの言った事に返事をしたら彼女は言葉を続けた。
「私の中学で一人の女の子がいたの」
どうやら中学の時の話らしい。
「その子の彼氏がめいの事を好きになって別れたらしいのよ、でその腹いせに女の子はあの手この手で腹いせをしたのよ。」
うわー女の世界って怖いとヨシも思った。
「するとね。1か月後にそのいじめていた女の子が転校したのよ。」
えっ?
「最後のお別れ会みたいなのをやったのだけどね、その時また私の観察眼で気づいた事があったんだよね。」
「その子、めいには近づこうとしなかったのよ。顔はお別れ会の見るような別れを惜しむような顔をしているのにね。めいも近づこうとしなかった。」
「でも、それはただまだ逆恨みを持ったままってわけじゃないの?」
ヨシの疑問に首を振るえり。
「一瞬だけね、めいとその子が目を合わせたんだけど、その子怯えた表情をしたのよね」
まさかとヨシは思う。
「決定的なのは後日その話題をめいに振った時の話よ。」
「めいさんがなんて?」
「…私、彼女に何かしたのって聞いたの」
そしたら「少しだけ話し合いをしたよ、で改心したみたい」だって」
…
「いじめを受けていたにも関わらず、その相手を転校においやる事なんてあなたにできる?」
ヨシは言い表せない恐怖を感じた。
「そこから私は深く聞かなかったよ。正直怖かったから。ただ…」
「私はめいが心配。めいはどこか異常なのよ。そんな一面があってさらに普段のとシン君に対する態度よ?いくら器用な人でもあそこまで変われるのは辛いのだと思う。とにかくあなたも気ををつけてね。」
えりの言った内容に驚くヨシ
正直まだ若狭めいの事は分からないが、この子は本当に若狭めいの事を心配しているのだろう。
なぜ、そこまでするのか分からないが、ねぎらう事ぐらいできるだろう。
「…なんかよく分からないけど、お前けっこういいやつだな。」
「有難う」
そう言い残し、えりは彼女の教室へ戻っていった。
その後、ヨシは教室に帰ってきためいとシンを見た。
シンは相変わらずで、めいもえりから聞いた話が本当と思えないぐらい良い子だ。
でも、あの空気を、そしてえりの話が本当だとしたら…
シンへと視線を戻す。
友達ながら彼の交際を心配する。
これを彼にいうのは野暮というものだ。まだ問題が起きていないのに「お前の彼女やべー」とは言えない。
なので彼にはできる事は見守る事だけだ。
願わくは落ち着いた交際を彼にはしてほしい。
そして、それを忠告してくれたあの子にも何かしら報われてほしい。
そう願わずには入られなかった。
ここまで読んで戴き有難うございます。
引き続き「だら恋」の方を楽しんで読んで戴ければ幸いです。