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いしのいし
ふと呼ばわれた気がしてあたりを見渡した。
なにも
だれも
このぼくを呼んでいなかった。
なにも
だれも
このぼくを気にもしていない。
そりゃあそうだよぼくは石。
道端にひっそりと
川縁にひっそりと
ただそこにあるだけの石。
いったいだれがこのぼくを呼ぶだろう
いったいなにがこのぼくを気にかける?
石は石らしく
意思をもたずに生きるだけ。
石は石らしく
冗談じゃねえやふざけんな。
たといこの身は石なれど
なんでここにある心を捨てにゃあならん?
気にされなくても
呼ばわれなくても
どうだっていいじゃねえか
そんなん関係ない。
光りたいわけじゃない
丸くもならなくっていい。
ただあるのはこのおもいおもいだけ。
ほんの少しだけ
動けた。




