執事と騎士
頭痛でダウンしていました。
少し時が流れ、ウィリアムが10歳を迎えた。
祝いは家族間で行われ、執事と騎士の話になった。
専属が一人ずつつくことになるから、候補者を選ばないといけない。まぁ、採用試験だよね。
ちなみに、おれが執事になるって提案もあったんだけど、親という名の後ろ楯がないことと年齢、時間などの都合上なしになった。
んで、今んところの肩書きは『相談役』。
話し相手をしたり、手を貸したり、そんな仕事。
メイドさんや騎士の人との交流も増えたな。
話をしにくるメイドさんから、よく花やら菓子やらを贈られるんだけど、子供扱いされてるのかね?
あぁ、同じ転生者のロカさんとはたまに連絡とってる。始めの頃は、桜草を鍵で叩いて音声電話をしてたけど、途中から面倒になって、通信用の魔道具作った。
ここ最近は、山奥の家にこもって武器作ってるって。エルフの姉さんとドワーフのおっちゃんに急かされてらしい。頑張れ職人。
執事と騎士の採用試験は、面接と実力の二つで決まる。
実力の方は、アドルフさんが見るそうだ。
勝てる人いないんじゃないかな?
「アルバ・ストリア。殿下のお役にたてればと思い、参りました。」
スラスラと自己紹介を並べていく候補者達。
うん、その目がウィルを向いてれば良いのにね、なんでセバスさんしか見ないのかな?
貴族の候補者が終わると、平民層からの候補者になる。
あのさ、見るからに馬鹿にしてる態度をしないでよ、貴族諸君。蹴り飛ばすよ。
「ノエル・リーゼロッテです。ジャック殿の噂をお聞きしまして、乳兄弟であられるウィリアム王子殿下にお会いしたいと思い、参りました。初めまして、ウィリアム王子殿下。」
スッとお辞儀をする青年。
ウィルを見て、おれを見て、そしてセバスさんを見る。
あ、セバスさんの目が緩んだ。この子は期待できそうかな?
「ご両親は何と?」
「私の家は薬師をしているのですが、あまりにも怠けていたのでウィリアム王子殿下とジャック殿を見習えと、叩き出されてしまいました。執事の事は妹に相談しましたが、無理だろうと。一刀両断でしたね。自分でも無理だと思ってます。」
あっぶね、吹き出すところだった。
妹さん辛辣、一言ぐらい応援してあげてよ。
そして玉砕覚悟で来てるこの子面白い。
他にも、何人か面白い子はいたけど、セバスさんからは不評だった。ウィルは微妙みたいだ。まぁ、初対面だしねぇ?好き嫌いもわかんないよ。
「では、ノエル殿はどうでしょう?」
おれの提案に、ウィルは頷く。
セバスさんは少し悩み、頷いた。
「わかりました。執事候補の枠はノエル殿で。後は実力ですね。騎士の方々も気になりますし、移動しましょう。」
実力試験は合同で行うから、騎士さんの訓練所を借りてある。執事候補の子達を連れて移動していく。
騎士候補はケヴィン王子が面接する手筈になっていた。兄弟最年長と国王候補だからね、目を鍛えるためだってさ。
「お、そっちは終わったか。」
「アドルフ殿。」
訓練所に移動すれば、アドルフさんが既に待機していた。
少し待っていれば、騎士候補の人達もやってきた。
「うむ、皆の試験を担当しておったのだが、急用かできてしまってな、代理を用意させてもらった。」
代理?え、そんなの聞いてない。
セバスさんを見れば首を横に振られた、聞いてないって。
「ジャック、こちらに。」
おいこら待て。は?
え、代理っておれなん?冗談だろ?
「何、案ずるな。お主レベルに太刀打ちできんようなら、執事や騎士など務まらんだろう。」
いや、おれけっこう強くなったよ?
負けはせんだろうけど、相手のプライドさ。仮にも十歳児に負けたら結構ショックじゃない?
渋っていたら、ウィルに袖を引かれた。何ぞ?
「ジャック、頑張れ!」
笑って激励してくれるウィル。
・・・オーケー、可愛い弟のためさ、やってやんよ。
腰に差していた桜草をウィルに預け、前に出る。
「ジャック・ウィードです。アドルフ殿の代理を務めさせていただきます。」
きっちり礼をする。
明らかに侮ったのが大半、一部は顔をひきつらせ、一部は歓喜に顔を緩ませる。
待て?そこ何で歓喜してんの?
「あぁ、ジャック。今日は見物に来ている者がおる。ご婦人もおるゆえ、流血沙汰は避けるようにの。」
「大丈夫です。体術しか使いませんので。」
もとから剣を使う気はない。見物の人はともかく、候補には女性がいるし、怪我させるのは忍びない。
そうか、とアドルフさんは頷いてどこかへ行ってしまった。
「では、準備のできた方から前へ。」
貴族の青年が前に出てきた。
得物はレイピア。
礼儀にのっとり、一礼。
「いつでも、どうぞ。」
袖をまくって告げれば、青年が動く。
鋭く突き出された一撃を避け、腕をとって一回転。
「重心がよりすぎです。踏み込みが深くなれば、もっと良くなりますよ。」
呆けている青年を起こし、次。
侮っていた者達は怖じ気づき、歓喜していた者が前に。
「あのジャック殿のお相手ができるなんて、光栄です!よろしくお願いします!」
あのって何?
え、おれ有名になってんの?
「よろしくお願いします。いつでもどうぞ。」
得物は剣。
斬撃を避けて、切り返しには手を添えて受け流す。
そのまま回し蹴りに繋げたが、かすっただけ。
「素早いですね。」
「恐縮です!」
突きから払いへ。
大振りになった所で、腕を掴んで腹に掌底を入れる。
ひっくり返った青年を起こす。
「あ、ありがとうございます。ダメですね、おれ。」
ものすごい落ち込んでる。
いや、一番手より遥かに良かったよ?
速さも実力も。
「焦りがなくなれば十分やっていけますよ。経験を積んでいきましょう。まだ若いんですから。」
「はい!」
明るくなった青年は客席側に移動。
さて、次は誰かな?
「次、よろしくお願いします!」
えっと、あの、うん。
なんでそんなに嬉々としてるの?
本当におれ何かしたっけ?心当たり皆無なんだけど?
「よろしくお願いします。」
うん、結論から言うと。
執事はノエル・リーゼロッテ君、騎士はシルバ・ウィスク君ということになったよ。
驚いたのは、二人とも強かったこと。他にも何人かは強い子いたけど、二人はおれの体術に合わせてきた。
ノエル君、細く見えたんだけど中身ゴリッゴリの筋肉で、蹴りを一回腕で受けたけど、結構重いし痛くて鞭みたいだった。しなやかで軽い動きが印象的。
シルバ君は、筋肉で語りましょうって感じ。力が強くてかなり焦ったね、迫力あったし。筋肉の鎧でも着てるのってぐらい堅かったのが印象的。
「ジャック君、おつかれさまでした。」
「いえ、中々楽しかったです。」
解散した場でセバスさんと話していた。
ジャックはノエル君とシルバ君、二人の挨拶の相手をしてる。
「坊主がジャックか?」
のっそり、と現れたのは大柄な熊のような男性。
でっか、見上げなきゃ顔が見えねぇな。
「僕がジャックです。貴方は?」
「おぅ、おれはウォルフだ。中央ギルドのマスターをしてる。アドルフがな、面白い子がいるから誘ったらどうだって言ってきやがったから覗きにきた。」
おや、ギルドのマスターって結構な大物じゃん。
アドルフさんの知り合いって大物ばっかだね。
「ギルド、ですか。」
セバスさんが困惑したみたい。
まぁ、おれって王城内で住み込みしてるし、養ってもらってる方だからなぁ。決定権は国王様らへんだろうし。
「ん?陛下には許可はもらったからな。息抜きとか勉強のためになるってことで、たまには子供らしく遊べってさ。城に引きこもってちゃ、人生もったいねぇぞ。」
あー、心配された、のかな?
セバスさんは納得したようで、ウィルには説明しておくと言って、背中を押してくれた。
ウォルフさんに連れられて街へ。
賑やかさに顔が緩んだ。
「こっちだぞ。」
街を進んで、大きなロッジのような建物の前につく。
大きな木製の扉を開けば、人、人、人。
山賊のような人から貴族のような人、行商人やドワーフもいた。
「まずは登録だな。おれが行くと目立っちまうし、一人で行けるか?」
「はい。受付のカウンターで合っていますか?」
「おぅ。また後で迎えに行くな。」
頭をグリグリとなでられ、受付へと進んだ。
次話は、三日後に投稿します。




