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思春期におけるエーベルハルトの日記

作者: さんさん

五月一日

十二歳の誕生日に父からプレゼントを貰う。

幼なじみで同い年の召使を一人。

僕をチビだとかモヤシだとか馬鹿にしていたクリスティーナだ。

彼女がどんな顔で僕の前に現れるかと思ってたけど、一昨日会ったときと変わらず偉そうでムカついた。

「メイド服を着てるんだから、主人に敬語ぐらい使え」と言ったら、小さな声で「はい」と言った。

「はい」「小さくてどこにいるかわかりませんでした」

飯抜きにしてやるあのデカ女。



五月二日

クリスに起こされて目が覚めた。

「口が開いてたので薬草を詰め込んでおきました。鼻の通りが良くなったんじゃないですか」

同じことをしてやると固く決意。


クリスは本当に夕飯を食べられなかったみたいだった。

空腹のクリスの前で優雅に朝食。が、クリスはあまり悔しがったりはしなかったみたいだ。

「一食抜くぐらい慣れっこだ」と言ってた。



五月三日

クリスへの寝起き強襲は失敗。召使の朝は早いらしい。

午前中、勉強。そういえばクリスは学校へ行かないのかな。

午後、クリスと遊んだ。今まで男の子みたいな服を着ていたから、スカートは走りにくいと言っていた。

楽しかった。



五月四日

クリスと一緒に昼ご飯を食べた。

クリスはおいしいおいしいと言っていた。僕もおいしかった。

最後にお礼を言われた。かなり気分が良かった。



五月五日

クリスは掃除がうまい、とメイド長が褒めていた。


学校に行かないのかとクリスに聞くと、辞めたと言ってた。びっくりした。

僕のせいなのか。

本を読んでいいかと聞かれたので、自由にしていいと言ってやった。外に出て遊ぼうと誘ったけれど、本を読みたいと断られた。

ふざけんなと思ったけど、雨も降って来たので、僕も仕方なく教科書を開いた。

クリスが読んでる本が気になって、あんまり頭に入らなかった。



五月八日

今日、街に出る途中クリスのお父さんとすれ違った。

荷車に大きな荷物を積んでいた。

そのことを父言うと、クリスには言うなと言われた。


もしかして、クリスのお父さんはこの町を出たのだろうか。クリスは知らないのだとしたら…

クリスはひとりぼっち?



五月十日

クリスの元気がない。

クッキーをあげたり、本を本棚ごとあげたけど、元気がない。

どうしたんだって聞こうとしたけど、やめた。

家に帰りたいとか言われたら、なんて言えばいいのかわからない。(父に聞いたら、クリスの父さんはやっぱり家を捨てたそうだ。クリスのことも捨てたのか?)



五月十一日

クリスは元気になっていた。散々心配をかけておいて、あれは演技だったのかと思えるぐらいだ。


クリスが紅茶をいれるのが得意だというのでやらせた。おいしいか聞かれて、正直に「普通」と言ったら、二杯目に砂糖水が出て来た。「さっきのより旨い」と言ったら、

「もういれない!」

本気で怒っていた。



五月十二日

クリスに起こされると一発で目が覚めるけど正直やめてほしいときもある。

バカクリス。



五月十三日

クリスがまた紅茶をいれてきた。

薄かったのでそう言うと、

「金持ちは舌が鈍いんですね、かわいそうに」

また怒った。

でもなんか、お茶を下げる背中が落ち込んでた。



五月十五日

クリスと遊んでいて、膝を擦りむいた。

クリスと友達だった時に怪我をした時は、クリスは僕を散々馬鹿にしてから、舐めれば治るから、と適当に舐めてきたぐらいだったのに(もちろん、僕は嫌がった)、今は違う。慌てて飛んで来て、「大丈夫?大丈夫ですか」だって。

ですか、ってなんか嫌だな。

でも、きちんと手当てしながら「エーベルは本当に鈍いなぁ」と言ったクリスは今までどおりのムカつくクリスだった。



五月十六日

クリスが窓を拭いているのを見て、どうしてかは知らないけど、いきなり、「クリスはうちの使用人なんだな」と思った。

クリスは僕を見つけると、「エーベルの家、窓ガラスが多すぎるよ」と文句を言った。「しっかり磨けよ」と言ったら、雑巾を投げてきた。

「首にするぞ」と言ったら、びっくりした顔で、「やめて」と言った。

そんな必死な顔されると思わなかったので、驚いて返事ができないでいると、クリスが泣きそうになった。何が何だかわからない。

「しないよ」と言うと、クリスはほっとしたみたいにため息をついて、一生懸命窓ガラスを拭き始めた。

僕はなんとなくその場に居たくなくて、逃げ出した。



五月十七日

クリスが紅茶をいれてきた。おいしいと言ったら笑ってたけど、なんだか元気がないみたいだった。

あと、クリスの僕への態度がおかしい気がする。

よそよそしいというか。



五月十八日

やっぱりクリスがおかしい。僕の言うこと、なんでも「はい」って言う。

敬語ばっかりになっちゃったし。

僕が「首にする」って言ったからだ。

忘れてたけど、クリスはうちで働かないと、一人ぼっち。クリスに行くところなんてない。クリスはそれを知らないと思ってたけど…

そうなったのも、多分、僕が父にクリスを欲しいって言ったからだ。

僕のせい、だけど、クリスと毎日遊べて楽しい。

クリスがいなくなるのなんて考えられない。



五月十九日

肉を切らせて骨を断つ。本に載ってた言葉だ。



五月二十日

やった。僕はやったぞ。「パンツを見せろ」とクリスに言った!いくら僕の命令でもこれは聞けまい。

案の定、クリスは僕の頬っぺたにビンタをかましてくれた。今すごく腫れてる。やった。痛い。やった。


…僕、何をこんなに必死になってるんだろう。



五月二十二日

クリスと一緒に遊んだ。生まれて初めて木登りでクリスに勝った。

クリスは「スカートじゃなかったら」とか言ってたけど、負けは負けだ。

おやつのマドレーヌ、僕が一つ多く食べた。



五月二十五日

クリスにまたチビって言われた。

牛乳の量を増やしてもらう。



五月二十六日

お腹を下した。



五月二十七日

クリスが僕のまだ読んでない本を読んでいた。何の本かと聞いても「関係ない」と言うばかり。

別のメイドに尋ねると、「恋愛小説ですよ」とあっさり教えてくれた。

クリスはずいぶん夢中になってるけど、そんなもののどこが面白いのかわからない。



五月二十八日

クリスの読んでた本を盗み見た。

「愛してる」「身分の差なんて」「二人で逃げよう」…

やっぱりつまらなかった。

あと、クリスに見つかって殴られた。



五月二十九日

不可抗力。なのに、殴られた。


白だった。



六月一日

今日でクリスが来て一ヶ月になる。早いものだ。

僕はよく知らないけれど、メイド長のアンネ曰く「クリスは働き者」らしい。

アンネが褒めていたことをクリスに言うと、嬉しそうにして、そのあとずっと鼻歌を歌っていた。

単純なやつだ。


あと、三ヶ月ぶりに母が帰宅した。

まだ声を聞いていないけれど、お変わりなさそうで良かった。



六月二日

母がまた出て行った。忙しい人だ。



六月五日

部屋にネズミがいた。尻尾がミミズみたいな大きいやつで、本当に気持ち悪かった。

逃げ回っているとクリスに笑われた。ネズミ捕りを仕掛けてくれたが、「ネズミが獲れたら唐揚げにしよう」などと言う。

僕は慄いた。あいつは人間じゃない。



六月六日

ネズミの唐揚げは嘘だったらしい。クリスは顔が真っ赤になるくらい笑っていた。くそ。

腹が立ったので物置の整理を命じたら、

「あそこ、入ってみたかった」とかなんとか嬉しそうに言う。


二人でかくれんぼをして遊んだ。珍しいものがたくさんあって、面白かった。

服が埃まみれになったけれど、父は笑って許してくれた。

アンネは次からは古い服を着てくれと悲鳴を上げてたけど。

明日も入ろう。ああ、明日はボダルト先生の授業だ。イヤだなぁ。



六月七日

物置で遊んでいたら、クリスがケガをした。足首まで血が流れていて、僕と二人で真っ青になってアンネに泣きついた。

大事はないらしい。心配かけやがって。

そういえば、クリスの血なんてはじめてみた。あいつは女のくせに猿みたいに身軽だから。リンゴを片手で潰せるっていうのは本当だろうか。怖くて聞けない。


夕食後、父に呼び出された。これを書いたら行こうと思う。



六月八日

・母が母でなくなる

・父はしばらく家を離れる

・クリスティーナと僕は兄妹



六月十二日

ここ数日、いろんなことがあった。八日の日記は酷い殴り書きだ。ようやく頭の整理がついてきたので、ちゃんと書き記しておこうと思う。


母と父が離婚したらしい。前々からそんな気がしていたけれど、悲しいかな、僕はまだ幼いらしい。父に辛く当たってしまった。(謝罪はした)

もともと家に居ない人だったし、僕自身彼女を母親だとしっかり認識してたかどうか分からないぐらいだけれど、やっぱり家族が減るっていうのは、心の大事な部分が抉り取られたような気持ちになる。

さらに不幸なことに、父が仕事で二月ほどうちを離れるらしい。僕も来ないかと誘われたけれど、断った。

僕のいない間、クリスがサボったり逃げ出したりしたら困るから。

父は僕に留守を任せてくれた。もう一人前と認めてくれたのだ。父に注意されたことを忘れないように記しておく。

・早寝早起き

・朝晩歯を磨く

・食べ残しをしない

・物を壊さない

・勉強する

・クリスと仲良くする

・でも仲良くしすぎない

最後の二つがよく分からないけれど、相手は僕のメイドだ。メイドと遊び呆ける主人がどこにいる。


あともう一つ、いろんなことの一番最後。そのクリスティーナについて。

父はクリスを養子としてうちに迎えていたらしい。

本当はクリスにメイドの真似事なんてやらせたくないらしいのだが、クリスがどうしても働かせてくれと頼んだらしい。

学校を辞めたのも彼女の希望で、僕のせいじゃなかった。父は「クリスを学校に行くように説得してくれ」と僕に頼んだ。

任されよう。僕の頭脳にかかればクリスなんてひとひねり。

「矜持のある子だ」と、父が言っていた。「矜持がある」とは「誇り高い」、くらいの意味らしい。


絶対に秘密にするようにと注意してから、父は僕に本当のことを教えてくれた。

クリスの家は、経済的にとても苦しかったらしい。家族で一緒に住めないくらい。


僕の母は僕らが嫌いだから一緒に住めなかった。

クリスの家はお母さんがいなくて、お父さんは、クリスと仲がよかったと思う。

嫌いだったら一緒に住めなくて、嫌いじゃないけど一緒に住めないこともあって…

大人はややこしい。

もし僕が家族を持つことになったら、その時は絶対家族一緒に住む。

毎晩家で寝て、ご飯も、家族だけじゃなくて使用人も一緒に、大勢で食べたい。


クリスと暮らせないと思ったクリスのお父さんは、僕の父にクリスの世話を頼んだらしい。

父はクリスを気に入っていたから(「ああ、クリスちゃんがうちの子だったらなぁ!」と何度聞いたことか)、僕の妹として大事に育てようと思ったんだけど、クリスが嫌がったんだって。

だから戸籍上だけクリスは僕の妹で僕の家族。クリスはこのことを知らなくて、ただの使用人として住まわせてもらっていると思い込んでいる。

クリスが僕の家族。クリスが僕の家族だから…僕の家族は一人も減っていない。

クリスの家族は、むしろ増えた。

ああ、クリスに言ったら喜ぶだろうな。絶対秘密だから、そんなこと言ってやらないけど。


一つ、ほっとしたこと。

クリスが一人ぼっちになったのは、僕のせいじゃなかった。

でもクリスがもう一度、一人ぼっちになることがあったら、それは僕のせいだ。そんな気がする。



六月十三日

父は明日発つ。どうか、お仕事がうまくいきますように。早く帰ってきますように。


クリスの様子がまたおかしい。ときどき無言で僕を睨んでくる。

木苺を摘みに行こうと誘っても「今頃木苺なんか生ってない。本を読むからいかない」とか言う。

ああ、まったく、ネコみたいな奴だ。ネコの方が本を読めない分、よほど可愛い。



六月十四日

父を見送った。背筋をピンと伸ばして歩く後姿は本当にかっこいい。大人になったら、父のような人になりたい。

(そしてできれば、母よりも優しい人と結婚したい)


クリスの機嫌が直らないので、仕方がない、主人かつ兄の僕から歩み寄ってやることにした。

明日、怒っている(っていうか、沈んでる)理由を聞いて、ごめんなさいをさせる。簡単なことだ。

どうか殴られませんように。



六月十五日

クリスなんか、だいっきらいだ。



六月十七日

僕はそんなこと、覚えていない。

クリスとはまだ口を聞いていない。


十五日のことを書こうと思う。日記で文字にすると、心が軽くなることがあるから。


クリスは、僕のお母さんがいなくなったことで、ある記憶を思い出したらしい。

小さい頃、僕がクリスのお母さんがいないことで、クリスをからかったそうだ。

僕が、「そんなこと覚えていない」って言ったら、クリスは「都合のいいことだけ、忘れるんだね」って言った。あと、謝って、って。

覚えてないこと謝れないだろ。それに、もし本当に僕がそんなことをクリスに言ったとしても、そんな昔のことどうして今更謝らなくちゃいけないんだ。クリスだって忘れてたのに…

ああ、腹が立ってきた。やっぱり僕は悪くない。

「女は情緒不安定な生き物なんだ」。その意味がやっと僕にも分かりました、父さん。



六月十九日

「涙は女の武器だ」

僕はそこにこう付け足そう。

「クリスの涙は最強だ」


昨日、初めてクリスが泣いてるところを見た。

眠れなくて、裏に出た。そしたら、クリスが池のそばでぼんやりしていた。

本当に間抜けなことだから、誰にも言わないけど、ここにだけは正直に書く。

僕にはこのときのクリスが、月の妖精みたいに見えた。月の妖精は髪が長いんだけど…でも、クリスの金髪はとても綺麗だから、月明かりで銀色に見えたんだ。飛びそうで、消えそうだった。クリス、体重重いのに。

僕は急いでクリスに声をかけた。「おい」。

「何」

クリスは答えた。すごくそっけなかった。でも僕はどうかしていて、クリスが消えてしまったら困るからって、仕方なく隣に行こうとした。

そしたらあいつ逃げようとした。

慌てて腕を掴んで引き止めた。顔を見たら、泣いてた。

あのクリスが泣いてたんだ。犬に噛まれても、崖から落ちても泣かなかったクリスが。

心臓が止まるかと思うくらいびっくりした。

「何がそんなに悲しいんだ」って僕が聞いた。「悲しいんじゃない」ってクリスが言った。

「僕と喧嘩して寂しいんだろ」って僕がずばり聞いた。「違う」ってクリスが言った。絶対嘘だ。


それ以上、僕に何か言えることがあったか?

僕は黙って、クリスのそばに座っていた。クリスはずっとしくしく泣いていた。あいにく僕はハンカチ一枚持っていない。クリスにハンカチを貸してやる義理もないけど。

とにかく、事態は膠着していた。どうにかして部屋に返さないと、ていうか仲直りしないと、僕は「クリスと仲良くする」という父との約束を破ることになる。


僕は泥をかぶることにした。「ごめん」、と、謝ってやった。

「ごめん」

「何が?」

「小さい頃にクリスに酷いことを言ったこと」

「思い出したの?」


ああ、僕、泥はかぶれても嘘はつけない。言葉に詰まってしまった。

クリスは呆れ声で、「適当になら、謝らなくていいよ」って言った。声がものすごく冷たかった。

僕は考えた。クリスと仲直りしなきゃ父に顔向けが出来ないし、クリスが泣いているのは良くないことだ。

早く仲直りして木苺を摘みに行きたい。ジャムを作って二人で食べるんだ。


「思い出してないんだけど…」

僕はおそるおそる言った。

「僕、今お母さんいないだろ。それだけで悲しいのに、クリスに片親だって笑われたら、もっと悲しくなると思う。

覚えてなくても、クリスがそんな悲しい気持ちになってたら…」

なってたら、の後に何て言うか考えたけれど、浮かばなかった。寝覚めが悪い、は少し違う気がするし。

言葉が次げないでいると、クリスの方がやっとしゃべった。

「ごめんなさい」


今度こそ、本当に心臓が止まったかと思った。


「本当は、もういいの。怒ってないの」

以降、彼女の言った支離滅裂なことを要約すると……


・エーベルが寂しいだろうと思ったら、私まで寂しくなった

・寂しくなって、過去を思い出した

・これからのことを想像した


それでどうして僕に当たるのか分からないけれど…彼女は言った。

「不安で、怖くて、いらいらしたの」

不安で、怖くて、いらいらする。

その気持ちには覚えがあった。

母が(まだあの人を母って呼んでいいのかな?)、何日も帰ってこないとき、僕は不安で、いらいらして、怖くて…もしかしたら、そんなときにクリスに、酷いことを言ったかもしれない。


昨日は初めてづくしだった。クリスが弱音を吐くのを、僕は初めて聞いた。

「仲直りしたかったけど、エーベルに許してもらえなかったら、私行くところがない。

食べていけない。お腹がすくわ。ひとりぼっちになる。

ひとりぼっちになったら、寂しいよ」

そんなことはしない、クリスは僕の家族なんだ、って言いかけた。でもその前にクリスが、

「家に帰りたい、お父さんに会いたい」って言った。

本当は、クリスが泣くのは嫌だし、クリスが寂しいって言うのは嫌だし、クリスと遊べなくなるのは嫌だったけど、僕はクリスが家に帰りたいって言ったのを聞いて、すごく嫌な気持ちになった。

「でも、帰る家なんてないだろ」

クリスが泣きながら頷いた。

「だったら、ここにずっといないと。今度帰りたいって言ったら、追い出すから」

クリスは何度も頷いた。僕は安心した。クリスを立たせて、一緒に部屋に戻った。手を繋いでやった。温かかった。

「寂しいなら一緒に寝てやろうか」って聞いたら、「平気」って。全然そうは見えなかったんだけど。


長くなってしまった。指が痛い。



六月二十二日

今日はアンネの誕生日だ。クリスと一緒にラズベリージャムを作ってプレゼントした。僕らの分ももちろん作った。おいしかったし、楽しかった。アンネは感動で泣いちゃった。


忘れてたこと。クリスを学校に通わせないといけない。

クリスはきっと勉強が好きだ。いつも本を読んでるから。

僕の勉強時間が終わったときに、それとなくクリスに学校へ行かないかとたずねてみた。答えは「行かない」。

もしクリスが学校に行くことになったら、あまり一緒にいられなくなる。でも、父の言いつけだ。守らないくちゃ。

僕と一緒に家庭教師に教わってもいいんじゃないかと思ってクリスにそう言ってみたけど、それは尚更できないのだそうだ。家庭教師は学校よりも授業料が高いらしい。

そんなこと、気にしなくていいのに。



六月二十三日

午後、クリスと街に行く。

好きなものを買えばいいのに、クリスは全然欲しがらない。

仕方が無いので、花束を一つ買った。僕の部屋に飾るから、持ち帰れと命じた。

クリスはにこにこしていた。

けれど、家に戻る途中、学校に行く奴らとすれ違って、クリスの表情は曇った。クリスの友達もいたらしい。

もう一度、クリスに学校に行かないか聞いてみることにする。



六月二十四日

クリスが学校に行くことになった。

彼女は嫌がったが、僕が「行かないと首にするぞ」と言うとあっさり折れた。本当に、首と言えばなんでも従うんじゃないかな、こいつ。(パンツ以外。)


ていうか、大体うちにはクリスの学費ぐらい負担にならないのに。

申し訳なさそうなクリスは見慣れないので、落ち着かない。



六月二十六日

今日からクリスが学校に行く。

クリスのことだから、いじめられるわけなんかない。むしろいじめようとした奴へのクリスの制裁がひど過ぎやしないか心配だ。


僕だけどうして家で勉強しなくちゃいけないのかな。

クリスは嬉しそうに「行ってきます」「ありがとう、エーベル」、と言った。

やっぱり、メイドだけしてるクリスの方がいい。



六月二十八日

クリスの機嫌がいい。

学校が楽しいのかと聞いたら、

「とても!」

…生意気だ。

「エーベル、ありがとう」を十回も二十回も聞いた気がする。


僕は全然楽しくない。



六月三十日

クリスに学校を休ませた。

今日は一日、僕と一緒にいさせた。

「言うこと聞かないと、首にするよ」と僕が言うまでもなく、クリスはそれを恐れたんだろう、「うん」と頷く。


でも、なんでだろう。クリスと遊んだのに、全然楽しくなかった。

クリスはずっとしょんぼりしてるし。

クリスに合わせて四時からは部屋で読書をした。なのにクリスはやっぱり辛そうな顔をしていた。


「どうしたんだよ」

僕が尋ねると、クリスが答えた。

「エーベル、こんな命令…」

彼女は一瞬口をつぐんで、最初とは違う言葉(多分だ)を言った。

「私達って、友達?」

どうしてクリスがいきなりそんなことを聞くのか分からない。

ちょっと悩んで、僕は答えた。

「クリスはうちの家のもので、僕のもの」

聞いてクリスは、雨が降り出したのを見つめる時みたいな、変な顔をした。


とりあえず、明日はちゃんと学校に行かせてやるつもりだ。

笑わないクリスは、一緒にいても息が詰まるから。



八月一日

今日でクリスが来て三ヶ月になる。

クリスは相変わらず僕のことをバカにしてるけど、以前に比べたら少しはマシになった…かもしれない。

ここ最近僕は一気に背が伸びたらしくて、クリスと目線が同じになった…かもしれない。いや、なった。うん。


明日、従兄弟のステファンが来る。月末には父も帰ってくるし、今月はクリスの誕生日もある。いいこと尽くしだ。


クリスがアーモンドのクッキーを焼いてくれた。

おいしかった。



八月二日

僕もステファンと同じくらい大きくなる。そしたら、クリスだって僕のことをもっと敬うはずだ。


ステファンは相変わらず元気で、でかくて、女好きだった。

僕の傍にいるクリスを見て、

「砂糖菓子みたいな女の子だ!」

なんて言う。

クリスもクリスだ。あんなに真っ赤になって、しどろもどろになって。

クリスのどこが甘いって?頭?腕?お尻?

あの乱暴者をかじったら、砂の味がするだろうな!


それはそうと、ステファンはものすごいお土産をくれた。

表紙の彼女なら、ハチミツの味がするに違いない。



八月三日

今日はステファンとクリスと三人で街へ行った。クリスは相変わらず何も欲しがらなかったけれど、花のついたブローチを可愛いと言っていた。


十日がクリスの誕生日だということをうっかりステファンに教えてしまった。

ステファンの奴、「じゃあ何かびっくりするようなプレゼントを用意します」とかなんとか、まったくキザったらしい。ていうか、いつまでうちにいるつもりだ。

クリスは困っていた。そりゃそうだ。僕からのプレゼントも嫌がるぐらいだからな。

クリスは何をしたら喜ぶだろう?



八月四日

僕が宿題をしている間、クリスとステファンは二人でおしゃべりをしていた。

「仕事をしないと首にするぞ」と言ってやった。

クリスはごめんなさい、と素直に謝って、すぐに戻っていった。

クリスを脅すのは久しぶりだ。クリスの元気がなくなるからあんまり言ってなかったんだけど、腹が立ったから。

クリスを見送ってステファンが僕に言った。

「お前はバカだなぁ。そのうち絶対、後悔するぞ」

よく分からない。



八月五日

クリスにプレゼントは何がいいかと聞く。

そんなものいらない、と言われた。やっぱりか。

でもここで諦めたらステファンに負ける。

「なんでもいいから言えよ」

「欲しくない」

「ブローチは?」

「いりません。高いものは、困る」

しばらく言い争って、やっと聞き出したクリスの欲しい物がこれだ。

「ゆっくり本が読みたい。私がこの家に来てすぐ、エーベルと一緒に本を読んだでしょ。雨の日に」

そんなことでいいのか。

僕が分かったと言うと、クリスは笑って頷いた。


ステファンは相変わらず。



八月六日

ああ、ステファン早く帰れ。



八月七日

ステファンが用事があるらしく、今日は久しぶりにクリスと二人だった。

ここのところうるさい日が続いてたから、ゆっくりできる。寂しい気もする。

家の中を探検して、地図を作った。二人で秘密の部屋を決めて、誰にも内緒にしようと約束した。三階の1番端っこの小さな部屋だ。日当たりが良くて、埃っぽくて、でっかい家具が散らかってて、最高!

クリスはそこに本と古いランタンを持ち込んで、僕は果物と、飲み物と、お気に入りのクッションと、仕方なく教科書を持ち込んだ。

ばれないようにやるのはすごく楽しい。

「僕の誕生日には、ここでフルーツケーキを食べよう」

と僕が言ったら、

「一緒に作ろう。でも、来年までにちゃんと掃除しなくちゃね」

だって。

すごく楽しみだ。


なんとなく、クリスが誕生日に物を欲しがらないわけが分かった気がする。

でも、僕はクリスに何か物をもらったらとても嬉しいとも思う。


よし。決めた。明日買いに行く。



八月八日

アンネに頼み込んで馬車を出してもらった。

クリスが可愛いと言った花のブローチはすぐに見つかった。売れてなくてよかった!

用事が済んだらさっさと家に帰る。ステファンとクリスが二人きりなのは良くない。


もしかして、ステファンは昨日クリスの誕生日プレゼントを買いに行ったのか。



八月九日

クリスとステファンと一緒にケーキを作る。夏みかんのたっぷり乗ったやつだ。

今すぐ食べたいけど、我慢。



八月十日

クリスは夏みかんのフルーツケーキの味。


今日はたくさん書くことがある。忘れたくないのは、一行目だけ。


朝一番に、ステファンはクリスに子犬をプレゼントしていた。ステファンは昼には帰らなければいけなかったらしいから、そこは譲ってやった。

クリスは多分、ステファンからのプレゼントを突き返すつもりだったんだと思う。

でも、茶色の小さな子犬は可愛くて、クリスの顔をぺろぺろ舐めてた。

クリスは困った顔で笑って、「何かお礼をしなくちゃ」って言った。

「では、この子犬を可愛がってあげてください」

「はい。それじゃあ、名前をステファンにしますね!」

僕は反対したんだけど、クリスは聞かなかった。ステファンもにやにやしてさ。

でも結果的には、

「ああ、ステファン!そんなところでおしっこしちゃだめ!」

良かった。


クリスがあんまり嬉しそうにするものだから、僕はプレゼントを出しそこねてしまった。


お昼を食べて、ステファンは帰った。僕が「また来いよ」と言ってやると、

「クリスちゃん、また来るからね」

もう来なくていい。


僕らは部屋に戻った。秘密の部屋でも良かったけど、やっぱりまだ埃がすごいからやめた。

窓を閉めてカーテンを開けて、僕は椅子に、クリスはソファに座って本を読んだ。

しばらくそうしてたんだけど、やっぱり退屈だ。眠くなるし。

ノートに落書きするのをやめて、僕はクリスを見た。クリスは本を開いたまま、すやすや居眠りしていた。

僕はここで思い付いたのだ。

「今のうちにブローチをクリスにつけて、クリスが断れないようにすればいい!」

そーっとクリスに近付く。足音を立てないように、爪先歩きで。

僕はクリスの前にしゃがんで、クリスを見上げた。クリスはよく眠っていた。

急いで、そっと、白い襟元にブローチを付けた。ちょっと斜めになったけど。

よし。僕は頷いて、もう一回クリスを見た。

それで、キスをした。三回。


…やっぱり、おかしい。

流れ的にも不自然。ブローチあげたら離れろよ。クリスが起きたら困るんだから。


どうしてこんなことしたんだ?

夏みかんフルーツケーキなら、お腹いっぱい食べたのに。


しばらくしてクリスは目を覚ました。クリスはブローチにも気付かず、「そろそろ洗濯物を取り入れなきゃ」と出ていった。

それからクリスと顔を合わせていない。クリスがブローチを喜んだのかも分からない。


本当に、僕はどうしたっていうんだ。



八月十一日

クリスとまた喧嘩をした。

僕のあげたブローチを、クリスは「いらない」と言って返してきたんだ。

どうしてだよ、って怒鳴ったら、

「いらないものはいらないの。エーベルからは、何も貰いたくないの」

なんだそれ?


ブローチはクリスの目の前で床にたたき付けてやった。

思い出したら腹が立ってくる。

クリスなんか、大っ嫌いだ。



八月十二日

晴れ。特に書くことがない。



八月十三日

クリスに出ていけって言いかけた。でも言えなかった。

代わりに「大嫌いだ」って言ったら、「私も大嫌い」と言われた。



八月十五日

アンネに説教される。

「女の子を泣かしちゃいけませんよ」

って。

「ブローチが欠けちゃったと泣いて、エーベルに嫌われたと泣いて、エーベルに酷いことを言った、と泣いて、きっと追い出されるわと泣いて、一人ぼっちに…」

「もう分かったよ」

僕が遮るまでアンネはまだまだ話し続けそうだった。

聞いていると僕まで泣きそうになったけど、こらえた。

「クリスティーナは坊ちゃんと対等でいたいんですよ」

と、アンネは僕を撫でながら言った。

対等に、という言葉が僕の頭の中でぐるぐる回っている。こうして書いている今も。


明日、クリスに謝ろう。絶対。



八月十六日

後の記念、約束の証として、朝起きてからこの瞬間までの、今日という日を事細かに記さねばならない。


朝早く、僕は朝の掃除に勤しむクリスに紳士的な態度で声をかけた。

「クリス、話があるんだ」

聞いて、クリスは一瞬悲しそうな顔をした。多分、辞めさせられるのだと勘違いしたのだと思う。

でも僕はうろたえない。あくまで紳士的な態度を貫き、彼女を僕の部屋までエスコートする。

窓を閉めて、カーテンを開けて、僕はクリスに謝った。

「ごめん、クリス」

クリスは目をぱちくりさせた。あ、泣くな、と思って、何も言わないでいると、やっぱりクリスだ、泣く寸前でとどまった。

「私も、ごめんなさい」

そう言って、クリスが差し出してきたのはアーモンドのクッキー。前に僕がおいしいって言ったものだ。

「謝ろうと思って、焼いたの。ブローチ、本当は嬉しかったんだけど……」

「おいしそう!食べていい?」

「うん」

クリスは本当に要領がいい。しばらく席を外したと思ったら、紅茶を持ってきてくれた。

これまでで一番おいしかった。

クッキーを食べながら、僕らは話をした。

「どうしてクリスは僕からのプレゼントを受け取ってくれないんだ?」

「私、何か買ってもらう資格なんてないよ。ここに住まわせてもらって、お腹いっぱい食べさせてもらって」

僕は言った。

「でもそれはクリスが働いてるからだ」

「施しを受ける分までは、働けてない」

「施しじゃないよ」

思わず、声が大きくなる。クリスがびっくりするくらい。

「施しじゃないよ。僕がどうしてもクリスにしてあげたかったことを、施しだなんて言うな」

「でも」

クリスは僕の手をぎゅと握った。

顔が近くて、どきどきした。

「でも、前にエーベル言ったじゃない。クリスはうちの家のもので、僕のものだって。私がちゃんとしていないとエーベルはすぐに首にするって言う。

それって、主人とメイドでしょう。主人とメイドが対等なのは、私が働いて、あなたがお金をくれて、その瞬間だけだよ。

それ以外のことをしてもらったら、私はエーベルと対等でいられなくなる」


クリスの言葉を聞いて、僕はしばらく返事が出来なかった。

言葉で頭を殴られたみたいにぼうっとして、クリスの真剣な目を見ていられなくて、俯いた。

思い出してみる。クリスがうちに来てから、僕がクリスにしたこと。

一生懸命働くクリスを、やめさせるぞって脅した。

本当は働かなくてもいいのに、クリスは毎日早起きして、僕の言うことを守ってた。僕が何か「あげる」って言ったとき以外は。


今、五月一日からの日記を読み返した。

クリスがひとりぼっちになるのを怖がっていた。そんなクリスに、僕は一人ぼっちをちらつかせた。どうしてか?

僕も怖かったからだ。ひとりぼっちになるのが。


僕はなんてバカだったんだ。

ひねくれてて、うそつきで、人の気持ちの分からない冷血人間だったんだ。


「クリス、ごめんなさい」

僕は謝った。心から。

クリスは首をぶんぶん音が鳴るくらい振った。

「私はいつも、エーベルにありがとうって思ってるよ」

「僕も思ってる。僕といてくれて、ありがとう」


そのあとは二人とも、とても恥ずかしかった。二人ではにかんで、紅茶をすすった。

そうこうしているうちに、ようやく決心がついた。

何の決心かと言うと、うん。まあ。

「クリスティーナ」

このときの僕はいつもにまして紳士的だったと思う。

「ときどきは、僕のプレゼントを受け取って。僕の気持ちだから」

「それは、命令?」

「違うよ。お願いだ」

クリスは頷いた。続けて、僕は言った。

「それから、結婚して」

クリスの手からカップが滑り落ちるという、喜劇みたいなことが起こった。

クリスは絨毯に広がる染みを慌ててナフキンでふき取る。僕はおろおろとクリスを見ていた。

「それは…それも……お願い?」

「ええと、申し出かな。対等な」

人の顔がここまで赤くなるとは知らなかった。

トマトみたいに真っ赤になったクリスは、小さな声でこう言ったんだ。

「承ります。大人になったら、約束」

絶対に約束だ、と言って、僕らはまたお互いにクッキーを摘んだ。

とんでもなくおいしかった。

五回味わってから僕は勉強に取り掛かり、クリスはハーブ摘みに出かけた。

昼食、夕食を済ませ今に至る。



八月十八日

クリスがブローチを持ち歩いているのだ、と教えてくれた。欠けているし、メイドに目立つアクセサリーはダメだからと。

私服のときにつけるものを、今度贈るよ、と言ったら、変な顔でありがとうと言う。

「まさか、服がないの?」

「自分で買うよ。欲しくなったら」

ああ、早く大人になって、結婚して、「服を共有しないか」と申し出たい。


父から手紙が届いた。

二十日に家に着くそうだ。

嬉しい。クリスティーナが本当に家族になるんだって、早く言いたい。



八月十九日

ステファンに結婚式の招待状を送っておいた。

日付は五年後の五月一日。



八月二十日

父が無事帰宅した。

お仕事は大成功だったらしい。疲れたとは言っていたけれど、元気そうに見えた。お土産は僕に地球儀、クリスに綺麗な鏡と、犬のおもちゃと上等の餌。(犬を飼い始めたと手紙を出しておいたから。父は犬が大好きだ)


さっそく、僕は父にクリスと結婚の約束をしたことを報告した。

第一声がこれだ。

「やっぱり、仲良くしすぎるんじゃないかと思ったんだ!」

それから、僕を立たせて、クリスを追い出して、こまごまと説教をした。

要約するとこうだ。


・結婚できるように、クリスちゃんの養子のあてを用意しておく

・だからお前は、クリスちゃんと、その家に恥じぬようなお付き合いをしろ

・つまり段階を踏んでお付き合いしろ


そこらへんはばっちりだ。最初のキスが三回で、次のキスが五回だから。次は七回かな。段階的に。


・お前はわがままだから

・クリスちゃんを泣かせるな


……要努力。


・クリスちゃんに、髪を伸ばして可愛い服を着るように要請しろ


そう言ってフリルのたくさん付いた服を取り出したのを見たとき、僕は初めて父にあらぬ疑いを持った。

とりあえず分かったと返事をしたけれど、どうしようか。

男の子の服を着ていても、メイド服を着ていても、スカートを持っていなくても、クリスはクリスだ。


でも、ちょっと。

ハチミツっぽいクリスも、見てみたいかもしれない。





五月一日

僕らは、約束を果たした。

同時にもう一つ、約束をした。

後の記念、約束の証として、朝起きてからこの瞬間までの、今日という日を事細かに記さねばならない。



おしまい

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― 新着の感想 ―
[良い点] さんさん様の書かれる文書が本当に好きです。 ムーンライトとなろうにある作品全て、拝読出来て幸せです。 ありがとうございます
2019/08/22 05:48 退会済み
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