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二十六日目~三十日目

更新するって言ってたけどすっかり存在忘れてた。

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『二十六日目』


夜が明けた。

静かな夜だった。


女の子はまだ目覚めない。でも今は落ち着いている。

昨夜は酷く熱が上がって大変だった。

しばらくは様子を見てそれから仮眠しようと思っていたがそれどころではなく寝る暇もなく何度額の汗をぬぐい水を飲ませたことか。

まあ落ち着いてくれてひと安心だ。

だがまだ油断はできない。下がりつつあるとはいえまだ熱はある。

早く目を覚ましてくれればいいのだが。



太陽が真上にきた。

女の子は静かに寝息をたてている。未だ目を覚ましそうにない。

まだ元気があるうちにこの階の奴らを倒しておくことにする。

今はまだ平気とはいえ何時までも起きていられる訳ではないのだから。



《重要》 打撃は効果が薄い。

緊急時には倒すよりも転ばせることを優先したほうがよさそうだ。



奴らを倒すか閉じ込めるかしたあと、女の子が目を覚ました。

熱がまだあるせいか意識が朦朧としている上、記憶も曖昧になっているようだったのでまだ休ませた。しかしだいぶ体調は良くなっているようだ。

早ければ明日には行動できるだろう。


持ってきた水と食料はもう残り少ない。教室の中を漁ったが物資はなかった。

なるべく早く拠点に戻らなければ。



・自分の状態

右目失明 眼帯装着済

声の喪失 女の子とは筆談で意志疎通可能

記憶の欠如 現状問題なし

空腹感の喪失 今の状況で食べなくてもいいのはありがたい

少し疲れている



・女の子の状態

まだ熱がある。少なくともあと一晩は休ませてあげなくては。

外傷は特になし。


・持ち物

水と食料 残り少ない

医薬品

サバイバルナイフ

タバコ

拳銃

弾薬

鉄パイプ




『二十七日目』


朝になって女の子が目を覚ました。熱はもうない。

彼女の名前は葛木小春。この学校に通っていた生徒だったとのこと。


名前を聞かれた時はとても困った。

僕は自分の名前を覚えていない。だから答えられない。

それだけではない。

それどころか目覚める前の記憶だけでなく両親の名前も思い出せない。というより聞かれるまで自分に両親がいたことすら忘れていた。

一応顔は思い出せたのだがそれ以外のことはよく思い出せない。

昔の記憶もよく思い返してみれば所々虫食いのように途切れている部分がある。

いったいどうして


なんで僕はこんなことになっているのだろうか?


それはともかくだ。


前にいた集団では『ワンアイ』と呼ばれていたことを伝えたが呼びづらいということで新たに『カタメさん』と呼ばれることになった。 こっちのほうが名前っぽくていいかも。


ここで何があったかを聞きたい気持ちもあるがまずはここから脱出したい。

第一に食料がもうない。水も余裕はない。

安全の面でも問題は山積み。この階の奴らはなんとかした。しかし他の階にはうじゃうじゃいる。この階に来ないとも限らない。

危険。


とりあえず自分の拠点に行くことを提案してみる。



少し話し合った結果拠点に戻ることになった。

外に出る前に拳銃に弾を装填しておく。

これからは必要になる。




休憩一回目


奇妙なことが起こった。

奴らが襲ってこない。自分だけでなく葛木もいるというのにだ。

葛木も襲われない人間だったのかと思ったが違うらしい。

なにか襲われなくなる条件でもあるのだろうか。

そもそも奴らになる原因すらわかってない。

わからないことだらけだ。情報はいつだって不足している。



休憩二回目


避難所暮らしが長かった葛木には拠点まで歩くのは辛いようだ。二回目の休憩を取ることにした。

襲われないとわかったとはいえ奴らのすぐ側を歩くのも精神的に良くない。




たまに奴らのなかに知り合いがいないか探してしまう。

見つけたら悲しいだけなのに。それでもふとしたときに視線を走らせる。

ただ死んで地面に転がっているなら良い。奴らになっていたのなら最悪だ。

学校から逃げる時の葛木はとても辛そうだった。きっと知り合いがたくさんいたのだろう。



暗くなる前に拠点のショッピングモールに着いた。ひとまずは安心だ。

拠点と避難所は距離的には少し離れている程度だが至るところにバリケードがあるせいで倍以上の時間がかかった。

こまめに休憩したとはいえ葛木の疲労は大きそう。話は明日。もう休ませよう。



葛木から小春と呼ぶように言われたのでこれからはそう呼ぶことにする。

ここでも小春と書くことにする。


・自分の状態

眼帯着用

声の喪失

記憶の欠如

空腹感の喪失




・小春の様子

疲れているみたい。まだ回復してないだろうから休ませる

でも食欲がないらしい。



そういえば 拳銃必要なかった





『二十八日目』


久しぶりに拠点で迎える朝だ。やはり安全な場所で寝るのは良い。ゆっくり休めた。

ひとまず朝食を取りながら話を聞いたのだが避難所暮らしだった小春からは前に聞いたのとは違う視点での話を聞けた。



・避難所で起こったこと


まず事の起こりはおよそ一ヶ月半前。 これはかつての仲間たちから聞いた話と一致していた。

奴らが現れ始めたとき小春は学校にいた。

そのまま学校の教員や生徒のほとんどは学校に立て籠ることを選択した。

一部の生徒は家に戻るために出ていったがほとんどが戻ってこなかった。

(小春は奴らをゾンビと呼んでいたがここでは『奴ら』に統一)

それからは逃げてきた避難民たちと共に学校で生活していた。



余談になるが生き残った人の中には暴徒になる人もいたがいずれも長くは生きられなかったようだ。

当然といえば当然かもしれない。この国では身を守る武器を手にいれるだけでも一苦労だ。

暴力による支配は最初こそうまくいくこともあったようだがやがて立ち向かう人が出てくると数には勝てず追いやられやがて孤立し誰にも助けられることなく死んでいったらしい。 いい気味だ。


話がそれている。


その生活が壊れたのは数日前。

ある生存者の一団が合流したのが切欠。

詳しいことはわからないがその時に何かしらの諍いがありそのときの混乱で門が壊れた。

小春は奴らから逃げるために校舎に逃げ込みロッカーの中に隠れた。そうしているうちに気を失ってしまった。


以上が小春から聞いた話である。


結局この事態が起こった原因はわからなかった。

それ以上に避難所もけっして安全ではないとわかったことが一番の収穫。気を付けよう。



このあとは小春にショッピングモールの中を案内する。

気に入ってくれればいいんだけど。


・自分の状態

眼帯着用

声の喪失

記憶の欠如

空腹感の喪失


・小春の様子

熱も下がりすっかり元気になったように見える。

食欲はあまりないらしい。



『二十九日目』


小春にほかの避難所の話を聞いた。

この付近には三つ避難所があったらしい。

一つは小春を見つけたところ。すでに壊滅している。

あとここから西に行ったところにも避難所があったらしい。聞くところによるとある日突然連絡がつかなくなったらしいので無事であるとは考えづらい。

最後の一つはここから北にしばらく行って川を越えた先にあるらしい。いつか行ってみようか。



今日はこれから昨日小春に言われたがバリケードの再建を行おうと思う。

何日か前に作ったバリケードはどれも簡易的なもの。一人の限界だ。

でも今は一人じゃない。小春がいる。

女の子に無理をさせるつもりはないが軽い物だけでも運んでもらえればだいぶ楽になるはず。



すべてのバリケードを補強完了。

作業は予定以上に捗った。その分疲れたけど。

小春もはりきり過ぎてしまったらしく疲れきっている。 監督不足。無理はさせたくない。

ねぎらいのために食料品置き場からチョコレートでも持ってきてあげよう。


チョコレートは貴重だがとても役に立つ。

体感でしかないがこの身体は食事をとらずとも問題はないがとれば回復が早くなる。 まるでゲームの回復アイテムみたい。ゲームほど夢も希望もないけど。



・自分の状態

眼帯着用

声の喪失

記憶の欠如

空腹感の喪失


・小春の状態

せっかく元気になったのに疲労してしまった。



『三十日目』


今日は朝から二人して筋肉痛。

なので今日は特に活動はせず体力の回復に努めることにする。


小春は少し朝食を食べたあとまたすぐ寝てしまった。

無理をさせたつもりはないのだがきっと精神的なものもあるのだろう。ここでの生活で少しでも安らぎを感じてくれればいいのだが。


そういえば最近小春がお腹が空きにくくなったと言っていた。奴らに襲われなくなったことといいもしかして俺と同じ?

でも小春の身体には傷などない。 奴らに噛まれたわけではない?原因は?


考えられるとしたら看病しているときだろうか。あのときやむを得ないとはいえ口移しで食事をさせたのでもし俺がなんらかのウイルスを保有していたのなら

でもそうだとしてもなんで小春は俺と同じになった?

ここから奴らになる原因がウイルスだと仮定するが俺が保有しているものが奴らになる類いのものであれば小春は奴らの仲間入りしていたはずだ。

偶然小春も適応できる人間だったとでもいうのだろうか? それこそバカバカしい。

いやむしろ奴らは


休むと決めたのになに考えているんだろう。

やめる。想像を書き続けてもどうしようもない。



結局寝ている小春の隣で奴らの観察をしている。身体は痛いし疲れも残ってるが眠る気にもなれないのだ。



そういえば前に空き缶で奴らの注意を引いたことがある。

それをもっと効果的に、

例えば時計のアラーム機能なんかで奴らを誘導できないだろうか。昔読んだゾンビ物の漫画や映画なんかでもよく使われた手だ。

現実とフィクションを混同するのはよくないことだが使えそうなアイディアは試してみなければもったいない。

僅かながらとはいえ知能が残っていると思われる奴らには何度も通用するとは思えないがそれでも何度か通用するなら十分役に立つはずだ。


でも明日にしよう。

今日はもう寝る。日記も今日はここまで。



おやすみなさい。

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