一日目~三日目
息抜き用のさっと書けるしさっと読める感じのお話です。
『一日目』
目が覚めると学校にいた。
まず目についたのは教室の荒れ具合だ。机や椅子がめちゃめちゃに倒されその上にうっすらと埃が積もっている。少なくともこうなってから少なからず時間が経っているらしい。
何故こんなところにいるのかと思い記憶を思い返そうとしたがどうも記憶がはっきりせず思い出せなかった。
幾つかの無事だった机の上にノートとシャーペンを見つけた。これに記録をとっておこうと思う。そうすれば万が一記憶を失ったとしても今より悪いことにはならないはずだ。
それに加え現在の自分の状態も記録しておく。
・自分の状態
記憶に欠損がある。昔のことは思い出せるのだがこうなるまでの過程が思い出せない。
声の喪失。先程気づいたのだが声が出せない。これではコミュニケーションが取りづらくなる。
視界が狭い。右目を覆うようになにか巻いているようだ。また、体の至るところに包帯が巻いてあることから自分はどうやら怪我をしたらしい。
現状痛みはないため治っている?万が一ということもあるため確認は医療品発見後にする。
追記 救急箱発見後、廊下に設置されている鏡で自分の姿を見たところ体の傷はほぼ完治していた。
だが右目は完全に失われており視界の回復は不可能。見ていて気持ちの良いものではないためできる限り包帯などで覆い隠しておく。
教室の名前と窓から見える外の風景からここが最上階であることを推測。窓から校庭を見た際幾つかの歩く人影を発見。だがいずれもふらふらしていて様子がおかしい。
彼らとの接触は控え現状把握のために探索をすることにする。
・探索結果
二つある階下への階段にはバリケードが設置されていた。驚くほどしっかり作られており壊さない限り出ることも入ることもできないだろう。教室の荒れ具合はバリケード設置のために机や椅子を使用したからだと思われる。
中央の教室にて三体の死体を発見。いずれも学生で男。死体や教室の状態から殺しあった事が推測される。死後時間が経っているらしく少し臭った。殺し合いに使用されたと思われるナイフを発見、回収する。
死体を発見した部屋の隣で少量の食料と水、救急箱を発見。三人が生き残るには明らかに量が少ない。おそらく殺しあいの原因だと思われる。
探索を終え最初の教室に戻ると日が落ちかけていることに気づいた。暗くなってからの探索は危険なので今日はここまでにする。
最後に持ち物の確認をしておこう。
・持ち物
食料 3日分
水 五リットル
ノートとシャーペン
ナイフ
・目標
現状確認
『二日目』
日が昇る前に目が覚めた。そのまま日が昇るまで動かずに耳を済ますがなにも聞こえなかった。
不思議と空腹を感じなかったが残された食料の幾つかは長持ちするものではなかったためそれらを優先的に消費する。
窓から外を確認するがなにも変わっていない。ふらふらと歩く人影達に倒れて動かなくなった人影が加わったぐらいだ。不用意な接触は危険と判断。様子見を続ける。
今いる階の探索は終え使えるものももうない。食料も心もとないためバリケードを壊し階下へ行くことを選択にいれておく。
再度の探索を終えたがこの階で新たな発見は最早ない。危険な賭けだがバリケードを壊し階下へ行くことにする。
・探索結果
三階に人影はなし。二階と三階を繋ぐ階段にも簡易的なバリケードが設置されていたのでそのおかげと思われる。
教室にて非常用の乾パンと飲料水を発見。見つけた物をすべて合わせると相当な量になりしばらく飢える心配はない。ただし持ち運びは困難。
また、先生の物と思われるリュックを発見。中には教科書のほかにタオル、ライター、タバコ、サイフ、車の鍵があった。
三階の至るところに古い血痕を発見。だが死体は見つからず。
階下から呻き声が聞こえた。
おそらく階下にいるのは窓から見えた人影と同じものだろう。彼らが今どんな状態なのか、何が起こっているのか確認するべきか迷う。
危険を犯すことはないと判断。しばらく籠城することにする。
少しだけ水を使ってタオルで身体を拭いた。気持ちよかった。
その際自分が見覚えのないアクセサリーを着けているのに気づいた。それも一つではないしデザインもバラバラだ。
自分はいつの間にこんなものを着けたのだろうか?だが外す気にはなれなかった。
・自分の状態
右目があったところに包帯を巻き隠している。その他の傷はほぼ完治済み。
声の喪失。コミュニケーション能力の欠如。この状況では致命的か。
記憶の欠損。なにかきっかけがあれば思い出せると思うのだが。
どういうわけか空腹を感じない。ストレスによるものなのかはわからない。食事をとる時間を決め毎食必ず決まった量を食べることにした。
・持ち物
食料 たくさん
水 たくさん
ノートとシャーペン
ナイフ
リュック
ライター
タバコ
タオル
サイフと現金少々
・目標
生存
『三日目』
発砲音が聞こえた。どうやらまだ奴らのようになっていない人間がいるらしい。
外に無事な人間がいると思うとどうしても確認したくなった。昨日安全策をとると決めたばかりなのに浅ましいと思う。
頭では危険だとわかっているのに感情が押さえきれず確認しに行くことに決めた。
持っていくものをリュックに詰める。量は最低限。日が落ちる前に戻ってくるつもりだ。
最後にもう一度だけ荷物の確認をして、それが終わったら出発だ。
・持っていくもの
食料 少量
水 ペットボトル二本
ライター
ナイフ
ノートとシャーペン
《ここから先は筆跡が乱れている》
見つかった。
咄嗟に隠れたがおそらくバレているだろう。その証拠に足音がどんどん近づいて来ている。
こうなったのは奴らの姿を見たときに呆けてしまったのが原因だ。奴らの姿はホラー映画とかで見たことがあるゾンビとそっくりだった。
虚ろな目、剥き出しの肉、血塗れの口、内臓が零れたままふらふらと歩く姿はとても現実の光景だとは思えなかった。くそ、どれも恐ろしい。
こうしている間にもどんどん近づいてくる。もう数メートルもない。ナイフは役に立たないだろう。こんなちっぽけなもので奴らをどうにかできるとは思えない。
死にたくない。死にたくないないが生きたまま喰われるよりはこのナイフで首を切った方がいいのではないか。だけどそんな勇気はない。ああ、もし生き残れたのなら僕は
めのまえにいる
今ほど生きていることを感謝したことはないだろう。
奴は僕を襲わなかった。
隠れた僕を見つけられなかったのか、満腹だったからなのか。それともただ単に好みの味では無さそうだったのか。
理由なんてわからない。だが今わかるのは自分は奴らに襲われず無事に教室に帰ってこれたということだ。
落ち着いて考えてみればわからないことだらけだ。
何故自分は学校にいたのか?
何故世界がこんなことになっているのか?
何故世界がこうなるまでの記憶がないのか?
何故見覚えのないアクセサリーを身に付けているのか?
何故自分は奴らに襲われなかったのか?
疑問は尽きない。
実は奴らは映画のように人を襲ったりしないとか。
だがその考えは奴ら自身が否定している。確かに今まで自分は奴らに人が襲われているのを見たことはない。しかし奴らの身体には噛み傷があった。ちょうど人の口と同じくらいの噛み傷が。
では最初は人を襲っていたが今は襲わないとか?
それこそあり得ない。というか意味がわからない。
もしかしたら声が出なかったからかもしれない。現状では一番可能性がありそうだがそれでは奴らは視界に頼っていないという前提が必要だ。
そして最後の予想だが奴らに僕は認識されなかったのではないか?というものだ。
この際原因や理由は置いておいて何らかの理由で奴らの認識の範囲外に自分はいるのだと考えると昼に襲われなかった事や今まで無事だった事の理由になる。だがやはり突拍子がない考えだ。
これらの考察を踏まえ明日ある実験してみようと思う。
危険だが、もし成功すれば生存率は跳ね上がる。このまま引きこもり続けるよりはマシだ。
・実験の内容
奴らに自分が襲われるか否か。
・自分の状態
右目に包帯を巻いている。
声の喪失。戻る気配はない。
記憶の欠損。せめてきっかけがあればいいのだが。
空腹感の鈍化。相変わらず空腹にならない。かといって満腹になるわけでもない。
・持ち物
食料 たくさん
水 たくさん
ノートとシャーペン
ナイフ
リュック
ライター
タバコ
タオル
サイフと現金少々
日記の主さんは主人公のような王道ポジションではなくて公式サイトのキャラ紹介に『謎の少年』とだけ書かれるような人のポジションです。