星霜の神・・・其の名はクロノス
こんにちわ、楽しんでもらえれば幸いです。
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僕の数メートル先に一人の男の子が立っていた。
身長は160センチぐらいだろうか。
赤毛の髪。
美青年になる一歩手前の整った容姿。
外見からすると中学生ぐらいだろう。
ただ、物凄く粗末な衣服を着ている。
その男の子はあからさまにしょんぼりしながら僕を見ていた。
「知っているかい? 向こうの世界に焼きそばパンなる珍味があるのだよ。ソースがいっぱい絡めてある焼きそばをパンで挟む。そんな高尚な食べ物が誰でも買える世界」
「………………」(←返事がしたくてもできない僕)
「あっ、キミの妹さん可愛いね。そしてキミは生粋のシスコンだってね」
「………………」(←自分の身体が無くなっている事に驚き無言の僕)
「さて、運命の選択をしようか」
「………………」(←自分の姿が魂だけになっている事に気がつき無言になる僕)
「俺はこの部屋の守護神・星霜を司るクロノス。『神々の黄昏』を管理する主神の一柱。キミは『かぐやの箱舟』を攻略した正当なプレイヤーとしてあの部屋の一部となっている罪神の死と言う犠牲をもって罪は浄化され、あちらの世界に戻る権利を手にしている」
クロノスは小さく肩を竦める。
まさに『馬鹿みたいなゲームだろ』と言わんばかりの苦笑だ。
「あちらの世界に戻ったら、キミは祖国の英雄だよ。地位も権力も思いのまま。沢山のお金も手に入る。女の子達からちやほやされるし、やりたい放題だよ。そりゃ、ヴァルハラよりもパラダイスだろうね」
「………………」
「さてと」
「……シェル……どう……なる」
「ほほー、これは驚きだ、口もないのにこの空間で喋ってくるなんて。キミは何(、)か(、)持って(、、、)いる(、、)のかもしれない。僕でも見極められないとんでもない強い加護を」
「茶化すな……答えろ……」
「ははっ、本当はキミも想像がつくだろう。壁に取り込まれている罪神達の末路。シェル……それは蛇神だね。かつて七つの世界を飲み込もうとした大罪神。あちらの世界に帰還するためには深い『絆』を持つパートナーである罪神の命を犠牲にする。キミのパートナーの犬神は入室を拒否された。この事例から察するに、この『かぐやの箱舟』の意思がキミと蛇神の『絆』はパートナーに準ずる罪神と認識したのだろう。だから……罪神は消滅するよ」
それは死の宣告だ。
神に死という概念があるとするならシェルはそのカテゴリーに入るのだろう。
いや、シェルだけではない。
あの部屋に囚われた多くの罪神達も同様の結末を迎えてしまう。
無論、僕が本来の世界に帰還する事が前提だが。
「それともう一つ。俺はキミに七つの世界でたった一つの称号を授けにきた。『かぐやの箱舟』を攻略する事は名誉であり奇跡なのだから。この称号は不可侵。どのような特例も退ける、枚挙の暇がないほど特別な意味を持つ。言わば俺と肩を並べる最高位の主神と同列の権利」
クロノスがグイッと近づいてくる。
一瞬だけ口の端をニヤリっと持ち上げて僕を見定める。
「ふーん、あの鋼色の巨竜を随分とむちゃくちゃな方法で倒したのだな……と言うかカッコ悪い。うんこまみれの前代未聞最弱の英雄誕生だな。よって『排泄怪人うんこまみれ野郎』の称号を与える」
う、うそだろー! その称号、悪質なジョークにしか聞こえないぞー!!
「さぁ、『排泄怪人うんこまみれ野郎』の名誉を受けし人の子よ。運命の選択に行っておいで」
その言葉を最後に僕の意識がフェードアウトした。
いかがでしたか?
終盤戦です、この作品にもう少しお付き合いください。
新作、たんぽぽ荘も絶賛執筆中です。
感想お待ちしております。




