神の助骨稼働、巨龍との戦闘・・・えっ、何故、俺はエサなの? どうして裸なのですかぁーっの巻
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相手は二十メートルを超える鋼色の巨竜。
攻撃を躱す必要もない硬質な鱗。
大地に刻まれた狂擊の爪痕に冷え切る血溜りと亡骸を蒸発させる火球。
そして、強靭な顎に鋭い牙。
凝視するだけで意識が萎えそうな高位の野良神に対峙する為、僕は両手に持った『神の肋骨』四本に魂を吹き込む。
一本、一本……唇をつけて接吻をするたびに心臓が鷲掴みされるような痛みが走る。
もしかしたらこの動作を行う度に僕の魂が、彫刻刀で石膏を削るように磨り減っているのかもしれない。
これはシロ考案『作戦名・ウーワンダフル・骨入れ大作戦』に必要がガジェットなのだ。
作戦はいたってシンプルだ、『神の肋骨』の性質を利用する。
『神の肋骨』の野良神具現化に必要な力。
それは『神の欝し実』の能力者・アキトの接吻と大量の生体エナジーだ。
この奇策は巨竜の胃袋に『神の肋骨』四本放り込んで、内部から巨竜の保有する大量のエナジーを『神の肋骨』に摂取させて死滅させる作戦。
なのに……どうして、何故か、僕は素っ裸。
意味がわかんねーぞ!
「ふひひーっ。笑いが出る程完璧ですーっ。カンペキペキすぎて肋骨ペキペキ骨折なのですーっ。むひひひーっ」
僕は前と後ろの秘部を葉っぱで隠しながら身を屈めている。
ああっ、そんなにみないでーっ。
皆の視線を受け止めるにも心の準備が。
作戦前だと言うのに厳粛な雰囲気などありゃしない。
シロのケタケタとした笑い声が響いて巨竜の辺りまで筒抜け……この作戦大丈夫なのだろうか。
僕は危機感を募らせつつも巨竜は以外にもどっしりとリラックスしている。
殺意の欠片も見受けられない。
それどころか音も気配も消えて石像のように固まっている。
だるまさんがころんだゲーム世界大会に出場したならチャンピオンになれそうな勢いだ。
間違いなく優勝した時の二つ名は一人金縛りキングだろう。
「あはっ。アキト兄様……ピンク……桜色のちく……いえ、ツインタワー。ぽっ」
「ううっ、旦那様……感激です、興奮して血流が良くなり更なる出血が……ううっ、止血の為にも冥土の土産の為にもそのピンク吸わせてください」
「フレアルージュ、黙ってそこで寝ていろ」
「も、もう、寝ろなんて、旦那様ったら……こんな屍だらけのところで怪我人と青姦ですか……ぽっ」
「もう、黙っていろ……こら、コーちゃん。欲情しそうな目でお尻を見るなーっ」
こいつら、他人ごとだとおもって!
意を決する覚悟で注意しているのに皆、暖簾に腕押し状態だ。
現状打破、更なる悲劇を救うために僕は人身御供になりました(涙)。
沢山の懸念事項や飛びっきり性格の悪い作戦を反射的に勘ぐってしまうが、数え切れない不安を拭ってここは清廉に『家族』の『絆』を信頼する。
「むむーっ。安心するのですよ。両手に骨までもって、はじめ人間ギャートルズのキャラみたいで可愛いのですーっ」
「ギャートルズってなんやねん!」
右手に持て余していた感情を集めてポカリっと骨でシロをこつく。
シロは不意打ちに「ももーん」と叫び過剰なほど頭を抑えて痛さアピール。
お茶請けのお菓子を頬張ったようにほっぺをぷっくりと膨らませてププーッと僕に威嚇目線。
何だか穏やかな感じだぞー。
「ところでシロ。どうやって、あの巨竜の意識を引きつけて『神の肋骨』を食べさせるんだ?」
「むむーっ? ……えへへー」
「『えへへー』てなんやねん!」
こいつ絶対に後の事考えてねーやん!
僕の視線と詰問に応えず、かわりにやっちゃった感満載の醜態を晒しだしている。
これは犯罪的な確信犯なのでは!? ……と悩んで円形脱毛症になりそうな僕の肩がポンっと叩かれる。
「アキト兄様」
「どうしたミオン?」
「ボクはアキト兄様が大好きです。え、えっと……アキト兄様の口癖を拝借すると『家族』であり、深い『絆』で結ばれている」
ミオンはその朱玉色の瞳を強く輝かせながら素早く僕の右手を両手でがっちりと掴む。バランスを崩す僕をお構いなしにミオンの肉体から高濃度の闘気が漲る。
「なので、容赦なく食べられちゃってくださいーっ、なむなむーっ」
うおーっ!
僕はミオンに右手をグイッと握られたまま宙に浮く。
ミオンは見事な平衡感覚と身体バランス感覚を存分に発揮。
ジャイアントスイングのようにぐんぐんと回転速度がます。
ミオンに生殺与奪権の全てを委ねた僕はそれが他人事のようで、見繕った勇気と『家族』の『絆』を信じるように依存して。
だけど怖いぞー!
振り回された僕は慣性の法則に身を任せて電撃の閃光の如く弾丸のように飛ばされる。
ぴゅーんと一直線だ。
視界はグルグル回る。
そんな僕の身体は一流スナイパー並みの正確さで歯と歯の隙間にすぽっと貫く。
そして僕は巨竜の生臭い舌がクッションとなって大きく跳ね飛んだ。
素肌に絡みつく唾液。
艶かしく動く舌。
ビクンビクンと脈打つ鼓動。
間違いなくエロチックな形容だが、切なくなるほど臭い。
悶絶を押し殺しても瞳は戸惑うように潤み始め、一歩間違えれば意識を失ってしまいそうだ。
そんな巨竜のお口の中に先客がいた。
「おや、我が愛する義弟殿よ。こんなところでヌーディストかい。蜜月の約束を果たしてくれるのかな」
「歯の隙間に挟まっている人のセリフとはおもえないですよ」
「ふふっ、挟まってしまって抜け出せないのと、はまってしまって動けない……さて、どちらだと思う」
「心、病んでいますね……助けます」
「ああっ、うちの義弟殿は達観しているな。フレアなら『まぁ、殊勝にも歯垢に転職なされたの? その嗜みはお似合いですよ、おほほほほっ』などと言ってくるからな」
「そんな、妹の許嫁と言う束縛を僕にふらないでください」
「そうか……まぁ、フレアが勝手に許嫁と決めつけただけさ。あいつは頑固な甘えん坊だから……宜しく頼むよ」
「と、兎に角助けます」
「ああっ、咀嚼されてミンチになる前にお願いするよ」
どういう経緯で挟まったのかは不問にふして、僕は諧謔じみた微笑みを投げかけるサンタナの手を取り助け出すと同時だった。
唯一の道筋である、大きな喉ちんこの奥から故意としか思いようがない息遣いが!
べっとりと絡みついて上手く機能しない唾液まみれの身体がド級の引力の法則に従うように吸引された。
僕はうつ伏せの姿勢のままものすごい勢いで吸い込まれる。
抗う事もなく、突風でゆらゆらと飛び交う木の葉のように投げ出された身体。
「いってーっ」
ごっつい喉ちんこに頭部をぶつけた僕は一瞬にして視界が真っ暗になる、
そして意識混濁しながらもサンタナと二人、人生初の巨竜臓器巡りが始まるのであった。




