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友情と愛情、はじまる大戦と家族たちの生き様の巻

   ◆

『神々の黄昏』開始57日目。

僕は自分の意思でここに立っている。

大きな空洞に繋がる入口が柵で囲まれている小さな洞穴。

観音掘りのようなアイロンの裏側ぽい形は獲物を導き入れる罠のようだ。

場を和ます冗長なアメリカンジョークなど思考の片隅にも浮かばない。

灰色がかった深い霧が一面を支配して視界がおぼつかない。

漠然とだが圧倒的な淀みをヒシヒシと感じる。

僕の貧相すぎる勇気では今の身体の震えを抑制できない。

そう、ここが西方地域『かぐやの箱舟』の入り口だ。

シロが自慢の鼻をならしてクンクンとシェルの臭いを嗅いでたどり着いた場所であり、ギルドの優秀なプレイヤー達約600人が犠牲となった場所だ。


「むむーっ。兄貴さん、どうしたのですか? ブルブルと景気よく震えて、人間バイブレーターの練習なのですか……はっ、コーちゃん気をつけて! 兄貴さんがロケット人間バイブレーターとしてそっちの穴を狙っているかもかもーっ」

「狙うかボケーっ。と言うかコーちゃんも頬を紅潮させない!」


コーちゃんの羽を綿棒代わりに耳をコチョコチョしながらシロは終始リラックスムード全開。そんなシロに友好的に微笑みかけるミオンは程よい緊張感に包まれていた。

 正直なところ、シロの肝っ玉が今は羨ましい。

それに加えてここまで手を休めずにモンスター達と連戦の疲労感がどっと押し寄せてくる。

僕のガタガタブルブル感満載のわななきは傍からみれば、体力が消耗しきっている、はたまた日頃の運動不足からくる筋肉痛ように見えるだろう。


「アキト……兄様」


 きたー! 新たな義妹のお声かけがーっ。

 ミオンはまだまだ僕の事を『兄様』と呼び慣れていない。

そんな言葉とは裏腹に僕の前にひょいっと身を乗り出すと朱玉色の瞳をランランと輝かせてごく自然にピッタリと抱きついてくる。

するとミオンは更に顔を赤らめて言葉を濁すこともなく。


「ボクはアキト兄様が大好きです。ボクはこのペシュカドとギルド『アイオライト』の矜持に誓って必ず生還します。なので、帰ってきたらご褒美ください」

「むむーっ。うちも欲しいのだーっ」


 今まで見たことがないほどの勢いで話題に食いついてくるシロが両手で包み込むように僕の手をグッと握る。

シロの小さな手は僕よりも体温が高く温かくて人懐っこくて。

その姿を見ているだけでホッとしてしまう。


「そうだね。僕に出来る事ならどんなご褒美でも一つだけいいよ」


 雰囲気に流されてやっちゃったー、とんだ失言だぁー!

その言葉……開けてはならぬパンドラの箱だった。

上機嫌の二人に居心地の良い温かさに僕は完全に油断してしまった。

表面的に見えない……いや、出してはいけない禁断のセリフが白日の下に晒されたのだから。


「ムフフ♪ ア、アキト兄様……男に二言はないですね。絶対ですよ。一寸の隙間ほどの嘘でも付いたら、浮気とみなして我がラウラエル家のメンツにかけて極刑です。公衆の面前でシワシワ玉玉を針千本でガンガン刺しちゃいます。再生不能な程に」

「ミオン、大丈夫なのですーっ。褒美の『ほ』は本当の『ほ』なのです。ホモの『ほ』ではないのです。褒美の『び』はびちびち下痢下痢プレイの『び』なのです……むむーっ。思い出したのですーっ。あの日あの時の羞恥ーっ」


いきなりシロはお尻を押えて顔を真っ赤にすると地団駄を踏む。

あー! 今、シロの足元を必死に歩いていた働きアリさん数匹が天国に召されてしまいました(涙)。


「ふふふっ、それはとっても僥倖な提案です♪ なら、許嫁の私も一枚噛みますわ」


 おぉ! 聞き覚えのある声色だ。

それは感嘆と危険な香りが入り混じった声だ。

シロがハッと顔を強張らせてクンクン鼻を鳴らして警戒心いっぱいに振り向く。

その視界いっぱいに屈強なプレイヤーとパートナー(罪神)が突然現れる。

さ、錯覚ではないですよねー! 

そして小振りでほっそりとした指先が僕の唇に添えられる。


「このような所で浮気とは……我が義弟殿は人気者だね。拙者の希望はアキト君のハイレグのスクール水着姿の鑑賞だな。ふっ、その魅力溢れるお尻のプリプリ感を心ゆくまで堪能したい……ああっ、あのウィーンとわななくバイブプレイで……」


 だ、誰かぁー、ここに更生手遅れな変態が一人いますよーっ。


「サ、サンタナさん――っ」

「ブブーっ、とてもバットな呼び名だ。ミミズ一万匹の水槽に沈められたくなかったら、ほら、心を込めてサンタナお兄様とお呼びなさい☆キラリン」


 うぉーっこの人、目がマジやでー! 


「え、えっと……サンタナお兄様……どうしてここに?」

「ふふふっ、可愛い顔だね。もう舐めまわしたい気分だよ。手とり足とり股とり尻とり懇切丁寧に教えてあげたいのだけど、その時間的余裕を持たせることができないなぁ、まぁ、一言だけ『約束(、、)だろ(、、)、義弟(、、)よ(、)』」


 その言葉は僕の心奥(たましい)にある琴線に触れまくった。

胸打ち鳴らされる感動だー! 

 中性的な麗人サンタナは僕を一瞥すると大げさに肩を竦めて苦笑する。

その胸秘める決然たる想いを微塵も表には出さないけど。


「壮大ですね。暗殺ギルド『ポープ・ダイヤモンド』とハーマイオニー有力ギルドの一つ『ローサーリーブススタールビー』の総員が一堂に会するなんて嘘みたい。サンタナお兄様の人徳と先の遠征、尊い犠牲者の奮迅により野良神やモンスターが激減している今が好機とよんだのですね。着地点の相違はあるにしても目的は同じ……旦那様、逃がしませんよ……クククッ……」

 漆黒の衣装を纏ったフレアルージュは何処か悪戯っぽく囁く。

そして僕の腕に吸い付くように腕を絡めて肢体をすり寄せてくる。

それは愛情を摺り寄せるように……そして、もう、離れませんと誓いをたてるように。


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