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ぷれしす  作者: みずきなな
大宮バトル 救世主は俺だ!
97/173

097 ここにきての動揺

 そう、考えなきゃ駄目なのは理由なんだ。ここに輝星花がいる理由。

 絶対に理由があるはずなんだ。

 輝星花がここに来る理由は……何なんだ?


「こんにちは」


 綺麗な透き通った声が俺の耳に入った。

 そして、俺はゆっくりと顔を上げた。


「貴方が姫宮さんですよね?」


 俺の目の前には輝星花が立っていた。

 すると何故だろう? 目の前の輝星花を見て、強大な敵を目の前したゲームを思いだした。

 輝星花がとってもでっかく見える。

 何故だろうか? 額から汗が噴き出す。

 俺は額から溢れる汗を拭いながら輝星花と対峙した。


「どうかされましたか?」

「あ、いえ……」


 このシチュエーションでここで何も言い返さないなんて出来るはずがない。

 それにしても、心のなかじゃこんなに冷静なのに気持ちが焦っているのか?

 言葉がうまく出ない。


「すごい汗……」


 すると、俺の額に輝星花のハンカチを持つ手が触れた。

 そして、すっと俺の耳元まで顔を寄せると……。


「悟君、驚かせて申し訳ない」


 なんていつもの野木トークが聞こえた。

 顔を輝星花に向ける。すると輝星花は少し顔を話して今度は、


「驚かせてすみません」


 なんて、今度は女子口調だ。そして笑顔。

 再び輝星花は俺の耳元まで顔を寄せると、


「動揺するな。別に君を取って食うつもりはない」


 小さな声で輝星花はそう言った。


「だったら何でここにいるんだよ」


 俺も小さな声で返す。


「絵理沙の監視だよ。絵理沙は僕の監視下に置かないといけないんだ。その程度の事が想像できないのか? 何故にそこまで動揺している?」

「えっ? 絵理沙の監視?」

「そうだ」


 その一言で俺の肩の荷が一気に下りた気がした。

 あんなに上がっていた心拍数も少しづつだけど戻っている気がする。

 そうか、そうだったのか。

 そう言われればそうだよな。


「だから、君がそこまで動揺する事はない。それともあれかい?」


 チラリと横を見ると輝星花と目があった。

 ふわっと風が流れてとても良い匂いが輝星花から漂ってくる。


「女性としての僕を見て……興味がわいたのかな?」


 不敵に微笑む輝星花に、せっかく落ち着いた心臓がまた跳ねた。

 思わず俺は輝星花の目から唇、そして胸元へと視線を移してしまった。


「ば、馬鹿か!」「シーーーー男口調は今日はNGだからね?」

「くう………だよな」

「落ち着け。わかったね?」

「ああ……」


 そのまま輝星花は俺から離れた。

 茜ちゃんはすごく心配そうに俺と輝星花を見ている。

 絵理沙はどうでもいい顔だ。まぁどうでもいいよな。


「綾香、本当に大丈夫?」

「うん、でも輝星花さんに汗を拭いてもらっちゃって……」

「いいのよ? 気にしないで♪」

「で、でも」


 前から知っているのに、ここで初めて出会ったフリ。

 それがこんなに大変だとは思わなかった。

 しかし、輝星花は本当に自然に俺に対して挨拶を始めた。


「改めて、私は絵理沙の姉で輝星花と申します。宜しくお願いしますね、姫宮さん」


 く、俺だって!


「ひゃい、姫宮綾香です! 宜しくお願いしまし!」


 噛んだ!


「あ、綾香、大丈夫?」


 茜ちゃんが本気で驚いてるじゃないか!

 ぶっちゃけ大丈夫じゃないさ! くっそーーー!


「大丈夫だから、本当に大丈夫」

「顔赤いよ?」

「あ、暑いからね」

「今日は気温が低めだよ? だから綾香もカーディガンを持ってきたんでしょ?」


 そうだった! 体が火照って暑いのは俺だけなんだよ!


「そ、そうだねぇ……」

「今日の綾香はおかしいよ?」

「いや、正直、野木さん姉妹とおでかけって知らなかったから、動揺しちゃったの」

「あっ!」


 茜ちゃんがいきなり右手で口を押さえた。


「どうしたの? 茜ちゃん」

「綾香に言ってなかった。昨日ね、私は電話を貰ってたの。お姉さんも一緒に行っていいかって」


 あ、ですよね~。

 だからそんなに冷静だったんですよね~。


「そうだんだ……あはは」

「本当にごめん!」


 でも、おかげでなんとかこの場は誤魔化せた。


 俺たちは駅へと移動を始めた。


「私の顔に何か?」


 気が付けば輝星花が俺を見ている。いや、俺が輝星花を見ていたんだ。


「いえ、なんでもないです」


 何故だろう、気が付けば俺は輝星花を見ている。

 まさか輝星花が疑う程に女の子らしい格好になっている事が気になっているのか?

 いやいや、それはない。

 でも……こいつってこんなに綺麗だったんだな。

 こいつってもし女でずっと過ごしていたら、きっと好きな男とか出来てたのかな?

 たぶんこいつは男がすっげー寄ってくるような女子になってたんだろうな。

 こいつは男として育つ事を強要されたんだからな。


 気が付くと輝星花と目が合っていた。 

 俺は輝星花の視線をかわすように咄嗟に下を向いた。


 やばい、見過ぎだ。もう見るのはやめとこう。

 悟、もうあんまり輝星花を見るなよ? 俺は自分にそう言い聞かせた。


「綾香ちゃん? 俯いたかと思ったら何をぶつぶつ言ってるの?」


 いきなり俺の視界に絵理沙の顔が飛び込んだ。

 っていうか、なんで俯いた俺の目の前にお前の顔!?


「うわ!」


 俺は思わず驚いて顔をあげてしまった。


「綾香ちゃん、今日はやけにびっくりしてない?」


 お前が驚かせてるからだろ!


「綾香どうしたの? 大丈夫?」


 また茜ちゃんが心配してるじゃないか。


「大丈夫!」

「そう? 本当に今日の綾香って変だよ?」


 うん、変です! 言えないけどね!


「何? 別に普通だよ?」


 やばいな、このメンバーでこのままお出かけをすると、そのうち素が出そうだ。

 茜ちゃんには何度か俺が素に戻った姿を見られてるけど、あまり見せるのも良くないよな。

 気をつけて行動しなきゃだな。


「本当に本当?」

「本当だって」

「何か隠してない?」


 ギク……。いや隠しまくりだけど。


「隠してないよぉ?」

「怪しい……」


 茜ちゃん、何で目を細めるの?

 いや、きっと深い意味はないはずだ。だからここは……。


「あ、そうだ! 茜ちゃん」


 いきなり絵理沙が茜ちゃんに声をかけた。

 言葉に反応した茜ちゃんはもちろん絵理沙の方へと顔を向ける。

 まさかこれって俺が困っていそうだから絵理沙が声を掛けてくれたのか?


 俺は絵理沙の方をちらりと見た。

 絵理沙と一瞬目が合った。だけど絵理沙はすぐに視線を外した。

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