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ぷれしす  作者: みずきなな
十月
92/173

092 新しい朝がきた

 きこきこと今日も順調に自転車を漕ぐ。

 空を見上げれば今日も良い天気だ。

 しかし、風も強い。お陰で特定の部分が寒い。

 でもこれは気温の問題じゃない。そう、これはやっぱりはき慣れていないスカートせいだ。

 本当に毎回のように思うんだけど、なんで女子はこんな低防御の装備品をつけているんだ?

 男にパンツを見られる、風でめくれる。寒い。

 考えてもても良い事なんてないだろう?

 そりゃ昔はトイレが和式だったから、スカートの方が便利だったのかもしれないけど、今は洋式トイレが大半だろ。

 なんて俺がいくら考えてもスカートが世の中から消えるはずないし、正直スカート姿の女子は好きだからなぁ……。

 仕方無い。諦めよう。

 そういえば寒さ対策を絵理沙に聞こうかと思ってたんだったな。

 今日こそは絵理沙に……って…しまった。折角忘れたのに、絵理沙の昨日の告白が再びリピートされちまったじゃないか。

 なにしてんだ俺は!

 くっそ……絵理沙め……なんて破壊力のあるトラップだよ。


 そして、結局は先ほどまで感じてた寒さは何処へや。

 学校に到着するまでずっと絵理沙の事が頭から離れなかった。

 そしてそのまま学校へ到着。

 今度は緊張しながら下駄箱から教室へ向かった。


 しまった、俺は何も考えてなかった。

 絵理沙にまず何て言えばいいんだ?

 どういう風に会話すればいいんだ?

 その前に絵理沙の顔を正面から見られるのか?

 そんな事ばかりを考えながら教室へ入った。


 教室に入って真っ先に俺は絵理沙の席を確認する。

 絵理沙はきちんと来ていて、席に座っていた。当たり前だよな。

 しかし、あいつ何であんなに平気そう……。

 ここで絵理沙と目があった。

 緊張が走る。汗がにじみ出る。心臓が跳ね上がりそうだ。

 しかし、絵理沙は俺の気持ちなど察していないのか、いつもの笑顔でにこりと微笑んだ。

 その瞬間にグサ! っと俺の胸に何かが突き刺さる。

 やばい、絵理沙の笑顔が可愛く見えた。


「おっはー! 綾香!」


 後方から迫る危険な気配。

 俺は素早く左へと身をかわした。

 その瞬間に俺の右横を両手を広げた佳奈ちゃんが勢いよく通過する。

 まるでザンギエフのスクリュードライバーを空振りしたみたいな格好だった。

 そして、佳奈ちゃんは急停止してこちらに振り返った。


「ひっどい! 避けないでよー! もう少しで私が教壇にぶつかる所だったじゃん」

「え? あ、ごめんね、何かこう……思わず避けちゃった」


 っていうか、いきなり後方から抱きつこうとする佳奈ちゃんに問題があるだろ?

 なんて思っていても言えない。


「あれ? どうしたの綾香? 熱?」

「え?」


 佳奈ちゃんは心配そうな表情で俺の目の前まで歩いてくると、俺の額に手を当てた。


「な、何?」

「んー別に熱は無さそうだね? 少し顔が赤かったから」


 え? 俺の顔が赤かったのか? って、もしかして絵理沙の笑顔のせい!?

 少し可愛いと思って緊張したからか?


「たぶん熱かったからじゃない?」

「今日は風も強いし、寒かったよね?」

「私、一生懸命に自転車漕いだんだった!」

「ふ~ん。でも汗あんまかいてないね♪」


 なんで今日の佳奈ちゃんは鋭いんだよ!


「これは……汗かかない症候群っていうやつだよ!」

「ああ、あれね!」


 えっ? あるのそんなの!?

 でまかせで適当に言っただけなんだけど。


「そっか! そっかぁ! でもあれだよ? 体調悪かったら休んだ方がいいよ? あはは!」


 佳奈ちゃんは笑いながら自分の席に戻って行った。

 俺はちらりと絵理沙を見た。すると絵理沙がじっと俺の方を見てる。

 間違いない。俺は見られてる。

 くそ、目が合うと顔が赤くなるっぽいから目を合わせないようにしないと。

 俺はドキドキしながら自分の机へと歩いて行った。そして席へと座った。


「おはよう綾香ちゃん」


 俺が席に座ると絵理沙が普通に挨拶をして来た。

 なんて奴だ。普段と変わらないとか、ありえん。

 告白したんだぞ? お前は!


「お、おはよう、野木さん」


 挨拶は返さないとなって、ここでまた絵理沙と目が合ってしまった。

 何だろう? 絵理沙の瞳が輝いて見える……。

 やばい、俺、すっげー意識してる!


 俺が両目を瞑ったと同時に、絵理沙の声が耳に入った。


「綾香ちゃん? どうしたの? 体調でも悪いの?」


 って、お前がそれを聞くのか?

 俺は再び瞼をあけて絵理沙を見る。

 そう、負けてたまるかだ!

 絵理沙が普通なのに俺だけ意識するとかありえない! 負けてたまるか!


「何でもないです♪」

「でも、いつもの元気な綾香ちゃんらしくないよ?」


 絵理沙は首を傾げた。

 俺は思わず右手で口を押さえて視線を下げた。

 ありえない。どうなってんだよ?

 この絵理沙の態度と表情はなんなんだよ?

 昨日の出来事が嘘に感じる程、今までとは何も変わらない絵理沙がそこにいた。

 もしかしてあれは夢だった?

 いや、ありえない。あんなリアルな夢はない。

 じゃあ魔法でどうにかしている?

 可能性はあるけど、絵理沙は今は魔法を使えないはずだよな?


「ねえ綾香ちゃん? 本当に大丈夫なの?」

「お前に心配されたくねぇ……」

「えっ!? 綾香ちゃん?」 

「あ、ご、ごめんね! もう大丈夫だから」


 やばい、素で答えちまったじゃないか。


「そう。うん、わかった……」


 絵理沙はニコリと微笑むと教壇の方へと顔を向けた。

 俺だけなのか? 昨日の告白を引きずってるのは?

 なんか馬鹿馬鹿しいな。まったく。

 くっそ! 普通通りにする。絶対にするぞ!


 俺も教壇へと視線を移した。

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