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ぷれしす  作者: みずきなな
十月
91/173

091 謎めいた気持ち

 俺は食事が終わると二階の綾香の部屋に戻った。

 しかし、失敗した。

 何が失敗したのかというと……。


「綾ちゃん!? どうしたの? これもこれもすごく美味しい!」


 そう、料理が思った以上にうまく出来てしまった。

 綾香じゃありえない位のレベルに……。

 実は俺は料理実習が好きで、母さんや戸尾さんがいない時は自炊だってする。

 中学校三年になるまで両親は共働きだったから、俺が晩ご飯の準備をしていた時期もある。

 調理実習が好きな俺が、ほぼ毎日の様に料理をしていれば必然的にある程度は出来るようになる。

 しかし、これはこれでヤバイ。

 本物の綾香が戻ってきたらどうする?

 あいつは料理が苦手だ……。

 一番簡単な方法は次回からわざとミスするか、調理の手伝いはしない。

 前者だと料理がまずくなるからやりたくない。となれば後者しかない。

 そうだな、綾香に料理を教え込むよりも楽だよな。

 俺はそう考えながらベッドにバフンと背中から飛びのった。


 何気なく顔を右に向けると、机の上にある赤い四角い箱を発見した。


「そいうや、最近は見てないな」


 俺はベッドから立ちあがると、その赤い箱を手にした。

 箱には埃が積もり、しばらく触ってすらない事をアピールしている。

 そして、その埃を被った赤い箱には『13221』と数字が並んでいた。


「前回っていつ触ったっけ?」


 俺は赤い箱の上のボタンをぽちっと押した。

 するとカウンターがぐるぐると回転を始める。

 そして、カウンターは右から順番にカチカチと音を立てて止まっていった。


「どのくらい貯まったかなぁ」 


 俺はその数値を見てびっくりした。


「25549!?」


 いきなり凄い数値が伸びていた。考えられないレベルだ。

 確か野木は『99999』で再蘇生の魔法が使えるとか言ってたよな。

 そう考えると?

 九月末で『13221』だったんだぞ?

 あれから二週間程度で『12328』も魔法力が溜まったという事なのか?

 不思議すぎるだろ?

 どうしてこんなにいきなり貯まったんだ?


 俺には理由がわからなかった。

 だけど事実はわかる。思った以上に貯まった。

 ここで懸命に思い出す。野木が何かを説明していたのを思い出す。


「そうだ、俺の心理が影響するって言ってたよな?」


 もしかして、この異常な貯まり具合は、最近あった出来事が原因か!?

 出来事と言えば……。


 まずその1 

 大二郎にまた告白された?

 違うよな? 俺にとってはいい出来事じゃない。


 その2

 北海道に行った?

 これはどうなんだ? 旅行気分でポイントアップ? どっかの宣伝か?


 その3

 野木一郎が輝星花きらりだって知った。

 うむ、これは多少は影響がありそうだな。

 男だと思っていた奴が女だった訳だしな。


 その4

 絵理沙……。

 絵理沙に告白された。

 瞬間、またしても告白シーンが俺の頭の中でリピートされた。


 ドクンドクン……。

 急に俺の心臓の鼓動が強くなる。


 俺は思わず自分の胸をぎゅっと押さえた。

 今度は頭が熱っぽくなる。

 俺は左手でおでこを押さえた。

 すると赤い箱は床に落ちた。

 当たり前だな。両手を離したら落ちるよな。

 俺は赤い箱を拾うと、机の上に置いた。そして、そのままベッドに俯せにダイブした。


「なんでこんなにドキドキするんだよ!」


 思わず枕を抱き寄せて顔を埋める。

 さっきまでここまでドキドキしてなかったのに、今までで最高にドキドキしまくってる。


 仰向けになって右手を胸の上に置く。


 ドクドクドク……。


 心臓の鼓動が手にひらに伝わる。

 俺は絵理沙の顔を想い浮かべると心臓の音はさらに激しさを増す。


 何だよこれ?

 おいおい……冗談はやめろって?

 胸が苦しい……。

 くそ……まさか……俺は絵理沙が…………。

 いや、そんな事はない。俺には茜ちゃんがいるんだろ?


 茜ちゃんを想い浮かべようとするが、浮かんでくるのは絵理沙の顔ばかり。


 くそ……おかしいな?


 絵理沙が気になる。

 俺は絵理沙を意識している。

 俺は絵理沙を異性として意識してる…………。

 でも……。

 俺は絵理沙を抱きしめたいとか、キスをしたいとか、そういった恋愛感情が浮かんでこなかった。

 ただ、絵理沙とこれからも一緒にいたい。

 そう強く思ったのは事実だった。


 これは単なる緊張なのか?

 手紙の件も落ち着いたから、それで今になって緊張が一気に押し寄せてきたのか?


「わっかんねぇぇぇぇ!」


 俺は枕に顔を埋めたまま叫んだ。



 ☆★☆★☆★☆★☆


 

 新しい朝が来た……。

 ラジオ体操はしない。


 うむ……眠い。 

 寝不足だ……。

 昨日は気持ちが高ぶってしまったせいか、なかなか寝られなかったからな。


 でも、朝起きてみると不思議な程に落ち着いているた。

 昨日のドキドキが嘘の様だ。


 絵理沙の顔!

 告白!


 思いだしたが、昨日ほどの緊張は生まれなかった。


「昨日の俺って何だったんだろうな」


 俺は朝食を食べ終えると制服へと着替えて学校へ向かった。

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