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ぷれしす  作者: みずきなな
十月
74/173

074 佳奈と真理子と……(笑

 俺の心臓がバクバクと強烈に動いている。

 胸に手を当てると、振動が手の平で感じられるくらいにドキドキしている。


 落ち着けよ俺。なんでこんな所で動揺するんだよ。

 自分にそう言い聞かせて、俺は何度も深呼吸をした。

 しかし、息を吐く度に思い出す絵理沙の顔。するとまたしても心臓が跳ねる。


 ば、馬鹿か俺はマジで……なに考えてるんだよ。


 体中が熱くなり、湿りを感じ、俺はそのまま机に突っ伏した。

 そしてやっと落ち着いてきた時、


「あーやーかー! ねーねー! 綾香ぁ」


 聞き覚えのある元気の良い声が聞こえた。

 このハイテンションの独特の声。そしてまるで小学生のような俺の名前の呼び方。これは……。

 ゆっくりと顔を上げると机の右横にはやっぱり佳奈ちゃんが立っていた。と思ったら、俺はいきなり抱きつかれてしまった。それも椅子に座ったままなのに。


「か、佳奈ちゃん!?」

「やったー! 綾香を捕まえたぞー! 綾香ゲットだぜっ!」


 俺はポケ○ンじゃねぇ!

 心でそう叫びながら俺は佳奈ちゃんを見るが、佳奈ちゃんは本気でゲットしたかのような嬉しそうな顔で俺を見ている。

 いや、俺って何モン?


「綾香ぁ? ほれほれぇ」


 佳奈ちゃんは俺の腕にぎゅうぎゅうと胸を押しあててきやがった。

 な、何故に俺に胸お押し当てる? もしかして俺が男だってわかってて?


「綾香にマーキング!」


 お前は犬か! 俺は電柱か!

 突っ込み所が満載すぎて疲れる。


「や、やめてよ、佳奈ちゃん」


 いくら胸が目立たない佳奈ちゃんでも、さすがにここまで押し当てられると解る。っていうか、佳奈ちゃんのが思ったよりも柔らかいんですが! もしかして隠し巨乳?

 視線を佳奈ちゃんの胸部に向けるが、それは決して巨大ではなかった。

 うむ、普通乳かそれ以下だな。しかし、それでこの破壊力とは……。


「ほれほれ~」


 ほれほれって、あんたは何者だ。


「綾香って小さくって可愛くって抱き心地いいよね!」


 いやいや、俺的には、佳奈ちゃんの二つの柔らかい脂肪で成型されたものが女子特有の感触を俺の脳内へと知らせてくれていて……。心地いいんですが!


「うきゅううう」


 やばい、カーっとまたしても頭に血が頭に上る。

 今度は絵理沙の時と違う、別の意味で血が上っているぜ。

 でもよかった事が一つだる。俺が女だったからだ。

 このケースの場合は、男なら頭以外にも血がいくところだった。そしてピラミッドが形成されてしまう所だ。が……。

 俺は視線を下に向けた。


「大丈夫だ、問題ない!」

「大丈夫って何が?」


 その後も佳奈ちゃんはもきゅもきゅと遠慮なく胸を押し当ててきた。

 まったくもってけしからん! と思いつつも、ちょっと楽しんでいる俺がいたりする。

 しかし、このもやもや感は女子の場合にはどう処理をすればいいんだ……。


「どうすりゃいいんだ……」

「何が?」

「えっ? い、いや、何でもないよ?」


 やばい、心の声がリアルの声になってる。


「ふ~ん……何でもないんだぁ」


 何かあって欲しいのか? おいおい。って、忘れてた。すっかりこの状況に嵌ってた。


「で、何の用事なのかな? 佳奈ちゃん」


 そうだよ、佳奈ちゃんがマーキングの為に俺のとこに来たはずがない。


「えっ? 用事?」


 佳奈ちゃんはしまったといった表情で俺からいきなり離れた。


「そうだ! 私は綾香を捕まえにきたんじゃなかった! マーキングをしに来たんじゃなかったよ!」


 そりゃそうだろう……。


「で、何?」


 ニコリと微笑むと、佳奈ちゃんは両手を腰の後ろに組んだ。


「ねえ綾香ぁ? 今日って何か用事ある? 最近一緒にどこもいってないじゃん、だからたまにはどこか行かないかなぁ~って思ってね」


 まるでデートの誘いだじゃないか


「どこかって?」

「もうっ……綾香の行きたいとこでいいよっ。別にホテルでも」


 俺は盛大に顔面を机に打ち付けた。


「か、佳奈ちゃん!」

「もうっ、綾香ったらエッチなんだもん!」


 あんたがだろ! って言いたいが、言えない!


「で、どう? ホテルは冗談だけど、でもどっかいかない?」

「どっか……」

「あれ? もしかして何か用事でもあった?」


 そこで俺はハッとした。思いだした。すっかり佳奈ちゃんのちっぱいに意識を奪われていた。

 そうだよ、俺は今日は用事があるんじゃないか。野木のマンションに行くっていう。


「ごめんね? 今日は用事があって……」

「えー……綾香と折角どっかいこうかと思ったのに。そっかぁ、用事があるんだ? すっごく残念だよ。チロルチョコを食べようと思ったら地面に落としたくらいにショックだよ」


 そのショックの程度のレベルがわからないんだが……。


「本当にごめんね」

「いいよ! いいよ! うん! あるある! 用事ってあるよね! 私だって用事があるし! だから今度、二人とも用事がない時に行こうね!」


 あんた、用事がないから誘ってたんじゃないのかよ?


「よし! と言う事でまた絶対に行こうね!」


 いつものテンションのトークを軽快に噛まし終えた佳奈ちゃんだったが、ちょうど真理子ちゃんが教室に入ってきたのを見つけると、目つきが変わった。

 佳奈ちゃんは獲物を狙うような目で真理子ちゃんを見ている。

 今度はマーキングじゃなくって狩りなのか?


 真理子ちゃんもその目つきに気がついたのか、教室に入ってきた所でピタリと止まった。


「ねぇ、真理子……」

「私は忙しいからね? つきあえないわよ?」

「今日……って!? 断りはやっ!」


 佳奈ちゃんが聞くよりも、真理子ちゃんが答える方が早かった。

 流石すぎる反応だろ、真理子ちゃん。


「真理子、せめて私が聞いてから断ってよ!」

「だって、面倒だし……」


 本気で面倒そうな顔だな。


「面倒って、真理子は私がかわいそうだと思わないの? 聞く前に断られる乙女心。まるで告白前に振られる女子的なあれよ! あれ!」


 どうしてその例になるのか理解に苦しむが、なんとなく佳奈ちゃんの言いたい事がわかる。

 さすが恋愛ゲームをやりまくっているだけあるな。俺!

 しかし、言葉がむちゃくちゃだな佳奈ちゃんは。


「告白もした事ない佳奈に言われたくないわ」


 真理子ちゃんの一言に佳奈ちゃんが胸を押さえて片膝をついた。

 かなりのダメージを受けた様子だ。


「ま、真理子? あなた、私の何を知ってるのよ……」

「性別?」


 やばい、吹き出しそうだ。真理子ちゃんの躱し方が俺の笑いのツボにはまる。

 そして、俺は懸命に笑いを堪えながらこの二人のコントを聞く事になったのだった。


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