表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷれしす  作者: みずきなな
体育対抗祭
39/173

039 熱血バレー対決? 前編

 中央に集まったB組(白)のバレーのメンバー。

 俺は早速集まったメンバーを確認した。

 俺たちのチーム構成は三年生が2人、二年生が一人、一年生が俺を入れて三人。二年が怪我をしたせいで一年が多い。

 相手のチームは勿論二年が二人だ。

 まぁ本当はこっちもそうなるはずだったんだからここは仕方ない。


 俺が相手コートを見ていると、誰かの視線を感じた。

 ふと左を向くと、いきなり胸部が俺の視界に飛び込んだ。っていうか、俺の視線の位置に胸だと!?

 ゆっくりと見上げると、それは一番背の高い三年生の女子だった。その子が俺の事を見ている。

 確か、この子は三年B組の女子だよな? 名前は……やばい、まったく名前を覚えてない……。顔と声の記憶はあるのに……。さすがは俺だな。

 考えてみれば、同クラスの女子すら名前をほとんど知らない。だから駄目なのか?

 女子の名前も覚えられない俺が彼女が欲しいとか、買っていない宝くじで一等が当たればいいなって言ってるレベルと同じなんじゃないのか?

 くだない妄想をしてしまった。


 それにしてもでかいな。身長は180はあるかな? 大二郎よりちょっと低い程度だろ? そして体格もすっごくいい。

 それにつけえると、体格の割には胸がでかい訳じゃない。胸は若干の膨らみ程度で、大きいとは思えない。

 しかし、筋肉質の体つきで褐色の肌とか、アスリートだと思わせる体格だな。

 髪はすごく短くして、見れば結構イケメンじゃないか。って思うと女子には失礼なのか?


「ねえ茜、この子ってバレーできるの?」


 声まで渋かった。っていうか、この声! そうだ! バレー部の部長の……名前が出てこねぇ……。さすが俺だな。


「はい?」

「姫宮さんだっけ? この子ってバレーはできるのかな? 同じクラスだから知ってるだろ?」


 その質問は出て当たり前だよな。俺は今は綾香な訳で、身長は142センチしかない。おまけに華奢だ。

 こんなに身長が小さくて小柄でバレーができるのか不安になるのは当たり前だ。


「あ、えっと……」


 茜ちゃんが俺をちらりと見た。というか、俺はどういう反応をすればいいんだ?

 ええと……こうか? 笑顔♪


「あ、綾香は大丈夫……だと……思います! ……多分……大丈夫です!」


 茜ちゃん、それってすごく大丈夫じゃなさそうだぞ?

 今度は別の三年生の女子が口を開いた。


「今さっき聞いたんだけど、B組(白)は前の試合のバスケで勝ったから、最下位から一気に三位まで順位あがってるんだって! 二位との点差も殆どないから、ここでバレーでも勝てば二位になれるんだって! 二位になれば他の競技の結果しだいじゃ優勝も見えるかもしれないよね?」


 何て言いながら俺を見ている。と言うか、全員が俺を見ているだと? 何だこのプレッシャーは! こんな可愛い子にプレッシャーかけんなよ!


「そうか、それじゃここは絶対に勝たないと駄目だな。勝つよ! みんな!」


 さっき俺がバレーができるかを聞いた、バレー部に所属している三年生女子がみんなに向かって檄を入れた。そして、円陣を組んで「勝つぞ~!」とかやった。

 なんかちょっと盛り上がった俺がいた。


「皆さん、頑張りましょうねっ!」


 って言ってみたら、全員が一斉に俺を見た……また見た。

 なんでそんなにプレッシャーを与えるんだ! 茜ちゃんまでっ!

 いや、俺が声を出したんじゃないか。あはははは。


「よし、取りあえずは五人だと思ってがんばろう。こっちは三人がバレー部だからなんとかいけるかもしれない!」


 何その会話は? いきなり俺って戦力外?


「ごめんね綾香……私もちゃんとフォローするから……がんばろうね?」


 茜ちゃんが小声で俺に呟いた。それもすごく申し訳なさそうに。

 茜ちゃんまで俺を戦力外だと思っているらしい……。

 本物の綾香だと、きっとそのまま戦力外だと思う。だから、戦力外なのは綾香のフェイクな俺としてはいいんだけど、だけど妙に悔しい。

 悔しいから頑張っちゃおうかな? まぁ……少しくらいなら。


「茜ちゃん」

「な、何?」


 こうなったら俺もがんばって活躍するね! なんて言おうと思ったら、たまたま絵理沙と目があった。

 絵理沙は怪訝な表情で俺を見ている。って、まさか俺が頑張ろうとしているとでも思ってるのか? あははは! 馬鹿め!

 そんな事を俺は……思ってました。ごめん。


「フォ、フォローよろしくね?」

「う、うん!」


 何か情けなくって泣きそうにだった。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 《ピー!》

 ホイッスルの音が鳴り試合が始まった。

 体育対抗祭でのバレーは普通の試合より短く、3セットマッチで2セット先に取ったほうが勝ちになる。

 ちなみに俺はバレーボールの試合の経験はほとんどない。だから体育で習った基礎レベルのレシーブやトスで対応するしかない。

 俺はそんな事もあって、運動能力が男子レベルとは言っても、思ったよりも動けないと想像していた。

 しかし思った以上に動けた。なんと言っても体が軽くて小回りが効く。

 大活躍をしないにしても、役立たずにはならずに済むレベルには動けた。

 思い切り動けば、もっと活躍できそうなんだが、あまりに俊敏な動くをすると、本物の綾香じゃありえない運動能力を見せつけることになる。


「綾香っ! 行ったよっ」

「うんっ……やっ! ぐうっ!」

「ナイスレシーブ!」


 しかし、やっぱりスポーツは楽しい。

 だからなのか、試合中なのにバレー部員の動きも研究している自分がいた。

 おもいっきり活躍ができないにしても、動きを研究すればミスも少なくなる。

 バレー部員はさすがにうまかった。当たり前かもしれないが。


「トスっ!」

「てやぁぁぁぁ!」


 バレー部長のアタック! 見事に敵のコートに突き刺さる! 誰も取れない。

 しかし、アタックって気持ちよさそうだ。俺も打ってみたくなった。

 そういえば悟の体だったときに、体育でだけど数回ほどアタックしたような記憶もある。俺は空手が得意だが、こっそりジャンプも得意なんだ。


 俺はネットを見あげた。

 この身長でも……頑張ればいけるんじゃね? でも、そんな事をしたら目立つよな。負けてるわけじゃないし、無理をする必要はないか……。


「綾香、思ったより動けてるね! よかった……」

「うん……思ったより動けてる」


 その後も俺は無難に試合をこなした。お陰でなんとか茜ちゃんの顔をつぶさなくて済みそうだ。しかし……。


「きゃぁぁぁ」


 レシーブを仕損ねた大袋さんが激しく床に転げた。

 大袋さんとは同じクラスのちょっとふくよかな女の子だ。

 身長は161センチ、体重は聞けない。黒いショートヘアで普段は眼鏡をかけている、いわゆる普通にどこにでもいる女子高生だ。


「あそこが穴だぞ!」


 敵のチームは大きな声でそんな事を言っている。

 そう、実は三人のバレー部員と俺を除く、後のメンバーの二人はひどく下手だった。

 これは俺が心配されるレベルじゃない。そのくらいに下手だった。

 なんとかなっているのもバレー部の三人のおかげだ。


「ドンマイだよ!」

「ごめんっ……」


 結局B組(白)は第一セットを取ったが、第二セットを落とした。


 そしてラストの第三セットが始まった。これに勝った方がポイントをゲットできる。しかし試合が始まると……やっぱりだ。相手はこのチームの穴をついてきた。もちろん俺じゃないぞ?


「よっしゃぁぁぁ!」


 敵のアタックがまた決まった。

 やっぱりと言うか、完全に大袋さんが狙われている。この子はレシーブがすごく下手で、ほぼミスしているからな。

 そんな大袋さんを茜ちゃんと二年生のバレー部員がフォローするがやはり限界はある。得点はあっと言う間に7対11になった。

 やばいなこの調子だと負ける……。そんな事を思っていると、敵チームがナイスレシーブ。やばい。またアタックされる!


「私が取りますっ!」と茜ちゃんの声が聞こえた瞬間だった。

 悲鳴と同時に《バシーン!》とすごい音が聞こえた。

 横を見ると、大袋さんの代わりにレシーブを受けようとした茜ちゃんが、大袋さんと一緒に倒れているじゃないか!


「茜ちゃん! 大袋さんっ!」


 俺は慌てて茜ちゃんの側へ駆け寄った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ