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ぷれしす  作者: みずきなな
体育対抗祭
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036 体育対抗祭開始

『ピピピピ』っと電子音が俺の耳から入ってきた。

 脳は自動的にそれを朝の合図だと悟ったのか、俺の意志とは関係なく体を目覚めさやがる。

 俺がゆっくり瞼をあけると、まず視界に飛び込んだのは天井から吊された白いてるてる坊主だ。それも逆さまの。

 逆さのてるてる坊主。それは俺が雨を期待して作ったものだ。

 そう、今日の体育対抗祭りが流れる事を期待して俺が昨日作った。

 しかし、残念な事にてるてる坊主の効果はまったくなかったらしい。

 窓からは太陽の光が燦々と降り注いでいる。

 おかしい……てるてる坊主は完璧だったのに……。

 そうか、これはきっと、全国の正てるてる坊主(普通のてるてる坊主)の絶対数に負けたからだ。

 なんて馬鹿な事を考えながら窓辺へと歩く。

 窓辺に寄って外を見れば雲ひとつない青空が目の前に広がった。

 世で言う『秋晴れ』である。


 俺があくびをしていると、『がちゃん』と自転車の音が下から聞こえた。


「んっ?」


 道路へと視線を下げると、隣に住む幼なじみ『くるみ』が朝早くから学校へと向かおうとしているのが見えた。


「くるみ?」


 そうか、あいつは生徒会長だから早く行くのか? なんて思っていると、くるみは一分も経たずに俺の視界から消えてしまった。


「はぇぇ……」


 俺は「ん~」っと大きく背伸びをした後に再びベットの前まで戻った。そしてベットに座る。


「あ~あ、めんどくせぇなぁ……」


 ドサッとそのままベットに上半身も倒し、頭上の逆てるてる坊主を見た。


「お前は所詮はティッシュの固まりか?」


 俺は起き上がると、ティッシュでつくったてるてる坊主を破壊。

 ゴミ箱へと投げ捨てると部屋を出て一階へと降りた。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 今日は体育対抗祭の日だ。

 気分も重く、なんとか学校へとやって来た俺。そして、俺は教室へと入る。


「綾香!」


 いきなり名前を呼ばれる。声の主は真理子ちゃんだった。


「真理子ちゃん? おはよう」

「おはよう!」


 真理子ちゃんは体操着でニコリと微笑んだ。

 しかし、やっぱり真理子ちゃんはスタイルがいいな。


「綾香、今日は欠席者はいないから出番はないかもしれないよ」

「えっ? そ、そっか!」


 何かと思ったら欠席者がいないと教えてくれたのか。しかしよかった!

 俺は思わずにやけてしまった。欠席者がいないのはマジで嬉しい!

 ひゃっほぉ! 今日の俺は自由だぁぁぁぁ!

 なんて喜んでいる場合じゃないな。

 出番が無いと言っても、一日中遊んでる訳にもいかない。補欠は連絡のつく場所に居るか、クラスの応援をしなきゃいけないんだ。

 さて、どうしようかなぁ。


 俺は教室の中を見渡した。茜ちゃんも佳奈ちゃんも絵理沙も体操服で椅子に座っている。真理子ちゃんは黒板へ何かを書き始めている。多分、連絡事項だと思う。


 俺は茜ちゃんい目をやった。

 そうだな、俺はバレーボールの選手の茜ちゃんを応援しようかな? と思っていると、真理子ちゃんが目の前を通過する。

 いや、テニスの真理子ちゃんの方が早い時間から開始だったような……。

 でも、テニスなんて見ても俺は面白くないよなぁ……。なんて思っていると、佳奈ちゃんが吼えた。

「うわぁぁ!」とか吼えた。何故かは知らないけど……。でも、もしかして、アーチェリーの佳奈ちゃんを見るのが一番楽しいんじゃないのか?

 無意味に吼える位だし、佳奈ちゃんならきっと何か面白い事をしてくれそうな気がする。

 あれだ、空に向かって矢を放つと、UFOが落ちてきたりするかもしれないし。(おいおい)


「佳奈? どうしたのよ?」

「昨日さー! アーチュリーの勉強したんだ!」


 佳奈ちゃん、質問に答えてやれよ。そして、アーチュリーじゃなくって、アーチェリーだぞ?


「佳奈、それを言うならアーチェリーでしょ?」

「ああ、そうそう! それそれ! アーチャリー!」


 ……佳奈ちゃん。

 しかし、佳奈ちゃんってアーチェリーできんのかなぁ? 昨日勉強したのはどうやらアーチェリーでは無いらしいし……。

 俺には佳奈ちゃんがアーチュリーを……じゃない。アーチェリーをする姿がまったく想像できない。

 まぁ胸は無いから、あのぼよーんてなる紐が胸にあたるとか無いだろうけどな。なんて考えていたら、茜ちゃんが教室から出て行った。


 茜ちゃん、もう行くのか?

 ……………そっか。やっぱりそうだよな? 俺は茜ちゃんを応援しなきゃだろ?

 考えてみれば、今は綾香の姿だけど、茜ちゃんは俺の事が好きなんだから、ここは彼氏候補としてきちんと茜ちゃんの勇姿を見なきゃ駄目だよな。

 俺はなんとなくそう思い、バレーボールの試合が行われる予定の体育館へと移動した。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 正面玄関から体育館へと入るとそこには絵理沙の姿があった。

 絵理沙は俺に気がついたらしく嬉しそうな表情で俺の所まで来やがった。


「綾香ちゃん! 私の応援にきてくれたの?」


 何を言うかと思ったら応援だと?

 そういえば俺は絵理沙の事をすっかり忘れたな。絵理沙って何の競技だっけ?


「むぅ! その顔は私の応援じゃないでしょ!」


 えっ? 表情で解ったのか? こいつ、なかなか鋭いな。なんて思っていると、絵理沙は不意に後ろを振り返った。

 絵理沙が振り返った方には茜ちゃんいて、バレーの練習をしていた。


「ふ~ん。なるほどねぇ……私じゃなくって越谷さん(茜ちゃん)の応援に来たんだぁ……」


 絵理沙はすっごく不満そうな顔で俺を睨んだ。というか、何で俺が茜ちゃんの応援に来たとかわかったんだ?

 もしかして野木の情報なのか? あいつ、俺の恋愛事情まで知ってやがるのか? そうだとしたらくそ変態だ。そうじゃなくっても変態だ。

 と言う事で肯定しなかった。


「ねぇ? 聞いてる?」


 取りあえず、その質問はスルー。で、絵理沙ってマジで何の競技だっけ? ここは質問をはぐらかす為にも聞くか。


「ねぇ、絵理沙さんってなんの競技だっけ?」


質問を聞いて唇を尖らせた絵理沙。


「綾香ちゃんは私が出る競技を覚えてないの? ひどいよ!」


 絵理沙が本当に寂しそうな顔になった。と言うかさ、マジ忘れたんだよなぁ……困った。えっと何だっけ……。えっと……。


「もうっ! 特別ヒント! バ……」


 そ、そうだ! 思い出した! バスケットボールだ!


「絵理沙さん、忘れてないからね? そうだよね、バスケットボールでしょ!」


しかし、絵理沙は不満そうな表情のままだ。


「ふんっ! どうせ今のヒントで思い出したんでしょ? 横の席なのに忘れるとか最悪だよね!」

「仕方ないでしょ? 忘れてたんだもん!」

「ほら、忘れてた……」

「あっ!?」


 しまった……誘導尋問にひかかった!


「まあいいわ。ちなみに私たちの試合が終わってからバレーの試合だからね? もう一度言うよ? 私たちの試合が終わってから越谷さんの試合だからね? だから、先に私の試合をみてよね! あと、ちゃんと応援するんだぞ!」


 そう言うと絵理沙は俺の返事も聞かずにバスケットコートの中に入って行った。

 仕方ないな、どうせバスケットが終わらないとバレーが始まらないし、絵理沙も応援してやるか。

 俺はバスケットコートの横に座った。


 でも、絵理沙ってバスケットボールなんて出来るのかな?

 あいつは魔法使いだろ? 魔法の世界にもバスケットボールとかあるのか?

 俺のイメージだと魔法の世界は魔法を使ったスポーツとかありそうなんだよな。

 そう、あの有名な映画、ハリー○ッターのあのなんだろう? 箒にのってやる競技……。あんなのとかがあるのかな?


「あ! 綾香だ! そこで何してるの?」


 変な事を考えていたら、茜ちゃんが横にやって来ていた。


「えっ? いや、もちろん茜ちゃんのバレーの試合の応援に来たんだよ?」

「わー! そうなの? ありがとう! 今のB組(白)は他の競技で負けてるから、このバスケットの試合とバレーは勝たないと駄目なんだよね」


 そう言うと茜ちゃんは俺の横に座った。


「あ、そうなんだ?」

「うん。バレーはもちろん頑張るけど、まずはバスケットで勝ってもらわなきゃね……」

「そうだね……」


 俺はこんな行事の順位なんてまったく気にしてないんだけどな。


「バレーの試合はバスケットの後だから、これから綾香は野木さんが出るバスケットを応援するんでしょ?」

「え? あ、うん、応援する……よ?」


 本当は絵理沙の応援をしに来た訳じゃないんだけどなぁ……。成り行き上でそうなったけど。


「ねえ綾香、野木さんって運動とかどうなんだろ? バスケットボールって得意なのかな?」

「えっ? 何でそんな事を私に聞くの?」

「だって綾香は野木さんと仲良しでしょ?」


 俺と絵理沙ってそういう風に見えてるのか?


「そうかな? 席が隣りだから少し話すくらいだよ?」

「ふーん、そうなの? 野木さんってクラスの人とあまり話さないし、唯一話をしているのって綾香くらいでしょ? 横から見ててもすっごく仲よさそうだし……で、どうなの? 知ってる?」


 どうなんだろうな? 正直、俺は絵理沙が運動している姿を見たことはない。

 最近の体育も参加してなかったし、体育対抗祭の各競技の練習でも俺はまったく見てない。正直わからない。

 俺もどうなんだろうって思ってるくらいだしな。


「ごめん。どうなんだろうね? 私にもわかんないや……」

「そっかぁ、でも野木さんって運動出来そうだし、きっとがんばってくれるよね! あっ! ほら、試合が始まるよ」


 《ピー》と体育館にホイッスルが鳴り響き、バスケットの試合が始まった。

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