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ぷれしす  作者: みずきなな
体育対抗祭
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032 運動の秋?

 来週ついにやって来る。

 俺が超面倒くさいと思っている行事が……

 そう、それは体育対抗祭だ。


 この彩北高校では九月末に全校生徒が参加する体育対抗祭という行事がある。

 これは普通の学校で行われる運動会とはちょっと違う。基本は同じなのだが、ちょっとだけ趣向が違うのだ。

 体育対抗祭りは、一般の運動会のように競技を順番に行い、順位に応じて点数をつけて競ったりはしない。

 じゃあどんな物なのか? 説明してやる。


 この学校には各学年にA・B・C・Dの四つのクラスがある。

 それを縦割にしてクラスを引っ付けて、一年・二年・三年のA組で赤という感じにする。そうすると四つのチームがまず出来る。

 ここまでだと、運動会とはさして違わないじゃないかと思うだろうが、ここからが違う。

 まず、何種類もあるスポーツ競技の中から、各クラスで代表者を決めて四色で対抗戦をするのだ。

 その競技が多彩で、運動会の競争競技と、球技や柔道や剣道やバレーやバスケットやらが混じるのだ。


 さて、クラスの代表者の決め方だが、たとえば野球だと、一年から四人・二年から四人・三年から四人で十二人を選出する。

 その十二人で協力して他のチームを倒す。

 ここでまた独特なルールが出る。野球だと野球部の人間が出ると強い。しかし、なんの競技にしても、部活動を行っている人間は半数しか参加が出来ないのだ。

 野球だと一二人だから、六人は野球部員以外で選出する必要がある。もちろん、野球部員がまったくゼロでも問題はない。

 球技はこの影響を結構多大に受ける。


 全部で二日の日程で、最終日の最後の締め括りは四チーム対抗の騎馬戦だったりする。

 それも男女混合だ。信じられねぇ。だが現実だったりした。


 俺はスポーツは嫌いじゃないが、こういうイベントは嫌いだ。

 悟だった三年間、この体育対抗祭にまともに参加などした事はない。

 しかし、今年は綾香の姿での参加になる。さすがにさぼる訳にもいかないよな……



 ☆★☆★☆★☆★☆



「ええと、各競技の参加者なんですが、現在はこのようになってます。何がご意見はありますか?」


 学級委員長の真理子ちゃんが各競技に参加する選手の選出をしている。

 黒板には競技の名前と、横には参加希望者の名前が書かれていた。


「バトミントンは柳生さんなんてどうかな?」


 真理子ちゃんの隣りでは実行委員の佳奈ちゃんが選手の推薦をしている。

 この推薦というのはいろいろ酷いんだ。別名で推薦と言う名の死刑宣告と呼ばれている。

 まぁ、死刑は言い過ぎだが、でも、推薦された人はそう思う人がいるのだろう。だからそう呼ばれてるんだろう。


 各競技には必ず人気があったりなかったりする。

 人気があればじゃんけんで決定になるが、人気が無い競技には人が集まらない。だから参加者も足りなくなる。そういう場合に佳奈ちゃんが強制的に推薦が出来るんだ。

 そして、体育対抗祭実行委員の推薦は、よほどの事が無い限りは断れないルールがある。

 推薦されたくない人は、先に体育対抗祭実行委員に申し出ておく必要がある。それが承認されれば推薦はされなくなる。


「柳生さんもOKみたいなので、これでいきますね」


 いや、それって強制推薦じゃないか。なんて口には出せない。


「では、女子バスケットボールの選手ですが、やりたい方はいますか?」


 真理子ちゃんがクラスを見渡している。しかし誰も手が上がらない。

 俺はバスケットは嫌いじゃないが、流石に身長がなさすぎて無理だな。

 それにしてもバスケットってこんなに不人気なのか? 最近は漫画とかアニメとかも流行ってるんじゃないのか? 黒ごまのバスケとか。


「誰もいませんか?」


 真理子ちゃんはまた教室を見渡すが、やっぱり誰も手を上げない。


「誰も居ないようなので、杉戸さん、推薦をお願いします」


 佳奈ちゃんは今までの選抜されたメンバー表と生徒のリストを見比べている。

 そしてしばらく考えた後に俺の方を見た。って!? ちょっと待てっ!


「えっと、女子バスケットは野木さんでお願いしまーす!」

「えっ?」

「え!?」


 俺の声と同時に絵理沙が声を上げた。

 何だ…俺を見たのかと思ったら、隣の絵理沙か。というか、俺と目があってニヤリと微笑んだ佳奈ちゃん。わざと俺を見やがったな?


「わ、私はバスケットなんてした事ないんですけど……」

「大丈夫だよ! 野木さんは身長大きいし!」


 身長が高ければバスケがうまいという結論なのか?


「本当に私はバスケットなんて出来ません」


 絵理沙は本気で困っている様だ。でも、佳奈ちゃんは笑顔満天で絵理沙を見ている。


「野木さんは他の競技に出てないよね? 確か、部活もやってないよね? だからいいよね? それとも私のやる事になったアーチェリーと代わってくれる? それなら私がバスケに出る!」


 そう言えばさっきアーチェリーの選手を一人決めるのが大変だったんだ。

 強制推薦された生徒が全員断るという非常事態になったんだ。

 流石にアーチェリーは初心者には難しすぎるだろ。

 だいたい、なんでこの競技が入ってるんだ? オリンピックじゃないだろ?

 そんなこんなで、真理子ちゃんが佳奈ちゃんにやれと命令して、強制決定になった訳だ。

 ちなみに委員長の命令は絶対だ。


「え、えっと…あ、そうだ! 姫宮さんとかはどうですか?」


 おい! 絵理沙! お前っ!


「綾香……じゃない、姫宮さんは正直ちっこすぎです! ダメです!」


 すっごいストレートにちっこいと言われた。


 絵理沙は眉間にしわをよせて俺を見ているが、


「うーん……はい、わかりました。私がやります」


 絵理沙は諦めたのかOKをした。


「では女子バスケットは野木さんで決定しまーす!」

「では…」

「来週のサザエさんは?」

「佳奈っ!」


 どっとクラスに笑いが沸いた。


「ごめーん! さて…って言われると思わずそう反応したくならない?」


 いや、真理子ちゃんは「では…」と言ったぞ? 佳奈ちゃん……


「真面目にしなさいよ……まったく」

「はぁい…」


 それから残った競技の代表を決めて、ようやっと全競技の代表が決定した。


「以上で終了です! やった! 終わった! みんなおつかれ~!」


 満面の笑みで背伸びをする佳奈ちゃん。 お腹が見えてるぞ! へそも!


「ねえ、綾香ちゃんは何も参加しないの?」


 絵理沙がなんで俺は参加しないのかと言わんばかりの表情で俺に聞いてきた。

 何故参加しないのか? それは本物の綾香は正直スポーツは得意ではないからだ。

 それはクラスのみんなが周知している事だと思う。

 だから多分推薦もなく補欠で落ち着いているんだ。


「だって、私は運動が苦手だし……」

「へぇ……運動が苦手なんだぁ……そっかぁ……」


 絵理沙は疑いの眼差しで俺を見ている。

 やめろ! その目は!


「あ、そうだ! みんなちょっといいですか?」


 真理子ちゃんが両手を挙げて大きな声を出した。

 クラスの生徒は全員がそんな真理子ちゃんを見る。


「ごめんなさい。ちょっと確認してなかったから」

「確認?」


 横の佳奈ちゃんが首を傾げた。と言うか、シャツが出てる! さっきのあくびの時にシャツを出しただろ! 仕舞え!


「補欠の確認をしてなかったの」

「ああ、なるほどっ」

「ええと、再度確認するけど、姫宮さん、一ノいちのわりさん、新田しんでんさん、以上の三人は補欠ですから! 競技に欠員が出た場合はよろしくお願いします!」

「らしいです! では解散! 『佳奈っ!』」

「えっ?……解散じゃないの?」

「貴方は委員長じゃないでしょ?」


 佳奈ちゃんを真理子ちゃんが睨んでる……


 ちなみに補欠というのは名前の通りで補欠だ。

 補欠は基本的には競技に出ない。しかし、どんな競技であっても、欠員が出た場合には補欠から競技参加者を出さないといけないというルールがある。

 この体育対抗祭は、補欠以外からは欠員補充が出来ない仕組みなのだ。

 だから、毎年三人の補欠うちの最低一人は運動センスが良い人を用意しておく必要がある。

 今回の補欠は、一ノ割さんも新田さんも運動が出来る人だ。という事で俺の出番などない予定だ。


「はい、ではこれで本当に終わります。お疲れ様でした」


 真理子ちゃんの号令でHRが終わった。

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