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ぷれしす  作者: みずきなな
前途多難な超展開な現実
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157 作戦会議という名の女子会!? 後編

 女子会と言う名の会議は進み、先程までのわいわいムードから今は真剣な会話へと進んでいた。


「物質時間逆行魔法は絵理沙の使った魔法で、僕もたった一日だけど時間を遡れるかを実験してみた」

「で、どうだったんだ?」

「さすがに絵理沙のように魔法で思念を込めたカードを送る事は無理だったが、紙切れ一枚レベルであれば僕でも過去に送れる事がわかった」

「紙切れ一枚? でもそれで絵理沙の変えたルートを元に戻せるのか?」

「そこなんだ。そこが問題なんだけど」


 輝星花はテーブルに広げたA4サイズの用紙に何かを書き始める。

 それは問題点だった。何項目かの問題点を書き出したのだ。


「ここに書き出したのが僕の考えている問題点だ」


 ・物質時間逆行魔法で正確に過去の自分に手紙を渡せるか。

 ・過去の自分がその手紙を未来からきたものだと信じてくれるか。

 ・手紙だけで絵理沙を説得できるか。

 ・絵理沙を説得できたとして、本当に正ルートに戻る事ができるか。

 ・新なIFルートに繋がってしまった時に僕らはどうなるのか。


 こう見ると本当に成功するのか、成功してもうまく元のルートが戻るのか心配になる。


「輝星花、マジで成功すると思うか?」


 輝星花は眉間にシワを寄せた。


「簡単な確立論では表現できない。だから何パーセントの成功率かは解らない状態だ。だけど、やらなければ今のこの世界が続くだけだ。絵理沙のいないこの世界がね」


 冷静になって考えてみれば、この世界で都合が悪いと感じているのは俺と輝星花と和実だけだった。

 そう、世界で三人しか本当のルートがあった事を知らない。

 逆に言えば、三人以外の人間や魔法使いにとっては今のルートこそが本ルートなんだ。

 俺たちはある意味、この世界を本ルートだと思って生活している人を蔑ろにしようとしている。

 過去に干渉して本来のルートに戻る事によって失敗する人間だって出るだろう。

 それでもいいのか?


「悟くん、表情に迷いがあるみたいだね? もしかしてこのルートの人間や魔法使いの事を考えていたのかい?」


 心も読まれていないのに的中された。

 そんなに表情に出てただろうか?


「いや、えっと……まぁ、多少はな……」

「でもさ? それを言い出すとキリがないよね? だって本当のルートでは成功していた人だってこのルートでは失敗しているかもしれないんだから」


 確かに、和実の言う事ももっともだ。

 前のルートはこのルートとイコールではない。

 互いの世界で成功者と失敗者がいるんだ。


「今の僕たちにこのルートがどうこうという考えを持てるほど余裕はない。うまくゆくかもわからないんだからね」


 そう、その通りだ。ここで変に迷うのもよくない。


「悟くん、僕と和実は正直に言えばこの世界の記憶もある。そして、それは決して失敗してしまった人生だとは言わない。だから、今の僕たちは本当のルートの記憶と今の記憶とで比較して、ほんの僅かだけど本ルートに戻るべきだと考えただけなんだ。本当にあるべきあの世界が良かったのではないかと考えただけなんだ。だから、再度言っておく。僕は今のこのままでも支障はない」

「そうね、輝星花の言う通りね。私もこのルートで失敗した訳じゃない。それどころか本来のルートでの波乱万丈さに比べればこの世界の私は平々凡々と過ごせる楽でよい世界だったし。それでも本来のルートに納得していないからこそ戻ってもいいかなって思ってるんだけどさ」


 俺は二人を表情を交互に見た。

 二人とも判断を俺に委ねるような目で見ている。


「確かに絵理沙はこの世界にはもう存在しない。だけどね……」


 輝星花はすっと左手を伸ばして俺の右手の甲に重ねた。

 油断していたせいもあって避ける事が出来なかった。

 そして、手の甲には輝星花のぬくもりが伝わる。


「今のルートで、僕は悟くんとは面識があるって話しをしたよね?」

「あ、ああ」


 ふわりとぬくもりが暖かい。


「僕は実はあの高校に三ヶ月だけいたんだ。非常教員でね」

「えっ?」


 少し俯き加減になった輝星花。

 その正面で唇を噛んで目を細める和実の姿が見えた。

 和実はまるで会話を止めたいような表情でじっと輝星花を見ている。

 そんな視線に輝星花も気がついたのか、手の甲に乗せていた手をどけた。


「いや、こういう話はもうやめておこう」


 なんという生殺し!?

 ここまで話しておいてストップとは。


「いやいや、話してくれよ。気になるじゃないか」


 しかし和実はぶんぶんと首を振っていた。

 いったい俺と輝星花との間で何があったと言うんだろうか?

 何を秘密にしているのか?


「気にしなくてもいいよ」

「いや、無理だから! 気になるから!」


 輝星花がうちの高校にいたという事実。と、ここで疑問が沸いた。

 そういえば綾香は輝星花を知らなかった。

 学校にいたはずならば輝星花を知っていてもおかしくないはず。

 なのに綾香は知らなかった。と言う事は?


「お前、別の人間に変身して学校にきてたのか?」


 びくんと反応したのは和実だった。

 なんで和実がそんな反応をするのかわからない?


「本題に戻ろうか、次にこのあげた項目を……」

「だからどうやってこの状態から戻る!」


 今度は俺が輝星花の左手を取った。それと同時に俺の左肩に手の温かみが伝わる。

 いつの間にかさっきまで正面にいた和実が左横にいるし。それも肩に手を乗せている。


「悟くん、待って!」

「な、なんだよ?」

「まず輝星花の手を放す」

「あ、ああ」


 俺は輝星花の手を放した。


「あのね、世の中知っていい事と悪い事があるのよ?」


 いや、じゃあさっきの話しは悪い事なのか?

 まてまて、話の流れをちょっと纏めてみよう。

 まず、輝星花が過去に学校にいた話をして。

 その事を話すのを和実は止めて。


 ……わからない。

 ぜんぜんわからない。


「和実?」


 輝星花が困惑した表情で和実に話しかける。


「ダメよ、話しちゃ!」

「いや、あれだ、一言くらいはいいだろ?」

「一言ってなに? 余計な一言はいらないから!」


 なんだろう? 何か空気が変な感じになってる。


「余計じゃない! 僕には大事な話だ!」

「何が大事なの? そういう余計な一言が悟くんの決断を鈍らせるのよ?」


 どうも俺の決断を鈍らせる事らしい。って何だ? 余計に気になる。


「和実、そんな事を言うと悟くんが余計に気になるだろ」

「あっ!」


 輝星花がしまったという表情になった。

 いや、待って? 今おまえ……確か。


「……き、気になると思うと思うんだ。あくまでも僕の予想だ」


 誤魔化した!


「お前、絶対に俺の心を読んだだろ!」

「ふっ、どこに証拠がある?」

「くっそ……」


 証拠なんてある訳がない。心を読まれていても俺にはわからない。

 ……いや待てよ? 今の輝星花は本ルートの輝星花でもある訳だし。

 そうなれば今の輝星花は俺に対して……はは。

 そうだ、あの魔法は常時魔法だ。読みたくなくても頭に入ってくるはず。


 ここで俺は作戦を決行した。

 そしてこの作戦決行がとんでもない事を巻き起こす。


「輝星花、こっち向け!」

「い、いやだね!」


 実際は向かなくても良い。でもこれで輝星花は完全に俺が気になっている。

 一度気にしてしまえば思考は輝星花にちゃんと聞いて貰える。


 そして、俺は心の中で色々と叫んだ。でまかせ含む色々を。


『俺は実は輝星花の事が好きだったんだ! その綺麗な唇が気になって仕方ない!』


 とてもじゃないが口に出せない事が平気で思える。思考ってすごい。


『俺は輝星花とキスがしたい! お前ともっといちゃいちゃしたい! その柔らかそうな体で俺を包んで欲しい! そして言ってやる! 俺は元の世界でもお前が好きだった!』


 目の前の輝星花の全身が真っ赤になっている。

 首も耳もすべてが真っ赤だ。もうこれは完全に心を読んでいるってバレバレだ。


『輝星花こっちを向け! お前が俺をどう思っているのか言ってみろ! お前の気持ちを俺に言ってみろ!』


 やりきった。

 すでにバレバレなのだが、ここまで心の中で叫ばれれば輝星花だって反応せざる得ない。

 そう思って輝星花を見ていると、輝星花が震える声で言葉を綴り始めた。


「卑怯だよ……そんな事を心で叫ぶなんて……」

「やっぱりお前は俺の心を読んでいたな!」


 これは決定的な証拠になった。

 今になってちょっと恥ずかしくなってきたが、声には出してない。思っていただけだ。

 思うなんて人間はよくやる。人間は妄想の生き物なんだからな。

 輝星花はどう受け止めたかわからないけれど、俺は声には出してないからOK。


「悟くん? あなた輝星花に何をしたの?」


 輝星花がさらに真っ赤になっていた。

 リアルで頭の上から湯気がでている。

 まさかここまで過剰に反応するとは予想外だ。


「あーあ……もう、知らないよ? どうなってもさ……」


 和実はそそくさと部屋から出ていってしまった。

 何で出ていくの? おかしいだろ?


 部屋の残されたのは輝星花と俺。


「き、輝星花? すまん、ちょっと心の中で叫びすぎた。あれは妄想だから」


 すると、ゆっくりと輝星花がこちらを向いた。

 その表情は面白いくらいに真っ赤だった。

 瞳を潤ませ、本当に真っ赤で恥ずかしそうに俺をちらちらと見ている。

 さっきまで言葉では好きだとか言っていた俺だが、この表情を見た瞬間に心臓が飛び跳ねるように鼓動を始めた。


 いやいやいやいや! えっ!?


「君はっ!」


 体がいきなり男に戻ってしまった。

 

【パンッ!】


 そして輝星花が思いっきり俺を叩きやがった。

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