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ぷれしす  作者: みずきなな
九月
15/173

015 琥珀色の瞳の転校生

 始業式の日は学校が早く終わる。

 昼間でにはすべてが終わり、俺はこの緊張の空間から解き放たれる。

 そして、もう二時限目のHR。


 早く終わらねぇかな…もう今日は疲れたし…もう戻りたい…

 しかし…マジで本当に疲れた…

 そんな事を本気で考えながら机に突っ伏せていると、ガラガラと教室の扉を開ける音が聞こえた。

 顔を上げると担任の先生と一緒に女の子が入って来たじゃないか。

 誰だあの子は? 見た事がない子だ。


「ホームルームを始めますよ? えーと、まず始めにこのクラスに新しく入る、皆さんの新しいお友達を紹介しますね~」


 この時期に転校生だと? 一年のそれも二学期に?


「初めまして、名前は野木絵理沙のぎえりさと申します。両親の仕事の関係で中学三年までアメリカに住んでいました。ですが、高校からは日本で学びたいと思っていたので、今回この学校に入学する事になりました」


 絵理沙の自己紹介にクラス中が響めいていた。


 帰国子女だと? 珍しいな…そんな子がうちの学校に入ったのか?

 しかし、この野木絵理沙という子はハーフなのかのだろうか?

 髪は茶色だし、瞳もよく見れば琥珀色だ。 しかし、肌は色白で身長は165センチくらいあるか?

 半分は日本人だが、髪の色と透き通るような琥珀色の瞳は日本人離れしていた。


「すっごいスタイルいいねぇ…」


 近くの席の女子が溜息混じりにそう言い放った。

 確かに、転校生はスタイル抜群で、女子生徒の言う通りだ。マジで日本人っぽさがない。

 海外にいたって言ってたけど、モデルでもやってたのか? なんて思ってしまうレベルだった。


「えっと…名前からわかるかもしれませんが、私は科学の野木先生の妹です」


 今度はクラス中に驚きの声があがる。流石に俺もその一言には驚いた。


 ちょっと待てよ? まさかと思ってたけど何だそれ? 野木の妹だと? 妹って事は…じゃあこの子も魔法使いなのか?

 琥珀色の美少女は話しを続ける。


「よく聞かれますが、私はこう見えても純粋な日本人です。海外でモデルの仕事なんかもしてません」


 なっ? まるで俺の考えを読み取ったみたいな答えすぎるだろ? でもまぁ…それは考えすぎか。


「皆さん、日本に不慣れな私ですがよろしくおねがいします」


 そして、野木絵理沙の自己紹介が終わった。


「えーと…じゃあ…席ね…そうね、姫宮さんの隣りでいいかな」


 俺の隣だって? 確かに右隣りの席があいてるけど…って、何で空いてるんだ? こんなど真ん中の席が空席? 不自然すぎるだろ!

 なんて思っているのは俺だけみたいだ。クラスのみんなは何も感じていない様子だ。


「はい、わかりました」


 絵理沙は笑顔で俺の横まで歩いて来た。俺はそんな絵理沙をじっと見詰める。

 鞄を机の横に掛けると、こちらを向く絵理沙。琥珀色の瞳が本当に綺麗だ。そしてニコリと微笑んだ。


「よろしくね、姫宮さん」

「あ、はい、よろしくお願いします」


 この子が野木の妹だと? 本当にか?


 俺が絵理沙を見ていると、絵理沙は笑顔で俺の机の上を指さした。

 指をさされた机の上の隅っこには、知らない間に小さな紙が置いてあるじゃないか。


 あれ? なんだこの机の上の紙は? もしかしてさっき挨拶したときにこいつが置いたのか?


 俺は絵理沙の顔を見ながら、その紙を摘んでちらちらと見せた。

 絵理沙は一度頷くと満面の笑みを浮かべた。どうやら絵理沙が置いたようだ。

 俺はゆっくりとその紙を開いた。すると中にはこう書いてある。


『姫宮綾香さんへ』

『今日の放課後屋上で待ってますね。 絵理沙』


 俺は何度かその手紙を読み直した。が、僅か二行の手紙を読み間違うはずがない。

 そう、こいつは俺を屋上へ呼び出したのだ。


 まて…なんで? 屋上? まさかこの子が俺に告白? いや違うだろ? 初対面だぞ? 初対面だよな? 多分そうだよな?


 しかし、俺はなぜかこいつと初めて出会う感じがしなかった。出会った事なんて記憶の片隅にも無いのに。


 しかし、まて…なんでこの子は俺のフルネームを知ってるんだ?

 そう、手紙には俺の、いや綾香のフルネームが書いてあった。

 ああ、そうか! 野木か! あいつから聞いたのか! だから知ってるのか! という事は…俺の秘密も知ってるっていう事か?

 いやしかし、妹だからって知られてもいい事なのか?

 ………まてよ…本当に野木の妹かわからないぞ?


 俺はじっと絵理沙を見る。何度俺が見ても絵理沙はニコリと微笑み返す。俺は思わず顔を逸らした…


 こ、こんな綺麗な子があいつの妹なはずがない! 似てないし!

 ま、まあ…仕方ないな…放課後にこいつに直接聞けばわかるか。


 ☆★☆★☆★☆★☆


 やっと終わった…これで帰れる…っと思ったけど帰れないんだった。屋上に行かないと…

 そう思っていると後ろから声が聞こえる。振り返るとそこには佳奈ちゃんがいた。


「綾香! 一緒に帰らない?」


 佳奈ちゃんは俺に一緒に帰ろうって誘ってくれている。でも、


「ごめんなさい。ちょっと用事があって…」


 という事なんだよな…本当にごめん。


「えーそうなの? 残念っ! いっしょに買い物でもいこうかと思ったのに~」


 なんて言いつつ、佳奈ちゃんは速攻で帰って行った。なんて諦めの早い子なんだろう…

 そう言えば茜ちゃんは?

 教室を見渡したが茜ちゃんの姿はなかった。

 もう帰っちゃったのかな…茜ちゃん。

 俺に挨拶もないなんて…どうしちゃったんだろう?


 俺は鞄を教室に残して屋上へと急いで上がった。

 屋上なんか滅多に出た事はない。それにしても何故に屋上なのだろうか?

 そんな疑問を抱きつつも、屋上へと出る鋼鉄製のドアをあける。すると、そこには絵理沙の姿があった。


「ごめんね野木さん、遅くなっちゃって…」

「ううん、大丈夫よ、私も今さっき来た所だから」


 またあの笑顔で返されてしまった…くっ。


「で? 私に何の用事ですか?」

「えっとね…私ね、綾香ちゃんに確認したい事があって…」


 確認…って何ろう…変な事じゃないよな…


「確認って何ですか?」

「うん…えっとね? 綾香ちゃんってさ…」


 綾香ちゃんって…俺の中に緊張が走る…心臓がいつの間にかドキドキと激しく脈を打っている。


「食べ物は何が好きかな?」


 ドテ…って心の中でこけた。マジで拍子抜けの質問すぎた…


「た、食べ物? って…そんな事を聞くためにわざわざ屋上に?」

「え? 悪かったかな?」


 悪くはないけど、一体何の意味があってそんな質問を?


「い、いや…悪くないよ? えっと、私は…そうね…ラーメンとか好きかな」


 あ、しまった! 思わず俺が素で好きなものを言ってしまった。


「へ~悟君はラーメンが好きなんだ?」

「うん、私はラーメンが好きだよ……えっ!?」


 ニコリと微笑む絵理沙。

 確かに今、こいつは俺に向かって悟君って言った…

 じゃあこいつは…やっぱり俺の素性を知ってるのか?

 俺はゴクリと唾を飲む。喉はからからになって手に平には汗。


 くそ…なんだよ? こいつは何者なんだよ? 野木と同じで魔法管理局の魔法使いなのか?

 …ぐううううう! 野木ぃぃぃぃ! 何がどうなってんだよ!


「心の中で僕の名前を叫ばないでくれるかな?」

「なっ!?」


 俺が慌てて振り返るとそこには野木の姿があった。


「な、何でここに野木が?」

「理由が必要かい?」

「必要だ!」

「あははは! じゃあ、君に逢いに来たという事でどうだい?」


 なんてキザな…って言うか…くそぉぉぉ! ふざけやがって!


「野木! これどういう事だよ! こいつは何者なんだよ!」


 二人の野木は大笑いしている…


「あははは…おもしろいな悟君は、じゃないや綾香ちゃんか」


 野木が俺の頭をなでなでする。


「やめろ!」

「何でだい? こんなに可愛いのに」

「か、可愛いとか言うな!」


 絵理沙がひいひいとお腹を抱えて笑っている。

 なんだこの二人は! 正直かなりむかつく!


「おい、これはどういう事なんだ? ちゃんと説明してくれよ!」


 俺が怒鳴ると、絵理沙は笑うのをやめて俺の横にきた。


「な、何だよ?」


 そして、絵理沙は俺の耳元でそっと囁いた。


「私よ…北本恵理よ」

「き、き、北本!? 先生!?」


 俺は絵理沙を見る。どう見てもあの北本先生じゃない。赤の他人だ。まったくもって全てが違う。


「し~! 声が大きい。これからは小さい声でお願いね。流石にばれるとやばいのよね」

「………っ」

「何、その目は? 疑ってるの?」

「……どう見ても…違うじゃないか」

「ああ、そうね? うん。違うわよ? でも、本当に私は北本絵里よ?」


 北本先生だと言い張る絵理沙。ホントにこいつがあの北本恵理なのか?


「信じられない…マジか?」

「マジよ? ああ、そうね。こうなった経緯はちゃんと話してあげるから。だからそこの物陰にいこうか」


 そして、俺は素直に絵理沙の後をついて行った。

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