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ぷれしす  作者: みずきなな
大宮バトル 救世主は俺だ!
112/173

112 予想不可能、暴走した俺? 前編

 大宮から戻る電車の中

 俺の横には何故か緊張した顔の大二郎が座っている。 

 茜ちゃんも絵理沙も輝星花きらりもここには居ない。

 俺と大二郎と二人っきりだ。

 はたから見れば初心うぶなカップルに見えるシチュエーション。


 ガタンガタンと電車が揺れる。

 もうすぐ久喜駅だ。

 しかし、ここまで会話はない。

 今更なんて放せばいいんだろう? しかし、気まずい。すごく気まずい。

 いやいや、っていうか、何で俺が大二郎と同じ電車で、それも二人で一緒に帰っているんだ?

 こうなったのも……。

 くそ、輝星花! そして茜ちゃんまで!



 ☆★☆★☆★☆★☆



 裏通りバトルの一件後

 大二郎が格好良く去り、輝星花は「やっちゃったな」という顔で俺を見た。

 俺もやっちゃったかもしれないとは思った。

 だけど、まだいい。まだいいんだ。

 大二郎は俺が付き合えないという事実をわかっている。

 いくら大二郎が俺にアプローチしようが、俺が耐えればいいんだ。拒めばいいんだ。

 大丈夫だ。今日これからゆっくりと買い物を楽しめば……心だって落ち着くはず。

 そう思っていたのに……。


「茜ちゃん? なんで……一緒なの?」


 俺が驚愕した。


「そこで出会ったので誘ったの」


 茜ちゃんが絵理沙と一緒に連れて来た人物を見て。


「えっと……誘ったって?」


 それは……。


「えっ? 誘ったんだけど? 一緒に食事でもどうですかって」


 大二郎だった!


「清水先輩を!?」

「うん!」


 なんと茜ちゃんと絵理沙が大二郎を一緒に食事まで誘って、連れて来たのだ

 そして、何故かしっかりと誘いにのっている大二郎。

 おい! あの台詞の後でなんで戻ってくるんだよ!

 しかし、もう遅い。誘ったもんは仕方が無い。


「綾香? 顔が赤いよ? まだ気分が悪い?」


 茜ちゃん、そこは口に出すべきじゃないだろ!

 そう、俺は大二郎を見て緊張していた。

 部屋に意識しようなんて思ってないのに、なぜか自然と意識してしまう。

 やばい、心臓までドキドキする。

 茜ちゃんといるせいでドキドキするなら理解できるけど、大二郎にドキドキするなんて、どんな変態だよ俺は!


「大二郎さん」


 輝星花が何を考えたのか、大二郎へと接近。


「さっきは格好よかったですよ?」


 なんてアホな事を言ってしまった。


「えっ? さっきの事?」


 茜ちゃんは興味津々な表情で輝星花を見て、ついに始まったライチタイム。

 美味しいイタリアンのお店だったらしいが、味は覚えていない。

 何故から、なぜか恋バナからスタートしたからだ。

 そこで、大二郎は俺を好きになった理由とかを聞かれてちゃんと説明していた。

 律儀に答えすぎだろ!

 でも、大二郎は思ったよりも俺に向かっては話しをして来なかった。

 それより、後半は話をすり替えて俺に対する恋バナはしなくなっていた。


 それから、しばらく話ていてわかった。

 大二郎が大宮に来ていた理由だ。

 それは決して俺のストーカーではなかった。当たり前だけど。

 大二郎が制服だった理由は大宮で空手地区大会の決勝戦があったからだ。

 だから大二郎は大宮に来ていた。

 そして、この大会は俺とデートをするかしないかを決める大事な大会だったはずだ。

 茜ちゃんが結果を聞いたが、大二郎はそれには答えなかった。

 ただ、話せるような結果じゃないと言っていた。

 そしてランチタイムは終了した。


「じゃあ、俺は帰るよ」


 大二郎は俺たちにそう挨拶をして歩き始める。

 そして大二郎は人混みに消えた。

 俺はやっとここで大二郎と離れられると思った。しかし甘かった。


「あ、そうだ! 綾香さんも一緒に帰ってはどうでしょう?」


 いきなり輝星花がとんでもない事を言い出しやがった。


「なんで私が先輩と一緒に帰るの?」

「だって、大二郎さんがこんな忘れ物をしてますし」

「へっ?」


 見れば柔道着を忘れている。

 いや、待て! それを忘れるとかないだろ!


 俺がじっと輝星花を見ると、輝星花はニタリと微笑んだ。

 こ、こいつがやったのか!

 どうやって? まさか魔法? まさか、魔法つかいじゃあるまいし……。魔法つかいだった。

 でも、でも! 今は魔力がないんじゃないのか?

 すると、輝星花は俺の心を読んだかのように言った。


「この程度なら楽勝ですよ。届けるのは」


 いや、お前は俺の意志を読んでそう言っただろ?


「綾香ちゃん、先輩に届けてあげれば?」

「何で私が!?」

「私は知り合いじゃないし……」


 絵理沙ぁぁ!


「私も知り合いではありませんし……」


 輝星花ぃぃ!


「やっぱり綾香しかいないよ?」


 茜ちゃん!


「えっと……」


 やばい、選択肢がない。

 でも、後でも先でも、どっちにしても届けなきゃ駄目なんだよな?

 そうか、そうだ! さっさと届けてからここに戻るのも手かな?


「ねぇ、茜さん」

「何ですか? 輝星花さん」

「私、新しい下着が欲しいのです」

「そうなんですか? 私も欲しかったんです!」

「茜ちゃん! 私も見たい!」


 って……なんで下着の話に?

 戻っても下着屋にいくのか?


「綾香さんも新しい下着が欲しいですか? それなら私が届けますが?」


 そう言ったのは輝星花だった。

 だがしかし、俺はそんな店には入りたくない。

 そして、輝星花の両手がもにゅもにゅ動いてるのが怖い。

 下着屋なんて、絶対にこいつにセクハラされそうだ。

 こうなったら仕方無い……。


「私が先輩に柔道着を届けて、そのまま今日は戻るね」


 こう言うしかなかった。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 俺は駅に向かってあるき始めた。

 いざ一人になると色々な事を考えてしまう。

 例えば、大二郎に俺の正体がばれたらどうなるか。

 もし今の綾香の中身が実は俺『悟』だって知ったら、大二郎はかなりショックを受けるんだろうな。

 頭を抱えて咆哮をあげる大二郎の姿が想像つく。

 そして、次に考えたのは……ない! 絶対ないけど……。俺と大二郎が付き合ったら。

 もし俺が今から大二郎と付き合ったとすると、将来は妹の綾香が大二郎と付き合わないといけないという事になってしまうのかな。

 綾香は今まで起こった事実を知らない訳だし、俺と入れ替わるのすら大変そうなのに、それで大二郎と付き合うとか無理だよな。

 なんて馬鹿な事を考えていると大宮駅についていた。

 しかし、よく考えればそうそう大二郎が見つかるはずがない。

 改札の外にはやっぱりいなかった。

 こうなると中しかない。

 でも、こんな人混みの中で大二郎がすぐに見つかるとかあるはずないよな。


「ひ、姫宮綾香!?」


 改札を入ってすぐに見つかってしまった。

 大二郎、お前はレアキャラにはなれないんだな。


「えっと、清水先輩、柔道着を忘れていましたよ?」

「あ、ああ! 探しに戻ろうかと思っていたんだ!」

「あ、そうだったんですか? よかったです。渡せて」

「あ、ああ、ありがとう……」


 大二郎は俺がら柔道着を受け取った。


「え、えっと……じゃあ……私はここで……」

「ま、待て、姫宮綾香! お前はどこにいくんだ?」


 なんて聞かれても困る。

 切符は買ってしまったし、外に出る訳にはいかない……。

 でも、一緒に帰るのもなんだかあれだし……。


「よかったら、一緒に東鷲宮まで帰らないか?」


 なんて大二郎から言われた。

 うわぁぁ! 誘われても困る! めっちゃ困る!

 でも、ここで拒むのも何かおかしい。

 大二郎を避けているように見えるよな。

 わざわざ柔道着を届けたのにここで避けるとか、まるでツンデレみたいじゃないか!

 となると……。


「そ、そうですね」


 こうして俺は大二郎と一緒に帰る事になってしまったのだった。

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