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ぷれしす  作者: みずきなな
大宮バトル 救世主は俺だ!
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108 大宮バトル 救世主は俺だ! そのⅢ

「君たちの様な人間がいるから……いるからこの世界はどんどんと悪い世界へと変わっているんだ!」


 あの輝星花きらりが金髪の男に向かって怒鳴った。

 俺は……輝星花が怒鳴るのを初めて見た。

 どんな時でも怒鳴る事なんてなかった輝星花。

 野木の時はいつもへらへらしてて、たまに格好よくって、そしてエロい。

 でも、人に向かって怒鳴るなんてなかった。

 あの輝星花が……怒鳴った。


「う、うわぁ、こいつ猫をかぶってんのか? こぇーな? 女ってこえーな?」


 金髪は、動揺しながらなんとかそれを隠そうと周囲の仲間に同意を求めている。

 周囲のガタイのいいやつも、赤いバンタナも、焦っているのが手に取るようにわかる。


「離しなさい!」

「だ、誰が離すかよ!」

「今なら見逃してあげましょう。だから離しなさい」


 圧倒敵な形成不利な状況で輝星花はどうどうと男三人に立ち向かっていた。

 なんか、やばい、こいつ格好いいかも……。

 一瞬だけど、俺はそう思ってしまった。

 だが、男らはまったく輝星花の言う事なんて聞いてない。


「へぇ、そっか……それじゃあ仕方ねーな」


 金髪の髪の男が右手に拳を作った。


「や、やめろ! 輝星花に手を出すな!」


 俺は勢いで怒鳴った。しかし、


「駄目だね。 ほらいくぞ猫かぶり? 歯を食いしばれよ? 顔はやばいから腹にしておいてやるよ」


 まったく聞く耳なんてもってない。やっぱり人間のクズだ。


「ふん! 誰がお前らの言う事なんて聞いてやるかってんだ!」

「じゃあ、僕にも考えがある」


 輝星花は咄嗟とっさに羽交い締めにしていた茶色いジャンパーの男のすねかかとで蹴った。


「痛てぇ!」


 強靱な肉体を持つ茶色いジャンパーの男でも、さすがにすねは鍛えような無いみたいだ。すごい形相で痛がっている。

 しかし羽交い締めは取れない。

 ついに金髪の男の拳が斜め後ろに引かれた。


「おら! 俺にした事をそのままお返してやんよ!」


 やばい、このままじゃ輝星花が殴られる。どうする!?

 今の俺の位置は今の輝星花よりすこし後方。

 この位置からだと輝星花きらりを殴ろうとしている金髪の男に蹴りやパンチはとてもじゃないが届かない。

 例え届いたとしても、それでパンチが輝星花に当たらない保証はない。

 そして、羽交い締めをしている男には攻撃はできるが、結果はさっきと同じになるだろう。それに意味もない。

 こうなったら俺の瞬発力を生かして輝星花を羽交い締めした男の横を抜け、輝星花の前に出て金髪の男のパンチをガードするしか無いか。


「輝星花ぃぃ! 体を引けぇぇ!」


 思ったら即行動!

 俺は勢いをつけて輝星花と金髪の髪の男との間に頭部をガードしながら飛び込んだ。

 輝星花がタイミング良く体を引いた。そして、俺はパンチが輝星花に当たる寸前で飛び込む事に成功する。が……。


「綾香くん!」


 輝星花の声が聞こえたと同時に、頭部に激しい衝撃が走った。

 そして、目の前が真っ白になり記憶が飛んだ。


 ……。


 うっすらと意識が戻る。

 そして、気が付くと俺は地面に横たわっていた。


「綾香くん、綾香くん?」


 やべぇ、頭がすげー痛い。ガードし損ねたみたいだ。

 うっすらと目を開けると俺を笑いながら指差す金髪が視界に入った。


「な、何だこいつ? 俺のパンチに自分から突っ込んできやがったぞ?」

「綾香さん、大丈夫かい!? おい君達、何をするんだ! 暴力は問題解決の手段にはならないんだぞ!」


 野木の怒る声が聞こえるけど、体が動かない。声も出ない。

 意識が朦朧として立ち上がれない。

 まったく、今日は最悪の日だ。ろくな事が無い。


「おいおい、これって笑い事じゃないだろ? あいつ動かないじゃないか。死んだりしてないよな?」


 焦った声が聞こえた。これはあの体格のいい男の声だ。

 俺が倒れたのを見て少し焦っているみたいだ。

 そりゃそうだよな。女子高生を殴って倒して、普通のやつなら焦るよな。

 どうやら俺が倒れたおかげで輝星花に対する攻撃は止んだようだし。

 結果オーライか? 俺はオーライじゃないけどな。


「早く私を離しなさい! 綾香さんにもしもの事があったら責任が取れるんですか!?」


 また輝星花の怒鳴り声が聞こえる。


「な、なんだよそれ! 元はと言えばお前が悪いんじゃないか!」


 赤いリストバントの声が頭に響く。まぁそれは正しいな。


 その瞬間、『ドゴン!』という重低音が俺の耳に響いた。

 これは何かを殴った時の打撃音だ。でも誰が誰を殴ったんだ?

 言えるのは輝星花のパンチの音じゃないという事だ。輝星花じゃこんな音はさせられない。

 じゃあ誰が?

 薄っすらと目を開けると、俺の横には先ほど輝星花を羽交い締めにしていたあの体格の良い男が白目を剥いて倒れていた。


 な、何だ!? 何があったんだ!?


 俺は驚きのおかげか、すこし動けるようになった。そして懸命に顔を上げると……。

 まだ目が霞んで良く見えないけど、しかし誰かがいるのがわかる。


「綾香さん! 大丈夫かい!?」


 輝星花?


「まったく! 君は無茶をしすぎだ!」


 俺の体が持ち上げられた。

 そして、柔らかい腕に抱かれ、俺はいい匂いのする柔らかなものに抱かれた。


「くっ……まったく……もう……君は……」


 頬に何かが落ちてきた。

 俺は頭痛を我慢しながらゆっくりと目を開く。

 すると……目の前には唇を噛みしめながら瞳に涙を浮かべた輝星花の姿があった。

 その瞳からは、ぽたりぽたりと俺の頬へと涙が落ちてきている。

 今日は輝星花の初めてをよく見るな……。

 初めて見た。こいつの泣き顔……。


「おい……何で……泣いてるんだよ……」


 ハッとした表情になった輝星花。そして俺をぐいっと抱きしめると両目を閉じて言った。


「君が……馬鹿な事をするからだ……」


 そして、輝星花は涙を流しながら笑顔をつくった。


「綾香くん、ごめん……本当に僕のためにこんな事に……ごめん」


 ぐっと輝星花の胸に俺の顔が押しつけられる。

 ぎゅっと、あたたかく、やさしく、柔らかく。うん、でかい。

 そうか、こいつ女だったんだな。

 輝星花は女なんだ……。

 嗚咽をあげながら泣く輝星花を見て俺はそっと手を伸ばす。

 輝星花の涙に濡れた頬に手を当てる。そして言った。


「おい、男が女を護るのはあたりまえだろ?」


 すると、輝星花はキリっと俺を睨んだ。


「今の……君は……女の子だ! 無茶はしないで……くれよ!」

「あはは……すまん……無茶した」 

「おい! お前ら! 俺の姫宮綾香に手を出してただで済むと思うなよ!」


 突然聞こえた聞き覚えのある声だ。

 そうだ、俺たちを助けてくれたのは誰なんだ?

 この声の持ち主なのか? っていうか、この台詞を吐く男子は俺の中で一人しか知らないない。


「し、しらねぇよ! あいつらが俺らをっ……うぎゃ!」

「問答無用だ!」


 『ボグ! ボガ!』と激しい打撃音が頭に響く。

 俺は視線を声のする方向へと向ける。目を細める。

 すると見えた。うっすらぼやけているけど、俺の知ってる男が二人の男を相手に喧嘩している。

 そう、それは清水大二郎だった。

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