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ぷれしす  作者: みずきなな
大宮バトル 救世主は俺だ!
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104 大宮お買い物ツアー そのⅡ

 俺は輝星花と二人で大宮駅の西口のアルシェへと向かっていた。

 いつも学校で見ている変態教師である野木一郎。

 その本当の姿である目の前の輝星花きらり


 あいつとこいつが同一人物だとか今でも信じられない。

 いや、信じてるけど、普通に考えられないレベルだ。


 男としての生活を強要されていた女の子か……。


 俺がじっと輝星花の背中を見ていると、それに気がついたのか輝星花が立ち止まって振り向いた。


「どうしたのですか? 私のブラジャーのラインでも出てましたか?」

「なっ!?」

「おかしいですね。下着のラインは気にするようにと絵理沙に言われましたので、大丈夫だと思ったので……」


 俺は慌てて輝星花の口を塞いだ。


「大丈夫です! 問題ないですから! だからそういう事は大きな声で言わないでください」


 輝星花はただでさえ目立つ。

 今の輝星花だったら、アイドルにだってなれるんじゃないかってレベルに綺麗で可愛い。

 そんな輝星花が目をつけられないはずがない。

 すれ違う男は全員が振り返り、遠目で指を指されるレベルなんだ。

 だから、聞き耳だってたてられてるのに!


「輝星花さんは注目されてるんですから、注意してください」


 俺がそう言うと、輝星花は言っている意味がわかったのか小さく頷いた。

 そして、俺はゆっくりと手を離す。


「すみません、あまりこの姿でおでかけなどしないので……」

「いや、いいんだ」

「普通は変態教師だから気にもとめていませんでした」

「そうですよね、普段は変態……って!」


 お前、変態だっていう自覚あったのか!


「冗談です♪」

「いや、事実だろ」

「そうですか? 私は普通だって思っていますよ?」


 そう言って後ろで手を組んで、まるで女の子みたいに首を傾げながら上半身を俺の方に傾けてきた。

 あ、女だった。


 俺は周囲を気にしながら輝星花に聞こえるように小さい声で話しを続ける。


「胸を触ったりする教師はセクハラ教師だ。普通だったらクビだ」

「ですが、世の男性は女性の胸に興味があるという事なのですけど?」


 なっ!? しかし、うん、間違ってはない。だけど、


「それを実行に移すと犯罪なんだよ!」

「ふむふむ、しかし、私は綾香さんとは性的関係を持つ事は不可能です。男性の姿ですが生殖器は搭載していませんので」


 と、搭載してないだと!? って、そうじゃない!


「搭載とか言うな! だから、マジでここでそういう話はやめろって、お前が言ったんだろ? 口調とか注意しろって!」

「はい。そうですね。ですので口調はずっと変えていませんよ? 綾香さんの方こそ口調が戻っていますから注意してくださいね」


 顔が一気に熱くなった。


「す、すまん……で、でもやめろって。こんな話をしても楽しくないだろ?」


 そう言うと、輝星花は唇を口内に巻き込むようにして噛むと、そのまますこし頬を桜色に染めた。

 そんな仕草にまたしても俺の心臓さんが激しく鼓動している。


「綾香さん……」


 そして、輝星花きらりは透き通るような紅い瞳でじっと俺を見つめた。

 それに引き寄せられるように俺も輝星花きらりを見つめていまう。


「私は、貴方と一緒にいるだけでとても楽しいです♪ だって、私は貴方が好きですからね」


 輝星花きらりは満面の笑みを浮かべて本当に嬉しそうな声でそう言った。

 俺は呆気に取られてしまった。言い返す言葉もない。いや、これで何て返せばいいんだ?

 好き? 俺が? 好きって? どういう意味だ?


「ああ、勘違いされると困るので言っておきますね。告白ではありませんよ? 私は貴方を客観的に見て私自身がどう思っているかを分析して、一つの言葉として貴方に対して『好き』と発しただけですから。あれですよ?『好き』の意味合いとしては『心がひかれること』『気に入ること』等がありますが、私の場合は後者であり、お友達としての好きです」


 一瞬、まさか輝星花まで? なんて思った俺の思考を砕いた言葉に少し安心する。

 そして、少し胸が痛くなった。


「あっ? えっ? あ、当たり前だ……当たり前ですよね?」


 きっと顔が赤いであろう俺に笑顔で微笑み返すと、輝星花は俺に背を向けてアルシェへと駆けて行った。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」



 ☆★☆★☆★☆★☆



「綾香! 遅いよぉ?」


 アルシェの某ショップで茜ちゃんと絵理沙が待っていた。

 茜ちゃんはわざとらしく、腕を組んで頬を膨らませている。

 うん、怒っている仕草も可愛い。


「ごめん、ちょっと輝星花さんと話をしててね」

「えー? 二人で話をしてたの? ずっるーい。何を話してたの? 秘密の話とか?」


 茜ちゃんは興味津々の顔を俺の目をじっと見た。

 しかし、どうしてそういう話だと思うんだろう?


「いや、何もないよ? 秘密とか」

「綾香、嘘ついてるでしょ? 顔に嘘って書いてあるもん」

「え?」


 俺は慌てて自分の顔を触った。


「馬鹿じゃん? 書いてあるはずないじゃん」


 絵理沙が俺に聞こえるか聞こえないかの小声でぼそりと呟いた。

 輝星花と茜ちゃんには聞こえていないみたいだ。

 くそ、絵理沙め。


「何、何? なぁに? 私にも教えてよ~」


 やばい、ガールズトークに展開する予感。

 佳奈ちゃんモードかこれは?

 意味ない所からいきなり恋愛話とかになるあの意味不モード。

 俺はあれは苦手なんだよな。

 でも、茜ちゃんまでがあのモードに?


「いや別に大した事じゃないよ。ね、輝星花きらりさん」

「はい。日常会話をしていただけです」

「そっか、まぁ輝星花さんがそう言うならそうなのかな?」

「茜ちゃん!?」


 そして茜ちゃんと輝星花がクスクスと笑った。

 しかし、笑顔の二人とは別に、その後ろで目を細めている奴がいるのに俺は気がついた。

 そう、絵理沙だ。絵理沙は茜ちゃんの後ろから俺を睨んでいた。


 しかし、絵理沙は俺と目が会うと、途端に表情を緩めて普通に戻った。


「なに? 私も混ぜてよ」


 なんて言いながら輝星花きらりの横へと歩いていった。


「お姉ちゃん楽しそうだね! 一緒に来てよかったでしょ?」


 普通の姉妹の会話。茜ちゃんにはそう聞こえただろう。

 だけど、俺は見た。絵理沙の顔を見た輝星花から一瞬笑顔が消えのを……。

 しかし、すぐに輝星花にも笑顔が戻る。


「はい、一緒に来てよかったです」 

「そっか、お姉ちゃんが喜んでくれて私とても嬉しいわ。さあ、茜ちゃん、次のお店に行こうか!」


 絵理沙そう言うとはくるりと反転して一人で歩き始めた。


「あ、待って! 絵理沙さん! そっちじゃないよ!?」


 茜ちゃんは慌てて絵理沙の後を追って行った。

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