100 ありがとう 第100部です!
電車が大宮駅に到着。
久々の大宮駅のホームだ。
相変わらずここは人で溢れていて上りのエスカレーターには長蛇の列ができてる。
「絵理沙さん、輝星花さん、こっちです! 綾香も早く!」
茜ちゃんが号令とも聞こえる口調で俺たちに命令すると、真っ先に長蛇の列にになっていたエスカレーターの最後尾に並んだ。
絵理沙と輝星花も茜ちゃんに言われるがままにエスカレーターの順番に並ぶ。
「それにしてもこの駅って人がいっぱいだねぇ」
絵理沙が物珍しそうにキョロキョロと周囲を見渡している。
おい、それじゃ田舎者だってアピールしてるように見えるぞ。
「ここは大きな駅だからね。でも今日は休日だからこれでも人は少ない方だと思うよ?」
茜ちゃんは笑顔で絵理沙に声をかけた。
「へぇ……これで少ないんだ?」
「うん」
絵理沙はその後もずっと構内をキョロキョロと見渡していた。
輝星花はそんな絵理沙を少し呆れた表情で見ている。
「絵理沙さんって、もしかしてあまり電車とか使った事がないのかな?」
茜ちゃんが物珍しそうに構内を見渡す絵理沙にそう質問をした。
「え? 私? えっと……」
絵理沙は突然の質問に言葉に詰まらせた。そしてちらりと輝星花の表情を伺った。
輝星花は絵理沙の方を向くと小さく首を横に振る。
絵理沙はそれを確認して小さく頷くと茜ちゃんの質問に答えた。
「茜ちゃんの推測通りだよ? 私は電車ってあんまりは使った事がないの」
茜ちゃんは「へぇ~」と感心したような声をあげたあと、やたら笑顔になった。
「ねぇねぇ、それってやっぱり外国で暮らしてたからなの?」
興味津々の茜ちゃんに、あの絵理沙がすこし引いているのがわかる。
しかし、茜ちゃんもこんな態度をとるんだな。新しい発見だな。
「そ、そうだよ?」
「そっかぁ! だからそんなにキョロキョロしてるんだね。じゃあ絵理沙さんがいた国って電車がなかったのかな?」
電車がない国ってどこだなんて無意味な事を考えていると、
「そ、そうかも?」
絵理沙が顔を引きつらせて頷いた。しかし、それは肯定なのか?
「そっかぁ……そうなんだぁ……ふ~ん」
「でもあれだよ? 電車は本当に始めてだからね」
「うんうん、電車の中でもキョロキョロしてたしね」
茜ちゃんにとっては輝星花は帰国子女だっていう認識だからな。
だから、こんなに興味しんしんなんだろうな。
だけど、実際は二人とも魔法世界の人間なんだよな。
う~ん?
そういえば、この世の中で魔法の存在を信じてる人間って何人くらいいるんだろうな?
そういう俺もこんな状況に追い込まれなかったら魔法を信じる事なんてなかったよな。
アニメとか漫画じゃ魔法っていう概念はあたりまえにあるけど、今の地球上でそんなの存在すらありえないよな。
魔法かぁ……。魔法世界っていうのはどんな場所なんだろうな。
考えてみれば俺はこいつ等が住んでる魔法世界の事を詳しく聞いた事が無いな。
「ねえねえ、絵理沙さん、もう一つ聞いてもいいかな?」
「え? 何?」
「絵理沙さんと輝星花ってなんて国に住んでたの? 私も知ってる国なのかな?」
おや? なかなか面白い質問が茜から出たな。さて、絵理沙は何て答えるんだ?
「え? 国? えっと…」
絵理沙は苦笑したまま言葉に詰まった。そして輝星花の方をちらりと見ると、輝星花は先程と同じようにまた小さく頷いた。
そして、輝星花は絵理沙をフォローするかのように茜ちゃんに向かって話を始める。
「茜さん、その質問なんですが、申し訳ないのですが、教える事が出来ないのです」
「えっ!? そうなんですか? ごめんなさい」
輝星花の言葉に茜ちゃんが慌てている。
余計な事をきいちゃった! とでも思ったのだろうか。
「謝る必要はありません。茜さんの質問は別におかしくないですし、私たちの事に興味を持って下さっているのですから、逆に私たちが答えられない方が本来はおかしいのです。本当にすみません茜さん。そしてご理解頂いてありがとうございます」
「私からもごめんね、茜ちゃん。いつか、私の住んでいた国を教えてあげれる時がくればいいなって、私も思うよ」
まぁ、現実的にそれが叶う日が来ないんだろうけどな……。
「あ、うん、わかった!」
そうこうしているうちに俺達はエスカレーターを上りきった。
そしてエスカレーターから降りると再び茜ちゃんが先導をきり中央改札口へと向かう。
意気揚々と歩いている茜ちゃん。が、いきなり立ち止まった。そして俺達の方を振り返る。
どうしたんだろう?
「茜ちゃん?」
「えっとぉ……ちょっとお手洗い行ってもいいかな?」
「あ、ああ、トイレね」
「うん」
何かと思えばトイレだった。
もちろん俺達に茜ちゃんがトイレに行くのを拒む理由は無い。
「別にいいよ? 行って来れば? 待ってるから」
「ありがとう! すぐ行ってくるから! 改札の横で待ってて」
そう言うと茜ちゃんは小走りでお手洗いに向かった。
☆★☆★☆★☆★☆
中央改札の前。
絵理沙は相変わらず物珍しそうに駅の構内を見渡していた。
「すごいね輝星花……人がいっぱいいるよ? やっぱり……んぐ!?」
いきなり、輝星花が恥ずかしそうに顔を染めながら絵理沙の口を塞いだ。
「ちょっと絵理沙、はずかしいからやめてください」
野木はまったく常識知らずなのに、輝星花って思った以上に常識人みたいだ。って、同じ人物なのに、どうしてこうも違うかな?
しかし、絵理沙は怖い者しらずっていうか、あれだなぁ。
「ぷはぁ……わ、わかったよ」
絵理沙は息苦しそうに胸を押さえて大きく息を吐いた。
ここで俺はちょっとした疑問を憶える。
いや、まじで大した事じゃないけど。
「輝星花、絵理沙、お前らの世界ってマジで電車がないのか? 人が少なかったりするのか?」
すると、輝星花は真面目な表情で俺の目を見た。
「その話はここではしないで貰えますか?」
俺は周囲を見渡すが、いまここの回りには誰もいない。
なのにこいつは話をしてくれない。
せめて、もうちょっと柔らかい態度で言ってくれればいいのに……。
「少しくらいいいだろ? 俺だってお前らの事が知りたいんだよ」
「誰も駄目だと入っていませ。今度お話をしますから、こういう場所では話はやめておきましょうと言っているんです」
なんか、こういう冷たい言い方にイラってする。
「わかったよ! どうせ俺には……」
俺が怒鳴ろうとした瞬間、絵理沙と輝星花の顔が固まった。それを見て、嫌な予感がした。
慌てて言葉を止めたが……。
「綾香、俺には……なに?」
後方からの声を聞いた瞬間に体が熱くなって体中から汗が噴き出た。
俺はゆっくりと振り返る。
するとそこには茜ちゃんが立っていた。
茜ちゃんトイレ早いよ!ってそういう問題じゃないぞ!?
もしかして、これってやばい?
「……ねぇ、綾香? 聞いてる?」
やばい、茜ちゃんが疑心暗鬼な表情で俺を見ているぞ?
「あ、茜ちゃんおかえり! 早かったね! どうしたのかな? そんな怖い顔をしちゃって」
どうしよう、俺は思いっきり男口調で話してたし……。
「綾香、もう一回聞くよ? 俺には……なに?」
うわぁぁ! 復唱されたじゃないか!
くっそ! やっぱり聞かれてたぁぁぁ!
額から、背中から、手のひらもすべての場所から汗が滲むのがわかる。
俺は今、すごく焦っている。
でも、動揺しても仕方無い。落ちつけ、落ち着いてこの場を対処するんだ。
俺は唾を飲んで両拳をぐっと握った。
お陰様で100部達成しました。
それも七夕ですよ! お客さん!
だから公開が7時……777ですよ、お客さん!
いあ、すみません……6時更新だとお待ち頂いた読者の皆様には謝罪いたします。
さて、ここらにきて展開が遅いのを感じてプロトタイプではあった回想シーンなどをカットしました。
少しは展開が早くなればいいなぁって思っています。
あと、100回を記念しまして……。
面倒だと思うのですが【評価】とか頂けると嬉しいのです!
仕方ねぇな、評価してやるか。というレベルで構いませんので、是非とも宜しくお願いいたします。
そして、今後とも『ぷれしす』を宜しくお願いします!
2014/7/7 みずきなな




