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玄関 金魚すくい 風邪

 東を向いた玄関には赤いものが仕事運に影響を及ぼすと風水の本にあった。

――なのでそこに赤いものを置くべく色々画策した結果、何故かそこに友人が置いたのは水槽だった。中には水中に入れる擬似植物を入れており、ついでに土管のような形のエアストーンが中に鎮座しているが、水は入っておらず、当然中には何もいない。

 中身はどうするのかと、この前この水槽を持ってきた当人に聞いたところ、一瞬考えるような――いやどうするのか決めてないのかよとツッコミを入れたいのだが――顔をした後、

「今度縁日だしな」

 と意味のわからない理由を告げて置かれたそれであったが、結局縁日に行くこともなく、水も入れないままに鎮座したままだ。

 まぁ、理由は友人の体調不良に俺自身の体調不良が重なってしまったからなのだから仕方ない。――それぞれひとりで出かけるという発想が出て来なかったのが悔恨の至りではあるが、まぁひとりで行くほど侘しい祭りはない。



 そんなわけでいまだに玄関には赤いものは一切なく、それどころか造花は風水では玄関に置いてはいけないアイテムらしいので、厳密には擬似植物的なものはダメなのではないかとちょっと思っているのだが、まぁ造『花』ではないのでと無理矢理納得しておこうと思う。何より風水を気にして捨てるには、値段的にもったいない。

 とりあえず、もう今はそこに興味はないので放置し、まだ眠い頭を覚醒させるべく洗面所に向かう。そういえば洗面所のタオルは赤いし、場所も玄関に近い。赤はコレではダメなのかとちょっと思わなくもないが、きっとダメなんだろう。

 そんなこんなでとりあえず給湯器を稼動して最初の冷たい水をスルーする。

 そろそろいいかな、と手を出すがまだ少し冷たい。まぁいいやとまだ少し冷たい水を手ですくうと顔に叩き付けた。やっぱり冷たい。まぁ目を覚ますのが当初の目的なので構わず繰り返すと、徐々にお湯へと変わり、顔を温める程度には温まった。



 さて、と顔を上げると、鏡の中の自分と目が合った。

 そして、その背後の玄関へと視線が動く。

 今度、この長引いている風邪が治ったら熱帯魚でも買ってくるか、などと考えてから、財布の中身を思い浮かべる。

 確か小さいものなら1匹あたり100円以内で買えるはずだと計算し、少なくとも20匹くらいは買えるなと一瞬思い浮かべ、いやそれだとエサが買えないだろうと思いなおす。

 そうなると10匹程度に抑えておいて、残りをエサにするべきなのか。そもそもエサってどのくらいの値段がするんだろう。そして箱あたりどのくらいの日数分があるのだろうか。エサ代を考えたら1匹しか飼えないなんてオチだったらどうしようか。

 そこまで考えてしまうと、つい面倒になるのが我ながら悪い癖で、行ってから考えるか――と結局考えを放棄する。

 どうせ買うとなれば友人を連れて行くのだし、面倒なことは全部あいつに押し付けよう、と既に頭の中で決めていた。



 ひと寝入りする予定が数時間眠ってしまっていた。

 いつの間に来ていたのか、友人が予備のノートパソコンでニュースを読んでいた。

 身体を起こすと、「起きたのか」と何でもないように呟いてパソコンを閉じた。

 机の上には弁当と、友人が食べた後なのだろう同じ弁当の食べたあとがある。

「食えるのなら食うか?」

 一瞬、食えないのならどうするつもりだったのかと詰問しようとして、さすがに折角買って来てくれたのにそれは失礼かと思いなおす。

 頷いて見せてからベッドから降り、――ふと何かを感じて玄関を覗く。

 違和感の正体はすぐにわかった。

 2匹の金魚。赤と黒が新しい住処を探検していた。

『水は大丈夫なのか』

 思わずツッコむと、「ぬかりはない」と即答された。

 エサも置かれており、本当に万事ぬかりはなさそうだ。

「……神社で祭りやってたんだよ」

 言い訳のように呟く友人に、俺は思わず苦笑を向けた。

Goccoでの知り合いである、sharasuna様からのお題です。


勝手に自分で課した文字数制限に苦戦してしまい、完成が遅れました。

文章自体は出来てたんですが、と言い訳しておきます。


次はどれを掲載しようかとちょっと悩んでいるので、予告は控えますw

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