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鳥 ハート 白い食べ物

 空の青でもなく夕日の赤でもなくどんよりと灰色でもなく、白い雲が空を漂っていた。

 まるでわたあめのようだと、昔縁日で買ってもらったあの甘さを思い出す。

 その雲の少しだけ低いところを何かが通り過ぎるがほとんど気にも留めずに、俺は空を見上げていた。

 しばらく見上げていたらさすがに首が痛くなり、視線を地面に戻すと、最近庭の主である犬に懐いてしまった猫が、今日も今日とてその腹を枕に寝転がっている。

 番犬め、保護者気取りか羨ましい。などと逆ギレじみた思考回路を振り切り、結局もう一度空に視線を戻す。

 空の青さと雲の白さと、そして太陽の眩しさに顔をしかめながら、それでも俺はしばらくの時間、雲を眺めるのをやめようとは思わなかった。

 太陽がジリジリと肌を焦がして行くのを感じながらも、俺はそれでも眺めるのをやめようとはどうしても思わなかった。

 まぁ要するに暑いから現実逃避してるだけって意味なんだけどさ。


 さすがに首が疲れたので窓の外を見るのをやめ、パソコンデスクに座り込む。

 このまま突っ伏して寝ててもいいのだが、ちょっと人間としてダラけすぎだと感じたので自粛し、立ち上がっているマイミュージックから音楽を選んで立ち上げた。

 ハードロックなのか、フォークロックなのかはよくわからないが、ともかく「ロック」と定義付けられている類の音楽がスピーカーから流れ始めた。

 1990年以降ヒットと言えるヒットはないバンドだが、まだ活動は続けているようで、情報サイトで3年前にバス・ギターが交代しているのを先日確認した。

 白い心臓、と元々名乗っていたこのバンドは、ある時を境に白くなくなってしまったらしい。まぁ1972年にはすでに今のバンド名だったので、要するに俺が生まれた時にはすでに白くなかったと言うことなのだが。白かった時のこのバンドも少し見てみたかったし聞いてみたかったと思うが、調べるのが億劫でまだ調べてすらいない。


 スピーカーから垂れ流しの魂の叫びのような声を聞きながら、今日の昼飯は何にしようかと冷蔵庫を開ける。ちなみに朝飯はトーストにジャムを塗ったものとコーヒーだ。

 個人的にはやや軽食すぎた気がする。根拠とソースは今の空腹感。せめてフレンチトーストにしておけば。あぁ腹減った。

 冷蔵庫の中を見てみれば、今朝の残りのパンとジャム、あとは梅干と豆腐とレタスやキャベツくらいしかない。ヘルシーすぎる。

 冷凍庫の中は鶏肉と氷だけで空っぽのはずだ。うむ。作ろうにも材料が微妙だ。まぁ豆腐サラダでいいか、と梅干と豆腐とレタスとキャベツを取り出した。

 さすがに醤油とサラダ油は残っている。あっという間に梅ドレッシングの出来上がりである。これを、豆腐の上にレタスとキャベツを乗せてかければ出来上がりだ。

 思い付いて冷凍庫の中から鶏肉を取り出し、それを電子レンジに入れてあたためスイッチを二度押しした。ちなみに二度押しは解凍あたためである。


 鶏とサラダと梅の組み合わせは意外に合う。朝飯は本当に軽すぎたのか、胃袋に次々と吸収されていくようだ。明日は善処しよう。

 相変わらずパソコンから流れる音楽を静かなクラシックに変更し、俺は豆腐サラダに箸を付けた。

 ちょっとダイエット中なのでとりあえず白米は食わないことにし、とりあえず俺は昼飯として作ったものを残らず平らげ、手を合わせた。

 今日のご飯はやや白かったなぁと少し反省しながら、夕飯は少しは色のあるものを食べようと心に決める。

 しかし、今まさに冷蔵庫最後の食材――いや、冷凍庫の果てから使い尽くした直後であることを思い出し、後で買い物しに行かなければ行けないのか、と少しだけげんなりとした。近くのスーパーは歩いて数分、もしくは十数分の距離ではあるが、歩いて行くのは正直ダルい。チャリで行くけど。

 ふと見ると、白いわたあめみたいな雲はいつの間にかいなくなり、――空は、青く青く、どこまでも果てなく青かった。

リアル知り合いであり、かつ同僚であるところのKY(本名イニシャル)様からのお題です。

大分意味範囲の広いお題だったので、逆に随分苦労して書き上げました。

文中で言及したお題に引っ掛かるものとして、一応解説させていただきます。


空、鶏=鳥

白い心臓/ホワイト・ハート=ロックバンド。実在します。ウィルソン姉妹を中心としたアメリカのロックバンド(Wikiより)。

わたあめ、トースト、豆腐、白米、鶏=白い食べ物


正直言って鶏はともかく空はこじつけすぎかなぁと、3文節目で鶏を出場させました。後悔だけは決してしていない。



次回は「砂糖 酢 味噌」です。

料理以外考えられない……とは出題者の弁ですがどうなるやら。

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