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花 庭 猫

 窓の外の手すりを猫が通り過ぎたので、思わず窓辺に立ってそれを観察し始めた。

――俺は、猫が大好きだ。好きで好きでたまらない。愛していると言ってもいい。

 その大好きな猫が通り過ぎたのだ。見ざるを得ないし観察せざるを得ない。

 アパートの大家が綺麗に手入れをしている庭のど真ん中、趣味としか思えない桜の木はすでにこの時期、花など付けているはずもなく、舞い落ちたとしても花びらではなく、新緑ですらない緑の葉だ。

 落ちてくる葉に気を取られたのか、猫が桜の下でぴたりと歩みを止めた。

 歩みを止めた頃にはすでに何故自分が歩みを止めたのか忘れてしまったかのように、日陰で毛繕いを始めた。もしかしたら最初から、毛繕いするために歩みを止めたのかもしれない。

 と、庭を誰かが覗いていた。

 俺と同じように猫を眺めていたのか、それとも猫が嫌いで、その嫌いな猫を邪魔に思って見ているのかは表情が見えないので定かではないのだが。



 ちりん、と音がして視線を戻すと、猫はあられもない姿で毛繕いを行っていた。

 そういう姿が可愛いので見ていて飽きないのではあるが、無防備すぎて時々もふもふしたくなる、じゃなくて敵に襲われた時はどうするのだろう、などと余計な心配をすることがある。

 特にこの庭はヤバい。何がと言うと、大家が飼っている犬がいるのだ。

 犬種は血統書付きのドーベルマン。過去3代純血らしいので、本格的にドーベルマンだ。よくは知らないが。

 まぁ鎖も付いているしドーベルマンのくせに穏やかなヤツなので大丈夫だとは思うのだが、それでもああしてのそのそと近付いて行く姿を見ると思わず「逃げてー!」と言いたくなる。

 と言うか近付くドーベルマンに気付いて猫がちょっと警戒し始めた。

 これは逃げるかな、と思ったのだが逆に蛇に睨まれた蛙状態になったようで、猫はその場を動かない。というか無防備な姿のまま固まっているのでちょっといや大分可愛い。萌え死ぬ。



「ただいま」

 玄関の扉が開く音とほぼ同時に、友人の声が聞こえた。

 思わず一瞬視線をそっちに向け、舌打ちして窓の外に視線を戻す。

「舌打ち!?」

 友人の驚いたようなツッコミに思わずもう一度舌打ちを入れつつ、視線は猫とそれに迫るドーベルマンへ。

――いつの間にか、ドーベルマンは猫の横に寝そべり、猫は安心したのか毛繕いを再開している。

 やべェ和む。マジ可愛ええ。

 そんな光景を見てから、視線を部屋の中へ戻すと、すでに友人は俺の横にいて、同じ光景を眺めていた。

「――あの猫どこかで見たな」

 そんなことを言いつつ携帯を取り出すと、友人はカチカチし始めた。

 当然ながら無視して観察を再開する。毛繕いは終わったのだろうか、猫は犬の腹に身を寄せるようにごろりと身を横たえた。

 一応、庭はドーベルマンのテリトリーであるはずなのだが、あの犬は領域を守る意思というものがないのだろうか。とんだ職務怠慢である。



「あった。あの猫コレじゃねぇ?」

 何やら友人が語りかけて来るが無視。

 あの和む空間を見る時間を遮る権利は貴様にはない。失せろ雑種。

「――いや別にいいんだけどさ……」

 ちょっと落ち込んだような哀れな声を出すので、仕方なくそっちに目を向けてやると、やっぱりと言うか案の定と言うか、当然のようにその声は演技であった。

 携帯には「迷い猫探してます」と書かれた、写真付きチラシの画像が表示されていた。

 見れば確かにあの猫とそっくりだ。数回、目で猫と写真を往復して模様などを比較するが、間違いを見付ける方が難しいほど猫は写真にそっくりだった。というか写真の猫と同じだった。

 見れば首輪も付いている。小さな赤い、可愛らしい首輪。

『何でそんなの写真取ってんの』

 メモに書いて質問すると友人は「ほっとけ」と苦笑し、紙にチラシの番号をメモった。

 どこかへ電話しているのを無視し、俺はもう一度和む空間に目を向けた。

ネトゲ仲間であるところの「RRX」氏からの出題で書いたものです。

猫可愛いよね!特に肉球!ぷにぷにしt



すみません取り乱しました。

次回は「鳥 ハート 白い食べ物」でお送りします。

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