苛立ち
瀬奈は車から見える外の世界を見ていた。
あっという間に通り過ぎる風景は、見てても飽きなかった。
黒く長い車は、明らかに高級車であった。
その中には運転席に一人、後部座席に2人、更にその後ろの後部座席に
一人の少女が座っていた。
少女は、きちんと身だしなみが整っている制服のうえに黒いパーカーを羽織っていた。
髪は濃い茶髪で、眼の色は綺麗な黒色をしていた。
他の3人は黒いスーツに顔にはサングラスという、まさにガードマンという感じだった。
「お嬢様、そろそろご自宅に着きます」
《お嬢様》と呼ばれた瀬奈は返事もせずに、ただ虚ろな目で外を見ていた。
(家に帰っても、誰も、私なんか…)
黒い高級車は、普通の家よりも何十倍もでかい豪邸に入っていった。
車は玄関らしき豪華な入り口の前に止まった。
まず、後部座席に乗っていたガードマンが出てきて後ろのドアを開けた。
瀬奈は何も言わず車から降り、執事達が出迎えても無視して豪邸の中に入っていった。
しかし、瀬奈は玄関に入ると同時に倒れた。
周りの執事達が驚いた表情で瀬奈を抱きかかえるが、瀬奈は目を開けず、
気絶した。
その時瀬奈は、幼い頃の夢を見た。
まだ、現実を知らずただ楽しかった頃の夢を…