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第08話 ラノベやマンガのように思い立ったらすぐに部活を作れる程、学校の規則と教師の目は甘くない

ヒロイン4人目登場です。

「起立、礼」


「「「ありがとーございましたー」」」


先生のムダに長く意味のない終礼が終わり放課後。



俺の体力は色々ありすぎてに0に近かった。


回復薬?ポーション?

んなモノとっくに使い果たしたよ。


ホントならこのまま真っ直ぐ帰って、ベッドへ倒れ込みたい気分なのだが残念ながらそれはできない。

したくてもできないのだ。



それはなぜか。

…そう部活だ。



休めばイイじゃないかと思うかもしれないが、俺が行かないと迷惑がかかるのだ。


頼りにされるって大変だね。




「じゃ美都、また後でメールする」


「え、ああ…わかったわ。また後でね」



俺は美都にそう言って教室を出た。







「クソ…桐生のヤツ…逃やがった」


廊下を歩きながら俺は呟く。


放課後に桐生と朝見捨てた件について、じっくりと「お話」しようと考えていたのだが、どうやら俺の考えはお見通しだったらしく、さっさと部活に行ってしまった。変に勘がイイからな、桐生は。



ところで和はどこに行ったかと言うと…


「女子剣道部を見学してくる!」


とやけに興奮した感じで女子剣道部員と一緒に剣道場に行ってしまった。



しかし、長い黒髪+美少女+巫女服が似合う+剣道って…ホント、マンガのヒロインみたいなヤツだ。

普通、こんな特徴持ったヤツ現実にはいないぞ。


まあ、神様に人間の常識は通用しないか。



そんな事を考えているうちに部室前にたどり着く。


正確には部室ではなく、家庭科調理室なのだが。


これで俺の所属しているクラブ名がわかっただろ?そう…


「料理部」だ。



なぜ男である俺が、料理部に入ったか?これにはちゃんとした理由があるのだ。



前にも言ったように俺は1人暮らしである。

つまり、食事は全て自分で作らなければならない。当然、献立も自分で考えなきゃならない。


そこで料理のレパートリーが増やせればいいなと思い、料理部に入部したのだ。


抵抗はあったが腹に背は変えられないし、1年も経つとなれてしまった。

しかし、大きな問題点が1つ。


それは…


「…ちょっと遅れたかな?」


「大丈夫ですよ、先生。私以外まだ来ていませんから」


そう、料理を教えてもらう為に料理部に入ったのに、いつのまにか先生と呼ばれ教える立場になってしまったのだ。


最初の方は顧問の先生(家庭科を教えている若い女の先生)が教えていたのだが、俺が先生よりウマく作れてしまった為、俺が教えるハメになってしまった。まあ、教えるのは楽しいし別に構わないんだけども。



「部長、まだみんな来てないのか? 後、俺の事は先生と呼ばないでくれって言っただろ?」


「そうでしたね、一ノ瀬君。今のところは一ノ瀬君と、私だけです」



料理部部長、水沢(みずさわ) 麗奈(れいな)は微笑を浮かべながら言う。


整った顔に、怒った事が一度もないと言われる程の優しい性格。そして1番の特徴は、腰の所まである綺麗な黒髪。リボンでその長い髪を纏めているのだが、それによって露わになる首筋が、また素晴らしいんだとか。まあこれは、美都の意見なのだが。


また部長は、大人しい人で誰に対しても敬語を使う。本人いわく、日頃敬語で話す機会が多い為クセがついてしまったとの事。

この変なクセからもわかるように、部長はお嬢様である。部費が全くいらないのも部長が全て負担してくれているから。


いやーありがたやありがたや。


部長もモテるのだが、「好きな人が既にいますので」と言って全て断っているらしい。と言っても、部長が告白したなどという話は聞いた事がないので多分相手をなるべく傷つけないように配慮して言っている嘘なのだろう。


後、部長は俺と同じ高2である。


「それよりも、一ノ瀬君。私の事は部長ではなく、名前で呼んで下さいと何回も言っていますよね? 私にも水沢 麗奈という名前がちゃんとあるんですよ」


「ああ、そうだった。何だか慣れなくてな…悪い水沢」


「……」


「水沢?」



水沢は顔を赤く染めボーッとしていた。どうやら俺の声も届いていない。


何でこうなった?


「おーい水沢ー」


「……」


「水沢ー聞こえてるか?」


そう言って俺は軽く水沢の肩を揺らした。


「ひゃう! い、一ノ瀬君?」


「おかえり、水沢。ようやくコッチの世界に帰ってきてくれたか」


「…一ノ瀬君がキチンと名前で呼んでくれてるなんて幸せです…」


「水沢、何か言ったか?声が小さくて聞こえなかったんだが」



俺がそう聞くと水沢は顔を柿のように赤くし、大きく両手を振りつつ


「な、何でも、何でもないですよ。それより準備しましょう。い、一ノ瀬君も手伝って下さいね」


と言い家庭科準備室に早足で行ってしまった。



「あ、ああ」


取り残された俺はただ水沢の後を着いて行くしかなかった。










「じゃあ、今日はチョコチップクッキー作ってみようか」


「「「はい、先生」」」


「その先生ってのやめてくれ。何かムズムズするから」


「「「はい、先生」」」


「帰っていいか?」


「「「は…いいえ、一ノ瀬君」」」


「それでいいんだよ。じゃ早速作って行くぞ」


「「「はーい」」」


ちなみに部員は幽霊部員状態の先輩達を除くと12人。その中で11人は女子である。

つまり、男子は俺1人なのだ。


最初は、女子独特の雰囲気に多少辟易したが

今ではもう慣れてしまった。


水沢目当てに入部しようとする男子がたまにいるそうだが、そういうのは全部水沢本人が直接断っている。

また、女子でも断る事がたまにある。理由は「これ以上ライバルは増やしたくないのです」との事。


ライバル? 何のこっちゃ?

そう思い聞いた事があるのだが、ウマくはぐらかされ教えてくれなかった。



「まず始めに、薄力粉にココアパウダー、ブラックパウダーを泡立て器でしっかり混ぜてくれー」


俺は意識を料理に戻し、部員のみんなに手順を教えて行った。












「じゃあ今日はこれで終わる。ありがとうございました」


「「「ありがとうございました」」」




調理が終わり、俺は急いで家庭科調理室を飛び出した。


思いの外、後片付けに手間取りクラブ終了時刻をやや過ぎてしまったのだ。

いつもなら気にする事はないが今日は美都が食事に来るのだ。

それに和もいる。



ちなみに和にはメールで、遅くなるから先に帰っておいてくれ、と伝えてある。後、どれだけお腹がすいても料理だけはするな、とも伝えてある。


家に帰って見たら、あるのは家の形をした真っ黒な炭でした…

なんて事は避けたいからな。



「あ、あの…一ノ瀬君」


「ん?」


後ろから声をかけられ振り返ると、そこにいたのは水沢だった。


なぜか俯いてモジモジしている。



「どうした、水沢?」


「あ、あの…よかったら…その…一緒に帰りませんか?」


「んー…ああ、いいよ」


「本当ですか! ありがとうございます!」



そう言って水沢はペコリと頭を下げる。



「そこまでしなくても…」



そんなこんなで2人で料理について話しながら帰っていると、校門前に見覚えの顔がいるのを発見する。



「どうしたんだ、中溝? 1人で突っ立って」


「ああ先輩! 待ってたんですよ。一緒に帰りたくて。ダメですか?」


「俺は別にいいぞ。でも、水沢が…」


「いいですよ、一ノ瀬君。私は水沢 麗奈です。一ノ瀬君の所属する料理部の部長です」



ん?

俺が所属しているって言わないといけない事か? 料理部部長である事だけ言えばいい様な気がするが…。


しかもやたらと強調されてたし。



「はじめまして、水沢先輩。中溝 悠里と言います。一ノ瀬先輩とは、昼ご飯を一緒に食べさせて貰っています」



こっちも同じく、俺と昼ご飯を食べてるってわざわざ言う事か?

更に同じく、やたらと強調してたし。



「…それはそうと先輩」


「ん?」


しばらくの沈黙の後、中溝が話しかけてくる。



「今日、榎本先輩が一ノ瀬先輩の所に晩ご飯を食べに行くんですよね?」


「どうしてそれを?」


確かあの約束をした時、中溝は教室から出て行った後だったような…



中溝は俺の疑問に答える事なく、話を続けて行く。


「それで、ボクも御一緒したいんですけど…いいですか?」


「ああ、いいよ。食事は多い方が楽しいからな。用意ができたらメールするから、それまで家で待機しといてくれ」


「ありがとうございます先輩! こうしちゃいられない! 先輩、ボク用意があるので先帰ります」


そう言って中溝はダッシュで帰っていった。

…一緒に帰るんじゃなかったのか?




「まあいいや。それより水沢、お前も一緒に晩ご飯食べないか?」


「え? え? わ、私が一ノ瀬君の家でし、食事ですか?」


急に話しかけられたからかあたふたしている水沢。


「嫌だったか?」


「いえ、そんな事はないです!とても嬉しいです」


「じゃあ、さっきも中溝に言ったが用意ができたらメールするから、自宅で待っててくれ」


「わかりました!」


そう言って水沢はカバンからケータイを取り出し、誰かに電話をし始めた。2言3言話すと水沢はケータイをしまい、俺にこう言った。



「私も準備をしなければならないので、これで失礼します」


「失礼って、今から一緒に…」


俺はその続きを言う事ができなかった。


なぜなら、目の前にいかにもお嬢様専用と言ったリムジンがいつの間にか止まっていたからだ。


おいおい…連絡してまだ1分も経ってないぞ…


この車、どこで待機してたんだ?


俺が呆然と立ち尽くしている中、水沢は俺に微笑みかけながら車に乗り込み、帰って行った。









「さて……………帰るか」



俺はさみしく、1人呟いた。










誤字脱字や矛盾点などありましたら、ご報告よろしくお願いします。



また、感想などもお待ちしております。

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