第07話 人の機嫌と言うものは些細な行動一つで大きく変化するから気を付けろ
ヒロイン3人目登場です。
「ああ…ようやく昼休みだ…」
俺は、大きくそして深く溜め息をつく。
結局、男子全員+美都に捕まり、「和とどう言う関係なのか?」と毎休み時間に散々問い詰められたのだ。
ウソをついても、そのうちばれてしまうと思い俺は和と同居している事を認めた。
流石に、神様である事は言えないので遠い親戚、と言う事にしておいたが。
真実を話している時、男子達は殺意以上の何かがこもった視線を俺に浴びせかけてきたが、和の説教のおかげか実力行使にでるヤツはいなかった。
ありがとう、和。君のおかげで尊い命が救われた。
いや待て…和がいらない事を言わなければ…
こんな事は避けられたんだよな?
後でいらない事は喋らない様に、キツく言っておかなければ。
ないとは思いたいが、うっかり自分が神様だとばれてしまったら…それこそ収集がつかなくなる。
気を付けよう。
そんな事を思いながら俺は、弁当を鞄から取り出す。
ちなみに俺の通っている高校では食堂もあるのだが、毎日食堂だとお金がかかるので弁当を作っている。
料理はどっちかと言うと好きな方だし。
「おお! 鳥の唐揚げが入っているではないか! ありがとう、冬夢」
弁当のフタを開けた和が、目を輝かせる。
ホント、和のリアクション見てると次も美味しいの作ってやろうって思えるな。
「…」
そんな和を美都は不機嫌そうにじーっと見ている。
「どうしたんだ、美都?」
「…フンッ…何でもないわ」
せっかく機嫌を直す事に成功したのに、直した後すぐに本日2回目となる不機嫌モード突入してしまったのである。
何にも悪い事したつもりないんだけどな…
かと言って、もう流石にあの方法は使えない。
さて、どうしたものか…
「一ノ瀬先輩! 一緒に弁当食べましょー!」
そう言って教室に入ってくる女の子が目に入り、俺は美都の機嫌を直す方法を考えるのをやめる。
正直、俺1人では無理だ。後で桐生にに相談するとしよう。
…ヘタレすぎる?
ほっとけ!
とりあえず今は…
「いいぞー中溝。今日も食べよう」
教室に入って来た女の子は高1の中溝 悠里。
ソフトボール部のピッチャーをしている。小学校の時からやっていたらしく、すでに試合に出させて貰っているんだとか。
「えへへー。ありがとうございます、先輩」
そう言って中溝は、俺の前の席に後ろ向きに座り俺の机に弁当を置く。
「あ!今日は唐揚げですか?ボクのトンカツと交換して下さい」
ちなみに、ボクっ娘である。
髪の毛がショートヘアで口調も男っぽく、また胸もぺった……スレンダーな為に、私服姿だと男に間違われる事もあるらしい。
また、告白してくる人(女子も含む)が最近増えてきているらしく、困っているそうな。
中溝においても、俺の知ってる限り告白成功率は美都と同じく0%。告白してくる人の中には、1人くらいタイプがいてもおかしくないと思うが…
いやはや、モテる人の考えはわからないな。
ところで、何でこんなモテる女の子と一緒に弁当食べてるんだ?、と思う人がいるかもしれないが、こうなったのには色々とあったのだ。
話したい気持ちは山々だが、長くなるのでまた今度。
「おう、イイぞ。ほら」
俺は唐揚げを中溝の弁当のフタの上にのせる。
「ありがとうございます!先輩の唐揚げ…えへへ…嬉しいです」
「そうか? まあ、喜んで貰えてよかった」
先輩の部分を、強調したような気がするが…気のせいか。
「ところで先輩」
「ん? 何だ?」
「先輩の隣にいる方は先輩の知り合いですか? 見かけない顔ですね」
「ああ、和の事か? こいつは今日から転入してきたんだ。ほら和、自己紹介」
「音尾 和だ。今日からこの学校に転入してきた。よろしく頼む」
「ボクは中溝 悠里です。こちらこそよろしくお願いします。…それより先輩、どうして今日転入してきたばかりの音尾先輩を名前で呼んでるんですか?」
そう言ってニコッと笑いかけてくる中溝。
カワイイ後輩の笑顔を見れるのは嬉しい。目も笑ってくれるともっと嬉しいのだが…
仕方なく、俺は和と同居している事を話した。ウソをついたところで、どうせみんな言いふらすので、ばれるのは目に見えているからだ。
「そうなんですか。音尾先輩と同居ですか。…これは対策を練らないとダメだね…」
中溝は、ブツブツ言いながら食べてる途中の弁当を片付け始めた。
「どうしたんだ?中溝」
「用事を思い出しまして…先輩方失礼します。後、榎本先輩に音尾先輩、ボクは絶対に負けませんからね」
最後に意味不明な言葉を残し、中溝は教室から出て行った。
3人で、何か勝負でもしてるのだろうか?
でも和と中溝はついさっき知り合った訳だし。
んー、わからん。
しかし、和と美都には通じたらしく2人とも険しい顔をしている。
「なあ2人とも、あれどういう意味なんだ?何か勝負でもしてるのか?」
「…冬夢、アンタ鈍すぎ」
「同感だ。冬夢は女心を理解してなさすぎる。少しは学ぶべきだ」
「お、おう」
質問に答えてくれるどころか、なぜか怒られてしまった。
なんで?
「ねえ、冬夢。何でも言う事聞くって朝に言ったわよね?」
「え?…ああ、確かに言ったな」
急に話が変わった為に、少し反応がおくれてしまう。
「じゃあ…今日の夜ご飯と、冬夢の家で食べさせて…」
そう言う美都の顔はどうしてか、リンゴのように真っ赤っかだった。
「ああ。別に構わないぞ」
たいして断る理由もない(断れない立場にあるのだが)ので、俺はOKする。
「ホント? ホントに?」
「ああ、もちろんだ。言っただろ? 何でも言う事聞くって。別に構わないだろ、和?」
「……ああ…冬夢が約束した事だからな…仕方ない…」
「和?」
「冬夢のご飯を…出来たてで食べれる…フフッ」
美都の機嫌が直ったっぽいのは嬉しいが、次は和が落ち込んでいる。
「…一体どうすればいいんだよ…」
思わず頭を抱えてしまう俺であった。
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