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第05話 平和なんてモノは、所詮ハリボテ作りでしかない事を忘れるな

ヒロイン2人目登場です。

「ん…ふぁーあ…今何時だ?」



俺は、枕横に置いてある時計を確認する。


5時30分。


普通の学生なら、「まだ寝れるじゃないか」と安堵し、夢の中に再突入するだろうが、俺の場合、残念ながらそうはいかない。


何せ、親がいないのだ。つまり、朝ご飯を作り、更に学校で食べる昼の弁当も俺が作らなくてはならない。

他にも、朝の内に済ませておきたい家事もある。高校生兼主夫の生活は忙しいのだ。

だから、この時間に起きないと、間に合わない。



最初の方(つまり、中学1年の時)は、起きるのが辛くて仕方がなかったが、今では目覚まし無しで5時半に起きれる。


俺の数少ない、自慢できるモノの一つだ。



ん?


…地味過ぎる?


…ほっとけ…




「今日から、ご飯2人前作らないといけないんだな。そーいや、あいつ…洋食食べれるのか?聞いとけばよかったな」



それなら今日の朝食は、塩鮭と漬け物と味噌汁と納豆にご飯でいいかなぁ、などと献立を考えつつ台所に向かった。








「おはよう」


「ん、おはよう。何だ、もう起きたのか? もっとゆっくり寝てると思ってた」


6時半過ぎになって、和が起きてきた。


神様だからか知らないが、眠気と言うモノを微塵も感じさせずシャキッとしている。



「実は、朝早くから行かなければならない場所があってな。」


「へぇー。どこに行くんだ?」


俺は、席に着いた和の前に、朝ご飯(最初予定していた献立に出汁巻き卵を追加)を出しながら聞く。



「まぁ、色々あるのだ。何、冬夢には後々わかる事だ。そんな事より冬夢、もう食べていいか? こんなご馳走を目の前にして、お預けは拷問に等しい」


「あ、ああ。悪い、食べてくれ」



何か、物凄く意味深な発言をしたような気がするが…。


目をキラキラと輝かせ、俺の作った朝ご飯を凝視している和にこれ以上聞くのは無理だと判断した俺は、和に食べるよう促す。



しかし、ここまで俺の作ったご飯を褒めてくれるとは…。嬉しいを通り越して、もはや恥ずかしい。




「いただきます!」



和は、そう言うや否や勢いよくご飯を食べ始めた。



いやー、勢いよくご飯を食べる女の子ってイイよね。見ているコッチまで食欲が湧いてくる。


食べているのが女の子じゃなくて、デブな男だったら…



あら不思議。一瞬で食欲がなくなるのだから、世の中は、意外と残酷だ。





「そーいや、和」


食事が終わり、食器を台所に運んでいる和に声をかける。


「ん? どうした?」


「食洗機の横に弁当あるだろ?」


「ああ。青いのと黄色いのと2つある。それがどうしたのだ?」


「いや、昨日和が昼ご飯どうするか聞くの忘れてたから和の分の弁当もとりあえず作っといたんだ。よかったら、持って行ってくれ。和のは黄色い弁当の方だから」


「ほ、本当に持って行っていいのか?」


「ああ。もちろん。逆に持って行ってくれた方が嬉しい。残すのは持ったいないからな」


「そうか。…えへへへ…冬夢の手作り弁当かあ…えへへへへ」


台所にいるので、顔はわからないが声からして、どうやら喜んで貰えたようだ。


朝早くから作った甲斐があったってもんだ。


「ありがとうな。冬夢。大変だっただろ? 弁当作るのは」


「いや、全然大丈夫」


「そうか。本当にありがとうな」



そう言って和は、そのまま二階に上がって行った。









「さて、俺もそろそろ学校に行くかな」


ぼーっと見ていたテレビを消して立ち上がる。


ちなみに、和はあの後すぐに出かけて行った。はたして、何しに行ったんだろうな


1番可能性として高いのは、神社だろうが神社には戻りたくないと言っていたしな。


まあいいや。夜にでも聞いてみるか。



「この時の一ノ瀬冬夢はまだ知らない。日常の崩壊が既にスタートしている事に…」


「…何か声が聞こえた様な気がしないでもないが…まあいいや。学校行こう」











「おーっす。桐生」


教室に入った(ちなみにB組である)俺は、まず桐生に声をかける。



昨日のお礼をする為だ。


もし桐生のアドバイスがなかったら…今頃俺はあの気まずい空気に耐えきれなくなって精神を病んでたに違いない。



それだけ、あの時の空気は重かったのだ。


神様恐るべし‼


…いや…神様関係ないか。




「よう、冬夢。悪かったな。昨日は」


「いや、大丈夫。もう気にしてない。それよりありがとうな。お前のアドバイス通りにやったら仲直りできた」


「それは良かった。で、相手は何を要求してきたんだ?」


「それが、意外も意外でな。名前で呼んでくれ、って要求されたんだ。あまりに簡単な要求で思わず驚いてしまったよ」


俺がそう言うと、桐生は大きく溜息をついた。


え? なんで? 溜息をつくような内容か?



「…冬夢、もはやそこまでくるとわざととしか思えないぞ」


「え、なにが? なにが?」


慌ててそう聞くも、桐生は苦笑いするだけで何も答えてくれなかった。



「やっぱりか…」


俺は諦めて自分の席に向かう。


前にも言ったと思うが、あいつの口の硬さは尋常ではないのだ。


昔、中学生の時に桐生の好きな人を知ろうとして、くすぐった事があるのだが口を割ろうとせず、俺がくすぐり疲れて負けたと言う事があった。


まったく…ス○ークかよ…




「おはよー冬夢!」


「ああ。おはよ、美都」



自分の席に座ると、横の席の榎本(えのもと) 美都(みと)があいさつをしてくる。



榎本 美都。こいつは幼稚園からの幼馴染(ちなみに家は近所である)で、バスケ部に所属し、エースとして活躍している。

また、頭も良く見た目も物凄くイイ為、男子から物凄く人気がある。

告白する人も後は絶たないらしいが、俺の知る限りでは未だ成功率0%。性格はややキツめだが、男子いわくそれがツインテールとマッチして最高なんだとか。




「ねえねえ、冬夢。今日ウチのクラスに転入生がくるんだって。知ってた?」


「いや、知らなかった。にしても、こんな時期に転入とは中途半端だな」


「そうね。急な転勤とかかしら?どんな子が来るか楽しみよね」


「俺的には、女の子がいいなー。それもカワイイ子やキレイな子。って、美都、どうした? 急に席立って」


「用事を思い出したのよ! フンッ」



そう言って美都は教室の外に行ってしまった。

何か不機嫌そうだったけど…俺、何かマズイ事言ったかな?



…昨日の和にしても美都にしても、急に怒ったり不機嫌になったりと女の子の感情の起伏ってわからないな。










「じゃあ、朝礼始めるぞ。委員長号令ー」


「起立、礼」


「「「お願いしまーす」」」


「着席」


そして、今は朝礼の時間。


どうやら転入生がこのクラスにくる事は、既にクラス全員が知っているらしく、全体的に空気が浮ついている。


…ただ一部を除いて。



「ホントにごめんって」


「……」


「反省してるから。許してくれ」


「……」


俺の横に、不機嫌オーラ全開の美都様がおられます。


いくら謝っても完全無視。




あれ?このパターンどっかで…


あ…昨日の夜の和とのやり取りもこんな感じだったような。



って事は、昨日桐生から教わったアレが使えるんじゃ…

よし、早速実行だ。





「あのー美都さん?」


「……」


「何でも言う事聞きますんで、機嫌を直して下さいませんか?」


「…それホント?」



うわ、スゲー。あんなに不機嫌だった美都が返事を返してきてくれた。


「ああ。ただし、無茶苦茶なのは無しな。できる事なら聞いてやるよ」



昨日の様な恐怖との闘いを防ぐ為に、あらかじめ予防線を張っておく。同じ失敗は二度と繰り返さない。どーだ凄いだろ!





…え?


女の子を不機嫌にさせたり怒らせてる時点で、偉くなんかない?


…ですよねー…



「んーそうね。…今すぐにパッと浮かんだモノじゃ何か勿体無い気がするから、しっかり考えてくるわ」


「OK。わかった。でもなるべく早めにしてくれよ?」


「わかってるわよ。それより冬夢、先生が転入生について話してる」


そう言われて俺は、意識を前にいる先生の方に向ける。


「えー、みんな知っているだろうが、このクラスに転入生が来る」


「先生‼ 転入生は女の子ですか?」



男子の中の誰かが、クラスの男子を代表して聞く。


「ああ、女子だ。しかもだな…喜べお前ら。物凄くキレイだ」


先生のその一言で、男子達が一気に殺気立つ。もちろん俺もその内の一人だ。


「よーし、じゃ入って来い」



そして、入って来た転入生を見て俺のテンションは一気にクライマックスに…



クライマックスに…



なれなかった。




周りが興奮して盛り上がっている中、俺はただただ自分の目を疑った。


だって入ってきたキレイな転入生は…



「音尾 和だ。よろしく頼む」




そう、和だったのだ。



誤字脱字や矛盾点などありましたら、ご報告よろしくお願いします。



また、感想などもお待ちしております。

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