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第30話 れっつ しんぐ あ そんぐ!

「いや~…本当に久々のカラオケだな。前に行ったのはいつだったか…思い出せないな。……お、ミ○チルの新曲、3曲とも入ってる」


「冬夢先輩、ミス○ル歌えるんですか?」


「いやいや…流石にあれは歌えない。まあ、キーが比較的低い曲ー知ってるかどうかは分からないが、例えばファスナーとかだったら歌えない事もないけどな。……お、フジファ○リックの新曲も入ってる」


「ちょっと、冬夢! 歌わないんだったら私に貸してくれないかしら? 時間だって無限にある訳じゃないのよ?」


「そうだったな。悪い悪い。ほらよ」



こんな会話のやり取りからもわかるとは思うが、今俺達は家の近くの駅前のカラオケボックスにやって来ている。


GW初日ともあり、カラオケボックスはとても混雑していて、すんなりとは入れないと予想していたのだが…

幸い2組しか待っておらず、10分ぐらい待っただけで入る事ができた。


カラオケにやって来たメンバーは俺・天照・美都・麗奈・悠里の5人である。

ちなみに、麗奈と天照はドリンクを取りに行っている真っ最中だ。

天照1人でドリンクコーナーに行かせると、とんでもない事をしでかしそうなので、麗奈について行って貰った。


一応、和と響もドア越しに「一緒に行かないか?」と誘ってみたものの、2人共「絶対に行かない!」と断固拒否。


まあ…そう言う2人の気持ちも分からないでもない。


下級神と究極神。

人間の関係で例えるならば、滅多に姿を見せない超有名企業の社長とその会社のヒラ社員みたいなものだろうか。


そんなしがないヒラ社員が社長なんかとばったり出くわしたら、そりゃあ動揺しまくるに決まっているし、一緒にカラオケなんて、絶対に行ける訳がない。


いやいや…大変なんだな社会って。

それに比べて、学生生活はそこまで激しい位の差というものはない。

努力しないと位が上がらない社会に対して、学生は何もしなくても位(正確には学年だが)が上がるし。

ビバ学生! ああ、一生学生のままでいたい!



「ちょっと、冬夢! 何ボーッとしてるのよ! ほら、これ持って!」


「お、おう」


若干残念な考え事をしていると、美都にタンバリンを手渡された。



「ちゃんと演奏に合わせてタンバリンを振るのよ?」


「わかってるわかってる」



美都は一体何を歌うのだろうか?

とにかく、知らない曲じゃ無い事を祈る。

知らない曲だととてもじゃないが、タンバリンなんかを曲に合わせて振るのは無理だ。

かと言って、タンバリン演奏に失敗して、美都が不機嫌になってしまうのは困る。


頼む…俺の知っている曲であってくれよ。


そう願いつつ、モニターの方に目をやる。


「やくしまるえ○このヴィーナスとジーザスか…」


よかった…知っている曲で。

俺はホッと胸を撫で下ろした。


カラオケでこんなに緊張したのは、これが初めてだ。

それにしても…何で俺はカラオケで、こんなに一喜一憂をしなくちゃならないんだろうか? いやはや、世界ってのはいつどこで何が起こるか分からないものだな。


ちなみに「ヴィーナスとジーザス」はアニメ「荒川ア○ダーザブリッジ」のOPだ。

あの透き通った感じの声に独特な歌詞。非常に中毒性の高いシンガーである。

まあ…こんな風に偉ぶって語っている俺も、ついこの間美都に教えて貰ってハマった身であるのだが。



「目覚めのキッスをまどろむあなたにー」


相対性○論(やくし○るえつこがボーカルを務めているバンド)のデビューアルバムーーシフォン主義が出た頃からのファンであるという美都の歌声が、部屋中に響き渡った。




「ぷはぁ~っ! 美都は歌が上手いのぉ」


豪快にオレンジジュースを飲み干し、グラスをテーブルに置いた後、パチパチと美都に拍手を送る天照。



「そ、そうかしら?」


「おう。物凄くうまかったぞ。中溝もそう思うじゃろ?」


「うん。ボクもそう思うな。美都先輩、声も綺麗だし音程もぴったりだし…本当に聞き惚れちゃいました」


「エヘヘヘ…」


「痛い! 痛いっ!」


あの…美都様? 照れ隠しに俺の背中をバシバシと叩くのはやめて頂けないでしょうか?

確かに物凄くお上手ではありましたけれども。

天照とは違って、あなた様のはとても痛いんです。

それと、皆様…俺のタンバリン演奏には触れて頂けないのでしょうか?


自分で言うのもなんですが、一応頑張ったつもりなんですけどね。流石にプロのミュージシャン並み…とはいかないにしても、曲には結構合わせる事ができたと思いますよ?

それなのに無視ですか? 無視なんですか?

いいですよ、もう! 後で頼まれたって、絶対にタンバリンやりませんからね!


不貞腐れた俺はタンバリンをテーブルに置き、コーラをグイッと一気飲みするのであった。




「じゃあ、次はボクが歌っちゃいますね〜。えいっ!」


悠里がなぜか気合を入れつつ、曲をモニターに送信する。



「おお! 完全感覚Dreamerか!」


見慣れたPVが映し出され、さっきまでの不貞腐れた気分はどこへやら。俺はググッとテンションが上がってしまった。



完全感覚DreamerはONE OK R○CKの代表的な曲である。

O○E OK ROCKの特徴は何と言っても、ボーカル、T○kaのハスキーボイスである。

バラードから激しいロック調の曲まで、何でも似合ってしまうあの声。俺もあんな声になれるなら、なりたかった。



「So now my time is up

Your game starts, my heart moving? 」


「おぉ!」


俺は思わず驚きの声をあげた。

英語の発音が恐ろしく滑らかでとっても綺麗だ。速めのテンポにもしっかりとついて行っている。


「Past time has no meaning for us, it’s not enough!

Will we make it better or just stand here longer

Say it “we can’t end here till we can get it enough!!”」


いや~…一緒に歌いたい気分なんだけどな…残念ながら、俺みたいな普通の男が原曲キーで歌ったら一発で喉が崩壊してしまう。あゝ悲しけれ。








「When I’m caught in fire

When I rise up higher

Do you see me out there

I can’t get enough! Can’t get enough!!」


最後にポーズを決め、歌い切った悠里の姿はそこら辺の男(もちろん俺も含む)よりも全然かっこよかった。

男だけでなく女子までもが悠里にメロメロになるのも良くわかる。

色々な人に告白されても、特定の相手を作らないんだから…モテる人間の考える事は本当によくわからない。



「とってもかっこよかったですよ、悠里さん。英語の歌詞の部分も完璧でしたし…相当練習したんじゃないですか?」


「ええ、結構テンポが速いですからね。家で相当練習しましたよ。でもあまりにも歌いすぎて、秀明にうるさい! って怒られちゃいました」


「本当に悠里にはこういう風な、激しめの曲が似合うわよね~」


「ボク自身もそうは思うんですけどね…でも自分が女子なだけにちょっと複雑です」


ちなみに、会話に参加していない天照は何をしているのかというとー


「……に、苦いのじゃ…」


白目を向いて、テーブルに突っ伏していた。

ブラックコーヒーを一気飲みしてしまったのが原因である。


みんながあんなに「シロップとミルクをいれた方がいい」と言ったのに、「私も美都と同じ、ぶらっくで飲むのじゃ!」と言って聞かなかったのだ。

要するに完全な天照の自業自得である。


よくこれで究極神が勤まるな…。

そう思わずにはいられない俺であった。




「では、次は私が歌わさせて貰いますね……」



麗奈が歌うのは…やっぱりボー○ロイドだろうな。

自分で曲を作ってるぐらいだし。


麗奈がボーカロ○ドをこよなく愛しているーと俺が知ったのは、つい最近の事なのだが、美都達はとっくの前に知っていたらしい。

何でも、同盟を結ぶ際に告白したんだとか。


その同盟内容が何か、ずっと俺は気になっているのだが、未だに不明である。

まあ、大体の予想はついている。

どうせ「モテモテ過ぎて困っちゃう同盟」みたいな感じなのだろう。


家で天照の絵を見た時に、天は神様であっても人間であっても二物を与えないんだ…と思ったが、前言撤回。

ここに天から二物も三物も与えられている方々がおられました。


ちょっとでいいから、モテるオーラっていう物を分けては貰えないものかね?

別に「モテモテハーレムを築き上げたい!」みたいな高望みはしません。彼女ができたらそれだけで、もう十二分に満足です、はい。



「すーっ。はーっ。すーっ。はーっ」


「いきなり深呼吸なんかして、どうしたのよ、冬夢」


「いや…何でもない」


「?」


皆様のモテモテオーラを吸収してるだなんて言える訳がないからな。アホじゃあるまいし。



「あ! ありましたありました」


ピッ、という電子音と共に送信された曲は、やっぱりボーカ○イド

であったのだが…


「ん?」


表示されている作曲者(ボーカロ○ドは普通とは違い、作曲者も表示されるのだ)はどこかで見覚えがあった。


はて? 一体どこだったか?



「………あっ! あぁぁぁぁぁぁあっ‼‼」


そうだそうだ! 思い出した!

麗奈のユーザーネームだ!


「どうしたんですか、冬夢先輩? 急に大声なんて出して」


「うるさいわよ、冬夢!」


「いや、この曲、れー」


「冬夢君ー」


いや、この曲、麗奈が作ったやつなんだ…と言おうとしたが、それは麗奈に阻まれてしまった。


「ーそれは私と冬夢君だけの秘密ですよ」


「お、おお…」


何で俺と麗奈だけの秘密なんだ? と聞こうとしたが、やめた。

親友にも話したくない秘密は誰にだってあるし…

美都達には申し訳無いが、やっぱり2人だけの秘密っていうものは、何だか嬉しい。

その秘密を共有しているのが、美少女の麗奈なのだ。嬉しさも倍増である。


「せんぱ~い! 何を言おうとしたんですか? ボクにも教えて下さいよ~」


「2人共! 何を隠してるのかしら? 私にも教えなさいよ!」


「いや、この曲、レベルが高いんだよな~…って言おうと思っただけだそ?」


「そんな見え透いた嘘に騙される訳がないでしょ!」


「そうですよ。美都先輩の言う通りです。ボク達がそんなウソに引っかかると思ったら、大間ちー」


「ほら、麗奈の曲が始まるから聞こうぜ」


「「ぐぬぬぬぬぬ…」」


美都と悠里を上手い事…ではないかもしれないが、とにかくはぐらかす事に成功する。

後で鬼のような追求をされるだろうが…その辺は…まあ頑張ろう。


それにしても、今モニターに表示されている曲と前に聞かせて貰った曲はタイトルが違う。

って事は…新曲って事か?


この前、麗奈の家を訪れた時は「歌詞もリズムも思い浮かばない」みたいな事を言っていた気がしたが…スランプは脱出したようだな。よかったよかった。


麗奈の家を訪れてから、あまり日は経っていないのに、 既に曲がカラオケにあるとは…流石売れっ子(という表現で良いのかはわからないが)である。


そんな事をぼんやりと考え、改めて麗奈の凄さを実感しながら、俺は麗奈の歌声に耳を傾けるのであった。





「麗奈先輩も歌うの上手いんですね! ボク、聞き惚れちゃいましたよ」


「歌姫っていう言葉がホントにぴったりだわ」


「声も透き通っていて、とっても綺麗だった。美都の言う通り、麗奈は歌姫だな」


「そ、そんな…大げさですよ…」


「…うぅぅ…く、口の中でば、爆発が起こったのじゃ…」



俺達3人に褒められ、照れ臭そうにモジモジする麗奈。


ちなみに、天照は再びテーブルに突っ伏している。

今度はコーラを一気飲みしたのだ。

みんなが「天照にはまだ早い!」と注意したのだが…。

要するに完全な天照の以下略。



麗奈の歌声もさることながら、曲自体も素晴らしかった。


今回の歌詞の内容は

「彼氏にも話せない秘密を抱えている彼女が、嫌われるのを覚悟でその秘密を告白する。しかし、彼氏は彼女の事を嫌うどころか、彼女が秘密を打ち明けてくれた事に対して感謝し、2人の仲は更に深まっていった」

というストーリーを彼女視点で描いたものだった。

これがまた、ゆっくりとしたテンポの曲調にぴったりと合うのだ。


本当に麗奈には作詞作曲の能力があると思う。


後でメールで感想を送ってあげるとするか。








「いや~楽しかったですね~カラオケ」


「今度は和さんや響さんとも一緒に歌いたいですね」


「歌い残した曲もいっぱいあるし、また皆で来ましょうよ」


「そうだな。和と響がどんな曲を歌うのかも気になるしな」



時間目一杯まで歌い続けた俺達は、ぶらぶらと俺の家へと向かっていた。


和と響に駅前のショッピングモールで買ったお土産(和には有名店の唐揚げ、響には犬のぬいぐるみを

買った)を皆で渡す為である。



「それにしても、冬夢。あなたがあんな歌声をしてるだなんて驚きだったわ」


「地声からは考えられない歌声でしたもんね~。ボクも驚きましたよ」


「とっても上手でしたよ、冬夢君」


「そ、そうか?」


ううっ…やっぱり褒められるのは嬉しいが、ちょっと恥ずかしくもあるな。


ちなみに、俺はSEKAI N○ OWARIだけを歌った。

唯一満足に歌えるのがこれぐらいしか無いのだ。

次回くる時までにはレパートリーを増やしておかなくちゃならないな。

SEKAI NO ○WARIだけ歌うのは…俺は全然構わないのだが、周りが飽きるだろうし。


「天照ちゃんの歌ってる姿、可愛かったわよね~」


「選曲には少し驚いちゃいましたけどね」


「まさか神様が題材の曲を歌うとは予想外でした」


そうなのだ。

麗奈が言ったように、天照が歌ったのはApplicat Sp○ctraの「神様のすみか」やOverTheD○gsの「神様になれますように」や清○人の「イザナギの後遺症」など、神様を題材にした曲ばかりだったのだ。



そんな変に偏った選曲をした究極神様はー


「……むにゅう…」


俺の背中でぐっすりと寝ていた。


カラオケって、そんなに体力を消費するとは思えないんだがな…よっぽどブラックコーヒーとコーラの一気飲みが応えたのだろうか。


本当に神様らしくない神様だ。

こんなお方が日本の神様界のトップなんだから、世の中わからないものである。






そんなこんなで皆とだべりながら歩く事、十数分。


「ふう。ようやく着いた」


俺は家の鍵を取り出し、ドアを開ける。



「ただい……」


「「お帰りなさいませ。ご主人様」」


「え?」


俺は一旦ドアを閉め、目をこする。

何なんだ…今のは?

俺の目が正しければメイドだ。物凄く可愛い2人のメイドさんだ。

それはわかる。

しかし…何で俺の家にメイドがいるんだ? 俺の家がメイド喫茶に変わっただなんて聞いてないぞ?

なったらなったで嬉しいけどさ。


俺は大きく深呼吸をし、再びドアを開く。


「「お帰りなさいませ。ご主人様」」


そこにはやはり深々と下げる2人のメイドさんがいた。

しかもそのメイドさんはー


「……和…? ……響…?」


何と和と響だったのだ。


後ろにいる美都達も絶句しているのがわかる。


何があったんだ? 俺達がいない間に何があったんだ?


ずっと頭を下げている和と響を、ただ呆然と眺めていると…


「ふわぁ~あ…」


背中で寝ていた天照が起き出してきた。


「……ぬおっ! 私は寝てしまったのか! もう冬夢の家の前ではないか!」


驚いたように周りをキョロキョロと見渡す天照。



「……ああ。覚えてないのか? カラオケの途中で寝てしまっただろ」


天照に話しかけられる事によって、俺はようやく硬直状態を解く事ができた。

後ろにいる美都達は未だに固まっているが。


「うぬぬ…全く思い出せぬが…まあよい。今日はとっても楽しかったぞ。これはほんのお礼じゃ」


ぷにゅん、と柔らかい何かが俺の左頬に触れる。

それが天照の唇である事。そして俺は後ろから乗り出してきた天照に、キスされたという事を理解するのに相当な時間を用した。



「な、な、な、な、何をするんだ、あ、あま、天照ッ!」


顔が物凄い勢いで赤くなっていくのが、自分でもよくわかる。こんな事をされたのは初めてなのだ。赤くならない方がおかしい。


「くっくっくっくっくっ。接吻一つでそこまで狼狽するとはの。可愛いやつじゃ」


そう言って、天照は俺の背中からぴょん、と飛び降りる。



くそっ…完全に天照に弄ばれてしまっているな…俺。

先程のあどけない寝顔とは打って変わって、大人びた表情を浮かべる天照。

何だかんだ言って、やはり究極神なんだなぁ…と思い知らされる。



「…この後、死ぬような目にあうと思うがの。それを乗り越えてこそ、真の男じゃ。まあ、せいぜい頑張るのじゃぞ」


そう言いながら、三貴神家の方へ走っていく天照の目は真紅に染まっていた。


もしかしなくても、これって…予知能力じゃないのか? しかもミス アビゲイルとは違って、的中率はほぼ100%ときた。

…これが死亡フラグってやつですね。

いや、フラグなら回避する方法は必ずあるが…これには回避法が無い。

つまり、死亡確定ルート突入って事ですね。DEAD ENDまっしぐら。

HAHAHAHAHA…笑えねえ。



今こうやってぼんやりと突っ立っている間にも、死へのカウントダウンは着実に進んでいる。

気付けば俺は美都達に取り囲まれていた。


「ねぇ冬夢? 天照ちゃんと何をしていたの? 私に教えてくれないかしら?」


「そう言えば、冬夢先輩。天照ちゃん達が引っ越しにやって来た時に、天照ちゃんの事を物凄く可愛いとか言ってましたよね? あれってどういう事なんですか?」


「私達と今からゆっくりとお話しましょうね。ロリコン冬夢君?」


「よりによって天照様を毒牙にかけるとは……この人でなしめ!」


「お前のようなクズはオレがこの手で粛清してやる!」


ジリジリと包囲網を狭めてくる5人。

しかし不思議な事に、全く怖くはなかった。

今、俺の心はとても清々しい状態にある。


人間、絶対に避けられない死を目の前にすると、心が穏やかになるって本当だったんだなぁ…。


しかしどうして5人はこんなにも、怒ってるんだ?

キスをしてきたのは天照であって、俺は被害者なんだけどな…。



もしかしてあれか? 「もう鈍いとは言わせない! 究極に鈍感なラノベのハーレム主人公でもわかる女心の全て!」に書いてあったー


「皆、俺に嫉妬しているのか?」


「「「違うっ!」」」「「違います!」」


「ぐはっ⁈」


5人が一斉に俺に向かってパンチを放ってきた。

当然避けられる訳もなく、それらをもろに喰らう俺。



やっぱり違いますよね~。

よく考えてみたら、嫉妬が起きる訳がない。5人が俺に好意を寄せているだなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないからな。

何バカな事を言ったんだ、俺は…。


失われていく意識の中でしきりに反省する俺であった。



…………そう言えば……どうして和と響は……メイドの…コスプレなんか……してたんだ?






「な、何で…何で冬夢が鋭くなってるのよ!」


「確か…1週間ぐらい前ですかね? 鈍いって言われるのが嫌だから必死に勉強しなきゃな…って冬夢先輩本人が言ってました」


「この前のお見合いで、雀部を待っていた時に…冬夢君が『鈍いって皆に言われないようにパソコンで勉強してたら、良いサイトを見つけた』と嬉しそうに話していたのを覚えてます」


「これは緊急事態ね…冬夢が完璧に女心をマスターする前に、何か手を打たなくちゃならないわ。………ところで和に響。あなた達はどうしてメイドのコスプレなんかしてるわけ?」


「これには深い深~い訳があるんだよ。和、説明してやってくれねーか? オレ、こういう説明は苦手なんだよ」


「仕方がないな…わかった。私が説明しよう。実は皆がカラオケに行っている間にーー」






吾妻 深千流(以下深)「深千流と」


吾妻 弥千流(以下弥)「弥千流の」


深・弥「かみるーらじお!」


深「こんにちは。鳳凰学園高校3年、放送部部長をやらせて頂いている吾妻 深千流です」


弥「はろ~! 鳳凰学園高校2年の吾妻 弥千流だよ~。ちなみに、わたしは放送部副部長やらせて貰ってま~す」


深「“かみるーらじお!”とはもっと読者様に“神√”を知って頂きたい! という思いから生まれたラジオです」


弥「ゲストを呼んでフリートークをしたり、リスナーの皆からのお便りを読んだり、質問に答えたりしちゃうよ~」


深「さて“第30話 れっつ しんぐ あ そんぐ!”いかがでしたでしょうか?」


弥「今回はいつもより長めなんだよね~?」


深「ええ。今回はいつもより2000字程長いですが…最初はもっと長くなる予定だったんですよ」


弥「そ~なんだ~。内容が薄い割には文字数が多い。作者は相変わらず計画性が全くないね~」


深「最初は美都ちゃん達と同じように、一ノ瀬君と天照ちゃんのカラオケシーンもしっかりと入れる予定だったんです。

でも、人間ヒロイン3人組だけで相当な文字量となってしまったので、一ノ瀬君と天照ちゃんのカラオケシーンは簡略化されました」


弥「中途半端に最後が終わってるのも、文字量が思ったよりも増えたからなの〜?」


深「いいえ。もし今作の文字量がいつも通りであっても、あの中途半端な終わり方で締められていましたよ」


弥「なんでなんで~?」


深「一ノ瀬君達がカラオケに行っている間、和さん達が家で何をしていたのかを次話で書くから…だそうです」


弥「なるほどね~。と、100%作者の自己満足であって、誰も得しないであろう、次話の大まかな展開がわかったところで、

質問コーナーいってみよ~!」


深「続いては質問コーナーです」


弥「このコーナーは、読者の皆から寄せられた質問に、時にはゲストを呼びながら答えていくコーナーだよ〜」


深「今回も前回に引き続き、水面出さんからのヒロインへの質問に答えていきます」


弥「ゲストさん、いらっしゃ~い!」


音尾 和(以下和)「ここが噂の吾妻家の地下にある、姉妹自作の放送局なのだな」


弥「は~い! 今日のゲストはなごみんで~す!」


和「そのあだ名で呼ぶなと何回も言っているであろう! あ、弥千流のお姉さんですよね? 初めまして。音尾 和と申します」


深「こちらこそよろしくお願いしますね」


和「それにしても弥千流よ。ここの放送局は本当に自作なのか?」


弥「まあ…配線を繋いだりとか、マイクの調達だとかのややこしい部分はコンピュータ研究部の友達にやって貰ったけど~…それ以外は基本的にわたし達2人でやったんだよね~」


深「あれは本当に大変でした…夏休みに作業をしていたので、もう暑くて暑くて…」


弥「あまりにもしんどすぎるから、放送部員を全員駆り出して、手伝わせた事もあったよね~」


和「それにしても…製作費用はどこから持ってきたのだ? これ程豪華な設備なのだ。一般的な高校生が簡単に払える額ではなかろう?」


深「…資金集めは1番大変でしたね…」


弥「あ~んな事やこ~んな事も平気でやってたもんね…」


深「今思い返してみれば私達、相当危ない橋を渡っていましたね…」


弥「ホントそうだよね…お姉ちゃん…」


和「……深千流先輩に弥千流よ…一体何をしたのだ?」


深「………」


弥「………」


和「黙っていてはわからなー」


弥「…ねえ、なごみん。世の中には深く知らない方が良い事も沢山あるんだよ? わたしの言いたい事わかる?」


和「………あ、ああ」


弥「流石なごみん! じゃ、気を取り直して質問に入っちゃおうか!」


深「第1問 今まで何度、ミス・アビゲイルを殴りたいと思ったことがありますか?」


和「殴りたいと思った事は一度もないな」


弥「そうなの~? 意外だなぁ~。あんなウザったい上司がムカつかない訳がないのに」


和「ただ、殺意なら…それこそ、もう数えきれないぐらい覚えたぞ。響が一ノ瀬家に引っ越ししてくる時、ミス アビゲイルにも手伝って貰ったが…あの時はミス アビゲイルの頭を鈍器で殴らないように自制するのが大変だったな…」


弥「…つ、次の質問にいこうか! お姉ちゃん!」


深「そ、そうですね! 第2問 一ノ瀬君と付き合っていると仮定しまして、デートに連れて行って欲しい場所とかありますか?」


和「唐揚げ博物館だな!」


深・弥「「え?」」


和「唐揚げ博物館だ!」


深「そ、そんな博物館があるんですか?」


和「ああ。と言っても、まだオープンしたばかりなのだが…そこの館長が私と知り合いなのだ」


弥「ど~ゆ~関係なの~?」


和「私が一ノ瀬家に引っ越しして数日後、私と冬夢は2人でショッピングモールに行ったのだ。必要な雑貨を買う為にな」


深「第12話に収録されている話ですね」


和「そして買い物が終わった後、私達は近くにある、美味しいと評判の唐揚げ店に行ったのだ」


弥「確か…そこの店長、なごみんに説教されて唐揚げ修行の旅に出たんだよね~? ……もしかして…」


和「そうだ。唐揚げ修行から帰ってきた店長がそこの館長を務めているのだ。

いやはや…前々から唐揚げマスターとしての素質があると思っていたのだが、ここまで成長してくれるとは…私はとっても嬉しいぞ!」


深「その唐揚げ博物館は何が展示されているんですか?」


和「まずは唐揚げの歴史。ここでは唐揚げの誕生から現在に至るまでをわかりやすく解説している。そして最強に美味しい唐揚ー」


弥「ちょ、ちょっとストップ~!」


和「ーげの作り方を教えるコーナー。ここでは館長が直々に最強に美味しい唐揚げの作り方をー」


弥「ダメだ…お姉ちゃん…なごみん、完全に唐揚げワールドに旅立って行っちゃったよ~」


深「仕方がないですね…質問もまだ1問残っていますが…ここで閉めましょうか」


弥「わたしもそれがいいと思うな…」


深「“神√”を読んでいて疑問に思った事や、このキャラとこんなトークをして欲しいという要望があれば、感想やメッセージ、活動報告のコメント欄からお知らせ下さい。また、誤字脱字や矛盾点などがありましたら、ご報告よろしくお願いします。他にも感想や評価、レビューなどもお待ちしております」


弥「皆のお便り待ってるよ~」


和「ーここでは唐揚げがいかにして子供のハートをがっしりと掴んで離さないのかを説明してー」

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